14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

ウエストパンクへようこそ。 > ACT-01 > #04


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陽が西に沈み始め、肌色の荒野を真っ赤に塗り替え出した頃。
エアはスキルガンドにある小さな商店街を走っていた。

(あの後、旅人さんが情報収集をするとしたら、此処しかないもの・・・。)

事件の詳細を聞かずに飛び出してしまった彼女が、エアにはどうにも気がかりだった。
何故これほどまでに気に掛かるのかは、エア自身ですらもよく分かっていない。
ただ、どうしようもなく気がかりで、堪らずエアは家を飛び出したのだ。

(あの女性ひと、なんだか放っておけないんですよね・・・。)

しかし商店街の人に片っ端から尋ねるも、彼女に繋がる情報が得られず、エアは焦りを感じ始めていた。
その時だった。

「あら? エアちゃん、酷く慌ててどうしたんだい?」
「あっ、小母おば
さん! 丁度良かったですっ!」

エアを呼び止めた人物、それはエアが小さい頃からお世話になっていた近所の小母さんだった。
エアは小母さんの傍に駆け寄った。

「実は、私が今朝方、小母さんにも手伝ってもらって助けた、あの旅人さんの行方を捜しているんですっ!」
「今朝方助けた? ・・・ああ、あの。」
「そうですっ! あのっ!」

エアと小母さんは一旦小さく息を吸って。

「太陽よりも明るい橙色の髪と。」「太陽よりも明るい橙色の髪と。」
「空よりも蒼い瞳の。」「空よりも蒼い瞳の。」
「頬に赤い爪痕のある奇麗な女性ですっ!」「頬に赤い爪痕のない奇麗な女性だね。」

エアと小母さんの台詞が全て一致して・・・。

「・・・って、あれ?」「・・・って、あら?」

・・・いなかった。
一瞬の静寂の後、エアは小母さんに問い掛けた。

「あれ? 頬に赤い爪痕のような物、ありませんでしたっけ?」
「そうだったかねぇ・・・? わたしゃ、なかったような気がしたけど・・・。」

小母さんは首を捻り、必死に思い出そうとした。
暫しの沈黙の後、小母さんは申し訳なさそうに口を開く。

「うーん、やっぱり。 わたしの覚えてる限りじゃ、爪痕らしい物はなかったような・・・。」
「そ、そんなぁ・・・・。」
「でも、奇麗な褐色肌だったのは覚えてるわよ。」
「えっ!? 褐色肌っ!?」

今度はエアが首を捻り、必死に思い出そうとした。
しかし、記憶の中の彼女が何色の肌をしていたかが何故か思い出せず、申し訳なさそうに口を開いた。

「あれ・・・そうでしたっけ・・・?」
「うーん・・・。 印象がかなり濃いようで、かなり薄い・・・。 何処にでも居そうで、何処にも居なさそうな・・・。 そんな雰囲気だったしねぇ・・・。」
「・・・そう、ですね。」

二人はほぼ同時に小さく溜め息をついた。
それからすぐに、エアは気を取り直して本題に入った。

「それで、その旅人さん。 見ませんでしたか?」
「あ、ああ。 見たわよ。」
「えっ!? 何処でですっ!?」
「ちょっと、待っててね。 思い出すから・・・。」

小母さんは暫し沈黙した後、軽く両手を叩いて口を開いた。

「そうそう、町から出て少し行った所にある、巨大な岩が聳えてそびえている荒地の方へ走っていくのを見かけたわっ。」
「そうですかっ! ありがとうございますっ!」
「あっ! エアちゃんっ!」

駆け出そうと踵を返したエアを、小母さんは引き止めた。
小母さんは心配そうな表情で問い掛ける。

「もしかして、今から追いかけるつもりかいっ!?」

エアは振り返らず答えた。

「はいっ。 そのつもりですっ。」
「あの辺り、夜行性巨獣の住処になってるって話じゃないかっ! そんなトコに、貴女みたいなコが一人でいっちゃぁ危険だよっ!」
「分かってます。 でも、どうしてもあの旅人さんが気になって!」

小母さんは暫しの沈黙の後、大きく溜め息をついて口を開いた。

「・・・分かったわ。 貴女はそうなるともう、梃子でも動かないもの。 好きになさい。」
「小母さん・・・。」
「ただ、ちょっとでも危なくなったら、すぐに戻ってくるのよっ!」
「はいっ! 分かりましたっ! では、行ってきますっ!」

エアは小母さんに手を振りながら荒地に向かって走り出した。
小母さんはゆっくりと手を振りながら、エアの背中を心配そうに見つめていた。

~~~~

「・・・さて、困った。」

彼女の目の前には、聳え立つ巨大な岩石があった。
それを中心に、まるで1つの大家族のように集まって、無数の岩が転がっていた。
その中の手頃な大きさの岩に腰をかけ、彼女は呟いた。

「事件の詳細、聞きそびれたと思って、カノジョの家に引き返そうとしていたはず・・・なんだけど。」

彼女は蒼い瞳を右から左へゆっくりと流し、溜め息混じりに呟く。

「・・・此処、何処だろう?」

彼女は途方に暮れ、空を見上げた。
空は真っ赤に染まり、じきに夜が訪れることを示していた。
彼女が呆然と空を見つめていると、お腹から小さな鳴き声が響いた。
彼女は苦笑混じりに口を開いた。

「・・・お腹、減ったなぁ。」

その時だった。
一番巨大な岩石の方から、微かに人の声が聞えた。

「・・・ラッキー♪ 町の場所、教えてもらおうっ♪」

彼女は思わず小躍りをして、小石で躓きつまづきそうになるのを堪えると、意気揚々と声のした方へと走り出した。

~~~~

陽が西へと半分ほど沈んだ頃。
一番大きな岩石の下、大きな袋を担いだ1人の男と、それを取り囲むように9人の姿があった。

「おーい、トゥーニィ! 早くしろーっ! 俺達のアジトはすぐそこだぞーっ!」

9人の男達の中で先頭を歩く、一番身長の低い男が叫んだ。

「そんなこと言ったって、ワイッチにぃっ! これ、すっげー重いんだぜぇー!」

トゥーニィと呼ばれた小太りなスキンヘッドの男が、情けない声で応えた。
ワイッチと呼ばれた男は、溜め息をついてから再び叫ぶ。

「”神聖なるアミーダ様”で負けたんだから、しかたねーだろー!」
「そ、そうだけどさーっ! ってか、サスーリン、ヤエート! お前ら見てねーで変われよっ! こういうの専門分野だろーっ!」

10人の男達の中で頭一つ高く、瓜二つの顔を持った体躯の良い男、サスーリンとヤエートは困った顔で同時に応えた。

「ワイッチのアニキが、手伝えって言わないんだもーん。」「ワイッチ兄さんに文句を言ってくださいなー。」

その困った顔がトゥーニィ、サスーリン、ヤエートを除く男達の笑いのツボにハマったらしい。
7人の男達の図太い笑い声が荒地に響いた。

「アハハハハハッ!! ったく、いつ見てもその顔おもしれぇーっ!!」
「アハハハハハッ!! まったく、いつ見てもその顔おもしろいなぁーっ!!」
「アハハハハハッ!! マジ、いつ見てもその顔おもしろぉーっ!!」
「アハハハハハッ!! まったく、いつ見てもその顔おもしいですぅーっ!!」
「アハハハハハッ!! ホントに、いつ見てもその顔おもしろーいっ!!」
「アハハハハハッ!! ダメだ、いつ見てもその顔おもれぇなーっ!!」
「アハハハハハッ!! ったく、いつ見てもその顔おもしろすぎぃーっ!!」
「アハハハハハッ!! その顔、凄くおもしろいよぉーっ!!」

7人の男達の図太い笑い声が・・・。

「・・・あぁんっ?」

否。
・・・一人分、笑い声が多かった。
しかも、その笑い声は男性のそれではなく、もっと高い。まるで、女性のような・・・。

「ウヒヒヒッ!! だ、ダメ、あたし、完全にツボに入っちゃったよぉっ!」
「・・・だ、誰だテメェっ!?」

ワイッチの怒鳴り声で9人の男達が一斉に飛び退く。
そして、お腹を抱えて笑い転げる人物、太陽よりも明るい橙色の髪の女性を睨みつけた。

「アハハハッ! 『ワイッチのアニキが手伝えって言わないんだもーん。』だってっ! アハハハハッ!!」
「誰だって聞いてんだろぉがっ!」
「・・・あっ?」

ようやく、ワイッチの怒鳴り声に気付いた人物は、ゆっくりと立ち上がる。
そして、ばつの悪そうな態度で大きく咳払いをして口を開いた。

「あ、えーっと・・・。 ごめん。 あんまり、おかしかったから・・・ついね・・・。」
「いいから、誰だって聞いてんだよっ!」
「まぁまぁ、誰だっていいじゃない?」

彼女は怒鳴り声をあげるワイッチを宥めるように、両手を胸の辺りまであげた。
彼女は小さく溜め息をついて、問い掛ける。

「・・・ところでさ、この近くにある町の場所。 教えてくれないかな?」
「てめぇっ・・・このオニマス一家の長男、ワイッチ=D=アウゼン様をバカにしてるのかぁっ!」

ワイッチは激情に駆られるまま、彼女へと殴りかかった。
ワイッチの鉄拳が彼女の顔面へと迫る。
その時だった。
突然、彼女の目の前に黒い物体が聳え、ワイッチの鉄拳はそれに衝突した。
その直後、思い金属音が鳴り響いた。

「・・・いってえぇぇぇぇーーっ!!」

ワイッチは殴りかかった拳を庇うように抱えて蹲った。
その様子に周りに居た9人の男が一瞬たじろぐが、すぐに其々の腰に携えた武器を取り出して彼女を囲んだ。

「ふぅー・・・。 危ないなぁー。 暴力反対だよー・・・。」

彼女は溜め息をつきながら、黒い物体の影から顔を覗かせた。

「よ、よくもワイッチ兄さんをっ!」
「あ、あんた、なにしやがったぁっ!」

彼女はその男の問い掛けに答えるように、手に持っていた黒い物体をその男の足元に投げ捨てた。

「で、でけぇ盾だ・・・!」

男の足元に転がった黒い物体。
それはとても大きくて頑丈なことで定評のある、長方形の盾だった。

「こ、こんなものをいつの間に・・・。 というか、そもそも今まで何処に隠していたんだっ・・・!?」

男は彼女の姿と盾を交互に見ながら叫んだ。
どうみても目の前の彼女は、足元にある盾を隠しきれるほどの、大きな体躯をしていなかったからだ。

「『何処に』・・・って、此処に。」

彼女がそう言って、笑顔で両手を広げた時だった。
彼女のポンチョの中から、彼女の足元に黒い物体が落ち、再びあの重い金属音が鳴り響いた。

「あっ・・・。 そういや、もう1個持ってたんだっけ・・・。」

彼女の足元に落ちた、大きな盾を見た瞬間、男達の間に衝撃が走った。
そのあまりの衝撃に、男達は漫画かなにかのように口をあんぐりと開けて、固まることしかできなくなってしまった。

「お、お前ら・・・。 いつまで、ぼけーっとしてやがるっ! さっさと、片して俺を手伝えっ!」

荷物の重みに遂に耐え切れなくなったトゥーニィの怒鳴り声で、男達は我に返った。
一方の彼女は、怒鳴り声をあげたトゥーニィの姿を見るなり、目を丸くして問い掛ける。

「あーた・・・。 いつから、そこでそうやってたの?」
「いつから・・・って、ずっと居たぞっ!」
「あ、そうなの・・・。 それで、そんな重そうな袋を持って立ってるのは・・・あーたの趣味かい?」
「んなワケあるかぁっ!!」

激しい剣幕で怒鳴り散らすトゥーニィを、彼女は手で宥めながら問い掛けた。

「まぁまぁ・・・。 じゃあ、それ。 なんなのさ?」
「見てわかんねーのかっ! 食料だよ、しょくりょぉぉっ!」
「へぇー・・・。 それってまさか、盗んだのかい?」
「ああそーだよっ! 盗ってきたんだよっ! 分かったらとっとと、消え・・・ぁっ。」

トゥーニィは手に持っていた袋を足元に落とし、慌てて両手で口を塞いだ。
彼女は何度か頷いた後、一度小さく咳払いをすると、得意げな表情でトゥーニィを指差して口を開いた。

「――スキルガンドの食料を盗んだ悪い人っ! 見つけたりぃっ!」
「し、しまったぁぁっ!! ・・・って、あぁっ?」

トゥーニィは一度大きな咳払いをして、彼女を指差しながら問い掛けた。

「『見つけたり』って・・・。 お前、俺達のことを知ってて、追いかけてきたんじゃ・・・?」
「違うよ。 あたし、食料泥棒の情報を聞きに行くために、町に戻る道を聞こうとしてただけだよ。」
「・・・じ、じゃあ、ま、まさかぁ。」

トゥーニィの表情がだらしなく崩れた物に変わっていく。
彼女は少し恥ずかしそうに頭を掻きながら答えた。

「うん。 まさかあーた達が、その泥棒さんだったなんて、思いもしなかったよ。 アハハハ・・・。」
「う・・・ぅぅ・・・うぁああああああああああああああああーーんっ!!」

腕を庇って蹲ったままのワイッチを除く、9人の男達は一斉に頭を抱え叫んだ。
9人の男達の絶叫が、夕闇の荒地に無常に響き渡った。