14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #02 > パートA


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「・・・いってぇー。」

タクトは突然の衝撃に情けない声を出した。
しかし、すぐに自らの反応に疑問を持つ。

(痛てぇ?車がぶつかったんだぞ?その程度で済むワケ・・・ってか何で意識があるんだ?!俺!!)

タクトが最後に見た光景、それは軽自動車が勢い良く窓ガラスをぶち割って迫って来た光景だ。

(・・・って、店ん中こんな暑かったか?!つーか、ボロボロになりすぎだろ?!どーなってるんだ?!)

あの後、確実に自分は軽自動車と衝突した。普通ならばまず意識があるワケがない。
それなのに、こうして意識がある。それだけでも十分過ぎるほど異常だ。
そこに追い討ちをかけるように、一瞬の内にやたら暑くてボロボロになった店内。
タクトは混乱の窮み【きわみ】に達していた。その時だった。

「大丈夫・・・って違う!?」
「えっ?」

突然上から声がして、タクトは首を振って背中の方に視線を向けた。
そこには血のように真っ赤な眼と髪を持った女性が立っていた。
ファンタジー世界の女戦士が着てそうな簡素な胸当てと鎧下を着込んだ女性で、露出した足や腕にはボロボロの布が包帯のように巻かれていた。
その間から見える少し日焼けした地肌は傷だらけではあるものの、張りのある活発そうな女性の肌という印象を受ける。

(すげー凝ってるコスプレだな・・・。刀傷まで本物っぽいぞ。)

タクトは呑気にも目の前の女性に見入っていた。
腰に携え【たずさえ】られた剣も本物のような印象を受けるし、右目の大きな刀傷もまるで本物のような存在感を醸し【かもし】出していた。

(流石、外人。やることのスケールがちげぇ・・・。)

タクトは思わず生唾を飲んでいた。コスプレとやらに興味はないので、詳しくは知らない。
しかし、彼女が筋金入りのコスプレイヤーであることは何となく分かる。
タクトは自らが置かれている状況も忘れ、目の前に居るコスプレ女性拘りように感心していた。
そうこうしている内に、コスプレ女性が口を開いた。

「・・・アンタ、誰?」
「はぁっ!?」

タクトは驚いていた。
どう見ても外国人にしか見えなかった女性が、自分の唯一理解できる言語をとても流暢【りゅうちょう】に話してきたからだ。
そして一歩遅れて苛立ちが襲ってくる。

(『アンタ、誰?』ってこっちが聞きてぇぞ。てか、そういう時は自分から名乗るもんだろっ?!)

タクトの苛立ちの篭った【こもった】返答に気付く素振りもなく、女性が再び口を開く。

「なんで此処に居る?」
「なんでって・・・」
「輝石を何処へやった!」
「なんだよそりゃ!知るかっ!!・・・ってうわっ!?」

女性は突然タクトに飛び掛ると右手で制服の首元を掴んで走り出した。
タクトは予想以上の彼女の力に抵抗空しく引き摺られる。
その後、彼女が途中で何かを素早く拾い上げ右腕に引っ掛けた。
タクトの耳元で首が絞まったような声を上げるそれは、ローブを纏った男性であった。
彼女はタクトとその男性を右腕一本で引っ張り、そのまま店内を走り抜け脱出した。
その直後、タクトの目に今まで居た建物が轟音と供に崩れ去る光景が映る。
そして、舗装路を二人を引き摺って走る彼女の後ろから何やら黒い塊が追いかけてきているのも目に留まった。

「へぇっ!嬉しいねぇ!流石、天下のダイア・スロン!マシンガンキャリアーまで引っ張り出してくるたぁやってくれるっ!」
「喜んでる場合じゃないですよ!というか、どうして治安部隊は動いてないんですか!?」
「・・・忘れてた。」
「・・・何をです?」
「私、あの時駆けつけた治安部隊と鉢合わせしちまったから、つい全員倒してたんだ・・・。」
「な、何ですってー!」
「ダイジョブ!顔は見られないようにしたからよっ!でも、全滅させたから応援来るまでは動かないだろーな。」
「・・・そう言う問題では・・・いえ、何でもありません。」

男性と女性はどちらもタクトに分かる言語で会話をしていた。
内容はよく分からないが、どうやら何かから逃げているらしい。
しかし、今はそんなことはどうでもよかった。
引き摺られて地面と擦れてる部分がとても痛いし、首元を掴まれてるので呼吸が苦しい。
17年間生きてきて、女性に首元を掴まれ外を引き摺られたのは初めてだ。
マゾヒストの気があるならそれも悪くないのだろうが、生憎その趣味はない。
タクトは男性として例えようのない敗北感を感じながらも、呼吸をするのに必死だった。
そんなタクトの存在にようやく気付いたのか、隣で同じ境遇の男性が話題に上げた。

「それで、こちらの方は何方ですか?」
「知らんっ!ラス、アンタに任せる!色々と聞き出しといてくれっ!」
「ま、任せるって!あのですねぇ!って!うわぁっ!!」
「・・・へっ!?うわぁぁ!!」

ラスと呼ばれた男性の質問に無責任な答えを返すと彼女は徐に立ち止まる。
タクトは慣性の法則に従って前方に身が投げ出されるのを感じ思わず目を閉じた。
しかし、勢いは予想しているよりも長く続いている。
それどころか更に強くなっている気がして、タクトは恐る恐る目を開けた。
そして、タクトは自身が空高く舞い上がっていることを知った。

「なっ、なっ、なっ・・・・・・・・・。」

17年間生きてきて、車と衝突したはずなのに意識があったのは初めてだ。
やたら店内が暑くてボロボロになってる光景を見たのも初めてだ。
突然現れた女性に為す術なく引き摺られたのも初めてだ。
しかし、今の光景はそれらを軽く凌駕【りょうが】するほどに異常で、初めての体験だった。

「なんじゃこりゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」

タクトは今、思いの丈を文字通り空高くぶちまけていた。

~~~~

(・・・しかし、アイツ。ホントに何者なんだ?どうしてあんなとこに?)

空高く木霊する男の断末魔の声を聞きながら、ネスは一人思考を巡らせていた。

(あの場には確かに、私とラスしか居なかった。突っ込んできたカーゴに人の気配もなかった。)

ネスが思案に暮れていると、少しずつ走行音が大きくなってきた。

(結局、あの場に私の輝石は無かった。つまり、発動はしたと言うことだよな・・・。)

追いかけてくる走行音は、その大きさや間隔から見て5台分だ。
この調子だと後、数分もしないで相手の射程に入るだろう。

(・・・まっ、後はラスが何とかしといてくれるだろ。)

ネスはゆっくりと右腰の剣を抜く。
昼前の暖かくも優しい光を、剣身が反射して眩しく輝いた。
追手の姿が遠くに見えたとほぼ同時に、黒い雨が激しく降り注ぐ。

「さてっ!いっくぜぇ~っ♪」

ネスは迫り来る弾丸を器用に剣で弾きながら一気に突っ込んだ。
その行動の奇怪さと速さに、並走していた5台のマシンガンキャリアーは思わず速度を緩めて左右に散開を始める。
ネスは僅かに散開行動の遅れた右端の1台に狙いを定め飛び乗った。

「なにぃっ!?」
「ハロー!そして、グッバイ!」
「げふぅっ!?」

ネスはマシンガンを操っていたガンナーを蹴り落として発砲権を奪い取ると、隣の運転者に剣を突きつけた。

「さてと、運転よろしくネッ♪」
「はっ!はいぃぃ!!」

ネスの狂気を孕んだ【はらんだ】笑顔に完全に恐れをなした運転者は、ネスに言われるがままに運転を続けた。
そして、ネスは奪い取ったマシンガンで残りの4台をあっという間に蜂の巣にした。
ネスが残ったこの1台を強奪するか破壊するかで悩んでいたその時だった。

「・・・このぉ化物がぁぁ!」
「!?」

それを好機と見た運転者が、隠し持っていたハンドガンをネスの顔面目掛けて突き出し発砲した。
乾いた破裂音と供にネスの顔が勢い良く跳ね上がる。
運転者は仕留めたと思い、少しだけ余裕の表情が戻った。しかし、それも長くは続かなかった。

「・・・ったく、ビックリしたじゃねーか!」
「・・・マジ・・・で・・・?」

ネスは発射された弾丸をあろうことか歯で受け止めていたのだ。
ネスは受け止めた弾丸を吐き捨てながら、まるで死人のように青褪めた顔の運転者を睨みつける。

「ハンドガンをいきなり顔面に発砲するなんて、常識の無いヤツだなっ!」
「あっ・・・ああ・・・あぁ・・・あぅ・・・。」
「決めた!これ貰ってくぜ!つーワケで降りろ!」
「うげっ!?」

ネスは運転席でガタガタと身震いをする運転者を蹴り落とすと、運転席に座り込んだ。
そして、荒々しく進路を修正するとラス達を放り投げた地点を目指して速度を上げた。

「じょ、常識の無いヤツはどっちだぁぁぁぁ!」

蹴り落とされた運転者は、走り去る彼女に向け残る力を振り絞り罵声を浴びせていた。