14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

#05

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14sure74

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(た、大変、なんとか助けないと・・・。 でも、どうやって・・・?)

自分よりもずっと大きな岩の陰で、エアは思案に暮れていた。
彼女の姿を探して荒地を歩いていた所、エアの耳に怒声が飛び込んできた。
もしやと思ったエアは声のした方へと足を運び、彼女と彼女を取り囲む男達を目撃した次第だ。

(みんなを連れてくればなんとかなるかもしれない・・・。)

エアは町に戻って協力者を募ることを思いついた。
町の人達は皆、事情を話せば快く手伝ってくれるはずだから、すぐに人手を集められるだろう。
例え一人一人の力は弱くとも、大勢であたれば彼女を助けることぐらいは出来るに違いない。
そう思ったからだった。
だがしかし、エアは行動に移すのを躊躇った。
いくら彼女が下手な旅人よりも強いかもしれないとはいえ、流石にこの状況は無勢過ぎる。
町に戻って人手を集めて再びこの場に来るまで、彼女が無事でいるとはとてもではないが思えなかったからだ。

(でも、なんとかしないと、このままじゃ旅人さんがっ・・・!)

いずれにせよ、このままでは彼女はただでは済まないだろう。
にも関わらず中々名案が浮かばず、エアの心に次第に焦りと苛立ちが募り始めていた。
その時だった。

(あっ・・・石・・・っ!!)

何気なく見た足元に、投げるのに程よい大きさの石が転がっているのをエアは見つけた。
瞬間、エアの脳裏に一つの案が浮かび上がった。

(タイミングよくこの石を投げ入れて、あの人達の気を少しでもそらせることが出来れば、きっと・・・!)

あの囲みさえ脱出できれば、周りは身を隠すのには十分過ぎるほどの岩が聳えている。
夕闇に紛れることが出来るのも相俟って、彼らの追撃を振り切れる可能性は非常に高い。

(よーしっ! そうしようっ! 待っててください、旅人さんっ! 今、助けますっ!)

エアは覚悟を決め、足元の石を拾おうと屈んだ。
その直後、彼女の足元が行き成り闇に包まれた。
不思議に思い、エアは原因を探るべく顔を上げる。

「――っ!?」

すると、そこには・・・。

~~~~

「い、いやぁぁぁぁーっ!!」

突然の悲鳴に、彼女と彼女を取り囲む男達は驚き、一斉に悲鳴のした方へと顔を向けた。
すると大きな岩の陰から、悲鳴の主であろう少女と、続いてなにやら巨大な物体が姿を現した。
巨大な物体はまるで野良猫を捕まえたかのように、少女の首根っこをつまみ上げて仁王立ちをしている。
その異様な光景を目の当たりにして、彼女と彼女を取り囲む男達は暫し言葉を失った。

「痛いですっ、離してくださいぃっ!!」

少女は可愛らしいツインテールを激しく揺らして懇願する。
その悲鳴で我に返った彼女は叫んだ。

「あれっ!? エ、エアッ!?」

そして、同時に響く図太い叫び声が9つ。

「マ、ママッ!? どぉして此処にぃっ!?」

彼らの口から飛び出た、ママというあまりに突拍子もない単語に、彼女は思わず彼らの視線を追った。
彼らの視線の先にあったのは、エアの首根っこをつまみあげ鼻息荒く仁王立ちをしている巨大な物体だった。
見間違いであることを祈るように、彼女は何度も首を動かし視線を追いなおす。
やがて観念したかのように溜め息をつくと、彼女は叫んだ。

「な、なんだってーっ!?」

『新種の巨獣じゃあないのっ!?』と、続け様に叫びそうになった彼女は、慌てて口を押さえた。
巨大な物体は彼女の反応を気にする様子もなく男達を一瞥して、大きく息を吸うと口を開いた。

「外ではボスと呼べと言ってるだろうがっ、こんのドラ息子どもがぁっ!」

重厚感に溢れた張りのある怒声が辺りに響き渡った。
その周囲の岩を薙ぎ倒しそうな迫力の怒声に、彼女は思わず身体を撥ねさせ、男達は悲鳴を上げ慄くおののく
一番近くに居たエアは息を飲み込み、硬直してしまった。

「ひぃっご、ごめんよ、マッ・・・ボスッ!」

慌てて言い直す小太りの男、トゥーニィをひと睨みしボスと呼ばれた巨体は大きく溜め息をつく。

「だいたい、こんなとこでなに油売ってんだいっ! 約束の時間はとっくに過ぎてんだよっ!」
「ひぃっ! だっ! だって、サスーリンとヤエートのヤツがっ!」
「なっ! だから、ワイッチ兄さんがっ!」
「といいますか、”神聖なるアミーダ様”で決めようと言ったのはトゥーニィ兄さんで・・・」
「はぁっ!? ジテン、元はといやぁテメェが誰かが荷物持ちをした方が効率いいって言い出したからだろがっ!」
「それはサスーリン兄さんに言ったことですよっ! そうしたらサスーリン兄さんが・・・」
「だぁって! サスーリン、いっつも重い物ばっか持たされてイヤなんだもぉーんっ!」
「おまぃさん、バカ力しか能がないじゃーんっ!」
「セブナーひどいっ! ヤエートだって居るのにぃっ!」

男達の罵り合い、責任の押し付け合いを黙って見ていたボスは、額に大きな四つ角を浮かべながら怒鳴った。

「だぁぁぁーっ! びぃびぃうるさい子らだねっ! いい加減におしよっ!」

ボスの一喝に、男達は硬直し息を飲み込む。

「それもこれも長男のワイッチ、あんたがしっかり・・・って、さっきからずっとしゃがみ込んでなにやってんだいっ!」

ワイッチはすぐに顔をあげて応える。

「そ、そこの女が俺達の邪魔をしやがったんだよぉっ! 俺達のせいじゃないんだよぉっ!」
「あっ? そこの女だって・・・? 何処に居んだいっ!」
「どっ!? 何処にって、そこ・・・に・・・!? い、居ねぇっ!?」

ワイッチと男達は慌てて回りを見回し、つい先ほどまで取り囲んでいた女の姿を探す。

「あっ!!」

突然、男達の一人が指を指して叫んだ。

「見つけたぞぉっ!」

男の指差した先には、身を屈めて忍び足で歩いている彼女の姿があった。
彼女は身体を大きくびくつかせその場に立ち止まった。

「って、何時の間にその子までぇっ!?」

男は彼女の隣にボスが捕まえていたはずの少女の姿を見つけて驚いた。
その様子にボスは思わず自分の手元を見て、捕まえていたはずの少女が居ないことを確認し、驚愕の表情を浮かべた。

「ありゃあ・・・見つかっちゃったよ・・・。」

彼らが驚愕の表情を浮かべているのを背中に感じつつ、彼女は隣で同じ体勢で立ち止まっているエアに小声で話し掛けた。

「だ、だから、早く逃げましょうって言ったんですよぉ・・・!」

エアは少し鼻声混じりの声で応える。

「い、いやぁ・・・。 カレらのやり取り、聞いていたら結構面白くて・・・ねっ。」
「ど、どこがですかぁっ! 旅人さんのばかぁーっ・・・!」
「・・・ごめん。」

エアが更に言葉を続けようとした瞬間だった。

「なぁにこそこそと話してんだいあんた達っ! こっちを向きなっ!」

ボスの怒声が響き渡り、エアは言葉を詰まらせた。

「・・・捕まって。」
「えっ? ――きゃぁっ!?」

彼女は突然、エアの腕を掴むとそのまま走り出した。
エアは慌てて体勢を立て直す。

「逃がしゃしないよっ!」

ボスは男達を一瞥して怒鳴る。

「あんた達っ! いつまでぼさーっとしてんだいっ! さっさと追いかけるんだよっ!」

ボスの怒鳴り声で男達は慌てて体勢を整え、彼女の後を追いかけた。

~~~~

赤い陽の姿が、殆ど地平線の陰に隠れてしまった頃だった。
食料泥棒の男達『オニマス一家』から逃げていたはずの彼女は、エアの手を握ったまま立ち止まっていた。

「・・・困ったぞ。」

彼女はエアと町を目指して走っていたつもりだった。
町まで行けば少なくともエアだけは助けられると思っていたからだ。
だがしかし、今彼女の立っている場所は・・・。

「・・・これじゃあ、袋のネズミって感じだ。」

黒く乾いた岩壁が上下左右に広がり、大小様々な石柱が彼方此方に立ち並ぶ、洞窟の中の大きな袋小路だった。

「だ、だから絶対ダメですって、言ったんですよぉっ・・・。」

エアは目の前に聳える岩壁に項垂れるように身体を預けつつ、溜め息をついた。

「・・・まぁ、なんとかするよ、エア。」

彼女はエアの頭を軽く撫でて、来た道を振り返る。

「アハハハッ! コイツは傑作だねぇっ! そっちから態々、アタイらの隠れ家へ飛び込んでくれるなんてさぁっ!」

そこには既に、得意気な笑みを浮かべて仁王立ちをするボスと、その子分である男達の姿があった。

「此処が、あーた達の隠れ家、だって・・・!?」

彼女は目を丸くして驚きの言葉を漏らした。

「そうっ! 此処はアタイら『オニマス一家』の・・・って、はぁっ?」

途中で彼女の反応がおかしいことに気付き、ボスは彼女に問い掛ける。

「あんた・・・アホかっ?」
「あっ、酷い! いきなりなんてことっ・・・」
「あの、旅人さん・・・。」

風見鶏ポンチョ
の袖を軽く引っ張られ、彼女はエアの方に顔を向ける。
エアは呆れたような、申し訳なさそうな表情で言葉を続ける。

「最初から所々に灯りが燈っている洞窟なんて、おかしいと思いませんか・・・?」

彼女は暫く呆然と彼女を見つめ、それから辺りをゆっくりと見回す。

「・・・そういえば、洞窟にしては明るい。 これはいったい・・・」
「だ、か、らっ! アタイらの隠れ家だって言ってんだろがっ! ホンット、アホだねあんたはぁっ!」
「むぅっ! アホって言う方がアホなんだよっ! ・・・ね、エアッ!」
「あ、いえ、その、旅人さん・・・。 普通は、疑いますよ・・・。」
「・・・そんなぁ。」

援護をしてくれると思ったエアにまで見放され、彼女はがっくりと肩を落とした。
ゲラゲラと下品な笑い声をあげる男達を、ボスは咳払いで一喝して口を開く。

「さぁてっ! 此処で二人とも死んでもらうよっ!」
「・・・えっ?」

意外そうな表情を浮かべた彼女を、ボスは鼻で笑い飛ばして言葉を続ける。

「もはや生かして帰すワケにはいかないんでねぇっ、こんなことに首を突っ込んだことを後悔しなっ!」
「・・・ちょっと待って。」

彼女はぼそりと呟いた。
その小さく、しかしハッキリとした存在感のある呟きに、ボスは眉をひそめて問い掛ける。

「あっ? 命乞いなんて聞かないよっ!」
「違うよっ・・・いや、違わない? ・・・まぁ、どっちでもいいや。」
「はぁっ? なんなんだいっ! ハッキリおしよっ!」

彼女はボスの激昂を気にすることもなく切り出す。

「・・・あのさ。」

彼女はそこで一旦言葉を切る。
それからエアをすっと抱き寄せると、ボスを真直ぐ見据えて言葉を続けた。

「このコは、見逃してくれないかな?」
「・・・はぁっ?」

彼女のあまりに突拍子もない言葉に、ボスは額にいくつも青筋を浮かべながら答える。

「なにを言い出すかと思えば、よくもまぁこの状況でそんなことが言えたもんだねぇっ! えぇっ!?」
「・・・理由がないと、思うんだ。」
「はっ?」
「このコが、キミ達のために歩くのをやめなきゃいけない理由がないと。 ・・・そう、思うんだ。」

不安そうな表情を見せるエアの髪を優しく撫でながら、彼女は言った。

「歩くのをやめる・・・だってぇ・・・?」

彼女の一言でボスの額に浮かんだ青筋が一気にその数を増し、全身の毛が逆立っていく。
怒りではらわたが煮えくり返っているのが、外からでも分かるほどの殺気を発しだす。

「この後に及んで、なにをワケの分からんことを・・・。 このアタイ、オニマス一家のボス、オニマス=D=アウゼンをバカにしてるのかいっ!」

オニマスと名乗ったボスの怒声が、洞窟を震撼させる。
しかし彼女は視線を逸らすこともせず、エアの肩を抱く手に少し力を入れながら応える。

「バカになんかしてないよ。 ただ、キミ達が歩き続けるのに、このコが歩くのをやめなくてもいいって・・・」
「歩き続けるとか歩くのやめるとか、それが意味分からねぇって言ってんだよっ!!」
「・・・えっ?」

彼女は不思議そうな表情を浮かべ、オニマスに問い掛ける。

「・・・どうして?」
「はぁっ!? どうしてだぁっ?」
「だって、キミ達は今、歩いているじゃない。 この星を、ウエストパンクを歩いているじゃない。 それなのに・・・」
「――かぁぁぁっ! もういいっ! ヤエート、サスーリンッ! アレを引っ張って来なっ!!」

オニマスに一喝され、ヤエートとサスーリンは慌ててオニマスの脇を走り去っていく。
それから少しした後、サスーリンの間延びした叫び声が聞える。

「マッ、ボスぅーっ! 引っ張ってきたよぉーっ!」

サスーリンとヤエートはオニマスの隣に駆け寄ると、手に握った太い鎖を力任せに引っ張る。
すると、重い金属音を鳴り響かせながら大きな鉄格子が姿を現した。
彼女とエアは思わず鉄格子の中に注目する。

「なっ!?」「ひっ!?」

二人は鉄格子の中に生き物を見つけた途端、驚きの声をあげた。
鉄格子の中に居た生き物の名を彼女は目を丸くしながら呟く。

「カイザー・・・ダイノス・・・!?」

カイザーダイノス。
硬い表皮と太く長い尻尾、大きな頭と鋭い爪のある短い手を持つ二足歩行型の巨獣だ。
強靭な顎と鋭い爪の前には、どんな分厚い鋼鉄でさえ意味を成さない。
気性の激しさも相俟って、まさに”皇帝”の名に恥じぬ戦闘能力を持った陸上最強の巨獣だ。

「え、そんな・・・! アレが、あのっ・・・!?」

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