14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

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14sure74

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「・・・と、まぁ、こんな感じでした。」
「ほぉー・・・。」

タクトはラスの話にゆっくり頷きながら相槌を打った。

「で、今に至るワケか。」
「そうです。」
「ふーん・・・。」
(本音の所は、まぁ、アレだろうけどな・・・。可哀想だからあえてスルーしてやるか。)

タクトは腕を組んで、心の中で一度大きく頷いてから口を開く。

「にしても、あの回復力はその頃には既にあったんだな・・・。」
「はい。初めて見た時は流石に驚きましたよ・・・。」
「だろうな。アレを見て、驚かない方がおかしいと思うぜ。」
「なにを見て驚くんだ?」
「なにって、あの回復力・・・ってネスッ!?」

何時の間にか間に入り込んでいたネスの存在に、タクトは驚愕のあまり思わず飛び退いた。

「なんだ、ラスは驚かないのか。」
「ええ、貴女がそろそろ割り込んでくるような予感がしていましたので。」
「ちぇっ、つまんねーの・・・。」
「僕が驚かないのを悟ってタクトさんに狙いを絞ったクセに、よく言いますよ。」
「なーんか最近のラス、ちょっと冷たいぞ。私は悲しいぜー・・・。」

腕で涙を拭う真似をするネスに構うこともなく、ラスは出入り口へと歩き出した。

「あ、コラ、何処へ行く! ラスッ!」
「何処へって閉館ですよ。ネスさん達も早くしてください。」
「分かってるって! つーワケだから、さっさと行こうぜ。タクト。」
「・・・あ、ああ。」

二人のやりとりを呆然と見ていたタクトは、ネスの呼びかけに生返事を返す。
踵を返すネスを見て、タクトはふと先に感じた疑問を思い出しネスに尋ねた。

「・・・あ、そーいや、ネス。」
「なんだ?」
「アンタって・・・料理とか、できるのか?」
「・・・そう見えるか?」

黙り込んだタクトの反応を見て、ネスが振り返り笑顔で答える。

「・・・まぁ、そーいうこった♪ ほら、行くぞ♪」
「あ、ああ・・・。」
(なんか、できそうな気もするけど・・・。多分、気のせいだろーな・・・。)

二人は出入り口で待つラスの元へと駆け足で向かった。

~~~~

「それで、何処でメシを喰うんだ?」
「早速食べ物の話ですか。いつものことながら、よく食べますね・・・ってうわっ!?」
「”育ち盛り”ってヤツなんだよっ。」

ネスは笑顔でラスの首に腕を回して締めあげた。
ラスは両手でネスの腕を叩く。

(なんつーか・・・ネスとラスって猫と飼い主って感じだな・・・。)

タクトが二人の少し前を歩きながら、二人の関係を揶揄していた時である。

「きゃぁぁぁーっ!」
「――うおっ!?」

突然、前方からタクト達に向かって黄色い悲鳴が聞こえ、タクトは発声源を注視する。
そこには桃色の髪と腰まで垂れた青く長い鉢巻、金色の縁取りがされた白いローブを纏った女性がいた。
彼女は緑色の瞳を潤ませ、黄色い悲鳴をあげながら人並みを掻き分け走り寄ってくる。
タクトは彼女の視線が誰に向けられているかをそれとなく確認してみた。

(・・・キ、キターッ!! ついに、俺にも!!)

彼女の視線はほぼ間違いなく自分に向けられている。
そう考えたタクトは歓喜に奮える身体を抑え、平素を装った。

(身長は俺と同じぐらいで・・・かなり可愛い・・・!!)

間近に迫った彼女を見て、タクトは思わず生唾を飲む。
彼女は抱きつくつもりなのか、両手を前に広げていた。

(うおっ!? 積極的だぜ・・・。)

タクトは自ら駆け寄って抱きしめたい衝動を抑え込み、彼女が抱きついてくるのを待った。
彼女とタクトとの距離が手を伸ばせば届く範囲まで迫る。

(・・・さぁ、思いっきり、飛びついてこ・・・い・・・!?)

しかし、タクトの思っていた結果は訪れなかった。
直後、真後ろで聞える黄色い悲鳴と驚愕の悲鳴。

「ラスちゃんっ! 逢いたかったよぉっ! うぇぇんっ!!」
「ちょっ! ちょっと! やめてくださ・・・痛い! 痛いですってっ! ひぎぃ!!」

タクトは振り返り、呆然と立ち尽くす。
彼女は泣きながらラスをきつく抱きしめていた。
タクトは一瞬、ラスの’先生’の件を思い出したが、今回は正真正銘の女性である。
また、アスの件とは違い、彼女は一見する限りでは戦士には見えない。

「あー・・・つまり・・・その・・・ラスの・・・カノジョって・・・ヤツ・・・?」
(か・・・神よ・・・。俺・・・なにか、悪いこと・・・あ、しましたか。そうですか。)

この状況、あの台詞。
それらから察するに、彼女はラスのカノジョなのだろう。
タクトはそう考え、無意識の内に強く拳を握り締めていた。

「は、恥ずかしいですって! いい加減、離してくださいよっ! 義姉【ねえ】さん!」
「いいじゃないのっ♪ ラスちゃんと、私の姉弟愛は絶対無敵なのよっ♪」
「そう・・・か・・・ラスの・・・カノジョ・・・は・・・姉さん・・・で・・・。・・・・・・って、えぇっ!?」

タクトは次いで襲ってきた驚愕の事実に、タクトは身体を思わず撥ねさせた。
それから、タクトは一度大きく深呼吸して状況を整理してみる。

(えっと・・・つまり・・・彼女はカノジョではなくて・・・姉さんなんだな・・・。)
「・・・・・・なんだ。ビックリ、させやがって・・・。」

タクトはほっと胸を撫でおろした。

「・・・相変わらずだな、ハル。」

隣でその光景を暫く笑顔で見ていたネスが彼女に話しかけた。
ハルと呼ばれた彼女は、ラスに抱きついたまま、ネスの方に振り返って応える。

「あら・・・ネスちゃんじゃないの。貴女も相変わらずねっ♪」
「ああ、お蔭様ってヤツだなっ♪」

ハルの笑顔にネスは笑顔で応えた。

(しかし、ラスにあんな奇麗な姉が居たなんて・・・って、えっ?)

ハルの様子を見ていたタクトは、突然身の毛が弥立つ【よだつ】のを感じ立ち竦んだ。
ハルの笑顔が、恐ろしく冷たい殺意に満ちた気配を発していたからだった。
それに応えるネスの笑顔も冷たい物であり、タクトは思わず目を擦って見直す。

(・・・気のせい? ・・・気のせい、だよな・・・。)

タクトが再び見た二人の笑顔は、とても明るく暖かい、素敵な笑顔であった。
タクトは深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、彼女らの間に割って入ることにした。

「あのさ。」
「・・・はい?」
「ラスが真っ白なんだが・・・。」
「・・・きゃああああああああぁぁっ! ラスちゃぁぁぁんっ!」

ハルはぐったりとしているラスの身体を、泣きながら激しく揺さぶる。
ネスはその様子を呆れたような表情で見ていた。

(こいつは、女難の相ってヤツだな。まぁ、ガンバレ、ラスよ・・・。)

タクトは胸元で小さく十字を切った。

~~~~

それからタクト達はラスの義姉、ハイン=M=フランドールことハルの自宅に招かれた。
ハルの自宅は中央輝石研究所と国立資料館の中間ぐらいの、大きな街道沿いにある3階建ての白塗りの建物だった。
1階部分は嘗ては輝石屋であった場所で、今は車庫として使える空間になっている。
タクト達はボックスカーゴを車庫に停め、2階の居間へと上がった。
そこでタクト達は四人掛けの丸い机に腰掛け、ハルの用意した食事をとっていた。

「食事を用意してくれるだけでもありがたいのに、そのうえ泊めて頂けるなんて・・・。すみません、義姉さん・・・。」
「なに言ってるのよっ♪ 私の家は、貴方の家でもあるんだから当然じゃないの♪」

ラスの向かい側の席に居たハルは、頭を下げようとするラスの額に手を当て、ウインクをしてみせる。

「・・・しかし、ラスに姉が居たなんて驚きだぜ。教えてくれても良かったじゃんか。」
「そう言われましても、話す機会が中々見つからなかったですし・・・。」

ラスの隣に居たタクトは、ラスの脇腹を小突いた。
ラスは困惑混じりの笑顔を見せ、軽く頭を掻く。

「それに、姉といっても血は繋がってないですよ。」
「へー、義理の姉なのか・・・。・・・なにぃっ!?」

ラスが重大な事実をあまりに平然と言うので、タクトはつい流されて納得してしまう。
しかし、すぐにそのことの重大さに気付き驚愕の声をあげた。
ラスとハルは驚愕の視線をタクトに向ける。

「・・・あの、タクトさん?」
「血が繋がってないって・・・! つまり、そのっ・・・!」
「ラスちゃん・・・。タクト君って、いつもこんな感じなの?」
「い、いえ・・・そういうワケではないですよ・・・。」
「・・・そう、なの。」

ラスの心配そうな視線と、ハルの呆れたような視線に気付き、タクトは我に返った。
タクトは態と大きな咳払いをして、流れを変えるため別の話題を切り出す。

「それで、えっと・・・。」
「ハインでも、ハルでもいいわよ。タクト君。」
「・・・ハルさんはずっと”都”に住んでるの?」
「ええ。昔はラスちゃんも一緒に住んでたけど、ラスちゃんったら突然一人で住むと言って飛び出してったのよ・・・。」

机の上にのの字を書きながら顔を俯かせるハルに、ラスは思わず口を挟んだ。

「義姉さん、僕は飛び出していったワケではないですよ・・・。その証拠に時々顔を出しに戻ってますし、手紙も出したじゃないですか。」
「でもネスちゃんと旅をするようになってからは、手紙すらよこさなくなったじゃないのっ。」
「そ、それは・・・その・・・忙しすぎて・・・つい・・・。」
「酷いっ! ラスちゃんは私なんかより、ネスちゃんの方がいいのねっ!」

顔に両手を当て泣くハルに、ラスは困惑する。
その時、黙々と食事をしていたネスが無言で席を立った。

「・・・ごっそさん。」
「あ、ネスさん。何処へ?」
「・・・下さ。食後の運動ってヤツだ。・・・ハルもどうだ?」
「・・・いいわね、付き合うわ。」

ネスはハルの返事を聞くと含み笑いを見せ、何も言わず居間から出て行く。
ハルは涙を拭ってから席を立ち、自分とネスの食器を片付ける。
それから、ラスの脇を通り過ぎるついでに頭を撫でて、ネスを追いかけた。
二人が居間から出て行った後、タクトは一度溜め息をついてからラスに話しかけた。

「・・・あのさ、ラス。」
「・・・あんな感じですが、義姉さんは協会内ではかなり偉い人なんですよ。」
「いや、そうじゃなくて。・・・まぁ、それも聞こうとは思ってたけど。・・・ハルさんとネスってさ。」
「・・・・・・そう、ですね。・・・あまり、仲は良くないと思います。」
「そうか・・・気のせいじゃ、なかったんだな・・・。」

タクトはハルの笑顔に感じた殺意や、黙々と食べているだけだったネスの態度から、二人は不仲ではないかと考えていた。
タクトはラスの反応を見て、自らの考えが当たっていることを確信した。

「・・・て、そんな仲の良くない二人をあのまま行かせてよかったのか?」
「多分、大丈夫ですよ。二人とも、特に義姉さんは僕に気を使って、仲が良さそうに振舞ってくれていますし・・・。」
「・・・そう、だな。」

二人はラスの前では不仲であることを隠そうとしているのだ。
従って、無闇に表立った行動をとることはしないだろう。
ラスとタクトは同じ結論に達し、同時に溜め息をついた。

「・・・でだ。どうして、二人は仲が悪いんだ?」
「そうですね・・・。多分、義姉さんの職業が関係してます。」
「職業? ・・・リンカー協会でもかなり偉い人って言ってたよな。」
「はい。義姉さんは、協会の治安部隊を統括する部門の部長で、この”都”を守る治安部隊の隊長です。」
「そ、それって・・・ことは・・・。」
「ネスさんは、義姉さんにとっては、彼方此方で次々と騒動を巻き起こす犯罪者です。」
「そう、なるよな・・・。」

二人の関係は例えるならば、凶悪犯罪者と警察署長である。
そんな二人の仲が良いワケがない。
タクトは大きく頷き、自らの考えに納得した。

「しかも、その”犯罪者”ネスは、大好きな義弟【おとうと】を、その騒動に巻き込んでるんだよな・・・。」
「そう、なりますね・・・。しかも、挙句の果てには僕に無許可の輝石実験までさせました。無許可の輝石実験は重罪です・・・。」
「それじゃあ・・・。実は今すぐにでも処刑したいぐらい嫌ってても、不思議じゃねーな・・・。」

タクトの言葉を、ラスは無言で肯定する。

「・・・何事もなきゃいいな。」
「はい・・・。」

二人は窓から外を眺めた。
窓の外では依然として雨が降り続いていて、漆黒の闇をより黒く染めていた・・・。
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