14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #11 > パートE


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「――そろそろですわね。」

深夜、格闘大会の余熱が冷めた頃、ゲル・ドラン国境付近の路肩にアスは居た。
大きく緩やかな曲線を描く道の両側には、人気のない施設が軒【のき】を連ねていた。
アスが腕を組んで立っていると、一対の灯りが近づいてくるのが見えた。
灯りの主、ボックスカーゴがアスの目の前で停車する。
停車したボックスカーゴの運転席から降りてきたのはラスだった。

「お待たせしました。すみません、思ってたよりも準備に時間を取られまして・・・。」
「き、気にしておりませんわっ!わわ、私も今来たとこっ・・・!?」
「・・・えっ?」
「ななっ、なんでもありませんわっ!!」
(うわああーっ!何を言っているんですの私っ!『今来たところ』という台詞は待ち合わせの時の台詞ですわぁっ!!)

アスは頭から湯気が出そうなぐらいに顔を真っ赤に染めて、ラスに背を向ける。
アスの不可解な行動に首を捻っているラスの代わりに、助手席から降りてきたタクトが本題を切り出す。

「・・・そろそろ、ネスが脱出してくる時間だな。」
「そっ!そうですわねっ。・・・って、貴方は、えっと・・・その・・・。」
「・・・やっぱ、ラスしか見えてませんでしたか、そうですか。」

ばつの悪そうな顔をするアスに、タクトは呆れ顔で軽く自己紹介をする。
そして、小さな溜め息を1つして、脱線した話題を元に戻した。

「でだ。もうじき時間なワケだが、準備は?」
「いつでもよろしくてよ。」
「・・・そっか、じゃあ頼んだぜ、アス・・・いや、アメリアさん。」

タクトはアスの冷たい視線に身の危険を感じ、あだ名で呼ぶことを躊躇った。
アスは笑顔で頷くと、ウエストポーチのような物から輝石を1つ取り出す。
アスの掌で一瞬だけ淡く光った輝石は、細長くて丸い物体へと変化した。

「バ、バズーカ!?」
「・・・『ばずーか』?コレはそんな、ヘンな名前ではありませんわよ?」
「えっ!?・・・あっ!あぁっ!?・・・えーっと・・・」
「ハッ!ハンドカノンですよねっ!アメリアさん!!」

タクトの正体を隠しておきたいラスが、半ば強引にフォローに入った。
アスはもう少し問い詰めたかったが、彼に与える心証を考え引き下がることにした。
アスはハンドカノンの引鉄を左手に持ち、本体を肩に担いで固定する。
そして、曲線の出口付近にある小高い塀に囲まれた、一見すると単なる教育施設のような建物に狙いを定めた。

「・・・さて、本選の借り、返させて頂きますわっ!!」

アスは怨みを込めて引鉄を引いた。
小さな爆発音と供にハンドカノンの後方から煙が噴き出す。
その直後、轟音と眩い閃光を発して件の建物の一部が倒壊した。
アスは間髪入れず再度引鉄を引く。
ハンドカノンは再び件の建物の一部を倒壊させた。
アスはハンドカノン用存在可能時間延長の輝石を、右手でハンドカノンに使用しつつ何度も引鉄を引く。

(ちょっ!アメリアさん!それやりすぎじゃね!?)
(あの・・・。それは少し、撃ち過ぎかと・・・。)

アスは底知れぬ恐怖を湛えた笑顔で引鉄を引き続ける。
その様子に気圧され、タクトとラスは思いを口にすることができなかった。
建物周辺の空に赤い滲みを一頻り作った頃、その滲みを背に三人の元へ何かを怒鳴りながら人影が近づいてきた。

「おいコラ、アス!!やりすぎだぞ!!アンタ、私ごとぶっとば・・・」
「15秒早いですわっ!大方、我慢しきれず勝手に仕掛けたのでしょう!?気配で分かりますわっ!!」
「・・・わりぃ。」

ネスは自分の抜け駆けをずばり言い当てられ、苦笑いで謝る。

「まっ、その、なんだ。そのお詫びっちゃぁ・・・なんだがよ。」

ネスはラスとタクトの乗ったボックスカーゴの後部座席に入り込みながら目配せをする。

「・・・今回だけは、大目に見て差し上げますわ。」

アスは最後部座席裏の荷物置き場に陣取り、最後部の扉を開け放つ。

「うっし!全速力だ、ラス!」
「了解です!後ろ、頼みますアメリアさん!」
「よろしくてよっ!」

ラスは思い切りアクセルペダルを踏み込み、ボックスカーゴを発車させた。
その直後、後方から追いかけてくる幾つもの前照灯の光と鉛の弾。

「うふふっ♪狙い撃ちですわっ♪」

アスはハンドカノンを傍らに放り棄てると同時に、別の輝石を発動させる。
一瞬で形を変えたそれは、銃架付きのマシンガンだった。
アスが引鉄を引くと、耳を劈く連射音と甲高い衝突音がカーゴ内に響き渡る。
その音が収まる度、後方から追いかけてくる前照灯の数が2つ、4つと消えていった。

~~~~

「――えっ!?そ、そんなっ!!」

国境付近の施設街を、国外方面へと抜け出たラスは自分の目を疑った。
目の前の草原地帯には何時の間に回り込んだのか、後方からしつこく追いかけてくる者と同種の気配を纏った者達が待ち伏せていた。
ラスは思わず速度を落とそうとする。

「速度を落とすな!最高速度で突っ切れラス!」

ネスの怒号に促され、ラスは再び強くアクセルペダルを踏み込む。
ボックスカーゴは最高速度で、前方の待ち伏せしていた者達の中に飛び込んだ。
大型、超重量の凶器と化したボックスカーゴに、彼らは思わず道を開ける。

「――うっし!行くぞ!アス!!」
「貴女の指図は受けませんわ!でも、此処は私も行きますわ。」
「えっ!?行くって、何をしに行くんですか!?」
「ここいらで決着を付けてくらぁっ!国境出た辺りで待っててくれ!じゃっ!」
「あっ!ちょっと!二人とも、待って下さいよーっ!!」

ラスの制止も聞かず、二人はボックスカーゴから飛び降りる。
そして、慌てて追撃をしようとする者達に向かって強襲を開始した。

~~~~

「・・・さて、と。全部片付いたな。」
「そうですわね・・・。」

あれから1時間弱。二人の周りには動かなくなった人の丘が幾つも形成されていた。
二人は同時に深呼吸をして向かい合う。

「・・・じゃっ、やりますか?」
「あらっ?あちらの世界へ持っていくお土産を買う時間は、要らないのかしら?」
「そーだなぁ・・・。アンタが私より強かったって話題だけで十分だぜ。・・・ま、その必要はねぇと思うが。」

二人は不敵な笑みを浮かべながら其々の武器を構える。

「・・・恨みっこなしだぜ?疾風銃狂!!」
「その言葉、そっくりお返し致しますわ!化物人間!!」

アスは後方へと飛び退きながら、両手に持ったハンドガンを交互に連射する。
ネスは避け切れなかった物を剣の腹で受け止めつつ、左右に素早く移動しながら突撃する。
瞬く間に至近距離へと近づかれたアスは、彼女の予想以上の速度に驚愕しながらも、水平に走る剣閃を紙一重で避ける。
そして、ネスが次の攻撃を放つよりも早く、ハンドガンの銃口を向け引鉄を引く。
ネスは攻撃の中断を余儀なくされ、舌打ちをしながら一旦距離を離す。
両手のハンドガンを投げ棄てたアスは、アサルトガンの小型版、ショートアサルトガンを召喚する。
ショートアサルトガンの火線が、不規則な軌道で逃げるネスを追いかける。
その隙にアスは空いた右手に散弾を撃ち出すガン、スプレッドガンを召喚した。

「――貰いましたわっ!」
「ちぃっ!?」

ネスをショートアサルトガンで真正面へと誘導したアスが、右手のスプレッドガンの引鉄を引いた。
無数の鉛弾が一斉にネスへと襲い掛かる。
ネスは剣を高速で回転させ、直撃軌道上の弾を全て叩き落す。

「・・・って、おい!マジかよっ!」

ネスが鉛弾を叩き落していた間に、アスはアイアンカノンの発射準備を整えていた。
アスは勝ち誇った笑みを浮かべ、引鉄を引いた。
轟音と供に発射された、拳よりも大きな鉛弾が牙を剥く。

「――なっ!?なんですってぇっ!!」

ネスは剣の腹で鉛弾を受け止める。
そして、そのまま力づくで剣を振り抜き鉛弾を打ち返した。
打ち返された鉛弾は、アスの顔を掠めるように飛んでいった。

「でっ、出鱈目ですわぁっ!!」
「うるせー!至近距離からあんなもんぶっ放してくるようなヤツに言われたくねぇー!!」

ネスはアスが愕然となっていた隙に懐へ飛び込み、渾身の連撃を浴びせる。
虚を突かれるような形になったアスは、捌きながら慌てて次の一手を考える。

「コレで、終わりだっ!!」
「くぅっ!!」

ネスは剣を袈裟懸けに振り下ろす。
しかし、アスの身に刃が触れるか触れないかの位置で剣は突然止まった。

「・・・いやぁ~参ったぜ。まさか、ハンドガンを自作してるとはなぁ。」

アスの左手には銀色のハンドガンによく似た物体が握られていて、ネスへと向けられていた。

「・・・で、どーすんだ?引き分けにすっか?」
「・・・そうですわね。」

二人の間に冷え切った空気が漂う。

「決めましたわ。私は・・・。」

アスは一度言葉を切って、呼吸を整えてから言葉を続ける。

「勝ちたいですわっ!!」「奇遇だなっ!!」

二人の声がほぼ同時に響き渡り、乾いた音と肉が切られる音が鳴った。

~~~~

「・・・んっ・・・・・・んんっ・・・・・・。」
「おっ、二人とも気がついたか。」
「・・・タクト!?――ぐっ!?」「・・・タクトさん!?――づっ!?」

ネスとアスは同時に上半身を起こすと、痛みを感じた部分を手で押さえて再び横になる。

「無理に動かねぇ方がいいぜ、ラス曰く『息があるのが奇跡』ってヤツだからな。」

それから、タクトは現在に至るまでの経緯を説明する。
あの後、中々合流場所に来ない二人を心配したラスは、タクトを連れ二人と別れた所まで引き返した。
そこで二人は、瀕死の重傷を負って倒れている彼女達を発見した。
ラスは手馴れた様子で応急手当てを施すと、タクトと協力して二人を最後部座席を倒して作った場所へと固定する。
そして今、都方面に医療施設を探しながら移動している最中であった。

「・・・そっか。やっぱ、あの後私も倒れたのか。くそー・・・もうちょっとで私の勝ちだったのに。」
「あらっ、違いますわよ。あの時はもうちょっとで私の勝ちでしたわ。」
「・・・なんだと?」「・・・なんですの?」

二人を取り巻く空気が、急激に温度を下げ蜷【とぐろ】を巻いていく。
しかしその時、ボックスカーゴが大きく撥ね二人の身体を僅かに宙に浮かせる。

「・・・ああ、すみません。この辺りはあまり整備されてないせいか、おうとつが激しくて。」

運転席からラスは二人に謝罪の言葉を述べる。
しかし、そこには全くと言っていいほどに感情が篭っていなかった。

「ラスっ!アンタ、態とやりやがったなっ!!」「ラスさんっ!態とやるなんて酷いですわっ!!」

二人は傷口を押さえながらラスに食って掛かる。
ラスは言葉を返す代わりに、更に数回ボックスカーゴをおうとつに乗り上げさせた。

「わっ!分かった!引き分けってことにしとくからよっ!!」
(ラスぅ~・・・後で覚えてろぉ~・・・。)
「わっ!私も!そういうことにしますからっ!お願いですわっ!!」
(あっ、でもラスさんにならもう少し苛められ・・・って何を考えているんですのっ!?わ、私はノーマルですわっ!?)

ラスの実力行使に、堪らず二人は休戦をラスに誓った。

(全く、貴女達は本当に生きているのが不思議なくらいの重傷者ですよ。後少しでも処置が遅れていたら二人とも・・・。)

ラスはバックミラー越しに二人の様子を確認する。
最後部は内外の光を遮断していたため薄暗く、二人を表情までは確認することができなかった。
しかし、二人を取り巻いていた不穏な空気は消えているようで、ラスは安堵の溜め息を漏らす。
そして当初の予定通り、二人の傷を気遣い、できる限りおうとつの小さな場所を走ることにした・・・。

~つづく~