14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #07 > パートB


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「――ネスさん、そんなこと大声で言わないでくださいよ。恥ずかしいではありませんか。」
「いいじゃん、実際ハラ減ってんだし。」

ラスは周囲の反応が気になって周りを見回してしまう。
しかし、あまり人気の無い集落のおかげか彼女の大声に反応する者は居なかった。
ラスは大きく溜め息をつき、先に進んでしまったネスを小走りで追いかける。

「おっ、此処の住人発見っ♪おーい!」
「・・・とは言ったけど、どうしよう・・・どうやって・・・連れて行けば・・・・・・」
「おーい?」
「・・・でも、やっぱり・・・私は・・・」
「なーに、一人でぶつぶつ言ってんだ?アンタ。」
「――っきゃぁぁああ!?」

ネスの存在に気付いた少女は、幽霊でも見たかのような表情で驚愕の声をあげた。
その様子にネスは思わずたじろいでしまう。

「なんだ?なんだ?どうしたってんだ?」
「・・・あっ、ご、ごめんなさい!ビックリしたもので、つい・・・。」
「そっか。・・・なぁ、アンタ。この辺で旨い飯喰えるトコ知らね?」

ネスは少しだけ前屈みになって少女に問い掛ける。
近くで見るととても強烈な印象を持っている右目の刀傷が、少女の身を僅かだが戦慄かせていた。

「えっ!えっと・・・その・・・それは・・・」
「おっ!?知ってんのか!?早く、早く教えろって!」

ネスはずいずいと詰め寄り、少女はそれに合わせて一歩ずつゆっくりと後退していく。

「そ、その・・・ですね・・・えっと・・・・・・」
「いーじゃん、減るもんじゃねーんだし、もったいぶらず教えろって!なっ!?なっ!?」
「・・・ネスさん!」

少女に詰め寄るネスの後ろから声がして、彼女の首がぐいっと上がる。
ラスが彼女のアンダーテイルを掴んだのだった。

「・・・ッテェーな!ラス!コレは引っ張る所じゃねーぞ!!」
「すみません。僕の知り合いが怖がらせてしまったみたいで・・。」
「あっ・・・、いえ。大丈夫です。」
「おい、こらっ!私を無視するたぁいい度胸だなラァースッ!」

ラスの申し訳なさそうな笑顔に、少女は思わず視線を背けながら答えた。
ラスは一度深く頭を下げると、後ろで騒いでいる彼女を気にすることなく言葉を続けた。

「それで、先ほどの彼女の質問なのですが。もしご存知でしたら教えていただけますか?」
「あ、はい。・・・でしたら、私が働いている宿に来てください。その、探してた泊まる場所も用意できますし・・・。」
「えっ?僕はまだ、泊まる場所を探してるとは・・・・・・。」

ラスの指摘に少女は慌てて口を紡ぐ。
その様子にラスは疑問を感じ、少女に少し事情を聞いてみることにした。

「どうして、貴女は・・・・・・うわっ!?」
「なぁっ!アンタんトコ、飯が旨いのか!?」

事情を聞こうとしたラスを後ろから強引に払いのけて、ネスが少女に問い掛ける。
その眼はキラキラと輝き、期待に満ち溢れていた。

「・・・えっ、あ・・・はい!自信あります!」
「よーし!早速行こうぜ!ラス!」
「でもネスさん、彼女は・・・」
「どーだっていいじゃねーか、旨い飯にありつけるんだぜ?」
「そういう問題では・・・分かりました。そうしましょう・・・。」

ネスの殺気だった視線にラスは反論する気力を殺がれ、彼女の意見に従うことにした。
ネスはラスと少女の手を引いて意気揚々とタクトの待つライトカーゴへと戻った。

「・・・で、その宿に向かうんだな?」
「おう!ようやく、飯が食えるぜ♪」

少女に助手席を譲るため後部座席に移ったタクトにネスは心底嬉しそうに話した。

「では、案内をお願いします。・・・あ、申し遅れました。僕はラグ=F=アルガスと言います。ラスと呼んでください。」
「あ、はい。私、ミリアリア=C=エルチと言います。」
「私、ネス。で、こっちがタクト。よろしくなっ♪」
「えっ、あ、はい。よろしくお願いします。ラスさん、ネスさん、タクトさん。」

4人は其々軽く自己紹介をした後、ミリアリアの案内で彼女の勤める宿へとライトカーゴを走らせた。

「ほー、如何にも『由緒ある』風の宿だなー。」
「風情があっていい感じですね。ミリアリアさん。」

ラスとタクトは宿の外観を見上げながら感心の言葉を漏らした。

「ありがとうございます!気に入っていただけたようで良かったです♪」
「いいから、早く飯喰わせてくれよぉ~ミッチ・・・。」
「えっ?ミッチ・・・って?」

ネスはきょとんとするミリアリアを指して答えた。
ミリアリアは初めての呼ばれ方に少し戸惑った物の、悪くない呼び名だと思ったので何も言わないことにした。
タクト達はミリアリアの案内で宿の中へ通された。
外観と同じぐらいに内装も年季が入っており、この宿がこの地に古くから存在するものであることを示していた。
それでいて古臭い感じがしないのは、この宿のマスターを始め従業員一同が日夜保全に努め続けていたからに他ならなかった。

(すげーな・・・よく見ないと分からないように修繕や補強の跡が隠されてる・・・。)

タクトは今までに見たことがない雰囲気の内装に興味を惹かれ、きょろきょろと辺りを見回していた。
その様子を見ていたミリアリアに失笑されてしまい、タクトは恥ずかしくなり頭を掻いて誤魔化した。

「では、皆さん。此方でお待ちください。早速、用意してきますね♪」
「おう!期待してるぜっ♪」

タクト達を食堂へと通し、ミリアリアは笑顔で退室する。
ネスは満面の笑みで手を大きく振り彼女を見送った。

(いくら集落のためと言っても・・・あんないい人達を犠牲にするなんて、やっぱり私には・・・。)

ミリアリアは一人、料理を作りながら厨房で溜め息をつく。
火にかけられた鍋が、彼女の煮え切らない気持ちを表すかのようにコトコトと静かに音を立てていた。
その厨房にマスターが入ってくるなり、ミリアリアを呼び付けた。

「その・・・やっぱり・・・やるんですか?」
「ああ。・・・なに、お前はコレを彼らの食べる料理に混ぜてくれるだけでいいんだ。」

マスターの手に握られていたものは、中に透明の液体が入った紫色の小さなビンだった。
マスターはそれをミリアリアに手渡す。

「・・・これは?」
「ただの眠り薬さ。コレで、いつもより少しだけ深く眠ってもらう。」
「・・・それで、どうするつもりですか?」
「よく眠ってる所を縛って連れてくのさ。これならあまり乱暴な手じゃないしな・・・。」

マスターはまだ何かを言おうとしていたミリアリアを目で制すと、厨房から立ち去った。
ミリアリアは呼び止めようとしたが、その背中が少しだけ震えているのを見て声を掛けるのを躊躇って【ためらって】しまった。

(マスターも・・・本当は・・・・・・。)

ミリアリアは彼も苦渋の決断をして、必死に罪悪感と戦っていることを知り覚悟を決めた。

~~~~

「おおーっ!コレは美味しい!」
「確かに、上品な味わいですし、香りもいいですね。これほど美味しい物を頂くのは久しぶりです。」

ミリアリアの運んできた料理に待ってましたと飛びついたタクト達は舌鼓【したづつみ】を打った。

「くぅぅ~!うめぇ~!ミッチ!これ、アンタが作ったのか?」
「はい、そうですよ。」
「アンタ、スゲーな!これだけウマいモンなら100杯でもイけるぜ♪」
「ありがとうございます!そういってもらえると嬉しいです♪」

ネスは出された料理を片っ端から流し込むように頬張る。
ミリアリアはその様子に唖然となりながらも、屈託の無い笑顔を見せるネスに釣られて笑顔を見せた。

「・・・さて、夕食も頂いたことですし、僕は必要物資の購入計画を立てて・・・・・・。」
「あっ!ラス!?」

席を立とうとしたラスが突然バランスを崩す。
タクトが慌てて席を立ち、ラスの身体を押さえて体勢を立て直させた。

「タクト――・・・」

その時である。席を立ち擦れ違うタクトに隣に居たネスが何かを耳打ちをした。
タクトは彼女の真意までは分からなかったが、これまでの付き合いから何か考えがあることを悟り従うことにした。

「おい、ラス。大丈夫か?」
「すみません、タクトさん・・・。何故かは分かりませんが、突然眠気が・・・。」
「きっと、久しぶりに美味しい料理を食べたから、安心して今までの疲れが一気に出たんだろ?今日はこのまま寝てしまおうぜ?」
「ですが・・・・・・そう、します・・・。」

ラスは大きな欠伸をしながら、タクトに肩を借りてフラフラ歩き出した。

「う~~~~ん!!久しぶりに旨いもん喰ったし、私も寝るかな~・・・。ミッチ、私らの部屋何処?」
「あ、はい。ご案内します。ついて来てください。」

タクト達は軽く身支度を整えると、ミリアリアの案内で食堂を出て2階へと向かった。

「ネスさんは此方の部屋で、その向かい側がタクトさんとラスさんの部屋になります。」
「ん?別に3人一緒でも構わな・・・いや、分かった。じゃ、ネス。また明日な。」
「・・・食堂に置いてある皆さんの荷物は部屋まで運ばせますね。では、ごゆっくりどうぞ。」

細い通路を挟んで向かい合わせの部屋にタクト達は別れて泊まることになった。
部屋の中には、小さなクローゼットが1つとこれまた年季の入った古い木製の机とベッドが2つ並んでいた。
壁にはランプが掛けてあり、若干暗い物の柔らかくて暖か味のある光が部屋全体を照らしていた。
タクトはもう殆ど意識の無いラスをベッドに降ろす。
ラスは小さく謝罪と感謝の言葉を述べると、すぐにベッドへ潜り込み寝息を立ててしまった。
タクトはその様子を見た後、一息ついてから部屋を出る。向かう先は――。

~~~~

「・・・さてと。ミリアリア、様子を見てきてくれ。私はもう少し人手を集めてくる。」
「分かりました・・・。」

外が木々のざわめきだけが支配する漆黒の空間になった頃、マスターの指示でミリアリアは2階へと向かう。
タクト達が熟睡していることを確かめ、ネスを連れ去ることができそうかを確かめるためであった。
マスターはこの間に、もし当てが外れ強行手段を採ることになった場合を考え集落の若者達を集めに出ていた。
ミリアリアはゆっくり階段を上り、ネスの寝ている部屋の扉をそっと開けた。

(ぐっすり寝てるみたい・・・これなら・・・)
「・・・『よかったぁ~!ぐっすり寝てるみたい、これなら乱暴なことしなくてすみそうだわ♪』とか、思ってるだろ?」
「!!??!?」

ミリアリアがベッドで彼女が寝息を立てているのを確認し、部屋から立ち去ろうとした時であった。
寝ている物と思っていたネスの声がし、ミリアリアの身体が大きくびくついた。
ミリアリアが慌てて振り返ると、ベッドの上で胡坐【あぐら】をかいて悪戯な笑みを浮かべているネスの姿があった。

「ネ!ネスさっ!!・・・うぷっ!?」
「バカ!大きな声を出すなって!」

思わず驚愕の声を上げようとしたミリアリアを、ネスが素早く近づき口を押さえて宥める。
ミリアリアは咄嗟にネスの腕をどけようとするが、彼女に自分を襲う意思がないことを悟るとゆっくりと腕を下ろした。

「ミッチ、アンタマジでスゲーよ。眠り薬の味が完全に消えてやがった。効いてくるまで気付かなかったぜ。」
「効いてくるって・・・ネスさんは人一倍食べてたはずなのに、何で起きているんですか?」
「ふふんっ♪化物人間【ヒューマノイドモンスター】たるもの、あんぐらいの眠り薬で参ってどうするよ♪」

ネスは得意げな笑顔で胸を張って見せた。
ミリアリアはネスのあまりに常識離れな答えに呆気にとられ、何も言うことができなくなってしまった。

「・・・でだ。ミッチ、アンタに協力してほしい。」
「逃げ出すお手伝い・・・ですか?」
「おいおい、逃げるなんて言葉、私の辞書には・・・あるな。まっ、今回は逃げねぇーよ。」
「えっ・・・では、何を手伝えばいいんですか?」
「私をこのまま、アンタらが連れて行こうとしてるトコへ連れてくんだ。」
「えぇっ?」

ネスの顔が急に真剣な物に変わる。

「そんで、アンタは頃合見計らってタクトとラスの部屋へ様子を見に行ってくれ。その後のことはタクトに全部話してある。」

ミリアリアは彼女の意外な申し出に反論しようと思ったが、その表情を見て躊躇ってしまう。

「誰にかは知らねーが、脅されてんだろ?大方、私をソイツの元へ連れて行かなきゃ皆殺しにされるってトコか?」
「ど、どうしてそれを・・・!?」
「やっぱりな。私を見るアンタらの視線がどっか殺気立ってたもんな。まっ、私を連れてけばすぐに皆殺しにされることだけは防げるだろ。」
「そんな・・・私達のために態と捕まるなんて・・・どうしてです?」
「そうだなぁ・・・。旨い飯を食わせてくれた礼ってトコだなっ♪」

ネスの笑顔にミリアリアは目の前が明るくなるような感覚を覚えたが、彼女があくまで部外者であることを思い出し顔を俯かせてしまう。

「お気持ちは・・・嬉しいです・・・。でも、やっぱり、貴女には関係ないことですし・・・。」
「・・・それが、大有りなのさ・・・。」
「えっ?それはどういう・・・・・・。」

ネスの言葉に疑問を持ったミリアリアだったが、同時に彼女が見せた眼に凍り付くような殺意を見てしまう。
ミリアリアはあの男とは少しだけ感覚は違うけど、あの男の眼から感じたのと同じぐらいの恐怖を感じ硬直してしまった。

「兎に角、頼んだぜ。・・・そろそろ行かねぇと、下で待ってるヤツらに疑われちまうぞ?」
「あっ・・・えっ・・・・・・はい・・・。」

ネスに促され、ミリアリアは静かに部屋を出て1階へと戻った。

「・・・遅かったじゃないか。」
「すみません。私がうっかり起こしてしまわないかと、不安だったので、その・・・。」
「・・・大丈夫だったんだな?」
「はい。皆さんぐっすりと寝ていました。」
「そうか、ご苦労だった。後は私達に任せて、お前はもう休んでいなさい。」

マスターはそういうと、手で合図を送り待機させていた仲間達を乗り込ませた。
少しだけ大きな物音が何回かした後、乗り込んだ仲間達が目的を果たして戻ってくる。

「・・・おいおい、それはあんまりじゃないのか?」
「す、すまん。焦ってたもんだから、その、つい何時ものクセが。」

申し訳なさそうに答える男の後ろには、一本の棒に両手両足を縛り付けられまるで狩られた獣のように吊るされたネスの姿があった。
マスターは呆れた表情で額に手を当て、大きく溜め息をついた。

「・・・まぁいい。」「よくねぇ!・・・・・・ぁっ」
「よ!よくないですよ!か、彼女があんまりですっ!」

この仕打ちを咎めようとしないマスターについ口答えしてしまったネスを庇うため、ミリアリアは慌てて大きな声でマスターに抗議してみせた。
マスターはミリアリアの慌てように少し戸惑ったが、彼女の両肩に優しく手を置く。

「確かにあんまりだが、今は結び直してるヒマも惜しいんだ。分かってくれ、ミリアリア。」
「・・・はい。」
(もう!ネスさん!何やってるんですか貴女って人は!)
「・・・よし、早く連れて行くんだ。頼んだぞ。」

ミリアリアは男達に担ぎ出されていくネスを心の中で無事を祈りつつ見送った。