14スレ目の74(ななよん)の妄想集@ウィキ

誓いの輝石~Avenge~ > #07 > パートD


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「ネスさん・・・無事ならいいなぁ・・・。」

ネスを担いで行く者達を見送った後、ミリアリアは彼女の居なくなった部屋に居た。
早く彼女のことを忘れたいので、寝る前に部屋を使われる前の状態に整理しておきたいと申し出たのだ。
マスターもそのつもりだったらしく、何も疑うことなくミリアリアの申し出を受け入れた。
とは言え、元々余り散らかっては居なかったので特に片付ける必要もなく、ミリアリアは彼女が寝ていたベッドに項垂れて呆然と光と影の境界線を見ていた。

「・・・さてと、そろそろ行こうかな。」

ミリアリアはゆっくりと立ち上がって部屋から出る。
そして、一度周りを見回してからそっと向かい側の部屋、タクト達の居る部屋の扉を開けた。

「・・・おっ、来た来た。」
「タ、タクトさん。本当に起きていたんですね・・・。」

ミリアリアはあの時、ネスからタクトも寝たふりをしているだけだとは聞いていた。
しかし彼女と違いタクトは、どう見ても何処にでも居るような、自分と同世代ぐらいの男性である。
ミリアリアの表情からタクトは彼女が何を思っているのか悟り、テキトーな理由を言うことにした。

「・・・俺、実は薬の調合師見習いやっててさ。仕事柄、大概の薬には免疫できちまってるっていうか・・・ま、そんな感じだ。」
「なるほど・・そうだったんですか・・・。」

ミリアリアはウソとは知らずタクトの意外な正体に感嘆の声を漏らした。
タクトは安堵の溜め息をつき、言葉を続けた。

「それで、ネスから何処まで聞いたんだ?」
「いえ、詳しくは貴方から聞けと・・・。」
「そうか。まぁ、そうだろうとは思ったが。じゃあ・・・。」

タクトはミリアリアにネスの思惑を説明した。

「そうですか・・・。ネスさんとあの男にはそんな関係が・・・。」
「ああ。俺もよくは知らないが・・・。まぁ、彼女は今回、決着を付けるつもりで此処に立ち寄ったワケだ。」
「私達に態と捕まり、後で剣をタクトさん達に持ってこさせようとしたのは・・・。」
「万が一のための保険だな。それに少なくともアンタ達があの男の要求通りに動いている間は、皆殺しに遭うようなことは無いしな。」

タクトは自分の身支度を済ませながら、ミリアリアの問い掛けに答えた。
ミリアリアはここにきて新しい疑問が沸いたので、聞いてみることにした。

「・・・もしかして、私が反対していたことも分かっていたのですか?」
「ああ、ネスは分かってたと思うぜ。アンタならきっと協力してくれると思って、彼女は声を掛けたんだろうな。」

タクトは隣のベッドでぐっすり眠っているラスの身体を揺すりながら答えた。
ラスはタクトにしつこく揺られて、大きな欠伸をしながら薄目を開けた。

「ふぁぁ~・・・・・・なにか・・・用ですか・・・・・・タクトさん・・・。」
「ネスがオルグのトコへ行った。」
「そう・・・ですか・・・・・・ネスさんが・・・彼の所へ・・・・・・!?!!」

寝返りを打って再び眠りにつこうとしていたラスは突然飛び起きた。

「タクトさん!それはどうい・・・もがぁっ!」
「バ、バカ!大きな声出すなって!俺達はまだ、眠り薬でぐっすり眠ってることになってんだよ!」

驚愕の声を上げるラスの口を慌ててタクトが塞ぐ。
ラスはタクトやミリアリアの様子から何かの密談中であったことを悟り、大きく何回か頷きタクトに手をどけさせた。

「・・・というワケだ。」
「なるほど、道理で彼女にしては珍しく、集落に着く前に目を覚まして『ヒマ』だと喚いていたワケですか・・・。」
「そういや、そうだったな。いつもなら『ハラ減った』の一点張りか寝てるもんな・・・。」

ラスに指摘され、タクトは普段のネスはヒマな時は寝ているか何かを食べている人物であることを思い出した。
あの時点で既に彼女は怨敵【おんてき】の存在を知り血を滾らせて【たぎらせて】いたのだと思うと、タクトは身震いをせずには居られなかった。

「・・・よっこらせっ!・・・じゃ、行きますか。」
「そうしましょう。・・・・・・はぁっ。」

タクトはネスの剣を両手でしっかりと抱え上げ、身支度をしているラスを促す。
ラスはそれに応え、ミリアリアに目で合図を送った。
ミリアリアは一度小さく頷くと大きく息を吸って、口を開いた。

「きゃああーーっ!助けてええーーーっ!!」

それから程なくして、彼女の叫び声に反応したマスターが何事かと駆けつけてきた。

「あっ!マスター!助けて!」
「ミリアリア!お、お前達!何故起きているんだ!?」
「ふっ・・・フハハハハ!あの程度の眠り薬に引っかかるワケがないだろぉ!演技だよえ・ん・ぎ!」
(ラ、ラスさん・・・。イヤがってた割に・・・ノリノリですね・・・。)
(ラスよ・・・。流石にちょっと、やりすぎだぜ・・・。)

ラスは大見得を切りながら乱暴にミリアリアを手元まで引き寄せる。
思っていたよりも遥かに強い力で引き寄せられ、ミリアリアは思わず恐怖を覚えてしまう。

「くっ!お前達!ミリアリアをどうするつもりだ!」
「無事逃げ出すまでの人質ってヤツさ!今頃、態と連れ去られた仲間も逃げている頃だ。お前らは初めからあの男に皆殺しにされる運命だったんだよ!」
「なんだと!お前達、あの男とグルだったのか!!くそっ!道理で事が上手く進みすぎていると思っていたんだ!」

マスターが悔しがる様子をラスは嘲笑しながら、窓を開け放つ。

「ではさらばだ!最期の夜を精々楽しみたまえ!ワハハハハハ!」
「ま、待て!くそぉー!逃がさないぞー!!」

ラスはミリアリアを抱きかかえると勢いをつけて窓から飛び降りる。
タクトもそれに続くように飛び降りた。

「・・・嗚呼、演技とは言え彼に酷いことを言ってしまいました。後で謝らないと・・・。あ、大丈夫ですか?ミッチさん。怪我はありませんか?」
「えっ・・・・・・えっと・・・・・その・・・大丈夫、です。」

タクト達は宿のすぐ側にあった小さな雑木林の中に着地していた。。
あの時、それなりの高さがあったにも関わらず、ラスはまるで小さな段差から飛び降りたかのように軽やかに着地していた。
ミリアリアはさっきまでとのギャップや、涼しい顔で2階から飛び降りた彼に呆気に取られてしまい、気の利いた返事をすることができなかった。
ラスはミリアリアの答えに満足し笑顔を見せた。

「あ~、イテェ~・・・ラス、アンタはなんで着地できるんだよぉ~・・・。」
「まぁ、鍛えられましたから。・・・それよりも、早く向かいましょう。」

着地に失敗して尻餅をつき、少し目に涙が浮かんでいるタクトをラスが扇動した。

「あ、あの・・・私、いつまでこのままなんですか?」
「えっ?・・・あっ!す、すみません!今、下ろします!」

ラスは顔面を真っ赤に染めながら慌ててミリアリアを下ろした。
ミリアリアは服の乱れを正しながら、何度も頭を下げるラスに声を掛ける。

「すみません!演技とは言え乱暴なマネをしてしまって!すみません!」
「いいですよ、そんなに謝らなくても。ラスさんは悪気があってやったワケじゃないって知ってますから。」
「本当にすみません!嗚呼、だから僕には悪役を演じることはできないと言ったのですよ・・・。」
「いや、見事な悪役っぷりだったぞ。俺が知る限り、アンタより悪役が演じられそうなヤツは真性悪人だけだ。」
「そんな、タクトさん!あんまりですよぉ!」

タクトの悪戯な笑みを浮かべながらの指摘にラスは猛反発する。
しかし、この場に居合わせた者に彼の弁を支持する者は居なかった。
ラスは、今にも泣きそうな目で必死に弁明を続けた。
その様子がとても滑稽に思えてタクトとミリアリアは笑わずには居られなかった。

「アハハハッ!・・・と、兎に角行こうぜ?」
「ウフフッ!そ、そうですよ!ネスさんが心配ですし!」
「・・・そうですね。彼女のことですから、今頃はまた無茶をしているに違いありません。では、道案内お願いしますね。」

ラスは観念して不機嫌そうな溜め息をつき、足早に歩き出した。
二人はその様子を見て少し悪いことをしたと心の中で呟きながら彼の後を追った。

「・・・此処までで、結構ですよ。ありがとうございます、助かりました。ミッチさん。」
「助かったよ。悪いな、こんな目に遭わせちまって。」

三人はマスターの呼びかけに応えた集落の者による追撃を何とか振り切り、集落の出口、競技場址へと続く森の入口に居た。
深く頭を下げるラスとタクトをミリアリアは慌てて顔を上げさせる。

「やめてくださいよ!お礼を言わなきゃいけないのは私の方ですよ!」
「気にしないでいいですよ。悪役を’買って出る’のは慣れてますし・・・。」
「そうだな、俺達は追われることには慣れてるし。」
(ラスよ・・・。あくまで悪役を’演じる’のは慣れてないと言い張るつもりですか。そうですか。)

もし、あのままミリアリアが二人と供に失踪していれば、彼女は二度とあの集落には戻れなかっただろう。
ただでさえ、ミリアリアはタクト達を犠牲にすることに反対していた。
宿に連れてくるまでの道中で結託し、三人を逃がすために眠り薬を使わなかったのではと疑われる可能性もある。
もしそうなれば、彼女はしっかりと役目を果たしたにも関わらず、集落の皆を見限った裏切り者として扱われてしまう。
だから、態とタクト達が悪役を演じることで、彼女が集落のために働いたという事実を歪めないようにしたのだった。

「では、僕達はこれで失礼します。お元気で。」
「はい。ラスさん達もお気をつけて。」

タクトとラスはミリアリアに見送られ、競技場址へと走っていった。

~~~~

「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・くぅっ・・・・・・。」

焦点が定まらない。
天と地が入り乱れ全てを歪に映し出す。

「うっ・・・・・・がはっ!!」

酸素が足りない。
全身を駆け巡る脈動が周りの音を全て掻き消していく。

「くぅ・・・はぁ・・・・・・おぇ・・・うぐっ!!」
(・・・更に、威力が落ちたな・・・もう少しって所か。)

ネスは今、必死に耐えていた。
オートマトンの残り存在可能時間が少ないと踏んだ彼女は、自らが持つ身体能力で毒の中和を試みつつ相手の限界を待っていた。
ネスの読み通り、オートマトンは少しずつではあるが鋼鉄の舌を振り回す力が弱くなってきていた。

「かはっ・・・く・・・。」
(だが・・・向こうもいい加減、止めを刺しに来るはず・・・。)

アレは自らの意思で動くばかりか、自らの存在可能時間を計算して行動の取捨選択までしている。
自らの限界が近いことを悟り、一気に勝負を決めに掛かってきてもおかしくはない。

(そろそろ・・・アイツらも来る頃だろうしな・・・どっちが早いか・・・。)

そこで、ネスは自らが置かれた状況に気付く。

(ちっ!これじゃあの男の言うとおり・・・あの時と・・・・・・。)

その瞬間、脳裏に思い出したくない過去の光景が映し出される。
その光景をネスは必死に掻き消そうとした。

(違う!あの時とは・・・私は・・・あの時の・・・私じゃねぇ!)

ネスが映し出された過去を打ち消した頃、オートマトンの行動に変化が現れる。
ネスはそれを敏感に肌で感じ取り身構えた。

「うわっ!・・・くっ!」

オートマトンはネスの足を払う。
体勢を崩されたネスは仰向けに倒れ込みそうになり、体勢を立て直そうとする。
その瞬間、鋼鉄の舌がネスの身体に巻きつき彼女を無理矢理押し倒した。
ネスは咄嗟に左腕を折り曲げて顔の辺りまで持ち上げ、首が絞まるのを防いだ。

(私を引き寄せて・・・踏み付けるつもりか・・・!)

オートマトンは巻きつかせた舌を引き戻そうとしてきている。
恐らくは足元まで引き寄せ、最期の力で踏み付けるつもりなのだろう。
それならば踏み付けた段階で限界を迎えたとしても、質量で押し潰すことは可能だろう。
普段の私ならば兎も角、今の私ではあの質量を押し返すのは難しいかもしれない。
ネスは両足に力を込め、引き寄せようとするオートマトンに対抗した。
しかし、これまでの戦闘で消耗し毒の中和もまだ不完全な身体では思うように力を入れることができず、ネスは少しずつ引き寄せられていた。
オートマトンはもうすぐそこまでという距離まで引き寄せられたその時である。

(・・・来た!)
「ネス!何処に・・・」
「剣を!剣を真正面に思い切り投げろ!お前ならできる!!タクトぉぉ!!」

一瞬の静寂の後、気合を入れる大きな声と供に入口から蒼く光る物体が高速回転をしながら真っ直ぐ飛んできた。

(一か八か・・・いや!必ず、やってみせる!)

ネスは焦点の合わない視界で、もうじき頭上を通過しようとする剣を辛うじて捉える。
そして、一度目を閉じて深呼吸をした。

「・・・そこだぁぁぁーーっ!!」

ネスは力強く目を開いて左足を素早く蹴り上げた。
ネスの左足は頭上を通過した剣を見事に捉え、真上に跳ね上げていた。
上空を舞う蒼い閃光にオートマトンとオルグは思わず目で追ってしまう。

「ネスさん!!・・・アレは!?」
「ネス!無事か!・・・って何だありゃ!!」

それはネスの大声を頼りに舞台へと駆けつけたタクトとラスも同じであった。
その場に居合わせた者全ての視線を一身に浴び、蒼い剣閃は真っ直ぐネスの元へと落ちていく。

(・・・私に、力を――!!)

ネスは落ちてくる剣をキッと見据えてほんの僅かに動く。
その直後、彼女の顔を掠めるように地面に突き刺さった剣が、ネスの左腕と首の間にあったオートマトンの鋼鉄の舌を貫いていた。

「うおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁーっっ!!」

ネスは気合を入れて巻き付いた鋼鉄の舌を引き千切りつつ起き上がり剣を握る。
そして、間髪居れずオートマトンに飛び掛って剣を突き刺した。
オートマトンはその一撃が致命傷となり限界を向かえて消滅し、元の鉄の塊へと戻った。
ネスはゆっくりと剣を引き抜き、オルグを睨みつける。

「ほほぉ・・・流石は化物人間。では、私はこれで失礼しよう。」

オルグは不敵な笑みを見せ身を翻した。

「待ちやがれ・・・次は・・・お前だ!オルグ!」
「言ったはずだぞ。今の私は仕事中だと。君に付き合っているヒマはないのだよ。」
「知るか!!兎に角、来やがれ!・・・それとも・・・無様に負けて死ぬのが怖いのか!?」
「ふふっ、煽るならもう少し言葉を選びたまえ。では、失礼する。・・・尤も、君が追ってくるのならば戦わざるを得ないがな。」

オルグは態とゆっくり立ち去る。
ネスは剣を引き摺り、ふらつきながら後を追う。
しかしその時、ネスはラスに後ろから右手を掴まれた。

「・・・離せ。」
「イヤです!離しません!ネスさん!」
「離せ。邪魔を・・・すんな・・・!!」

ネスはラスを睨みつける。
ラスは思わず後退りをしてしまうが、掴んだ手を離すことはなくネスを真っ直ぐ見据えた。

「れ、冷静になってください!今の貴女では、彼に挑んだ所で返り討ちに遭うだけです!」
「五月蝿い!兎に角離せ!」
「絶対に離しません!貴女が生きていれば、彼はまた必ず現れます!気持ちは分かりますが此処は・・・」
「お前に私の何が分かる!!いいから離しやがれってんだぁーっ!!」

ネスは右手を振り回し、ラスを乱暴に吹き飛ばした。

「・・・何のつもりだ?」
「ネス、シロート目に見ても・・・今のアンタじゃやっぱ、あの男に勝てねぇと思う・・・。」

ネスの前に、タクトが剣を構えて立ち塞がる。
ネスの圧倒的威圧感を持った殺意溢れる眼に睨まれ心臓が止まりそうになる。
しかしタクトは必死に歯を食いしばって堪え、剣先を震わせながらもネスに剣を向けていた。

「邪魔をすんな・・・退かねぇと・・・斬るぞ。」
「斬れるものなら、やってみろよ。・・・多分、今のアンタじゃ俺すら斬れないんじゃねーのか?」
「―――じゃ、お前の望み通りにしてやるよっ!!」

ネスは剣を振り上げタクトに向かって勢いよく踏み込んだ。
しかし、そこで失速してしまう。
タクトは慌てて剣を放り棄て、前のめりに倒れ込むネスの身体を抱き留めた。
タクトの背中から剣が落ちた音とは思えない重い音が響く。

「ネス!おい!ネス!大丈夫か!しっかりしろ!」
「・・・くっ・・・はな・・・せ・・・わたし、は・・・あの・・・・・・男を・・・・・・。」
(また、討ちそびれた・・・出来の悪い・・・私で・・・すまねぇ・・・・師よ・・・!)

ネスは昏い闇の底へと堕ちて行く間、自らの無力さを只管悔やみ続けていた・・・。

~つづく~