ハルヒと親父 @ wiki
親父の一番長い日
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haruhioyaji
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- 親 父
- おちつけよ、キョン。
- キョン
- いや、大丈夫、大丈夫です。
- 親 父
- まあ男は結局気をもむくらいしかできんけどな。
- キョン
- 大丈夫、大丈夫。
- 親 父
- おいおい。そんなに心配なら、ラマーズ法とかあったろ。中に入って手でも握ってやればよかったんだ。
- キョン
- 「あんたがいたって役に立たないんだから」って言われて。
- 親 父
- まあ、実際、そうだけどな。
- キョン
- (ぶつぶつ)
- 親 父
- まだ何時間か続くぞ。そんなに気を張ってたら、痩せこけて腹も引っ込んじまう。
- キョン
- 大丈夫、大丈夫です。
- 親 父
- 時間つぶしに、何か面白おかしい話でもしてやろうか。たとえばあいつが生まれた日のこととか。
- キョン
- ハルヒが?
- 親 父
- あんときは、どっちか片方は死ぬとか、物騒なこと言われたなあ。
- 男
- どっちか、あきらめろ? それが医者のいうことか!
- 医者
- おまえだからいうんだ。このままだと両方が危険だ。
- 男
- 選べっていうのか?
- 医者
- すまん。だが、絶対に助ける、奥さんはまだ若い。次の機会・・・
- 男
- ……子供を頼む。
- 医者
- おい、涼宮!
- 男
- 約束しろ。子供はお前が絶対に助けろ。女房はおれがなんとかする
- 医者
- なんとかするって、おい。
- 男
- 励ましてでも祈ってでもなんとかする。おまえは子供に集中しろ。
- 男
- こんなときに悪いが、頼みごとで来た。
- 女
- ……ん、なんですか?
- 男
- わがまま放題の俺達の子供だ。俺一人で育てる自信がない。医者は医者で、二人とも助ける自信がないらしい。だから自力で帰ってきてくれ。あとはおれがなんとかする。
- 女
- もう、あなたは……難しいことばっかり。
- 男
- できないって、いつも言わないだろ?
- 女
- あなたのその顔を見てたらね、……言えなくなるの。
- 男
- すまん。
- 女
- 何でもできるのか……何にもできないのか、ほんと、わからない人ね。
- 男
- すまん。
- 女
- 手を……握っていてください。でも、ふたりとも「向こう」に転がり落ちるのはなしですから。
- 男
- 約束する。
- キョン
- それで……?
- 親 父
- 母さんは一命は取り留めたが2年入院したな。その後もいろいろあったが、生まれた奴はバカみたいに頑丈に育った、というわけだ。
- ハル母
- なんのお話?
- キョン
- あ、お義母さん。
- 親 父
- 男の話なんて8割は女の話、半分は昔話だ。
- ハル母
- 昔の女の人の話をしてたの?
- 親 父
- そうじゃないよな、キョン?
- キョン
- え、ええ。ハルヒが生まれたときの話を。
- ハル母
- あらあら、すごい昔話ね。
- 親 父
- いい話なんだ、これが。
- ハル母
- 私もその場にいましたよ。
- 親 父
- 主役級の扱いだぞ。
- ハル母
- あの娘は大丈夫よ、キョン君。こんなに運のいい私と、こんなに頑丈なお父さんの子供だもの。
- キョン
- はい。
- ハル母
- それにこんなにやさしいキョン君が待っているんだもの。元気な赤ちゃんともうすぐ出てくるわ。