ハルヒと親父 @ wiki
ロール・プレイング その8
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haruhioyaji
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- 兵士A
- おい、あいつ、本当にやっちまいやがった。
- 兵士B
- ああ。たった一人であの軍勢を押し戻した。
- 兵士A
- 人っ子一人いないぞ。西のやつら、逃げ帰るのも迅速だ。
- 兵士B
- あれだけの兵に、竜までいて……。それが気にかかるがな。しかし、今は先にすべきことがある。
- 兵士A
- ああ、そのとおりだ。
- 皇太子
- 「そこまでやっていいのか」ですって? つまらないことを考えるのですね。
- オヤジ
- やっと入れ替わったか、デブ王子。
- 皇太子
- 不敬の罪は問わないでおきましょう。
- オヤジ
- 口の聞き方を覚えるのはそっちだろ。おれは大人だぞ。
- 皇太子
- それが何か?
- オヤジ
- 自分が世界を支えてる訳じゃないと知ってもなお、その「つまらないこと」に命投げ出して考えられるようになったら、赤飯を炊いてやる。
- 皇太子
- 支えるのは民草の役目でしょう。この世界が変わるのを、あるべき姿に変えることを望んでいるのは私です。
- オヤジ
- 神輿なんざ何時でもいくつでも放り出せる。落っこちてから泣いて気付いてもみっともないだけだぞ。
- 皇太子
- 私を勝たせると聞きましたが。あなたの存在は、その一点にかかっている。理解できないほど愚かではないでしょう?
- オヤジ
- 気の短い奴だ。それとも、世界が急いでいる、とでも言い出すのか? オーケー、おれのプランを聞かせてやる。 懐疑論者のじじいがいるだろ? あいつにさっき話した黒火薬の作り方をおしえてな、西の国へ行かせる。いや、実はもう行かせてある。ああ、待った。自分で体験したから言うんじゃないが、竜の翼がじいさんを運んでる。今からじゃ、何使ったって追いつけんぞ。
- 皇太子
- ……話を最後まで聞きましょうか?
- オヤジ
- デブだが、まんざら馬鹿でもないらしいな。まあ、悪く思うな。誰だって真剣に事にあたってる時は、他の参加者に同じだけの関与(コミットメント)を要求したくなる。おれが逃げられない選択肢の前に投げ出されてるなら、他のプレイヤーも同じ条件でプレイすべきだ、と考えても罰はあたるまい。
- 皇太子
- 私も、あなたという籤(くじ)を引かざるを得ない、という訳ですか。竜の力に「火薬」でしたか……。で、私の切り札は何です?
- オヤジ
- まあ、そう慌てるな。東の国、おまえさんの方には、酒の作り方を教えてやる。専売にすりゃ、国庫が溢れかえるぞ。街は、よっぱらいで一杯になるだろうがな。
- 皇太子
- 酒など!……教わるまでもありません。
- オヤジ
- ただの酒じゃない。飛び切りの蒸留酒だ。おれのいた世界じゃ、テキーラとタバスコの2大ブランドがあって……
- 皇太子
- 今、嘘をついたであろう!
- オヤジ
- 何故だか、いつもバレるんだ。
- 皇太子
- その酒をどうするのだ!? 敵にでも送りつける気か?
- オヤジ
- いい線いってるぜ。……って、おいおい、そんな短剣振り回して、どうする気だ? まあ、落ち着け。おれが言ってるのは、火の酒だ。こいつは油よりタチが悪い。気体になって燃えるからな。……いいか? 火薬ってのは、火をつけるとものすごい勢いで燃える。そして周囲に力を撒き散らす。爆発だ。その威力は、狭い場所に閉じ込められているほど発揮される。それから必需品は火種だ。いちいち火をおこしてたら、敵が目の前にいる戦場では間に合わんからな。しかし、風に吹かれて消えるのはまずいし、火薬に引火してものはもっとまずい。大抵は穴を掘って、風と相手の攻撃を避けて、ゆっくり火をつけてから、火薬を敵側に投げ出すんだが……。ああ、そうだ、そこに濃度の高い蒸留酒を放り込む。メラメラ、ドカンだ。敵は火薬と火種と穴の中。逃げられんし、火薬は威力を最大限に発揮する。見たこともない地獄絵が見れるぞ。気に入ったか?
- 兵士B
- キョン、本当にいいのか?
- 兵士A
- ああ、ここまで来れたのは、おまえのおかげだ。おまえも塔に入る権利がある。
- 兵士B
- おまえたちは人を探していると言っていた。あの親父には娘、おまえにとっては……ああ、禁句だったな。
- 兵士A
- 東の塔の巫女が、何年ぶりかの宣託を下したんだ。今なら、西の巫女は、問えばすぐに答える。何か手がかりが得られるかもしれんぞ。
- キョン
- いや、おれは残ります。西の軍が戻って来るかもしれないし。
- 兵士B
- そうなる前に西の巫女が教えてくれる。心配はいらん。
- 兵士A
- 「極秘の任務」だと言ったのを気にしているのか?
- キョン
- いや……そうかもしれません。
- 兵士A
- どっちなんだ!?
- 兵士B
- ……まあ、無理にとは言わん。おれたちは先に行く。気が変わったら、入ってこい。
- 皇太子
- すばらしい! 気に入りましたとも! 悪魔を友人に迎えた心地です!
- オヤジ
- そうかい。おれとは気が合いそうにないな。
- 皇太子
- それだけでも、この世界を変えられる「外の力」を敵に贈って……西の国は受け取るでしょう! その存在を知れば、そうせざるを得ない。あなたが東の国に留まっていることを知れば、なおさらです。
- オヤジ
- 喜ぶのはいいが、酒ってのは、作るのに時間がかかるんだぜ。
- 皇太子
- 今あるものを徴用すればいい! もちろん、さらに作らせますが! あなたも早速その用意を。いや、あなたのことだ、もう手は打ってあるのですか?
- オヤジ
- そこまでの人望はない。あんたが命じてくれ。
- 皇太子
- もちろん、王の名において! さあ! まず、なにをします?
- オヤジ
- 樽を作る職人を、腕の良い奴10人ばかし集めてくれ。ああ、あと、船を作る職人もだ。