ハルヒと親父 @ wiki
ロール・プレイング その9
最終更新:
haruhioyaji
-
view
- 西の国の王女
- 西の塔に出した軍から、飛竜が戻りました。
- ???
- 連絡用に連れていった奴ね。それで?
- 西の国の王女
- 司令官からの書簡が届きました。「外の力を持つたった一人の男が、我が軍勢を圧し帰した」とあります。……あなたの言うとおりになりましたね。
- ???
- やる気が、傍目にはものすごく分かりにくいけど、やる時はやる奴だって言ったでしょ。さあ、今度はあんたの番よ!
- 西の国の王女
- 約束したことは守ります。……でも、私に本当にできるのでしょうか?
- ???
- できるできないじゃなくて、や・る・の! ここまで来たら、腹を決めるしかないわ。
- 西の国の王女
- ……ここまでやってきたことも、あなたが来なければ、どれもできないことでした。
- ???
- そうね。あんたには不可能に思えた。でも、あんたはそれをやったのよ。
- 西の国の王女
- ……。
- ???
- あんたが思いを固めてやり抜かない限り、何にも変わらない。運命は自分の手で切り開きなさい!
- 兵士A
- キョン!
- キョン
- どうしたんですか、二人とも?
- 兵士B
- 西の巫女がお前を呼んでる。
- キョン
- へ?
- 兵士A
- はっきり「キョン」と名指しで、だ。
- キョン
- それって、どういう!?
- 兵士A
- わからん。
- 兵士B
- わからんが、妙に納得しているのも確かだ。
- キョン
- え?
- 兵士B
- 神託は、受け取るものを選ぶ。
- 兵士A
- ああ、はるばるやってきても、何も聞けずに立ち去る者だっている。
- 兵士B
- 「ナガト・ユキ」という名前を知ってるな?
- キョン
- ええっ?! あ、はい!
- 兵士B
- 急いでくれ。彼女がお前を待ってる。それから多分、世界も、だ。
- キョン
- 長門……なのか?
- 西の巫女(長門)
- (こくん)
- キョン
- どういうリクツか分からんが、西の巫女の体を借りてるんだな?
- 西の巫女(長門)
- そう。
- キョン
- 長門、お前ならわかるか!? ハルヒを探してる。こっちに来たばかりの頃は、見えやしないが確かにあいつがいることを感じた。だが、今は……。ここはどこなんだ?ハルヒが作った世界じゃないんだな?
- 西の巫女(長門)
- この世界は、わたしたちがいる世界と「直交」している。干渉は本来、不可能。互いに観測することもできない。
- キョン
- だったら、何故!?
- 西の巫女(長門)
- 涼宮ハルヒの力。
- キョン
- ああ。……そういうことだよな。
- 西の巫女(長門)
- 涼宮ハルヒは、この世界からの「呼びかけ」に答えた。自覚はない。
- キョン
- それは……、こっちの世界にも、ハルヒみたいにトンデモ・パワーを無自覚に振りまく奴がいるってことか? そいつが、ハルヒを?
- 西の巫女(長門)
- ふたつの世界の接続は不安定。使える帯域もまた安定しない。情報は不足している。ただ……。
- キョン
- ただ?
- 西の巫女(長門)
- 大きな情報爆発の発生、その痕跡に類するものは観測されていない。涼宮ハルヒが受信した「呼びかけ」は、この世界に由来しない自己再起性増幅因子が介在した可能性がある。
- キョン
- それは具体的にいうとなんだ?何を増幅するんだ?
- 西の巫女(長門)
- 有機生命体の言語に変換することは難しい。
- キョン
- 正確でなくていい! 強いて言えば、なんだ?
- 西の巫女(長門)
- 「思い」あるいは「想念」。
- キョン
- 思い? 思う、ってことか?
- 西の巫女(長門)
- 思惟作用を空間特性に変換するものではない。思惟作用の孤立波を任意の位相で重ね合わせるもの。
- キョン
- それが思いを強めるのか? それで、「呼びかけ」とやらが、ハルヒにとどいちまったのか?
- 西の巫女(長門)
- その可能性が高い。
- キョン
- 誰なんだ、あいつを呼びだしたのは? いったい何を思って?
- 西の巫女(長門)
- 現在、涼宮ハルヒの意識は、その者と共にある。
- キョン
- 意識って……どういうことだ?
- 西の巫女(長門)
- 身体ごと、この世界に転移してきたのは、あなたたちだけ。
- キョン
- あなたたち? おれと親父さんだけ?
- 西の巫女(長門)
- ……接続を……維持するのが困難。……外に誰か来ている。あなたへのメッセージを持って。
- キョン
- 会って話を聞けばいいのか? 長門? 長門!?
- 老人
- お若いの、一人かの?
- キョン
- いえ、連れが二人この中に。
- 老人
- 西の塔にか? 誰でも入れる場所ではないが。
- キョン
- そうらしいですね。
- 老人
- 誰もが足を運ぶところでもない。……おぬし、「オヤジ」と名乗る、人をくった男と知り合いではないか?
- キョン
- ええ、そうです! 知り合いです。おじいさんは?
- 老人
- 手紙を預かっておる。わしはこれから西の国に入るが、道中、「キョン」という若者と出会うはずだと押し付けられたのじゃ。あやつ、何者じゃ?
- キョン
- ちょっと、一口では……。でも、きっと悪気はないんです。
- 老人
- 実はあまり聞きとうない。では、先を急ぐでな。確かに渡したぞ。
- キョン
- はい。おじいさんの名前は?
- 老人
- とうの昔にすり切れて消えてしもうた。だが、また会うじゃろうて。どれ、連れのものが呼びに来たようじゃな。わしはこれで消えるとするかのう。
- 親父の手紙
- よお、キョン。元気か? こっちはピンピンしてる。悪いがいいニュースはこれでお終いだ。
- この世界の二つの国が戦争をおっぱじめようと、絶賛準備中だ。なんでも「野心」とやらが、どっちの国のアタマにもとり憑いてるらしい。
- で、だ。時間を稼ぐのに禁じ手を使うぞ。大げさな兵器をちらつかせて、準備の時間が大げさにかかるようにする。背水の陣も、いいところだ。
- ああ、あと東の塔で朝比奈さん、東の国の皇太子のところでイケメンの意識だけとあった。みかけというか、カラダの方は東の巫女と皇太子だ。
- ここまで分かれば、あと簡単な虫食い算だな。西の巫女がバカ娘ってことはあるまい。なんでもオヤジの国王を幽閉したらしい、西の王女あたりだと踏んでる。
- この嬉しくない予想が当たればだ、敵の親玉はあいつってことになる。
- いっそ、いつもの通り、親子の一騎打ちで決められるなら楽なんだがな。
- だが役まわりもいつかと同じだ。嫌になるくらいわかってるだろうが、キョン、おれとあいつを止められるのは、お前しかいないぞ。
- 地図を同封しておいた。同行してるあの二人組みに見せて、道案内を頼め。両軍が一戦構えるとしたら、その平原がおあつらえ向きだそうだ。
- オヤジ
- 懐疑論者A
- 老師、いつこちらへ。
- 老人
- 今、降りて来るのを見ておったじゃろう。竜を頼む。
- 懐疑論者B
- 皇居に行かれるのですか?
- 老人
- 陛下に見せたいものがある。竜をもしのぐ「外の力」じゃ。
- 懐疑論者A
- 実は……。
- 老人
- 大方は知っておる。では王女様か? 皇居につながりのつく者は? うむ。手引きせよ。少々、急いでおるのでな。
- 懐疑論者B
- さきほど、西の塔へ派遣された部隊が帰還し、「外の力」を見た、王女様の予言通りだと、触れまわっております。この様子だと、国中に伝わるのも時間の問題かと。
- 懐疑論者A
- それで王女の予言を否定した皇居の学者や星見僧たちから、保護を求められております。
- 老人
- ふむ、では東の国へと逃がしてやるかの。
- 懐疑論者B
- それでは侵略の口実に。
- 老人
- どちらもやりたがっておる。火種がひとつくらい増えたところで変わるところはない。
- 懐疑論者A
- 戦は、我等にとっても不都合かと。
- 老人
- だからじゃ。……引き止めることがかなわぬなら、いっそ後押しして、つんのめさせるか。……真にやっかいなのは、あの男じゃわい。……事が終わったら、本当に帰るんじゃろうな。
- 東の皇太子
- 親父さん。
- オヤジ
- ってことは、イケメンの方か?バカ王子はどうした?
- 東の皇太子(古泉)
- ご満悦です。3日3晩、酒の蒸留を監督したので、さすがに疲れが出たようで。
- オヤジ
- やっぱりバカだな。国中から酒の徴用を始めたらしいじゃないか。民草に恨まれたら戦争どころじゃねえだろうに。
- 東の皇太子(古泉)
- さすがと言うべきでしょうね。彼の膨れ上がった野心を、用意した「水路」へと見事引き込んだ。
- オヤジ
- バカを口車にのせるなんざ、大人げないとは思ってるさ。あんまり責めるな。
- 東の皇太子(古泉)
- この後、どうされるのですか?
- オヤジ
- 考えてない。本当だ。おれの役目はせいぜいが露払いさ。ピエロがやるビラ撒き、太鼓持ちが花魁道中でやる口上の類(たぐい)だ。……ああ、ひとつだけ聞いときたいんだがな、イケメン。うちのバカ娘の手配書を見た。あれは、おまえさんか?
- 東の皇太子(古泉)
- 皇太子です。さすがに婚礼の晩に花嫁に逃げかえられては、心中察するに余りあります。
- オヤジ
- 今は一心同体だろ?なるほど古ハルねたは、そんなとこにはまりこんでたのか。たしかに不敏だ。
- 東の皇太子(古泉)
- 実の父親の方に、そこまで言われると、立つ背がありませんね」
- オヤジ
- 運がなかったな、イケメン。キョン程度のご面相なら、おれも嫉妬しないで済んだんだが。
- 東の皇太子(古泉)
- ご冗談を。
- オヤジ
- 発言が素直じゃないのは認めてやる。あいつは、うちの母さんにまで覚え目出たいんだぞ。
- 東の皇太子(古泉)
- 一番認めておられる方にそう言われても、どんな顔をすればいいのか。
- オヤジ
- バカ娘には軽く負ける。
- 東の皇太子(古泉)
- 自分の顔じゃなくて助かりました。
- オヤジ
- 言ってろ。やっぱり、向こうの親玉は、うちのバカ娘か? 勝つ訳にはいかねえが、死んでも負けたくないな。
- 東の皇太子(古泉)
- 彼の到着がこれほど待ち遠しいには、はじめてです。
- オヤジ
- キョンは、やらんぞ。
- 東の皇太子(古泉)
- うらやましすぎて、いっそ不敏ですね。
- 老人
- 王女様にはお初にお目にかかりますな。
- 西の王女(ハルヒ)
- あんた、誰?
- 老人
- これは手きびしい。お生まれになったときは、お祝いに馳せ参じましたが。
- 西の王女(ハルヒ)
- あんただけ招待状を送らなかったんで、今頃になって毒入りりんごでも持ってきたの? あいにくだけど、今、おなか一杯なの。
- 老人
- それはそれは。実はお目にかけたいものがございましてな。竜の力に優るとも劣らぬ力。火薬と申しておりましたな。
- 西の王女(ハルヒ)
- 火薬ぅ!? そんなもの、この世界にあったの?
- 老人
- 外の世界から来た「オヤジ」と申すものが、東の国に教えましてな。竜の力を圧し返し、一気にこの国を奪い取ろうとしている様子。
- 西の王女(ハルヒ)
- おやじ!? あのバカ、やっていいことと、悪いことの!
- 老人
- どうかされましたかな。
- 西の王女(ハルヒ)
- い、いや、続けなさい!
- 老人
- 陰に生きるわれら懐疑の徒は、どこにも居りましてな。その製法を盗み見た者も居るのです。今日はその「外の力」をお持ちした次第。
- 西の王女(ハルヒ)
- で、買い取らせようっての? 案外みみっちいわね。
- 老人
- 滅相もない。それに製法だけお教えしても、それを理解し、実際に作るまでに何ヶ月も経ってしまっては元も子もない。われらがすべて整えます故、王女様にはご英断いただきたいと、こういう訳でございましてな。
- 西の王女(ハルヒ)
- あんたたちが、こっちに味方するメリットって何?
- 老人
- 世界の平衡、つまりはバランスと申しますか……。
- 西の王女(ハルヒ)
- こっちが一人勝ちしそうになったら、手のひら、返しそうね。
- 老人
- どうされますかな?
- 西の王女(ハルヒ)
- そんなの、最初から決まってるわ。あたしは誰とも取引しない。あんたたちの都合がいいなら、火薬でも何でも背負って着いてきなさい。手は貸さないわよ。
- 老人
- どこへですかな?
- 西の王女(ハルヒ)
- 東の国へ、攻め込みに、ね。
- 老人
- それは気が早い。火薬を作るにも少々時間がかかりましてな。
- 西の王女(ハルヒ)
- だからよ。東の国に、そんな時間を与えることないわ!
- 老人
- ……そ、それは、ごもっとも。
- 西の王女(ハルヒ)
- どうせ、親父の悪知恵でしょ! あいつの考えそうなことだわ。
- 老人
- よくご存知で。……事によると、もしや?
- 西の王女(ハルヒ)
- な、なによ。
- 老人
- 実は先日、東の塔で巫女に会いましてな。「外の者」の意識だけが、間借りしている様子。確か……「みくる」と申しておりましたが。
- 西の王女(ハルヒ)
- みくるちゃん!?
- 老人
- やはりご存知で。……王女様、中に誰か住まわせて居られますか? もとより聡明な方と存じておりましたが、「外の者」の名までご存じとは、他に考えられませぬ。
- 西の王女(ハルヒ)
- だったら何?
- 老人
- とくに何も。我らも「取引」を行う気は毛頭ございませぬ。ご同行を許されたのであれば、とりいそぎ作らせた火薬を背負うて、参りましょう。