ハルヒと親父 @ wiki
ハルヒと親父2その後 一周年 その2
最終更新:
haruhioyaji
-
view
- ハル母
- さて、明日も平日だし、そろそろ今日はお開きにしましょう。
- 親父
- キョン、客間に客用布団と着替え一式、用意しといた。先に風呂を使ってくれ。あー、それからバカ娘。
- ハルヒ
- 何よ?
- 親父
- 「湯加減見ようか」とか「背中流そうか」とか、ラブコメな振る舞いは慎むように。親父はもう体力の限界だ。
- ハルヒ
- どんなラブコメよ!
- 親父
- 詳しいことは言えないが、男性用だ。少年誌とはいえ、侮れんぞ。
- ハルヒ
- いい加減にしないと、殴るわよ。
- 親父
- もう、いい奴を2、3発もらっちまっているが。それじゃ解散。
- キョン
- 親父さん、風呂あがりました。先にすみません。
- 親父
- 今、風呂はバカ娘か?
- キョン
- はい。
- 親父
- じゃあ、ちょっと座っていけ。
- キョン
- はい……。
- 親父
- といっても、話すネタは特にないんだけどな。
- キョン
- はあ。
- 親父
- 二人に「共通の話題」……ああ、ハルヒのことだぞ……を取り上げると、ほとんど刺し違いみたいになるしな。
- キョン
- ……。
- 親父
- 少なくとも俺は傷つく。良く言われても、悪く言われてもな。
- キョン
- ……。
- 親父
- 答えなくていいぞ。というか、答えんでくれ。じゃあ、なんで尋ねるんだろうな……あんなの奴の、どこがいいんだ?
- キョン
- ……。
- 親父
- あの見掛けにあの言動だ。ヘタすりゃ、後ろから刺されるぞ。そこんとこ、本人はわざと「無頓着」だしな。
- キョン
- あの……。
- 親父
- お、手があがったな。発言を認めるぞ。
- キョン
- 本人が、後ろに。
- ハルヒ
- オ・ヤ・ジ。話があるわ、たっぷりと。話すことはないけどね。
- 親父
- 風呂、速いな。カラスの行水か。若い娘としては感心せんぞ。
- ハルヒ
- うるさい! こういう事態を想定してちゃっちゃと上がってきたのよ!
- 親父
- どういう事態を想定したんだか。まあ、いい。お前も座っていけ。
- ハルヒ
- なんなのよ、もう!
- 親父
- 宛先だけ変えて同じ質問をするが、お前はこいつのどこがいいんだ?
- ハルヒ
- 他人様を「こいつ」呼ばわりしない!
- 親父
- キョンのどこがいいんだ?と聞いている。
- ハルヒ
- !そ、それ、は、あの、あー、なんで決めつけんのよ!
- 親父
- 自然な推論だ。嫌いな相手と一日の大半を過ごすのか、何より我慢が嫌いなお前が?
- キョン
- ……あの、いいですか?
- 親父
- おう、キョン。
- キョン
- 答えるな、と言われたんで、どこが良いとか好きとかは言いませんが……こいつは確かに無茶はするし、考え方が不穏当なときは多いし、一言で言ってめちゃくちゃなやつですが、人から刺されるような人間じゃないです。誰かのものを取り上げたり、誰かを押しのけて得をしようとしたり、そのために自分や周囲の人間を利用してやろうってカケラも考えないやつです。我慢したり諦めたりしている人間にうらやましく思われることはあっても、恨まれるとは考えられない。それに……こいつは俺の手を引いて、いつもどんどん行っちまおうとするんで、こいつの後ろには俺がいます。だから後ろから刺されるなんてあり得ない。あ、教室の席は前後逆ですが。
- 親父
- ……ハルヒ、こんなの、どこで見つけてきたんだ?
- ハルヒ
- ……だから、前の席って言ってんでしょ! っだあ、キョン、あんたも何言ってんのよ!!
- 親父
- 下がってろ、バカ娘。自分の部屋で枕でも叩いて真っ赤になってろ。おい、キョン、この馬鹿に、愛想が尽きたり我慢できなくなったら、言ってくれ。後腐れ無く分かれさせるし、次の女は紹介してやる。
- ハルヒ
- バカ親父! それが娘の彼氏に言うことか!!
- 親父
- 今はツンデレに貸す耳はない。お前は怒った振りしてごまかそうとしたことを、この男は、斜め上のコトバで答えたぞ。親父は風呂に入って、敗北感を抱えて寝る。
- ハルヒ
- もう、帰ってくんな、バカ親父!
- 親父
- 悪いが、ここは俺の家だ。嫌なら、さっさと部屋でも借りて出ていくんだな。
- ハルヒ
- ……あ、あんたも、もっとモノには言いようってもんがあるでしょ!!
- キョン
- ああ、すまん。
- ハルヒ
- ったく。それにね、周りの人利用したり、誰かのもの取り上げたり、したことぐらいあるわよ。あんたもいたでしょ、その場に。
- キョン
- 都合良く忘れてた。
- ハルヒ
- あたしが手を引いて、あんたが後ろにいて、ってのは事実だけど。
- キョン
- それは比喩だ。横に並んで歩いたりもするぞ。
- ハルヒ
- そうよ、デタラメよ。口からでまかせ。でも、親父を負かして、胸がすっとしたわ。……ほ、褒めたげる。
- キョン
- そりゃ、どうも。
- ハルヒ
- あ、あたしが掛け値なしで褒めるなんて、めったにないんだからね!
- キョン
- そうだな。
- ハルヒ
- なんで、そこで笑うのよ。
- キョン
- わらってない。
- ハルヒ
- じゃあ、にやけてる。
- キョン
- かもな。
- ハルヒ
- 親父じゃないけど、今日のあんた、なんかむかつく。余裕あり過ぎよ!
- キョン
- 馬鹿いえ。突然、泊まらされて、親父さんに膝つめされて、「娘をどう思う?」だぞ。一杯一杯だ。
- ハルヒ
- あんたは追いつめられないと、本気出さないからよ。
- キョン
- 本気なんて、それで十分だ。
- ハル母
- お父さん、これからお風呂ですか?
- 親父
- 母さん。キョンのやつに、あっさり、ひねられちまった。完敗だ。
- ハル母
- そりゃ、ハルの彼氏ですから。
- 親父
- 今だったら「ハルヒを嫁に下さい」と言われたら、OKしちまいそうだ。
- ハル母
- それもいいですね。
- 親父
- そこまで吹っ切れんがな。
- ハル母
- 二人も、もう少しは待ってくれますよ。
- 親父
- もう少し、だけか?
- ハル母
- それはなんとも。
- 親父
- なんか、あいつには「こんな奴のどこがいいんだ?」といつまで経っても聞いてるような気がする。
- ハル母
- その度、キョン君がどう答えるか、楽しみですね。
- 親父
- 風呂に入ってくる。
- ハル母
- はいはい。
- キョン
- どこまで着いてくるんだ?
- ハルヒ
- あんた、客間で寝るんでしょ?
- キョン
- そっちに布団があるんだよ。
- ハルヒ
- 俺の意思じゃない、みたいな言い方ね。
- キョン
- 気に入らないのか?
- ハルヒ
- 気に入らないわね。
- キョン
- ここはお前のうちだろ?
- ハルヒ
- そうよ。親父がなんか叫んでたけど。
- キョン
- 親父さんも、お母さんもいるんだぞ。
- ハルヒ
- そりゃそうよ。あたしのうちだもの。
- キョン
- なんで、俺の服の袖、つかんでるんだ?
- ハルヒ
- 離したくないからよ。
その3へつづく