ハルヒと親父 @ wiki

親父さんと谷口くん

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haruhioyaji

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「すまん、人の名前が覚えられない質でな。誰だっけ?」
「あの、谷口です。涼宮さんと中学から同じクラスの」
「あー、5分で振られた恋愛スプリンターの。娘がとんだ失礼を。あの顔であの性格だし、ろくな死に方しねえな、と常々思ってるんだ」
「いや、でも、いまラブラブで幸せ一杯に見えるんですが」
「キョンって、パッとしないように見えて偉大なんだな」
「いや、それはいいんですが。実はご相談があって参りました」
「なんだ、そうと早く言ってくれれば。俺は、若い奴の相談事が三度の飯より好きなんだ。経験談にはろくなネタがないけどな」
「ほっ。人に頼るなんて、と叱られるかもドキドキしてました」
「実際は自立した人間ほど、たくさんの人間に依存してるんだ。依存っぽい奴は、依存する相手が一人とか、家族だけとか、限られてるから問題を起こす。で、相談ってのは?」
「はい、俺は常々ナンパ道を極めようと日々精進を怠らないように心がけているんですが」
「しかし、まったくモテない?」
「そ、そのとおりです」
「うむ。どんなダメ男でも、たちどころに持てる秘策があるんだが聞くかい?」
「ええ、ぜひとも」
「結婚しろ」
「は?」
「結婚しろ。既婚者は何故だかモテる。確実に持てる。データを持ってこようか?」
「いや、あの、そこまで行き着く前に、息絶えるかもしれません」
「生き急いでるんだな。じゃあ、明日のためのその2。ばあさんをナンパしろ」
「は?」
「狙うのは、美人のばあさんだ。背中がしゃんとして、おしゃれで、今でも街に遊びに行くのを楽しんでるばあさん。彼女たちは美人歴5〜60年で、しかも話好きだ。話を聞きたがる若い衆が行けば、たちどころに落ちる。そして彼女たちの話を、耳かっ穿じって聞け。そこには男と女の秘技/秘訣がてんこもりだ。どんな女が、どんな男が、どういう運命を辿るか、もらさず聞いてこい。話を聞くトレーニングにもなって一石二鳥だ」
「な、なるほど」
「さしすめ、おまえさんみたいなタイプは、顔、スタイル、見た目なんかで、女子をランキングするだろ?」
「は、はい」
「横並びに相手を見ているようじゃ、向こうからも軽く見られる。今、向かい合ってるばあさんと自分しか、この宇宙にいないと思え。今という時間の100%を目の前の相手に使うんだ。もてない奴の中には、やたらと保険をかけたがる奴がいるが、そんな余力があらうなら、100%で行ってさっさと振られてこい。何も押せ押せで行けというんじゃない。むしろアンテナを一杯に張るんだ。相手から出てくる言葉、身振り、表情を残らずつかまえて、焼き付けるくらいの気構えで行け。真剣に話が聞けるのは、誰もがしゃべりたがる、話を聞いてもらいたがる現代社会では、金が取れるほどのスキルだ。昔は、女性に食わせてもらってるヒモだったら、みんな身につけていたスキルなんだが。とにかく『真剣に相手をする』というスキルなしに、誰かに真剣に相手にされる訳が無いだろう」
「は、はい。なんだか目が覚めたような……」
「それから、次の言葉を朝晩、唱えるんだ」
「はい(ごくり)」
「『俺はナンパじゃない、自分の愛に対して硬派なんだ』」
「おおっ!!」
「では、行きたまえ。世界中の女性が、君を待っている。ただし『一回につき一人』を忘れるな」
「あ、ありがとうございます! 人生の師と呼ばせてください!」

「んー。なに、朝っぱらから、誰か来てたの?」
「ん? ああ、誰かさんに5分で振られた谷口が、モテるコツを聞きに来た」
「そんなの親父に聞いてどうすんのよ?」
「まったくだ。そんなこと、キョンに聞けばいいのにな」
「なんで、そこにキョンが出てくんのよ!?」
「あいつの周りは美人だらけだ。まったく、どこのギャルゲーかと思うぞ」
「むー。有希だってみくるちゃんだって、最初はあたしが見つけたんだからね!」
「今度、コツを聞いといてくれ」
「だから、コツなんかないって言ってるでしょ!!」


親父さんと谷口くん







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