ハルヒと親父 @ wiki

新落語シリーズ「三年目」

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haruhioyaji

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(1)落語「三年目」をみくるルートで


 相思相愛の若夫婦が、あまりに仲が良すぎたせいか、姉さん女房の方が、どうにも具合が悪いといって寝込むようになった(意味の分からないよい子は大人に尋ねるといい)。
 亭主の方はというと、昼も夜も枕元を離れずの看病。
 ほうぼうの医者にも見せたが、病いは悪くなるばかりで、もう起き上がる事もできないという大病になった。

「みくるさん、加減はどうですか? 薬を持ってきました」
「あ、はい、ありがとうございますー」
「薬を飲んで、早くよくなってください」
「おそれいりますー。あとでいただきますー」
「後でと言わないで,今飲んでください。いつも俺が見てないうちに、飲んだ振りをして捨てているでしょ。それじゃあ、よくなるものもよくなりませんよ」
「お薬をいただいてもよくなりませんからー。なんだか、申し訳なくて。すみません」
「そんなヤケにならないで。気をしっかり持って,石にかじりついてでも治ってやろうっていう気概を……俺の方が分担しますから、みくるさんはとにかく、薬でも何でも飲んでよくなってください。お願いです」
「そうはおっしゃいますが……わたし、聞いてしまいました」
「聞いたって,何をです? 俺とあなたの間に隠し事なんてありませんよ」
「いえ、隠し事というのではなしに。この間、お医者さまがお帰りになる時、あなたを呼び寄せて何かお話しておられました。わたしは寝た振りをして聞いていたんですー。『とても見込みはない。もってあとひと月……」
「みくるさん。そんな縁起でもないこと言わないでください」
「所詮は助からない命。今は一日でもはやくあなたのご苦労を除いて、わたしも楽になりたいと思っています。ですが、たったひとつ気にかかって死ぬに死にきれぬことがー」
「なんですか、何でも言ってください」
「でもきまりが悪いですー」
「夫婦の間できまりが悪いなんてありませんよ。遠慮なく言ってください」
「それでは遠慮なく申し上げますー。わたしが嫁いできてまだ二年経つか経たないかのうちに、この病いにかかりました。わたしのようなふつつか者でも、あなたはふだんからかわいがって、やさしくしてくださいました。病気になってからも、片時と離れず、こうして看病してもらって、もったいないという気持ちでいっぱいですー」
「みくるさん……」
「もうすぐわたしがなくなって、あなたもお若いことですから、またお嫁さんをお貰いになるでしょう。そして、その方をわたしのようにこうして大事にしてあげるんだろうなあ、と思うと、ぐすん、それだけが気になって、うわああん、ごめんなさい」
「何を言うのかとおもったら、そんなことですか。みくるさん、俺はあなたを愛してます。それは変わらない。たとえ二人がどうなっても変わりません。あなたに、もしものことがあったとしたって、俺は後妻(のちぞえ)を持たないし、持つつもりはありません。生涯独身で暮らすさ。そういう男がいたっていいでしょう」
「いいえ、いまはそんなことをおっしゃってますが、それは駄目です」
「どうして?俺は誰が何と言おうと後妻(のちぞえ)を持ちませんよ」
「あなたがそうおっしゃられても、ご親戚やご町内の方が必ずおすすめになります」
「いくら誰がすすめたって、本人の意志がなければ話にはなりません。俺を信じてください」
「そんなことをおっしゃっても、半年や一年ならともかく、だんだん日が経っていくと……、それでなくても、なかなかお一人で御辛抱できない方なんですものー」
「うっ。ではこうしましょう。もし、もし万が一,俺が後妻(のちぞえ)を持つようになったら、いよいよ婚礼という晩に、幽霊になって出てきてください。あなたの幽霊だったら俺は恐ろしくありません。ですが、たいていの嫁なら、それを見てきっと実家に逃げて帰るでしょう。そういうことが重なれば、あそこの家には、先妻の幽霊が出ると言ううわさが立って、だれも嫁のきてがなくなります。そうすれば、俺もあなたも望む通りに一生涯独り身でいられるでしょ。だから、もしも、間違いがあったその時は、幽霊になって出てきて下さい」
「それなら、きっとですー。約束ですー」

 夫婦で交わした約束に安堵したのか、おかみさんは急に容態がかわって、とうとう亡くなってしまった。
 泣く泣く野辺の送りもすませ、初七日を過ぎ,三十五日、四十九日と経ち、まだ百か日も経ないうちに、あの若い者を抜き身で置いておいては危ないからいい鞘があったらおさめたら良かろう(ここの表現も難しいのでよい子は大人に聞いてください)と、そろそろ親戚の者が言い出したが、はじめのうちは訳あってもう後妻(のちぞえ)は持たないと断り続けた。
 が、そうそう断り切れなくなり、そのうち町内の方でも、「べ、べつにあたしが後妻に入ってあげてもいいわよ」と、内々岡惚れしていた娘もあって、これならばと話がまとまった。

 いよいよ婚礼の当日、三三九度の盃、お床盃もすんで、仲人は宵の口,早くおひらきになって、寝間へ入り、ふとんの上にすわったが、亭主は寝るどころではない。

「ちょっと、あんた……先に床に入りなさいよ」
「いや俺はいいから、おまえ先に入れ」
「『俺はいいから』って訳にはいかないでしょ! こういうのは男がリードするもんでしょ!」
「いや、おれはちょっと、用事があるというか」
「新婚初夜に、いったい誰と何の用事よ!? 返答次第では考えがあるからね!」
「いてっ!『考え』を言う前にどうして手が出るんだ、おまえは!」
 そこへ生暖かい風がひゅう〜と吹きまして
「はわわ、出ました。遅くなりましてすみませんー」
「あんた、誰?」
「わたしは、この人の前の奥さんですー。正確にはその幽霊ですがー」
「そう。今は死んでるのね? じゃあ、とっとと帰んなさい。あたしたちは、これからいろいろ忙しいから」
「ええっー、あんなことや、そんなことまでー。ひぇええ、けだものですー!」
「こらこら、そんなことはしないから、落ち着いて」
「そんなことはしない、って何よ! あんた、どういうつもりであたしを嫁にもらったのよ!」
「あ、あのー、怖くないんですか? 取り殺しちゃいますよー」
「やれるもんならやってみなさい。あんたが取り付くよりもはやく、キョンの首をへし折って瞬殺してあげるから」
「ふわあ。こんな人にはかないませんー。おしあわせにー」


(2)落語「三年目」を長門ルートで


 相思相愛の若夫婦が、あまりに仲が良すぎたせいかry)、大病になった。
「おい、有希、加減はどうだ? 薬を持ってきたぞ」
「あなたには感謝する。しかしもう薬は不要」
「そんなこというな。薬でも何でも飲んでよくなってくれ。頼む、この通りだ」
「私は私の寿命について正確に把握している。私のこの時間平面での生存期間は、有機生命体の生物時計で計測しても、あと数日」
「有希……」
「ひとつだけ気がかりなことが存在する」
「なんだ、何でも言ってくれ」
「あなたは私のような存在を受け入れ、あなたたちの言葉で言えば、私を慈しみ愛してくれた。私という個体は、それをずっと記憶していたい、できるのであれば、あなたと共にずっと存在していたいと願っている」
「有希……」
「でもそれは不可能。そしてあなたの有機生命体として生殖可能期間は未だ長期に残存している。あなたは、今度は有機生命体の女性と結婚し生殖活動を営むと予想される。そして、それは必然」
「何を言うのかとおもったら、そんなことかよ。なあ、有希。俺はおまえを愛してる。それは変わらない。たとえ二人がどうなっても変わらないんだよ。おまえに、もしものことがあったとしたって、おれは後妻(のちぞえ)を持たないし、持つつもりはない。生涯独身で暮らすさ。そういう男がいたっていいだろう」
「あなたという個体の誠意は疑う余地がない。しかしあなたは生殖活動について辛抱ができないタイプ。いわゆる下半身は別人格」
「おまえそういうことを顔色一つ変えずに……////」
「それだけが気がかり」
「じゃあ、もし、もし万が一,俺が後妻(のちぞえ)を持つようになったら、いよいよ婚礼という晩に、幽霊になって出てきてくれ。いいや、俺は恐ろしくない、なにしろ有希の幽霊だからな。だが、たいていの嫁なら、それを見てきっと目を回すだろう。目を回さないまでも、明くる日は実家に逃げて帰るさ。そういうことが重なれば、あそこの家には、先妻の幽霊が出ると言ううわさが立って、だれも嫁のきてがなくなる。そうすれば、俺は,おまえも望む通りに一生涯独り身でいられるだろう。だから、もしも、間違いがあったその時は、幽霊になって出てきてくれ」
「承知した」
 夫婦で交わした約束に安堵したのか、おかみさんは急に容態がかわって、とうとう亡くなってしまった。
 泣く泣く野辺の送りもすませry)、……そのうち町内の方でも、後妻に入って苦労したいと、内々岡惚れしていた娘もあって、これならばと話がまとまった。

 いよいよ婚礼の当日、三三九度の盃、お床盃もすんで、仲人は宵の口,早くおひらきになって、寝間へ入り、ふとんの上にすわったが、亭主は寝るどころではない。
「ちょっと、あんた……先に床に入りなさいよ」
「いや俺はいいから、おまえ先に入れ」
「『俺はいいから』って訳にはいかないでしょ! ええい、問答無用!」
「おまえ、さっきと展開違うだろ! あああ、あーれー」
 そこへ生暖かい風がひゅう〜と吹きまして
「約束がちがう」
「って、あんた、誰?」
「わたしは、彼の前妻の残留情報体、言い換えると幽霊」
「そう。今は死んでるのね?」
「正確に言うと異なる。だが概ね間違っていない」
「じゃあ、とっとと帰んなさい。あたしたちは、これからいろいろ忙しいから」
「邪魔をした」
「こらこら、なんでそんなにあっさり帰っちまうんだよ!」
「それはこちらのセリフ。あなたには失望した」
「何を言うんだ、有希?」
「あなたの生殖器は、かつてないほど充血膨張している。いうなればギンギン」
「おまえそういうことを顔色一つ変えずに……////」
「あたしのテクニックにかかればこんなもんよ!」
「ああ、こっちの新しい嫁まで……////」
「そう。お幸せに」


(3)落語「三年目」をハルヒルートで


 相思相愛の若夫婦が、あまりに仲が良すぎたせいかry)、大病になった。もう死にそうだ。
「おい、ハルヒ、加減はどうだ? 薬、持ってきたぞ」
「あんた……あたしが死んだら、あんたのことずっと好きでいる娘のこと、気付いてあげなさいよ。あの娘を不幸にしたら、あたしが許さないからね」
「何を言い出すんだよ? 死ぬとか……縁起でもない」
「気付くわよ、バカ。あんたは急にやさしくなるし……これで気付かない方がどうかしてるわ」
「ハルヒ……」
「あんたなんかに会わなきゃよかった。……こんなに好きな奴が目の前にいるのに、やっと素直に言えたのに、どうして死ななきゃいけないのよ! どうして……」
「……ハルヒ、あのな」
「もう、行ってよ! あんた見てると、おかしくなっちゃいそう!」
「ハルヒ……あそこへ行かないか?」
「え?」
「俺たちが最初にキスした、あの場所だ」
「だってあれは夢で……」
「ああ夢だ。おまえが見ていて、俺も見ている夢……。あそこならおまえは死ななくて済む。なにしろおまえの夢なんだからな。おれもずっとおまえといっしょに居られる。おまえと俺、二人きりだ。もしおまえが良いっていうなら……」
「良いに決まってんでしょ、バカキョン!」


………あの、おふたりさん、話が変わってます。それにこれってバッド・エンド?



元ネタ:落語「三年目」

















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