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あるSS書きの個人的七つ道具ー魔道具篇

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haruhioyaji

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1 マインドマップ

 本式(マインドマップ(R))にはいろいろちゃんとしたやり方があるようだが、個人的には、ひとりブレインストーミングの道具。アイデアやプロットやキャラクター設定を膨らませていくのに使える。
 大きめの紙の真ん中にメインとなるアイデアなどを書いて、枝を生やして思いついたものをどんどん追加していく。手書きで十分だが、フリーソフトなどもある。
 一覧性と追記が容易なところがミソか。 
 国語力世界一のフィンランドの小学生は、これでお話をつくる練習をするようだ(誰が?なにを?なんのために?といった枝を最初から生やしておいて、そこから広げさせるらしい)。


 マンガの神様手塚治虫は、ひとつの出来事(事件)に付いて、複数の結果をどんどんたどって広げていくこと、また複数の原因を考えてどんどんたどっていくトレーニングをどこかで進めている。出来事を中央に書いて、原因の枝と結果の枝を生やして、どんどん広げて行くのもよい。

実例篇へつづく


2 ルルスのアルス・マキナ

 エドガー・アラン・ポーは創作をコンポジションだと述べたが、突き詰めれば、既存の要素の組み合わせ、ということになる。組み合わせの術は、長い歴史を持っているが、できるかぎり単純かつ少数の要素で、すべてを包含し得ることをめざしたこころみに、ルルスのアルス・マキナがある。
(日本語での説明としては、このあたりを、ダウンロード用としては、これを参照のこと。

次のは、ドイツ語版で、でかいやつ。
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 バベッジの差分機関(ディファレンシャル・エンジン)から現代のコンピュータにつながる、考える仕掛けの源流のひとつ。 
 考案者ライムンドゥス・ルルスは1272年ころ、マヨルカ島のランダ山で啓示を受けた。神の属性である善、偉大、永遠といったものが万物に注ぎ込まれるのを見た。神の属性に基礎をおいた<術>に関する書物を書くことに残りの生涯は費やされる。最後に来るのが『大いなる術』Ars magna 1305-08 であった。
 カバラが高度に発達したのは中世スペインであり、その最高潮はルルスの術の出現と一致する。当時のスペインは、イスラム教、キリスト教,ユダヤ教が鬩ぎあう遅滞であり、『大いなる術』Ars magna は異教徒を改宗させることのできる哲学的完全言語の体系としてのプロジェクトとして構想された。

 より簡略化された類似のものにCrovitzのrelational algorithmがある。これは別項(あるSS書きの個人的七つ道具ー関係アルゴリズム)で取り扱う。


3 タロット

 アルス・コンビナトリア(結合術)としては、ルルスの術(アルス・マグナ)ほど厳密でなく、もっとルーズで使いやすいものとしてタロットがある。占いとして使われたのは意外に新しいが、それでもストーリー・ジュネレーターとしての優れた点が、タロット占いに生かされているのは間違いない。
 キャラクターを占えば、ストーリーやあらすじが、ほらできあがり。スプレッド(タロットの並べ方)は時間の経過が扱われているもの(たとえばケルト十字とか)がよいと思う。
PHPで簡単に作ったのを設置してみた http://www12.atpages.jp/storytools/Celtic_Crosses.php
ただし、他のと同じルーティンを利用してるので、逆位置をサポートしてない。ちゃんとした占いには使えないが、ストーリー・ジュネレーターとしては使えなくもないだろう。

 グレマスの行為者モデル(民話に共通する構造を取りだしたもの cf.グレマス『構造意味論』)にはめ込んでこれをリーディングすれば、世界観やらプロットができる。

実例篇も参照




PHPで簡単に作ったのを設置してみた http://www12.atpages.jp/storytools/tarrot_no.php

 リロードするだけで、新しい組み合わせが生まれ、新しい世界観やプロットができあがる。気に入るのが見つかるまで繰り返せばよい。

 ありがちなあらすじの例を示すと、こんな感じ。

(0)「対象」が「送り手」の下を離れたところから物語は始まる
(1)「主人公」は物語と無縁の生活を送っているが、ある日「送り手」が発した「対象」探しの依頼を耳にする
(2)「主人公」は捜索の旅に発つ。
(3)「主人公」は、旅の途中、「協力者」と出会い、以後の旅をともにする。
(4)「主人公」は、「敵対者」からの妨害に繰り返し合うが、なんとか退ける。
(5)「主人公」は、とうとう「対象」を探し出す。
(6)「主人公」と「敵対者」の最後の戦い。
(7)「主人公」は「対象」を「受け手」のところに送り届ける。しかし「対象」は「主人公」を・・・

 もちろん、全然違った読み方をすることもできる。

 逆に既存のストーリーや作りかけのお話に、タロットでタグをつけると、取りまわしが効くようになる。ストーリーの分解リバースエンジニアリングや改変に便利。アメリカで使われてるDranaticaなどのシナリオ作成支援ソフトには、この機能があったりするらしい。
 使うのは八卦でもストック・キャラクターでもアーキタイプでも、自分で考えた数十個の概念の組でもよい。
 ちょっと思いついて、ラファエロの『アテネの学堂』から哲学者を切り抜いて、グレマス・モデルに突っ込んでみたのか下の図




これもPHPで簡単に作ったのを設置してみた http://www12.atpages.jp/storytools/Scuola_di_Atene.php

 リロードするだけで、新しい組み合わせが生まれ、新しい世界観やプロットができあがる。気に入るのが見つかるまで繰り返せばよい。

 やはりいわくありげな絵が書いてあって、意味の重層性や混在性、連想の喚起力からすると、22枚しかないのはむしろメリットかも(たとえば1つの事項をいきなり50の分類のどれに入るかを知ることは困難で、何らかの分類樹を経て分類するしかない/すると分類樹のかなり手前で、つまり少数のカテゴリーで手を打ちたくなるのも人情だ)。冷静なものからイっちゃってるものまで様々な解釈書、解説書が出ているのも、バリエーションを得るためには有利。

 ただし普通にタロット占い(リーディング)できる程度の慣れは必要。ただし占い的に厳密な解釈をするよりも、絵柄から思い浮かぶものを広げて行く方がよい気がする。

 今は、タロットを持ち歩くのが面倒なので、ノートパソコンでは、エクセルのrand関数とvlookup関数でランダムにタロットを選び表示するものを、自宅では自サーバーにPHPでこれもランダムにタロットを表示させるものをつかってる。エクセル版は再計算F9を押すだけで、WEBアプリはリロードするだけで、新しい組み合わせが生まれ、新しい世界観やプロットができあがる。気に入るのが見つかるまで繰り返せばよい。

 手でタロットを扱うときは、既定の設定については、対応するタロットをあらかじめ置いておいて、残りをランダムに選ぶといった手も使える。

プルダウン・メニューで表示するタロットを指定できる(もちろんランダムも選べるものを作ってみた。http://www12.atpages.jp/storytools/select_tarot.html


4 ロジェのシソーラス


 アルス・コンビナトリア(結合術)の最も実用的な形態。英語圏では有名な類語辞典だが、すべての項目を世界観に基づき、類似(及び対立)する概念は近くに集まるように配置しているのがポイント。このようにつくると、類語辞典は表現を磨くだけでなく、発想を助ける道具としても使える。

 ピーター・マーク・ロジェ博士の画期的偉業は1852年に初版が出版され、単語や熟語を意味で分類するというまったく新しい方式を取り入れたものであった。ロジェ博士の方式はひとつの考えやコンセプトに関係するすべての言葉をひとつにまとめるというものだ。そのおかげで比較的手軽なサイズで広範囲の単語を調べることが可能になった。辞書のようにABC順に整理されたシソーラスでは繰り返しが多過ぎ使いづらかったからだ。
 その後1世紀半以上にもわたって増補、再編集、改良が加えられてきた『Roget's International Thesaurus』は最も使える関連語辞典であり、アイデアを刺激、整理したり、明快・効果的な文章や会話表現に役立つツールでもある。

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詳しい目次は
http://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Outline_of_Roget's_Thesaurus
ここから全文検索できる(同様にサービスはネットのあちこちにあるが)
http://poets.notredame.ac.jp/Roget/
詳しいことは、ここにある論文(日本語、pdf)をどうぞ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003320850/


 たとえば主人公やメインとなる持ち主をキーワードとして、類似概念や対立概念をひろっていく。テーマや主張は、登場人物のセリフにするのが楽だが、それではお説教を埋め込んだだけである。それらは登場人物の行動を通じて表現されたほうがよい。そしてそうした行動は、反対概念の具体化である敵対者の行動や、主人公が反応せざるを得ない状況へのリアクションとして描くことが出きれば自然である。主人公の行動を引きだす、他人の行動や周囲の状況を見つけるのに、シソーラスは役立つ。

 またarchitecture(建築)を引くと、ただbuildingといった普通の意味での類義語だけでなく、くfrozen music(ゲーテがアッカーマンとの対話で、建築を凍った(凝固した)音楽と呼んだ。もとは哲学者シェリングの美学に登場する概念。後年、フェノロサが奈良薬師寺の東塔を表現するのに用いた)といった「気のきいた言いまわし」も混ぜているのもポイント。

 一度、英語にする際に混じるノイズも、時によい方向に働く。 



5 時空計算尺ガリバー


 時は1994年、東京大学の和田昭充教授は、百億光年規模の巨視世界からオングストローム尺度の素粒子まで、宇宙、地球、生命、分子、原子を総合し俯瞰する装置を考案した。その名も時空計算尺ガリバー!!
 正尺に宇宙の森羅万象の時間・空間のトピックを表裏に、それぞれの秒とメートル単位で対数スケールの上にプロットされ、そのうち人間が実感が持てる生活スケールを取り出して副尺として、正尺と互いにスライドする仕組みである。すなわち空間縮尺には拡大率に100万倍をとり、タンパク質や細胞の大きさを「実感」できるようにされており、時間縮尺には、生命の誕生以来の歴史が「1年」に縮めてある。時空間対比は、エジプト文明以来の歴史を1メートルとすると、生命の歴史は1000キロメートルとなる。



 当時、携帯サイズ版が株式会社丸善から発売されたが、現在も上野の国立科学博物館には3.5メートルの大型尺が展示され、来館者が手で動かして作動できるようになっている(携帯サイズ版も国立科学博物館のミュージアム・ショップで売っている)。


6 猿の手(Monkey's Paw)


 背中をかくのに使える。
 願い事を叶えるのは推奨できない。



7 Dramatica(ストーリー作成・分析ソフト)


 全米シェア第一位の本格的脚本作成支援ツール、ストーリー作成・分析ソフト。
 ストーリー作成を登場人物、プロット、テーマのいずれかの設定から始め、その設定に基づいて様々な劇的要素を提案してくれる。ピクチャーアイコンを使って各キャラクターを表すツールを装備。変更を加えるたびにどのような効果があるか一目でわかる。作成中の作品に類似したストーリーの作品を古典の中から検索することも可能。有名な古典、劇、映画のストーリー分析がサンプルとして付属。
 Dramaticaの段階式のライティングシステムが当初の構想から、最後の仕上げに至るまでの道のりをガイドする。 新ストーリーガイドパスはアイデアをストーリーにし、そして書き出すまでの時間を短縮する。
 構成テンプレートを使用すると、既成のストーリー構成を基にした実践的なアドバイスが得得られる。構成に不安がある場合や、これまでに学んだ他の伝統的なストーリーのスタイルとDramaticaの新鮮なアプローチの間にあるギャップの穴埋めをしたいと思う場合に便利。
 英語版しかないのが玉にキズ。


=動作環境=
Macintosh版
 PowerPC G3以上のCPU搭載機種。Mac OS X 10.2以降 (Mac OS X 10.3以降を推奨)、Power Macintosh(Performa 5xxxを含むPowerPC搭載機種)最少メモリ128MB。ハードディスク空き容量 30 MB。CD-ROMドライブ。

Windows版
 Pentium以上のCPU搭載機種。Windows 95以降(98、Me、XP、Vista、NT4.0、2000を含む)最少メモリ32MB。ハードディスク空き容量30MB。CD-ROMドライブ。




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