ハルヒと親父 @ wiki

ともコレ

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haruhioyaji

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 「みくるちゃん、お茶」
「はーい」
「みくるちゃん、あなた『ともコレ』って知ってる?」
「と、も、こ、れ、ですか?」
「そう『ともコレ』。某携帯ゲーム機でやるゲームなんだけどね」
「はあ」
「近所の小学生が、あ、みくるちゃんも知ってる、あの子よ、あのメガネの。その子がね、やってるのを見せてくれたの」
「どういうゲームなんですか?」
「『ともだちコレクション』、略して『ともコレ』ね。あたしが見たところ、とっても危険なゲームよ。今に殺人事件が起きるわね」
「ふええ。そ、そんなに怖いゲームなんですか?」
「別にホラー系って訳じゃないけどね。まあ、名前通り、友達をゲームの中につくるのよ。最初に姿カタチだけでなく、声や性格的なものまで入力するわけ。細かく設定するから、大抵は本当の友達とか、周囲の知ってる人になることが多いわね。そうやって、ゲームの中に、キャラクターが増えていくとね、そいつら同士がいろいろ交流したり、『○○さんのことが気になってます』と言い出したり、お互いの部屋に通い出したし、付き合い出したり、結婚したり、はたまた離婚したりするわけよ」
「うわー、おもしろそうですけど、ある意味、こわいですね」
「で、そのメガネの子の『ともコレ』をみせてもらったら、みくるちゃん、あなたや他のSOS団のメンバーも入ってたの。みくるちゃん? どうして後ずさりしてるの?」
「いえ、あの、少し用事というか、そんなものを思い出したり……しそうなので……」
「じゃあ、しっかり思い出すまで、あたしの話を聞きなさい。でね、SOS団のメンバーが入ってる訳だから、とうぜんあいつもその中にいるわけよ。それが現実に輪をかけて使えない奴で。そのくせ、女の子と見ると、大人から小学生まで見境がないのよ!! 『○○さんのことが気になってます』って、あんた何人の女に粉かけてんのよ! 部屋へは行きまくるわ、噴水のところで楽しそうにセッションするわ、あげくの果てには結婚!! そして離婚!! 何人の女の子をもてあそべば気がするのかかしら!! ねえ、みくるちゃん、あなた、どうおもう!?」
「いえ、あの、その、『あいつ』って誰ですか?」
「みくるちゃん、ちゃんとあたしの話、聞いてた!?」
「は、はい。すみません」
「別にみくるちゃんに謝ってもらわなくたっていいわよ。悪いのは、キョン! あいつ、なんだから」
「はあ。ゲームの中のキョン君ですか。……あ、あのお」
「なあに、みくるちゃん?」
「涼宮さんは、そのゲームの中に?」
「いないわ」
「え?ど、どうしてですか?」
「そのメガネの子が、入れてもいいか、聞いてきたから断ったの。だから入ってないわ」
「ほええ。そ、そうですか……あ、あの、涼宮さん!」
「なあに、みくるちゃん?」
「今度こそ本当にはっきりと、用事を思い出したのです。えっと、その……」
「わかったわよ。用事でしょ。帰ってよし。話、聞いてくれて、ありがと」
「いえ、そんな。じゃあ、すみません。失礼します」


 「じゃーん」
「あれ、朝比奈さん。何か良いことありましたか?」
「ふふ、キョン君、おはようございますっ!」
「あ、おはようございます」
「これ、なんだか、わかりますか?」
「某社の携帯ゲーム機ですね。あ、『ともコレ』ですか」
「キョン君も『ともコレ』してるんですか?」
「いや、妹が。自分の知ってる人間を残らず入れてるんで、SOS団は特別顧問から準団員まで含めて全員入ってますよ。シャミセンも、ですが」
「へえ。その中で、だれとだれが友達になったり、付き合ったりしてるんですか?」
「いや、よくは見てないんで。えーと、シャミセンが長門のことが気になってる、とか言ってたなあ、確か」
「わたしも昨日買って来て、よくわからなかったんですけど、今朝、鶴屋さんにも手伝ってもらって、みんなの分をやっと入力し終わったんです」
「そうですか。放課後、部室で見せて下さいよ」
「はい。ふふふ、楽しみです」


 「少しよろしいですか?」
「古泉、近頃じゃあまり見ないほどの、やつれぶりだな。まさか例のあれか?」
「お察しの通りですよ。『大型で強い』とでも形容すれば、少しはイメージしやすいかもしれませんね」
「閉鎖空間自体、随分ひさしぶりじゃないか」
「ええ。あなたに報告していない、ごく小規模なものは数回ありましたが。今度のは、まるで性質も危険の度合いも異にするようです」
「やばいのか?」
「かなり。そんな訳で昨日は部活にも顔を出してませんし、あなたなら何かご存知ではないかと」
「いや、おれも家の用事とやらで、先に帰ったからな。そんな眼で見るな。少なくともその時までは、あいつの機嫌は悪く……ないように見えたぞ。……あ」
「何かお心当たりでも?」
「いや。関係あるかないのか、それもまだわからんが。古泉、今日は部室には?」
「実はまだ閉鎖空間は拡大中なんです。ぼくは解決のヒントを違う方向から探ろうと、こうして来たのですが、できればすぐに戻って仲間を応援しに行きたいと考えているのですが」
「わかった。だったら、まったく何の関係もないかもしれんが、俺の憶測だと思って聞いてくれ。さっき朝比奈さんが……」
「……なるほど。普段、ゲームをしない朝比奈さんが、ゲーム機本体まで買ってですか。あなたが帰られた後、部室で何かあったと考えるのが妥当でしょうね。それも涼宮さんと朝比奈さんとの間に。そして涼宮さんは昨日から不機嫌であり、今日の朝比奈さんが朝から上機嫌だった。だとすると……。ぼくも放課後立ち会って確かめた方がよいでしょうね。二、三、思い当たることもありますし」
「どういうことだ?」
「そのゲームの内容は、あなたもご存知ですね。リアルな友人たちに替わって、キャラクターたちはゲームの中で、自発的に人間関係を取り結んでいきます。ゲームのプレイヤーはいくらかは関与することはできても、そうして自発する人間関係をコントロールすることまではできません。現実どおりの、あるいは期待通りの関係が生まれることもあれば、それぞれその逆もあり得るという訳です。朝比奈さんは、SOS団団員のキャラクターをゲーム中につくった。では、涼宮さんは? そして涼宮さんがゲームの中に見た人間関係は、ゲーム内のフィクションとはいえ、彼女にとって好ましいものでなかった、ということは考えられませんか?」
「ありそうなことだが、おれがハルヒなら、そんなことにでもなったら、迷わずリセットするぞ。ゲームの中の世界は、現実じゃないからな。気の短いあいつが何故それをしない?」
「それを解く鍵が、朝比奈さんが自分でゲーム機とソフトを用意してきたことに隠れていそうです。つまりリセットできない理由が何かある。それ故に、もう一台のゲーム機が必要になった……。授業がはじまりますね。では、放課後に」
「ああ、部室でな」


 「……こんにちは。長門さんだけですか。涼宮さんや朝比奈さんはまだでしょうか?」
「朝比奈みくるは、まだ教室に残っている。今はまだ来ることができない」
「来ることができない? 長門さん、朝比奈さんがやってるゲームのことですか?」
「そう。彼女はまだ、自分が期待する結果を得ていない」
「なるほど。これを聞くのはどうかと思いますが、ぼくたちも少々困った事態に陥ってまして。朝比奈さんが期待する結果を得るまでに、どれくらいの時間がかかりますか?」
「ゲーム機の疑似乱数を計算しそこから推定すると、48時間以内に、朝比奈みくるが期待の結果を得る確率はゼロに近い」
「それは困ったことになりましたね。長門さんの力でなんとかなりませんか」
「容易。しかし、それはズル」
「おっしゃる通りです。あと涼宮さんは今どこに?」
「涼宮ハルヒは現在、自宅へ帰る途上にある。本日の団の活動は休みだとことづかっている」
「なるほど。質問の順番を間違えたようですね。で、彼は涼宮さんのところへ?」
「先ほど、今と同じ問答を彼と行った。彼は現在涼宮ハルヒを追っている。2分25秒後には、追いつく予定」
「今回も彼の活躍次第、ですか。ゲーム内の人間関係などという代替は不要だと、はっきり分かる結論を示していただきたいですね。……ん?長門さん、それは?」
「あなたたちが『ともコレ』と呼ぶゲーム。私は先ほど、期待の結果を得た」
「なるほど。見ない方がよさそうですね」


 「みくるっ! おや、まだ『ともコレ』と格闘中かい?」
「つ、鶴屋さん。こ、こんなに仲良くなったのに、まだ結婚しません……」
「ははあ。ゲーム内キョン君にハルにゃんか。いいじゃないか、このゲーム、結婚したって、あとで離婚したりするんだよ」
「二人はそんなことにはなりません!」
「おっとっと。燃えてるねえ、みくる。……でもさ、何となく、今はこのまんまで、あたしはいいと思うけどな。今のあの二人みたいでさあ」




































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