ハルヒと親父 @ wiki
ロール・プレイング その7
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haruhioyaji
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- 老人
- なんじゃ、もうギャーギャー騒がんのか? つまらん。
- オヤジ
- 勢いに任せてオトコマエなことを言っちまったら、へんに腹がすわったらしくてな。
- 老人
- 便利な腹じゃ。
- オヤジ
- 残る恐怖は、怒った女房だけだが、こいつは克服したくない。
- 老人
- そしてよく回る口じゃ。
- オヤジ
- このまま王宮まで飛ぶのか?
- 老人
- 降りると余計に時間がかかる。王都は人が多すぎる。都を抜けようとすると丸1日はかかるわい。
- オヤジ
- 都市計画がなってないな。公衆衛生の観念もないだろ? 向こうに戻ったら、ヨハン・ピーター・フランクの10巻本を届けてやる。
- 老人
- 王都は確かに死亡率が高いが、それでも人が押し寄せるよう来る。それで釣り合いがとれておるのじゃ。
- オヤジ
- マルサスの罠にどっぷりかよ。東の巫女が戦を避けたがってたのも、その口か? まあ、この世界の戦で、それほど人が死ぬかは疑問だが。
- 老人
- やり方にも寄るがの。
- オヤジ
- えげつないのは水攻めか? 疫病が流行る。戦いよりも、そっちで人が死ぬ。そういや、竜は病気にならんのか?
- 老人
- なる。悪いことに人の病にかかりやすい。だから、人の居るところでは飼うのが難しいのじゃ。
- オヤジ
- そんなもの、よく軍隊と一緒に連れて行けるな。
- 老人
- 西の国しか知らぬ秘訣があるらしいがの。
- オヤジ
- だいたい軍隊ってのは、疫病の一番の「輸送手段」だ。大勢の人間が高い密度で四六時中、寝食を共にし、しかもその集団が大移動するんだからな。
- 老人
- わしらの大移動は果てが見えたぞ。あそこに降りるのじゃ。準備せい。
- オヤジ
- シートベルトでもしめるのか?
- 老人
- 口を閉じろと言うておる。下手に舌をかまれて、増えよったら目も当てられん。
- 西の軍の副官
- 司令官どの、退いてしまって良かったのですか?
- 西の軍の司令官
- 異形の力だ。兵が浮き足立つのも無理はない。何より、この時期に兵を減らすのは惜しい。
- 西の軍の副官
- と言いますと?
- 西の軍の司令官
- 「外の者」の後ろに、東の兵がおったぞ。規模はわからぬがな。
- 西の軍の副官
- まことですか? 私には何も……。
- 西の軍の司令官
- 目で見たのではない。「外の者」の力があれば、単身我が軍に近付き、交渉して塔へ入ることもできた。そうは思わんか? 何ゆえ、離れた位置から、威嚇だけを繰り返した?
- 西の軍の副官
- な、なるほど。
- 西の軍の司令官
- 物見の兵を残してある。いずれにせよ、事は明らかになるだろう。それよりもだ。
- 西の軍の副官
- はい。
- 西の軍の司令官
- 我等が見た「外の者」の力、王女様にご報告申し上げなければな。
- 西の軍の副官
- 王女様の予言……ですか?
- 西の軍の司令官
- 予言通りに、「外の者」が西の塔に現れ、その力で我らを退けた。そして、その事実を兵たちすべてが知っておる。その我等が帝都に戻ればどうなる?
- 西の軍の副官
- 王女様の予言を信じなかった重臣たち、それに……学者や星見僧に至るまで!
- 西の軍の司令官
- そのために多過ぎる軍勢を率いて来たのだ。これで東の国は、竜ばかりではない、予言の力をも得たことになる。兵が見たものがその証だ。我等は命により報告するだけだが、兵たちの声は民の声となって国中を駆け巡るぞ。竜と予言、東の国と西の国、ふたつで作り上げていた均衡が崩れるのだ。世界が一なる者によって統一されるのも夢ではない。我等は良い時代に生まれた、そうは思わんか、副官?
- 皇太子
- 自分で天才軍師と名乗ったと聞きましたが、なるほど涼宮さんのお父さんでしたか。
- オヤジ
- やれやれ。今度はイケメンか。しかし見る陰もないな。まあ、世界中の太目の男に希望を与えるか。で、皇太子のアタマの具合はどうだ?
- 皇太子(古泉)
- 直裁ですね。いや、かえって助かります。国王を幽閉して解決策が見つかるまで時間を稼ぐはずが……優柔不断の皇太子を支えてそのようにもっていくのが、ぼくがこちらの世界に呼ばれた役割だと思っていたのですが、甘かったようです。ミイラ取りがミイラとなってしまいました。野心に憑かれた皇太子の力は強くなるばかりです。なんとかなだめすかしながら来てますが、ぼくの意識が表に出る時間も日に日に減っています。ええ、状況は確かに良くありませんね。
- オヤジ
- そこはお前の口車でなんとかしろ。
- 皇太子(古泉)
- いえ、本打ちの登場です、その役は謹んでお譲りします。
- オヤジ
- どいつもこいつも。ああ、まだ引っ込むなよ。哲学問答の相手をするなら、お前さんがうってつけだ。ぶさいくな顔で、嫌そうにするな。
- 皇太子(古泉)
- 僕には到底、彼の代わりがつとまるとは思えませんが。といっても、やめてはいただけないのでしょうね。
- オヤジ
- この世界の戦争はどうやら、おれたちの世界で言う青銅器時代のそれだ。大公望を気取ってみるかと思ったが、あいにく釣竿がなくてな。こいつは史上初の包囲戦滅戦をやった奴だ。知っての通り、以来、人間は戦争の味を忘れる事がなかった。
- 皇太子(古泉)
- そこまでやっていいのか、ということですか?
- オヤジ
- そうだ。ここが考えどころだ。例えば、おれは黒色火薬の作り方を知ってる。知ってるだけで言うなら、原子爆弾もそうだが、それをここの連中に教えて良いのか? プロメテウスを気取るわけじゃないが、人間に火を教える文化英雄(カルチュラル・ヒーロー)ってのは、おれみたいなおっちょこちょいが多い。だが、生じる変化は不可逆的だ。殴りあって友情を確かめあうような、この世界の戦争が一変するぞ。
- 皇太子(古泉)
- それから、この世界も。
- オヤジ
- バカ娘一人とそれを秤(はかり)にかけるか?だいたい同じ秤に乗るのか? こいつは、バカキョンには聞けない問いだろ?
- 皇太子(古泉)
- そうですね。おっしゃることは分かります。
- オヤジ
- 正義の味方とヒーローは別物だ。正義の味方は、基本コンサバティブ(保守的)だからな。正義の味方が守るのは、既存の世界、既存の日常、既存の価値観、既存の資源と権力の配分だ。戦が起こるのはまだいい、それで今までのバランスが崩れて、たとえば一人の王が世界を支配するなんてことになってみろ。二つの世界を裏で繋いでた懐疑論者はお役御免だ。敵が居ない世界じゃ、未来を知らせる東西の巫女だって存在理由を失いかねん。誰がこの世界が変わるのを望んでる? 元の日常がお呼びなら、おれたちを連れこんだのは人選ミスだぞ。