ハルヒと親父 @ wiki

辞書シリーズ/国語辞典:よばい

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haruhioyaji

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「キョン、あんた、『よばい』って知ってる?」

知っているが、まだしたことはないな。

「うぐっ。聞いてないことまで答えなくていいのよ!」

何をそんなにワタワタしてるんだ、ハルヒ?

「うっさい! あんた、『よばい』って聞いて、やらしいこと想像したでしょ!?」

それはお前の方だ、と十人いれば十人答えると思うが。

「分かってないようだから特別に教えてあげるわ。団員の風紀粛正は団長の役目だから」
といって、ハルヒはノートに文字を書いて、俺に見せた。
「これがあんたが想像してる『よばい』よ。夜の暗闇に乗じて男が女の寝所へ忍び込んでいやらしいことをすること」
そこには「夜に這う」と書いて「夜這い」と書いてあった。
「で、こっちが本来の『よばい』よ」
今度は、ハルヒは「呼ばひ」と書いた。
「よばう(呼ばふ)、つまり動詞「よぶ(呼)」の未然形に、反復・継続を表す助動詞「ふ」の付いたもので、現代訳すると「呼び続ける」「繰り返し叫ぶ」といった感じね。この「呼ばふ」を名詞にしたのが「呼ばひ」よ」

繰り返し叫ぶこと、か。

「なんでも叫べばいいってもんじゃないわ。「呼ばひ」というのは、とくに相手の名前を呼ぶ際に使う言葉よ。名前は、もともと呪術的な意味を持ってたの。悪魔だろうが物の怪だろうが、本当の名前を相手に知られて名前を呼ばれたら最後、名前を呼んだ者に魂を奪われ虜になるくらいのものよ。魔術師や陰陽師が、使い魔を使役するのに使ってるのがこれね」

オカルト方面にはまるで暗いが、なるほどそういうものなのか。

「それで相手に本当の名前を教えて、その名前で呼んでもらうことイコール求婚や結婚を意味するようになったの。これが『呼ばひ』の本来の意味よ。昔の日本では女性からokが出ると男が女の所に通う妻問婚が普通だったんだけど、これとは逆の「嫁入り」が当たり前になると、古い「呼ばひ」=妻問婚が不道徳なものにされちゃって「夜這い」なんて曲解がされるようになったってわけ」

なるほどな。ハルヒ、勉強になったぞ。

「もう!あんたって全然わかってないわね!ちゃんと説明聞いてたの?」
 聞いてたさ。だが何を怒ってるんだ。まるでわけがわからん。
「わかんならいい! もう、先に行くわ!」

 わかってはいるさ。ただわかってるってことを、おまえにわかられたくないだけだ。今は、まだな。

 しかし、そろそろ二人でいるときぐらい、本当の名前で呼んでくれてもいいんじゃないかね。「うるさい、あんたはキョンで十分よ」と言われるに決まってるだろうが。






















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