ハルヒと親父 @ wiki
技術の長門
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haruhioyaji
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ガジェット 1:「相合い傘」
「あ、くそ。降ってきやがった」
「梅雨に雨が降るのは当たり前でしょ。はい、これ」
「なんだ、この傘?」
「雑用係が濡れねずみになって風邪でも引かれたら、団長のあたしが困るの! どうせ、どっかからかっぱらってきた奴だから、返さなくてもいいわよ」
「じゃあ、ハルヒ、おまえはどうすんだ?」
「あ、あたしはちゃんとこのとおり……あれ?」
「やれやれ。……これは、おまえが使え。じゃあな」
「ちょっと、キョン、待ちなさい! これじゃ全然、この傘の意味がないじゃない!」
「『この傘の意味』って、最近は、花言葉だけじゃなくて、傘言葉まであるのか?」
「そんなわけないでしょ。この傘には高性能コンデンサ・マイクと、かつて警察無線で使われてたWIDE(Wireless Integrated Digital Equipment—統合型デジタル無線機器)が取り付けてあって、あんたが道すがら、万一あたしの知らない女と相合い傘しながら話す会話だとか、むしろこっちがメインだけど、あんたの『ああ、ハルヒ、今頃、何してんのかな。ちょっと電話してみるか』『ハルヒのシャツ、雨で濡れて少し透けてたよな』とかいう独り言を漏らさず伝えるようにできてるのよ。有希に頼んだら2時間で作ってくれたわ、……って何、言わせんのよ!!」
「いや、すまん。さすがに、そこまでのものとは思わんかった」
「ううう」
「うなるな、うなるな。こうすりゃ、いいだろ」
「な、な、な、なんであんたと、あ、あ、相合い傘なんか!?」
「これだけ近けりゃ独り言どころか、心の声だって聞こえるかもしれんぞ」
「な……、わかったわよ。どうせ帰るんだし。外は雨だし。あんたは傘持ってないし」
「ほら、行こうぜ」
「ちょっと言っとくけどね!」
「お、おう!」
「あたしの……心の声まで、聞かないでよね」
「そんな器用な芸当はできん」
「……ちょっとは、その芸当、身につけなさい」
「何か言ったか?」
「言わない! ほら、さっさと行くわよ!」
「梅雨に雨が降るのは当たり前でしょ。はい、これ」
「なんだ、この傘?」
「雑用係が濡れねずみになって風邪でも引かれたら、団長のあたしが困るの! どうせ、どっかからかっぱらってきた奴だから、返さなくてもいいわよ」
「じゃあ、ハルヒ、おまえはどうすんだ?」
「あ、あたしはちゃんとこのとおり……あれ?」
「やれやれ。……これは、おまえが使え。じゃあな」
「ちょっと、キョン、待ちなさい! これじゃ全然、この傘の意味がないじゃない!」
「『この傘の意味』って、最近は、花言葉だけじゃなくて、傘言葉まであるのか?」
「そんなわけないでしょ。この傘には高性能コンデンサ・マイクと、かつて警察無線で使われてたWIDE(Wireless Integrated Digital Equipment—統合型デジタル無線機器)が取り付けてあって、あんたが道すがら、万一あたしの知らない女と相合い傘しながら話す会話だとか、むしろこっちがメインだけど、あんたの『ああ、ハルヒ、今頃、何してんのかな。ちょっと電話してみるか』『ハルヒのシャツ、雨で濡れて少し透けてたよな』とかいう独り言を漏らさず伝えるようにできてるのよ。有希に頼んだら2時間で作ってくれたわ、……って何、言わせんのよ!!」
「いや、すまん。さすがに、そこまでのものとは思わんかった」
「ううう」
「うなるな、うなるな。こうすりゃ、いいだろ」
「な、な、な、なんであんたと、あ、あ、相合い傘なんか!?」
「これだけ近けりゃ独り言どころか、心の声だって聞こえるかもしれんぞ」
「な……、わかったわよ。どうせ帰るんだし。外は雨だし。あんたは傘持ってないし」
「ほら、行こうぜ」
「ちょっと言っとくけどね!」
「お、おう!」
「あたしの……心の声まで、聞かないでよね」
「そんな器用な芸当はできん」
「……ちょっとは、その芸当、身につけなさい」
「何か言ったか?」
「言わない! ほら、さっさと行くわよ!」
- 特攻服
- 何だ、古泉! なんで下駄箱のとこが、痴漢し放題のラッシュ時の埼京線の中みたいにごったかえしてるんだあ? また、あのサカリ猿たちか?
- 火の玉
- ええ、一つの傘であれほど持たすとは、染之助染太郎の域に達しかけていると言えるでしょう。
- 文芸部
- すべての会話を、こちらで受信、録音できることをすっかり忘れているとは、あまりに迂闊な人たち。
ガジェット2:ワッフル・デコーダー
- キョン
- 珍しいな、長門がパソコンに向ってるなんて。
- 長 門
- サイトを構築中。
- キョン
- ほう、どんなサイトだ。
- 長 門
- 「わっふる」止めされた二次創作を解析して、「わっふる」以降の部分を再構成するウェブアプリを実装した。レンタル・サーバーに公開するので許可を。
- キョン
- おいおい。それって、どうやって使うんだ?
- 長 門
- 興味ある?
- キョン
- い、いや、一般教養としてだな。
- 長 門
- URLを指定して、「で・わっふる」ボタンを押す。
- キョン
- で・わっふるって……。
- 長 門
- 「わっふる」を含むSSを自動巡回して、まとめて「で・わっふる」することも可能。これらは「青空が割れた文庫」というサイトとして公開される。
- キョン
- 大丈夫なのか、それって。
- 長 門
- 問題ない。むしろ現行の著作○法の方が情報通信技術との間に齟齬を来している。
- キョン
- だんだんアナーキーな話題になってきたな。
- 長 門
- 試す?
- キョン
- じゃあ、適当に「わっふる」と入ってるSSを探して、「で・わっふる」と。……おい、長門。
- 長 門
- 何?
- キョン
- いま変換したSSは、俺がハルヒに逆レイプされる寸前で「わっふる」止めされてるんだが、再構成された方は、長門が俺の上にのしかかってるぞ。
- 長 門
- それは仕様。
- キョン
- 仕様?
- 長 門
- 誰と誰の「わっふる」でも、あなたとわたしのSSに改変される。実世界を改変するよりも、はるかに少ないリソースで可能。周囲に与える影響もきわめて小さい。創作は自由。二次創作はもっと自由。三次創作、やりたい放題。
- キョン
- って、おい。
- ハルヒ
- ちょっと、キョン。部室のパソコンでエロサイト見るのは禁止って言ってあるでしょ!
- キョン
- は、ハルヒ(いつのまに)。いや、見てない、見てない。
- ハルヒ
- じゃ何よ、その、女子高生が男子校生の股間にまたがってる映像は!
- キョン
- (おい、長門。映像化までされるのか?)
- 長 門
- (それも基本仕様。気に入った?)
- ハルヒ
- ああ、これって、あたしがあんたの上にのしかかるところで終わってる話じゃないの!
- キョン
- 何で、知ってるんだハルヒ?
- ハルヒ
- そんなことは、どうだっていいのよ! 話の続きがあるのは良いとしても、なんで有希に相手が変わってるのよ?
- キョン
- い、いや、仕様らしいぞ。って、長門? 長門はいずこ?
- 長 門
- (今、私は光学迷彩を使用中。あなたたちには私は見えない。ごゆっくり)。
- ハルヒ
- 説明しなさい、キョン、あたしが納得できるように!!
- キョン
- いや、それ、無理。
- ハルヒ
- だったら体に聞くまでよ、うりゃー。
ガジェット3:ひみつ道具「シナリオライター」
- キョン
- ちょっと来い、古泉
- 古 泉
- なんでしょう? あなたから声がかかるなんて、めずらしい。
- キョン
- 長門に『ドラえもん』を与えたのはどこのどいつだ?
- 古 泉
- 存じません。あなたじゃなかったのですか?
- キョン
- おれがそんなことするか。
- 古 泉
- おやおや。では、コンピ研への日頃の貢献に対するささやかなお礼では?
- キョン
- おまえ、事態の深刻さをわざとスルーしてないか? 『ドラえもん』といえば、オーパーツの宝典、1963個もの現代世界にあっちゃいけない「ひみつ道具」の煮こごりみたいなマンガだぞ。
- 古 泉
- そんなに深刻に考えなくても。あいては、ただのフィクションですよ。
- キョン
- ああ、ハルヒならそのくらいの分別は着くさ。だが相手は長門だ。おまえだってH.G.ウェルズの『解放された世界』を読んだレオ・シラードが核連鎖反応に行き着き、それが実際にマンハッタン計画からアメリカの原子爆弾開発につながった話を知らない訳じゃあるまい!
- 古 泉
- つまり、あなたは、長門さんがその好奇心から、「ひみつ道具」のいずれかを実際に作ってしまうかもしれない、そう懸念されているのですね。
- キョン
- ああ。「タケコプター」ぐらいならまだいい。だが「タイムマシン」や「タイムベルト」でも作られてみろ。朝比奈さんはどうなる?
- 古 泉
- いや、それより恐ろしいものがありますよ。たとえば「もしもボックス」。受話器に話すだけでお手軽に世界改変が実現されてしまう。
- キョン
- まだあるぞ。「独裁者ボタン」で、自分とキョン以外はいらない、と言われてみろ。
- 古 泉
- いえ、あなたが本当に心配されているのは、「シナリオライター」ではありませんか。シナリオさえ書けば、登場人物は皆シナリオ通りに動いてくれる。世界を改変するまでもない、実に安上がりだ。
- キョン
- その通りだとも。涼宮ハルヒ系の同人誌など、ほとんどが陵辱ものなんだぞ! おまえ、コンピ研部長にハルヒを「どじょう責め」させるつもりか。
- 古 泉
- あなたの意外な一面とコレクションの一部をかいま見た気がしましたよ。なるほど、そういう趣味をお持ちでしたか。
- キョン
- 俺の趣味なんかどうでもいい。なんとかならないのか。
- 古 泉
- ただ本を取り上げるだけでは、長門さんの興味はむしろ強化されるでしょうね。そうですね、こっそり『ドラベース』と取り替えるのはどうでしょう?あれなら野球マンガで罪は無い。
- キョン
- そんなことで納得するか。
- 古 泉
- 結局のところ、あなた自身が長門さんから話を聞いて、興味の方向をさぐり、必要ならさりげなく誘導するというのが上策だと思いますが。
● ● ●
- 古 泉
- いかがでした?
- キョン
- 「読書の邪魔」と言われた。
- 古 泉
- それはそれは。しかし結局のところ「陵辱もの」が避けられれば、よろしいのではありませんか?
- キョン
- SOS団内乱交ものもダメだ。
- 古 泉
- 実は、うちにある同人誌の中には、ハルキョン派の聖典と呼ばれる『ぽにってハ○ヒ!』と『夏○日の。』があるのですが。
- キョン
- なんだって!?
- 古 泉
- 誤解なさらないでください、これも機関の活動の一環でして。
- キョン
- そんな話はいい。
- 古 泉
- ええ。で、「シナリオライター」と先に述べた純愛系同人誌との使用は、機関の利害からすれば、排除するよりも利用する価値の方が高いものでして。僕の長い徒労と取り越し苦労を考えていただければ、理解していただけると思いますが。
- キョン
- ……そういうことは本人たちの意思に任せてもらえるとありがたいんだが。
- ハルヒ
- さっきから、何、隅っこで話してんのよ?
- 古 泉
- ええ、涼宮さん。彼からすばらしい提案がありまして、詳細を詰めた上でお話しようと思っていたのですよ。
- ハルヒ
- 何?どんな提案?
- 古 泉
- 彼が、SOS団製作映画の次回作について、とてもよいシナリオとすばらしい演出方法を考えついたそうで。演出方法については、長門さんのご協力も必要となるのですが。
- キョン
- (く、こいずみ、この、うらぎりもの・・・)
ガジェット3:ひみつ道具「シナリオライター」その後
- 古 泉
- いやあ、すばらしい映像が撮れましたね。編集もほとんど要らず、ストーリーもハルキョン派なら涙を流し胸をかきむしり吐血するほど、いずれもすばらしい出来映えです。荒○風羽氏の『ROU○S』『放課○デイト』、TTT氏の『ハル○かわ○い』シリーズを取り入れることができたのも幸運でした。効果音その他の処理はお任せください。今回はプロに依頼してありますので、お二人が徹夜なさることはありませんよ。いや、却ってご迷惑でしたか。
- キョン
- 饒舌だな、古泉。
- 古 泉
- おや、お顔の色がすぐれませんね。涼宮さんを見てください、撮影の疲れさえ見えず、いつもより輝いておられる。
- キョン
- ああ、つやつやのぷーだな。
- 古 泉
- お疲れは分かりますが、不機嫌の訳は? もとはといえば、あなたのナイスなアイデアから始まった企画だったのですよ。ああ、ご心配なく。谷口氏がいかがわしい催眠術を弄する輪姦シリーズは、谷口氏ごと機関で買い上げ焼却しました。コンピ研部長氏は、どじょうごと、もう一度巨大カマドウマになっていただいて……。
- キョン
- おまえらにとっては《企画》なんだろうが、俺にとっては《生活》そのものなんだ。
- 古 泉
- ええ、確かにあなた方の日常生活の一コマを切り取ったものになってますね。再編集すれば、披露宴での「新郎新婦、その愛の軌跡」紹介ビデオになりますよ。
- キョン
- ……正直、身が持たん。
- 古 泉
- あなた、まさか……。
- キョン
- ああ。
- 古 泉
- 現実にアレを?
- キョン
- ああ。
- 古 泉
- 毎日?
- キョン
- できることはな。
- 古 泉
- 背中に文字を書いて当てっこ、も?
- キョン
- 今じゃ三十字以上、判読可能になった。
- 古 泉
- ……平安貴族のように和歌のやり取りができますね。
- キョン
- おい、古泉、ちょっと見ろ! あのハルヒが左手に持ってる本だ。非健全本はみんな回収したんじゃなかったのか?
- 古 泉
- いえ、あなた方だけが登場するハルキョンHモノまで回収する必要ないのでは、という意見が大勢を占めまして……。しかし、あの本には覚えがありますよ。非健全本の中には確か、あなた方にかわいいベイビィが授かるものがありましたね。
- キョン
- めったなこと言うな、古泉。メタなことを言って悪いが、今これを書いてる奴は、おれを先日「子連れバツイチ」にしてるんだぞ。
- 古 泉
- 涼宮さんが、その本を振って、大声であなたをお呼びです。
- 「これは映画(フィクション)ではない。くりかえす。これは映画(フィクション)ではない」
ガジェット4:僕らの夢「KFディアクティベイター」
- キョン
- き、今日も、長門はパソコンか。ハルヒはどうした?
- 長 門
- 使用許可は出ている。今回は彼女も共同開発者の一人。
- キョン
- そ、そうか。で、今度は何をつくってるんだ?
- 長 門
- KFディアクティベイター。実装化の目処がついた。性能実証テストにあなたの協力を得たい。
- キョン
- それは構わないが、どういうものなんだ?
- 長 門
- 大丈夫。あなたの身体を傷つけるのは本意ではない。
- キョン
- わ、わかった。協力する。で、何をすればいい?
- 長 門
- やってみせた方が理解しやすい。
- キョン
- そうなのか。
- 長 門
- 簡略化のために、テキストを読み込み、これを処理して、テキストとして処理するところを見せる。これで概略が理解されるはず。
- キョン
- ああ。はじめてくれ。
- 長 門
- 入力 :
バッシンバッシンとアタックを決めまくるハルヒ。 飛び跳ねるたびにまくれあがる裾からのぞくヘソなんかに興味はねえ と言っておくぜ。注目すべきはハルヒの表情さ。
- キョン
- へ?(な、なんだ、いまのテキストは?)
- 長 門
- Kフィルターを無効化する。許可を。
- キョン
- よ、よし。やっちまえ。
- 長 門
- 出力 :
体操着のハルヒを見るのは至上の喜びだ。他の男子どもの目に触れるのは 我慢ならないが、伸びるすらりとして無駄の無い足、それでいて俺のアタ マを重みを受け止める時は、ほどよい弾力で受け止めてくれるむちっりと した太もものすべてをあらわにしたブルマ姿は言うに及ばず、学校指定の 体操着とはいえ、それを着る者の、スレンダーにして出るとこ出てる魅惑 的なボディラインを際出させる性能には、特別な評価を禁じ得ない。特に 裾から見え隠れする、小さく縦長のへそは、そこにキスした者しか知らな いあいつの表情を、いまアタックを打つ躍動的な少女の笑顔に重ね合わせ る。
- キョン
- な、長門さん、それは、いったい?
- 長 門
- Kフィルターを無効化した結果、出力されたテキスト。
- キョン
- Kフィルターってのは、ひょっとして?
- 長 門
- 業界の一部で「キョン・フィルター」と呼ばれるもの。KFディアクティベイターは、これを無効化する。現在、テキスト・レベルでの無効化効率は60%前後。さらに効率を向上させ、近日中にこれと同じ機能をあなたの口蓋に装着する予定。
- キョン
- ……ちなみに、「わっふる」止めしても?
- 長 門
- KFディアクティベイターは、前述のワッフル・デコーダーをライブラリのひとつとして利用している。自動的に「で・わっふる」されるだけ。
- キョン
- ちょっと待て。「で・わっふる」でやりたい放題とか、言ってただろ。そんな妄想発生器を使っておいて、フィルターを無効化なんていうが、そんなのは俺の本心とは何の関係も……。
- 長 門
- 試す?
- キョン
- ……ごめんなさい。
ガジェット4:僕らの夢「KFディアクティベイター」つづき
「な、長門、それで、性能実証テストって奴だが」
長門は、標準をセットするような動きで、俺の方を見た。俺は地雷の上であぐらを組み直したバカとは、こういう気分になるんじゃないかと、今ならかなりの自信を持って断言できる。
「……おれは、なにを、すれば、いいんだ?」
長門はすっと左手を俺の方に伸ばした。手には二つ折りになったレポート用紙。
「これ、読んで」
「声を出して、読めばいいんだな」
「そう」
長門は、標準をセットするような動きで、俺の方を見た。俺は地雷の上であぐらを組み直したバカとは、こういう気分になるんじゃないかと、今ならかなりの自信を持って断言できる。
「……おれは、なにを、すれば、いいんだ?」
長門はすっと左手を俺の方に伸ばした。手には二つ折りになったレポート用紙。
「これ、読んで」
「声を出して、読めばいいんだな」
「そう」
待機時間以前の問題だとは思うが、とりあえず俺はホッとしていた。 この安堵感の出所は何かと考えてみるに、早い話が俺は長門が中河 でも誰でもいい、他の男と陸まじげに歩いている姿など見たくはな いのである。
俺はなんとかとちらずに読み終えた。もう少し前の方にある、さして親しくもなかった知人が長門に当てた例の手紙の箇所でも読まされていたら、俺は自分を構成する素粒子のプランク定数をなんとかして引き上げてでも、四散して消えてなくなろうとしただろう。フィルター以前の問題だ。
俺の心拍数を一気に下げるような静かな声で長門は言った。
「今の音声データを入力し、Kフィルターを無効化する。許可を」
やっぱり無効化しなくちゃならないのか。どうしても?
「どうしても」
「じゃあ、やってくれ」もう、どうにでもしてくれ。
俺の心拍数を一気に下げるような静かな声で長門は言った。
「今の音声データを入力し、Kフィルターを無効化する。許可を」
やっぱり無効化しなくちゃならないのか。どうしても?
「どうしても」
「じゃあ、やってくれ」もう、どうにでもしてくれ。
俺には、かなり長く感じられる間があった。さっきのテキスト変換とは比べ物にならないほどの時間だ。いや,十分もかかっちゃいないが、データ量はさっきとさほど変わらないだろう。今時の音声認識が、そんなにのろまだとも思えない。
俺は不思議に思って、長門の肩越しに、パソコンのディスプレイを見た。
俺は不思議に思って、長門の肩越しに、パソコンのディスプレイを見た。
待機時間以前の問題だとは思うが、とりあえず俺はホッとしていた。 この安堵感の出所は何かと考えてみるに、早い話が俺は長門が中河 でも誰でもいい、他の男と陸まじげに歩いている姿など見たくはな いのである。
おい,長門。変換ボタンはどれだ? それとも、どのメニューにあるんだ?
「変換は終了した。これは出力データ」
俺が読み上げたとおり、だぞ? だよな?
「KFディアクティベイターの開発は一時中断。涼宮ハルヒには、期待通りの成果が得られなかったと報告する」
え?え? 長門さん、いま何と?
「変換は終了した。これは出力データ」
俺が読み上げたとおり、だぞ? だよな?
「KFディアクティベイターの開発は一時中断。涼宮ハルヒには、期待通りの成果が得られなかったと報告する」
え?え? 長門さん、いま何と?
長門は席をたち、つかつかと部室の内を横切り,激しくドアと開けて閉め,出て行った。
「くそったれ」
という声がしたような気がしたのは、気のせいだと思いたい。
「くそったれ」
という声がしたような気がしたのは、気のせいだと思いたい。
かくして俺の精神生活は一時の平和を迎えたようだった。
しかしこの世界が明日どうなっているかは、誰が知っていよう。.... Only God knows.
しかしこの世界が明日どうなっているかは、誰が知っていよう。.... Only God knows.