ハルヒと親父 @ wiki

親父抜きの大晦日その後

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haruhioyaji

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  「……ハルヒ」
「何よ?」
「……風呂のおかげで、生き返った」
「たいがいにしなさいよね。本当に死んだらどうすんの!?」
「ああ、すまん」
「あんたは助けに駆けつけたつもりだろうけど、そうなったのは全部あのバカ親父のせいだけど、力つきたあんたを発見するあたしの身にもなりなさい!」
「すまん。あやまる」
「わかったら、さっさと着替えなさい! 風邪引くわよ!」
「ハル、パジャマ、出してあげた?」
「出したわよ」
「サイズはどうかしら?」
「一寸の狂いも無く、ぴったりよ」
「これ、親父さんのじゃないよな?」
「ぜんっぜん違うわ」
「よかったわ。キョン君がいつ泊まりに来てもいいようにと買っておいたの。さすが、ハルの採寸ね。本当にぴったり」
「採寸って、おまえ、そんなことしたか?」
「覚えてないなら、忘れてよし! いいえ、ぜひ忘れなさい。今の会話、全部!」
「はあ。どこからだ? 『本当に死んだら……』あたりからか?」
「それは教訓として、まぶたの裏に刻みなさい」
「ふふ。だっこするとウエストや胸回りはわかるし、腕を組んでも袖丈のサイズがわかるわね」
「母さん!」
「……」
「あんたも、このタイミングで黙るな!」
「あと、お互いの服を交換したり……」
「母さん、暴走し過ぎ!」
「あら。お父さんが、二次創作でも、このあたりは押さえとけって……」
「夫婦の会話にメタな視点を持ち込まない!」
「キョン君、お腹すいたでしょ? カロリー補給しないと、体温を維持できないわ。とりあえず具のたっぷりめのスープはできたのだけど、それでひと心地ついたら、ちゃんとした食事にしましょう。ハル、給仕が終わったら、母さんを手伝ってね」
「分かってるわよ。はい、ひよこ豆と厚切りベーコンのスープ。トマト味だけど、大丈夫よね?」
「ああ。どっちかっていうと好物だ。……うまい」
「あんたの好みって、いまいちわかんないのよね。うまい/まずいをもっと顔に出しなさい」
「いや、腹減ってると食えるだけで幸せ、ということがあるだろ?」
「それは分かるけど、つくる方の身にもなりなさい。張り合いっていうか、工夫のしがいっていうか……」
「ハル、つくる方からメーデー(救援信号)よ」
「あ、はい! ごめん、母さん」
「大丈夫、想定の範囲内よ。でも、お腹をすかせた人とおしゃべりしても、その人を満たすことはできないわ」
「って、このメモ! 全部、作るの!?」
「もともと和洋中のおせちって提案したのは、あなたよ、ハル」
「で、でも、親父も帰って来れないし、あたしたち2人じゃ余ると思うわ。あ」
「キョン君を入れれば3人よね」
「ええ、でも……」
「お父さんが担当するはずだった中華は、かあさんが引き受けるわ。だからハル、キョン君と一緒に洋の方をお願いね。レシピは……この本よ。該当箇所にポストイットを貼っておいたから、二人で頑張って。あ、キョン君、食べてからでいいのよ」
「ちょっと、母さん、これフランス語!」
「だって西洋料理で、母さんがちゃんと知ってるのって、フランス料理だけだもの」
「じゃなくて、この本!」
「Le Répertoire de la Cuisine(ル レペルトワール ドゥ ラ キュイジンヌ)。英訳もどこかにあったはずだけど、どのみち料理の単語は発音が違うだけでほとんど同じスペルよ。声に出せなくたって二人なら大丈夫」
「何が根拠なのよ! あと、これ、分量、一切書いてないわよ!」
「フランス料理のバイブルみたいな本なんだけど。新米シェフはそれで勉強するの。いちいち計ってたら面倒くさいでしょ?」
「バイブルじゃなくて入門書が欲しかったわ……。キョン、あんたが食べる間に、本棚あさってくるから。素材ごとで悪いけど、これ自家製ハム、ソーセージ、あと今朝焼いたパン。なんとかお腹持たして。新年を迎える前にやり遂げないと大変なことが起こるわ!!」
「た、大変なことって?」
「とにかく大変なことよ!! いい、キョン、生き延びるためには、やるしかないの!」















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