あたしの日々にも、一日ぐらい…
こんなにいい日があったっていいよね?
こんなにいい日があったっていいよね?
「キョンくんキョンくーん!」
そういって妹が部屋に突入してきたのは、晩飯を食い終わって
ぼちぼち課題でもやるか、と思っていたころだった。
こら、親しき仲にも礼儀ありっていうだろ。
たとえ家族だろうと、ノック声かけ、これ世界の常識だ。
「キョンくん昔のおもちゃ捨てちゃったー?」
聞いちゃいねえし。
「おもちゃ? んなもん突然いわれてもな…
あーそうだ、あの辺に確か空けてないプラモが…」
っと、いかん。あれはハルヒのお達しでフリマに出しちまったんじゃなかったか。
さらばケン○ファー。
「ちょっと心当たりがないな。何に使うんだ?」
「んーとね、向こうの幼稚園で、バザーやるから何かないかってお母さんが!」
バザー? ああ、あの何とかっていうカトリック系の幼稚園か。
確か梅雨のちょい前くらいにバザーをやるんだよな。もうそんな時期か。
申し訳程度に縁日なんかもあって、ちょっとしたお祭気分なんだよな。
で、うちの母上様はこれに乗じて我が家のガラクタを
一掃してしまおうと言う魂胆らしいが。
「俺のところからは、何も出せそうもないな」
「えー、なんかないのー? みくるちゃんの服とかー」
いやあれは俺の私物じゃないしな。それに誰かにやるくらいなら
俺がこの手に……って何を言わせるんだこいつは。
「あーキョンくんえっちなかおしてるー」
だまらっしゃい。
そういって妹が部屋に突入してきたのは、晩飯を食い終わって
ぼちぼち課題でもやるか、と思っていたころだった。
こら、親しき仲にも礼儀ありっていうだろ。
たとえ家族だろうと、ノック声かけ、これ世界の常識だ。
「キョンくん昔のおもちゃ捨てちゃったー?」
聞いちゃいねえし。
「おもちゃ? んなもん突然いわれてもな…
あーそうだ、あの辺に確か空けてないプラモが…」
っと、いかん。あれはハルヒのお達しでフリマに出しちまったんじゃなかったか。
さらばケン○ファー。
「ちょっと心当たりがないな。何に使うんだ?」
「んーとね、向こうの幼稚園で、バザーやるから何かないかってお母さんが!」
バザー? ああ、あの何とかっていうカトリック系の幼稚園か。
確か梅雨のちょい前くらいにバザーをやるんだよな。もうそんな時期か。
申し訳程度に縁日なんかもあって、ちょっとしたお祭気分なんだよな。
で、うちの母上様はこれに乗じて我が家のガラクタを
一掃してしまおうと言う魂胆らしいが。
「俺のところからは、何も出せそうもないな」
「えー、なんかないのー? みくるちゃんの服とかー」
いやあれは俺の私物じゃないしな。それに誰かにやるくらいなら
俺がこの手に……って何を言わせるんだこいつは。
「あーキョンくんえっちなかおしてるー」
だまらっしゃい。
その後何とか妹を追い出した俺は、一応格好だけでも探すだけはしてみようと
部屋のそこかしこをひっくり返し始めた。
……しかしなかなか見つからないもんだな。あるのは本物のガラクタで、
正直商品価値なんざ欠片もないようなものばっかりだ。
まあ、あったとしてもああいうバザーには出さんわな。
マリア様には悪いが、今の俺は毎週の喫茶店代だけでも馬鹿にならんのでね。
どうせなら俺に恩恵が流れてくるフリマなんかのほうが望ましいのさ。
部屋のそこかしこをひっくり返し始めた。
……しかしなかなか見つからないもんだな。あるのは本物のガラクタで、
正直商品価値なんざ欠片もないようなものばっかりだ。
まあ、あったとしてもああいうバザーには出さんわな。
マリア様には悪いが、今の俺は毎週の喫茶店代だけでも馬鹿にならんのでね。
どうせなら俺に恩恵が流れてくるフリマなんかのほうが望ましいのさ。
で、その週の日曜。
SOS団の集まりもないし、家に閉じこもっているのもつまらないので
ぶらぶらと出かけてみることにした。
深い意味はない。来週あたりから雨も増えるというし、
この五月晴れを見納めるついでに散歩でもしようかと思っただけさ。
と、当てもなく歩いていた俺は、どこからか子供たちの楽しそうな
はしゃぎ声が聞こえるのに気づいた。
これは、もしかしてあのバザーか。
…しかし、高二の男が幼稚園にノコノコと行くっていうのも
何か気恥ずかしいものがある。散財というほどの金もないしな。
だが、このときの俺は何かに憑かれていたのか、もしくは魔がさしたのか、
少しぐらいは覗いてもいいかな、という気になっていた。
ええい、ガキと笑わば笑え。これが いきものの サガか…
アホなことを考えている間にも、足は自然と幼い日の祭の場を目指していた。
SOS団の集まりもないし、家に閉じこもっているのもつまらないので
ぶらぶらと出かけてみることにした。
深い意味はない。来週あたりから雨も増えるというし、
この五月晴れを見納めるついでに散歩でもしようかと思っただけさ。
と、当てもなく歩いていた俺は、どこからか子供たちの楽しそうな
はしゃぎ声が聞こえるのに気づいた。
これは、もしかしてあのバザーか。
…しかし、高二の男が幼稚園にノコノコと行くっていうのも
何か気恥ずかしいものがある。散財というほどの金もないしな。
だが、このときの俺は何かに憑かれていたのか、もしくは魔がさしたのか、
少しぐらいは覗いてもいいかな、という気になっていた。
ええい、ガキと笑わば笑え。これが いきものの サガか…
アホなことを考えている間にも、足は自然と幼い日の祭の場を目指していた。
この快晴も手伝ってか、幼稚園の庭先には人がごった返していた。
朝の通勤ラッシュとかこんな感じなんだろうな。俺は知らんが。
しかしその中にあって、子供たちがあちらからこちらへと
走り回っている様子はなんともほほえましい。
あのころってのは毎日が面白くてしょうがないんだよな。
毎日が小さな大発見の連続で。明日は今日よりいい日だと疑わない。
俺にもあんな時代があったのかねえ。もう遠い昔のような気がするな。
と、俺の目が違和感を捉えた。
なんだ? 何を見た?
なんとなく野次馬根性もあってその方向へ近づいていってしまう。
と、そこにいたのはこの場に似つかわしくないストリートファッションの男数名、
そして俺の顔を認めてこちらに突進してくるのは……
「とにかく! 私はこの人と約束があるんです!」
……おい、そいつは何の冗談だ、橘京子。
朝の通勤ラッシュとかこんな感じなんだろうな。俺は知らんが。
しかしその中にあって、子供たちがあちらからこちらへと
走り回っている様子はなんともほほえましい。
あのころってのは毎日が面白くてしょうがないんだよな。
毎日が小さな大発見の連続で。明日は今日よりいい日だと疑わない。
俺にもあんな時代があったのかねえ。もう遠い昔のような気がするな。
と、俺の目が違和感を捉えた。
なんだ? 何を見た?
なんとなく野次馬根性もあってその方向へ近づいていってしまう。
と、そこにいたのはこの場に似つかわしくないストリートファッションの男数名、
そして俺の顔を認めてこちらに突進してくるのは……
「とにかく! 私はこの人と約束があるんです!」
……おい、そいつは何の冗談だ、橘京子。
「ありがとう。助かっちゃいました♪」
俺の傍らで上機嫌真っ盛りなのは、あの誘拐少女こと橘京子。
……何でこんな奴と一緒に、しかも幼稚園のバザーなんか廻る羽目になってやがる?
「それにしてもあの人たち、最低。
幼稚園まで来て何やってるのかしら」
まあ俺としては連中が咲き盛る前の蕾を目当てで来たとは考えたくないがな。
って、それよりも。
「…なんでお前は俺についてくる。
あのナンパ連中をごまかせたってんなら、俺はもうお役御免だろ」
「もうっ! そういうこと言わないの。
せっかくだからここまで来たら一緒に廻りましょう?」
せっかくだから俺はこの誘拐犯を選ぶぜ!…何言ってんだ俺は。
「どうしてもダメ、ですか?」
そんな顔するなよ。俺が苛めてるみたいじゃねえか…!
ちっ、しょうがない。観念するか。
あー、これが朝比奈さんだったらどんなに良かったことやら。
俺がマリア様にも負けないエンジェリックスマイルを思い浮かべていると、
隣の橘がジャケットも裾を思い切り引っ張ってきた。なんなんだお前。
「…女の子とのデート中に、他の子の事を考えるなんて、
重大なマナー違反ですよ?」
顔に出ていたらしい。いかんいかん。しかし麗しの女神と犯罪者じゃ
天秤にかける以前の問題だしな。
「…これがデートとは知らなかったが?」
「いいから! もう、いちいち女の子にこういうこと言わせるなんて
ダメですよ?そんなんじゃ」
なんか分からんが怒られたらしい。
まあいいか。どうせ一人で廻ってもすぐ飽きてしまいそうだしな。
それにもし、こいつがさっきの連中にまた絡まれでもしたら夢見が悪い。
「わかった。…幼稚園のデートなんざ初耳だがな」
「よろしい」
橘が満面の笑みで胸を張る。さっきから怒ったり笑ったり忙しい奴だ。
「忙しくなんてないですよ。
あたしの心はさっきからこーんなに快晴なのです!」
橘がおどけた調子で両手を広げてくるくる回る。
おい、危ないぞ、人にぶつかるだろ。
なにやら一層ハイになったこのくるくる少女の手を引いて、俺はその場を後にした。
俺の傍らで上機嫌真っ盛りなのは、あの誘拐少女こと橘京子。
……何でこんな奴と一緒に、しかも幼稚園のバザーなんか廻る羽目になってやがる?
「それにしてもあの人たち、最低。
幼稚園まで来て何やってるのかしら」
まあ俺としては連中が咲き盛る前の蕾を目当てで来たとは考えたくないがな。
って、それよりも。
「…なんでお前は俺についてくる。
あのナンパ連中をごまかせたってんなら、俺はもうお役御免だろ」
「もうっ! そういうこと言わないの。
せっかくだからここまで来たら一緒に廻りましょう?」
せっかくだから俺はこの誘拐犯を選ぶぜ!…何言ってんだ俺は。
「どうしてもダメ、ですか?」
そんな顔するなよ。俺が苛めてるみたいじゃねえか…!
ちっ、しょうがない。観念するか。
あー、これが朝比奈さんだったらどんなに良かったことやら。
俺がマリア様にも負けないエンジェリックスマイルを思い浮かべていると、
隣の橘がジャケットも裾を思い切り引っ張ってきた。なんなんだお前。
「…女の子とのデート中に、他の子の事を考えるなんて、
重大なマナー違反ですよ?」
顔に出ていたらしい。いかんいかん。しかし麗しの女神と犯罪者じゃ
天秤にかける以前の問題だしな。
「…これがデートとは知らなかったが?」
「いいから! もう、いちいち女の子にこういうこと言わせるなんて
ダメですよ?そんなんじゃ」
なんか分からんが怒られたらしい。
まあいいか。どうせ一人で廻ってもすぐ飽きてしまいそうだしな。
それにもし、こいつがさっきの連中にまた絡まれでもしたら夢見が悪い。
「わかった。…幼稚園のデートなんざ初耳だがな」
「よろしい」
橘が満面の笑みで胸を張る。さっきから怒ったり笑ったり忙しい奴だ。
「忙しくなんてないですよ。
あたしの心はさっきからこーんなに快晴なのです!」
橘がおどけた調子で両手を広げてくるくる回る。
おい、危ないぞ、人にぶつかるだろ。
なにやら一層ハイになったこのくるくる少女の手を引いて、俺はその場を後にした。
その後はもう息つく間もないほど、次から次へと出店を駆け巡った。
途中から俺もやけくそになって橘と一緒に大騒ぎしながら店という店を冷やかした。
途中から俺もやけくそになって橘と一緒に大騒ぎしながら店という店を冷やかした。
「あ、これなつかしい」
橘の弾んだ声に振り向くと、あいつは昔の特撮に出てきた怪獣人形を手に取っていた。
「随分古いな」
「知ってる?」
「ああ」
そうだ。毎週この番組が楽しみでしょうがなかった。
町全体が寝坊する日曜の朝、妹と二人で早起きして熱心に見てたもんだ。
もちろん俺はヒーローになりきって……
「…大丈夫ですか?」
どうやらボーっとしていたらしい俺の顔を、橘が心配そうに覗き込んでいる。
なんでもない、ちょっと思い出に浸っていただけだ。
「…そう、ですか」
橘はなにやら難しい顔をしていたが、ふいに笑顔で俺のほうに向き直った。
その顔は満面の笑みというか、どちらかというといたずらを思いついたときの
妹のような顔だった。
「ねえ、ひとつ聞いていいですか?」
手には怪獣の人形。
「もしあたしが悪い人たちにさらわれちゃったりしたら、どうします?」
「…どうもこうも、しねえよ。
第一、悪の組織はお前らだろうが」
言って少し心が痛んだ。こんなときまで冷たく当たらなくてもいいはずだ。
「……ですよね」
橘は表情を崩さずにうなずくと、また人形の物色に移った。
やれやれ、意図のわからない質問ってのは手に負えないな。
橘の弾んだ声に振り向くと、あいつは昔の特撮に出てきた怪獣人形を手に取っていた。
「随分古いな」
「知ってる?」
「ああ」
そうだ。毎週この番組が楽しみでしょうがなかった。
町全体が寝坊する日曜の朝、妹と二人で早起きして熱心に見てたもんだ。
もちろん俺はヒーローになりきって……
「…大丈夫ですか?」
どうやらボーっとしていたらしい俺の顔を、橘が心配そうに覗き込んでいる。
なんでもない、ちょっと思い出に浸っていただけだ。
「…そう、ですか」
橘はなにやら難しい顔をしていたが、ふいに笑顔で俺のほうに向き直った。
その顔は満面の笑みというか、どちらかというといたずらを思いついたときの
妹のような顔だった。
「ねえ、ひとつ聞いていいですか?」
手には怪獣の人形。
「もしあたしが悪い人たちにさらわれちゃったりしたら、どうします?」
「…どうもこうも、しねえよ。
第一、悪の組織はお前らだろうが」
言って少し心が痛んだ。こんなときまで冷たく当たらなくてもいいはずだ。
「……ですよね」
橘は表情を崩さずにうなずくと、また人形の物色に移った。
やれやれ、意図のわからない質問ってのは手に負えないな。
その後の橘は妙に口数も少なくなり、
俺が話しかけてもあまり反応しなくなった。なんだってんだこいつは。
いつの間にか、俺と橘の間にはずいぶんと間が開くようになってしまった。
俺が近づくと、橘が小走りで遠ざかる。
そんなサイレントコメディみたいな真似を繰り返してるうちに、
とうとう橘の姿は見えなくなってしまった。
知るかあんな奴。
俺が話しかけてもあまり反応しなくなった。なんだってんだこいつは。
いつの間にか、俺と橘の間にはずいぶんと間が開くようになってしまった。
俺が近づくと、橘が小走りで遠ざかる。
そんなサイレントコメディみたいな真似を繰り返してるうちに、
とうとう橘の姿は見えなくなってしまった。
知るかあんな奴。
人間のメンタリティは天候気候にも大きく影響を受けるときくが、
俺も太陽が沈み始めると途端に気分がダウナーになってきやがった。
ええい、胸糞悪い。なんなんだいったい。
このまま帰ろうかどうしようかと迷っていた俺の耳に、聞きなれた声が届いた。
「いいから、放してください!」
みると、さっきのヒップホップ連中にまたしても橘が絡まれていた。
おいおい、しつこいなあいつらも。そんなに犯罪者がいいか?
橘も早く帰ればいいのにな。何をぐずぐずしてたんだよ。
……ええい忌々しい忌々しい。
俺も太陽が沈み始めると途端に気分がダウナーになってきやがった。
ええい、胸糞悪い。なんなんだいったい。
このまま帰ろうかどうしようかと迷っていた俺の耳に、聞きなれた声が届いた。
「いいから、放してください!」
みると、さっきのヒップホップ連中にまたしても橘が絡まれていた。
おいおい、しつこいなあいつらも。そんなに犯罪者がいいか?
橘も早く帰ればいいのにな。何をぐずぐずしてたんだよ。
……ええい忌々しい忌々しい。
「ここにいたのか。さっきから探したぞ」
さて、俺は何をやってるのでしょう。
気がついたら、ヒップホップと橘の間に割ってはいっていた。
アクセだらけの手を払って、橘をかばうように立つ。
「dんwけlmlえあ!?」
なんだかろれつの回らない言葉ですごんでくるラッパー連中。
うお、すごい迫力だ。これがブラックピープルのディスリスペクトか。
どうみても日本人だがな。
「ほら、いこうぜ」
「でも…」
俺はなんちゃってブラックどもを見なかったことにして脱出を試みたが、
そう世の中はうまくいかないようだった。
一番ガタイのいいやつが俺の胸倉をつかみあげる。おい、ここでやる気かよ。
そいつがそのままものすごい腕力で俺を放り投げた。
吹き飛んで後ろの台に激突する。…これは洒落にならんぐらい痛いな。
「…ョンさん!」
俺を放り投げたラッパー野郎は、今度はにたにたと笑いながら橘の肩に手を回している。
ったく、ほんとにこいつらは幼稚園に来て何やってんだ。
マリア様のお膝元だぜ?
あーくそ、悔しいが今ので完全にビビっちまったな俺。足が動かねえや。
さて、俺は何をやってるのでしょう。
気がついたら、ヒップホップと橘の間に割ってはいっていた。
アクセだらけの手を払って、橘をかばうように立つ。
「dんwけlmlえあ!?」
なんだかろれつの回らない言葉ですごんでくるラッパー連中。
うお、すごい迫力だ。これがブラックピープルのディスリスペクトか。
どうみても日本人だがな。
「ほら、いこうぜ」
「でも…」
俺はなんちゃってブラックどもを見なかったことにして脱出を試みたが、
そう世の中はうまくいかないようだった。
一番ガタイのいいやつが俺の胸倉をつかみあげる。おい、ここでやる気かよ。
そいつがそのままものすごい腕力で俺を放り投げた。
吹き飛んで後ろの台に激突する。…これは洒落にならんぐらい痛いな。
「…ョンさん!」
俺を放り投げたラッパー野郎は、今度はにたにたと笑いながら橘の肩に手を回している。
ったく、ほんとにこいつらは幼稚園に来て何やってんだ。
マリア様のお膝元だぜ?
あーくそ、悔しいが今ので完全にビビっちまったな俺。足が動かねえや。
休みが取れたら 君を連れ出し
昔のヒーローの おもちゃを探そう
昔のヒーローの おもちゃを探そう
特撮的漫画的ヒーローだったら悪者をやっつけてハッピーエンドなんだがな。
正直俺なんかがヒーローになれるわけがない。
俺は平々凡々とした一般人なんだから。
正直俺なんかがヒーローになれるわけがない。
俺は平々凡々とした一般人なんだから。
知らないだろうね 彼らはみんな
死ぬこと恐れず 勇気があってね
死ぬこと恐れず 勇気があってね
……何言ってんだろうな俺は。
そんなのが言い訳になるかよ。
いくらなんでも、そいつは格好悪すぎと違うか?
そんなのが言い訳になるかよ。
いくらなんでも、そいつは格好悪すぎと違うか?
デビルマン バロム1 ロボット刑事K
どうせ宇宙人未来人に超能力者、ついでに神様までそろってやがるんだ。
今更、特撮ヒーローの一人や二人増えたところで、何の不思議がある!
今更、特撮ヒーローの一人や二人増えたところで、何の不思議がある!
僕は 君のために死ねるだろうか!!
俺はゆっくりと立ち上がった。相手はこっちには気づいてない。
もう自分が何を考えているのかもよく分からない。
くそ、さっき頭でも打ったか。数回頭を横に振る。
…連中は全部で三人。一人が橘を後ろから羽交い絞めにし、
さっきのガタイがいい奴ともう一人が両脇からベタベタと胸やら腰やらを触っている。
俺をふっ飛ばしてくれたマッチョ野郎は、おあつらえ向きに後ろを向けてやがるな。
……さて、いくか。敵は地獄のデストロンだ。
俺は猛然とダッシュすると、マッチョラッパーの後頭部めがけて痛恨の飛び蹴りを放つ。
小気味良い音を立てて今度はヤツが吹っ飛ぶ。ジャパニーズ魂なめんな。
「キョンさん!!」
動揺する二人の隙をついて拘束から抜け出した橘が、
後ろから抑えてた奴の金的に前蹴り、鳩尾に肘、そして鼻の下に裏拳の
流れるような三連撃を叩き込む。
…グッドだ。ラップなんざ足元にも及ばないリズムの心地よさだったぜ。
もう自分が何を考えているのかもよく分からない。
くそ、さっき頭でも打ったか。数回頭を横に振る。
…連中は全部で三人。一人が橘を後ろから羽交い絞めにし、
さっきのガタイがいい奴ともう一人が両脇からベタベタと胸やら腰やらを触っている。
俺をふっ飛ばしてくれたマッチョ野郎は、おあつらえ向きに後ろを向けてやがるな。
……さて、いくか。敵は地獄のデストロンだ。
俺は猛然とダッシュすると、マッチョラッパーの後頭部めがけて痛恨の飛び蹴りを放つ。
小気味良い音を立てて今度はヤツが吹っ飛ぶ。ジャパニーズ魂なめんな。
「キョンさん!!」
動揺する二人の隙をついて拘束から抜け出した橘が、
後ろから抑えてた奴の金的に前蹴り、鳩尾に肘、そして鼻の下に裏拳の
流れるような三連撃を叩き込む。
…グッドだ。ラップなんざ足元にも及ばないリズムの心地よさだったぜ。
まあ当たり前というか大騒ぎになったので、
俺と橘は当局の追及を逃れるべくこそこそとその場を逃げ出し、
どことなく気まずいような、照れくさいような雰囲気を湛えつつ
家路へつくこととなった。
しかし橘よ、お前結構強かったんだな。
「まあ…一通りの訓練は受けていますから。
でもダメね、いきなりだったから頭の中が真っ白になっちゃって」
…なんだかな。微妙に俺の立場がなかったというか。
でも『助けなくてもよかったか』なんてのは言わなかったぜ。
当たり前だろ?
俺と橘は当局の追及を逃れるべくこそこそとその場を逃げ出し、
どことなく気まずいような、照れくさいような雰囲気を湛えつつ
家路へつくこととなった。
しかし橘よ、お前結構強かったんだな。
「まあ…一通りの訓練は受けていますから。
でもダメね、いきなりだったから頭の中が真っ白になっちゃって」
…なんだかな。微妙に俺の立場がなかったというか。
でも『助けなくてもよかったか』なんてのは言わなかったぜ。
当たり前だろ?
あの後病院へ行ってみたら、やっぱり手を傷めてた。
どうやら正確に人中をヒットしないで相手の歯を打っていたみたい。
まだまだ修行不足ね。
しかしそれにしても散々な日曜だったな。
あんな事なら家でゆっくりしてたほうがよっぽどマシ。
…いけないいけない、今日はもう月曜。
これから一週間の始まりなんだから、いつまでも引きずっていられない。
心機一転、がんばれ京子!
……そんな寂しいファイトを入れると、
あたしは無事な左手で玄関のドアを開けた。
「もう出てきたのか、随分早いんだな」
………………はい?
「ほれ、その怪我じゃ不自由だろ。乗ってけ」
え、ええええええええええええええええええええええええええっ!?
「な、なんでこんなところにいるんですかっ!?」
「何でって…ほら、お前手怪我してたみたいだし、
それは俺のせいだからさ、これでも責任感じてんだ」
そういって決まり悪げにするキョンさんの頭にもまた、痛々しい包帯が巻かれていて。
「で、でもあたし電車通学だから…」
「う…じゃ、じゃあ駅まででもいいだろ、送ってく」
あたしの家はきっと佐々木さんあたりに聞いたんだろうけど、
通学路まで頭が回らなかったみたい。やっぱりそそっかしいんだ、この人。
あたしの口から自然と笑いが漏れる。
「うーん、そこまでいうなら、お言葉に甘えちゃおうかな」
「よし。よく言った」
キョンさんは満足そうに笑うと、照れくさそうにしながら手を差し伸べた。
あたしはそれを受け取って、右手をかばいながら荷台に乗る。
そして、ちょっと頼りない王子様の乗った白馬ならぬ自転車は、ゆっくりと動き出した。
あ、今思ったんだけど事の真相を知ったら佐々木さん怒るだろうな。
しばらく口きいてくれなくなるかも。あーもう、うまくいかないなあ。
「嘘だからな」
あたしが人知れず悶々としていると、キョンさんが顔を前に向けたまま話しかけてきた。
「なにが、です?」
あたしはすかさず聞き返す。…少し冷たい言い方になっちゃったかも。
でもキョンさんはそんなの気にした様子もなく、言葉を続けていく。
「お前が悪い奴らに捕まったら」
彼の背中につかまる手に、力が入る。
「助けに行ってやるよ、絶対に」
「え…?」
え、なに?なになになに? ナニ言ッテンノコノ人?
「…それって」
「だ、だからな! お前に何かあったら佐々木だって心配するだろうし、
勝手に俺の周りをかき回して消えられると困るんだよ!」
……ふーん。佐々木さんが、ねえ。まあいいや。
いまはそれで、満足しておいてあげる。
どうやら正確に人中をヒットしないで相手の歯を打っていたみたい。
まだまだ修行不足ね。
しかしそれにしても散々な日曜だったな。
あんな事なら家でゆっくりしてたほうがよっぽどマシ。
…いけないいけない、今日はもう月曜。
これから一週間の始まりなんだから、いつまでも引きずっていられない。
心機一転、がんばれ京子!
……そんな寂しいファイトを入れると、
あたしは無事な左手で玄関のドアを開けた。
「もう出てきたのか、随分早いんだな」
………………はい?
「ほれ、その怪我じゃ不自由だろ。乗ってけ」
え、ええええええええええええええええええええええええええっ!?
「な、なんでこんなところにいるんですかっ!?」
「何でって…ほら、お前手怪我してたみたいだし、
それは俺のせいだからさ、これでも責任感じてんだ」
そういって決まり悪げにするキョンさんの頭にもまた、痛々しい包帯が巻かれていて。
「で、でもあたし電車通学だから…」
「う…じゃ、じゃあ駅まででもいいだろ、送ってく」
あたしの家はきっと佐々木さんあたりに聞いたんだろうけど、
通学路まで頭が回らなかったみたい。やっぱりそそっかしいんだ、この人。
あたしの口から自然と笑いが漏れる。
「うーん、そこまでいうなら、お言葉に甘えちゃおうかな」
「よし。よく言った」
キョンさんは満足そうに笑うと、照れくさそうにしながら手を差し伸べた。
あたしはそれを受け取って、右手をかばいながら荷台に乗る。
そして、ちょっと頼りない王子様の乗った白馬ならぬ自転車は、ゆっくりと動き出した。
あ、今思ったんだけど事の真相を知ったら佐々木さん怒るだろうな。
しばらく口きいてくれなくなるかも。あーもう、うまくいかないなあ。
「嘘だからな」
あたしが人知れず悶々としていると、キョンさんが顔を前に向けたまま話しかけてきた。
「なにが、です?」
あたしはすかさず聞き返す。…少し冷たい言い方になっちゃったかも。
でもキョンさんはそんなの気にした様子もなく、言葉を続けていく。
「お前が悪い奴らに捕まったら」
彼の背中につかまる手に、力が入る。
「助けに行ってやるよ、絶対に」
「え…?」
え、なに?なになになに? ナニ言ッテンノコノ人?
「…それって」
「だ、だからな! お前に何かあったら佐々木だって心配するだろうし、
勝手に俺の周りをかき回して消えられると困るんだよ!」
……ふーん。佐々木さんが、ねえ。まあいいや。
いまはそれで、満足しておいてあげる。
それにしても、この雲ひとつない五月晴れが今はちょっと恨めしい。
これじゃあ夕焼け色に染まった顔が、とても目立ってしまうから。
これじゃあ夕焼け色に染まった顔が、とても目立ってしまうから。
ヒーローズ ヒーローズ おもちゃ屋を巡った
ヒーローズ ヒーローズ 彼らに会うために
ヒーローズ ヒーローズ 勇気をもらうために
ヒーローズ ヒーローズ 君を愛するために
わからないだろ いーんだ それで
ヒーローズ ヒーローズ 彼らに会うために
ヒーローズ ヒーローズ 勇気をもらうために
ヒーローズ ヒーローズ 君を愛するために
わからないだろ いーんだ それで
おわり