2012年8月31日〆 図書紹介文
2009140289 平中隆義
- 図書名:『パチンコの経済学 内側から見た30兆円ビジネスの不思議』
- 著者:佐藤仁
- 出版年:2007年3月15日
- 出版社:東洋経済新報社
- 要約
日本全国のパチンコ業界における年間売上は約30兆円とされており、パチンコを嗜む人口は約170万人とされておりレジャー支出における36%を記録している。その反面でパチンコ台などにおける法則性などに惑わされ中毒となる人もいるため世間一般ではよろしくない印象を与えた。(126文字)
第2章 なぜだ!パチンコ人口半減なのに30兆円維持のカラクリ
前章で述べた通りパチンコ人口は減少傾向にある。そのためパチンコホールは離れていく中堅層の顧客に焦点を当てず、頻繁に来店する常連客もしくは大金を掛けて遊戯するヘビーユーザーから利益を上げる方針に切り替えることで遊戯人口の減少に対応した。その他にも貸玉料の引き下げを図るなどの対応を行なっており遊技人口が減少したとしても相応の取り分を撮り損ねないのである。(176文字)
第3章 パチンコと技術介入 この世界に類を見ないルール
日本とアメリカのパチンコなどにおけるギャンブルの考え方として、アメリカはパチンコ台の場合は釘の調整は犯罪行為とみなしている。これは二国のギャンブルの考え方に原因があり、日本で認められているギャンブルの形式は賭事といい、自らが干渉せず運により勝敗を決めることである。対照的にアメリカはポーカーやブラック・ジャックなどの博戯と呼ばれる自らの力で勝敗を分かつものという違いがある。(186文字)
第4章 メーカーは上場できて、なぜホールはできないのか?
パチンコホールとパチンコメーカーの利益を比較した場合、パチンコメーカーの利益率を30%と仮定した場合だとパチンコホールの利益率は僅か一桁という現状がある。この原因としてパチンコホールは顧客獲得のため多くの企業から新台を発注する必要があり、加えてパチンコメーカー側の遊戯台は有名人や人気作品などをタイアップした台を多く生産する傾向にあり台自体の単価が大幅に上昇したためパチンコメーカー側が圧倒的に有利な状態となったのである。その他にもパチンコ業界自体のイメージが一般的に悪いものとして固定されているため上場の足枷となっている(261文字)
第5章 パチンコの謎 換金問題
パチンコホールにおける換金方法は非常に特殊である。パチンコホールは顧客が獲得した出玉に応じた特殊景品と呼ばれる商品を贈呈し、その特殊景品を交換所に持参することで現金と交換するという手法をとっている。そして交換所は特殊景品を卸している問屋に交換した景品を売りつけて問屋はパチンコホールに特殊景品を卸すのである。この一連のサイクルが世間的には違法ではないかという誤解を招いている。これはパチンコホールにおける最大の問題であり第4章の上場出来ない要因の一つとなっている。(232文字)
第6章 パチンコの闇 釘調整と設定
パチンコホールを経営する上で避けて通れない事象がこの釘調整ならびに設定変更である。パチンコホール側としては時間ごとの各パチンコ台ならびにパチスロ台の収益を計算し算出する必要がある。その収益をある程度コントロールする方法として活用している。しかし、この調整に関する細かい制限は一切無く、違法な改造などを行わない限り認められている行為として一般的に認識されている。
上記の行為をホール側は顧客に過剰な不快感を与えない程度にコントロールする手腕が求められる。(225文字)
第7章 パチンコヘビーユーザーと「下流社会」
カジノとパチンコを比較して時、カジノの顧客は言うまでもなく富裕層と相場は決まっている。しかし、パチンコの場合では富裕層は殆どおらず低所得者層に集中している。しかしカジノとパチンコは棲み分けてしかるべきではないかという意見もあり、今後発展するアジア圏におけるカジノにおいてパチンコが導入される可能性も0%ではない。(156文字)
第8章 韓国パチンコ ゲーミングの国家戦略
韓国は日本のようなパチンコ台とは少しコンセプトの変わる「メダルチキ」と呼ばれる機械が登場した。これは釘を一切使用せず台の回転数および大当たりを機械による自動管理という風変わりな機械である。この台の優れている点として国家戦略の一環として製造されたため日本のような悪いイメージを一切解消している点である。日本にも国家戦略まではいかずとも健全化に向けた動きはあり、その動向に注目すべきである。(193文字)
まとめ
私は執筆中である卒業論文のテーマでパチンコホールのあり方についてのべているが、日本におけるパチンコに対する悪いイメージの一新にはどのような戦略を取るべきかを必死に思案していた。その折にこの書籍に出会い各国におけるパチンコを始めとしたギャンブルに対する思想や技術を知るいい機会となった。
今後の日本におけるパチンコのあり方としては業界を挙げて健全化と業界の可視化を推移新する必要がある。そのために行く行くは三店方式に変わる新しい景品交換システムの樹立を行い「パチンコ」という遊戯の最終的進化を問う必要がある。そして、業界としては悲願である上場を可能として日本国内におけるレジャー産業の一大ムーブメントを引き起こすことを願うものである。本書籍はその考えに至るデータとして十分に有意義なものであり、日本だけに留まらず広い視野をもってギャンブルなどのタブーとされがちな事象を考え、徹底的に討議するきっかけとなりえるであろう。(407文字)
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