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絆創膏


作者:酎ハイ ◆cKsrSOpyZk

キャスト()内は台詞数:
 男(32)
 女(33)
ナレーションというか回想は、──で始まってます。男のキャストさんで。           



──それは、秋のことだった。

男01「もし、キミがよければ………俺と、付き合って頂けませんかっ!?」
女01「……えっ!?わ、私!?あ、あなたとっ!?」
男02「…そう!」

──初めは、罰ゲームだった。
ゲームに負けた奴は、クラスの意中の女の子に告白する───

よくある、その手の罰ゲーム。

当然俺は負け、罰ゲームに至った。
早く終わらせたい俺は、適当にクラスの中の一番可愛い女の子を指名し、適当に告白した。

対象は、セミロングの少し栗毛の女の子。
左手には、いつもクマの絵柄の絆創膏を貼っている。
華やかではなく、いたって普通。しかしいつも可愛く笑っている。
クラスの雰囲気を和ませているうちの一人だ。

適当にフラれて終わればいいんだろ?それが奴らの目的なんだろ?そう思ってた。
しかし、結果は───

女03「……こんな、わたしで良ければ…」
男03「えっ!?」
女04「だって、私…ずっと…ずっと…」
男04「え、もしかして…俺のこと、好きだったとか…んなははは!そんなわけn…」
女05「好きだった!」
男05「ええっ!?」

──適当ではなかった────

──その日の午後、僕たちは街に出た。
罰ゲームを仕掛けたやつらも、呆気に取られるくらいの失敗パターン。
──だが、俺からしたら、成功パターンなのかもしれない。

男06「あ、あの…どっか、行きたいとことか…ある?」
女06「と、特に…」
男07「あ、そう…」
女07「ごめんね…」

──会話がぎこちない。
相手は知らないが、俺は初めての経験。何を話題にしたらいいか…
…ん?そういえば、いつも絆創膏を貼ってたよな、これを話題にしてみるか…

男08「そういえばさ…いつも絆創膏してるよね!そんな怪我が多いの?」
女08「!?…そ、そう!そそっかしくて!あはは!!」
男09「そーいえば、体育の授業もいっつも転んだりしてるよね~!」
女09「そ、そーなのよ!なんか足がもつれたりして、大変なのよ~」
男10「実は、おばさん…なんじゃないの!?」
女10「失礼ね!私はそんな年じゃないよ~!」

──などということがきっかけで、他愛のない話をし、その場は盛り上がり、終了した。
初々しい時代から三ヶ月、会話にも慣れ、相手のことをもう少し知りたいな、という時──

男11「じゃ、俺はここで…」
女11「…あ、あの…これからキミの家に、遊びに行ってもいいかな?」
男12「え?俺の?…今日はオヤジもオフクロも仕事に行ってて帰りが遅くなるし、ロクな持て成しができないけど?」
女12「それが…それでいい…それでもいい!」
男13「ん、それじゃいいよ。おいで。」
女13「うん♪」

──平然と装ってはいたが、実は内心ドキドキだった。

女14「おじゃましまーす!」
男14「勝手にくつろいでね~ あ、飲み物は紅茶しかないけど、いい?」
女15「うん」
男15「はい、どーぞ~」
女16「いただきま~す!あっつ!」
男16「慌てないで…あれ、今日は右手にも絆創膏?」

──そういうと、さっ、と隠す仕草をする。

女17「そ、そうなの!今日も階段で転んじゃって…たははw」
男17「気をつけろよ、まったくw」

──そうこうしているうちに日も暮れ…時計の針は、午後8時。

男18「ん、もうこんな時間か…」
女18「まだ!まだ遊んでいたい!帰りたくない!」
男19「ま、こっちはうれしいけど、あまり両親を心配させちゃ…」
女19「多分、大丈夫。きっと。」

──ゲームしたり、腹ごしらえしたり、帰れ、帰らないのやり取りをしているうち…
とうとう時計の針は、午後11時を回ってしまった。

男20「もうやばいよ…どうするの?」
女20「帰りたくない。それにまだ、大事なこと、教えてない…」
男21「大事な…こと?」
女21「うん…私の、大事なこと……………………ねぇ……………知ってほしいの………」

──ついに来ましたかー!そう思っていると、いきなり彼女は立ち上がり、
胸のネクタイを外し、シャツを脱ぎ始めた…

男22「え!?ちょっと、ここで!?」
女22「…うん…」
男23「いやいやいや!俺の部屋があるから、そこへ…」
女23「明るいところのほうが、いいから…」

──そういい終えると、彼女は服を脱ぎ始め、下ろす。
…そこには、絹のような肌の彼女の姿が…あるはずだった。

男24「え…」
女24「これが私の、大事なコト…」

──全身に、無数の傷、痣、火傷の跡──
こっちのは最近の傷なのか、まだ赤い色の傷が見えている。そして、青い痣も…

男25「こ、これは…もしかして…」
女25「そう……虐待……性的のも含めて…私は虐待を受けて…」
男26「これって、その、児童相談所とかには…」
女26「言えるわけないじゃない!言ったらさらに虐待を受ける!直っても直っても、次から次へと!」
男27「んじゃ、あの絆創膏は…」
女27「そう。この傷を隠すため…よく転ぶのも、この傷を誤魔化すため…」
女28「あの時、あなたが告白してくれて、本当にうれしかった!
   それから、ずっと悩んでた。ずっと考えてた。
   本当のコトを言っても大丈夫な人なのかって。
   今日、あなたに言ったのは、これまでで大丈夫だと思ったから。
   これを見ても、感じても、まだ好きって言ってくれる?
男28「俺…」
女29「…無理…だよね…当然…だよね…」

──いつも笑っている彼女。しかし、心折れそうな現実。
テレビなどでは話題にしてても、その現実を見たことは、いままでなかった。
しかし、ここにある。クマの絆創膏の下の傷は、紛れもなく、現実のもの。

男29「誰が無理って言ったよ!」
女30「…えっ!」
男30「こんな可愛い、きれいな肌の子を苛めやがって!俺が文句言ってやるよ!」
女31「そんなことしたら、私がますます…」
男31「児童相談所に通報すれば、警察が介入し、法の下に親と子を別居させてくれる。
   そうしたら、お前は俺んと子にくればいい。親父もオフクロも、歓迎するさ」
女32「…うん!!うん!!!」

──さっきまで悲しい涙で溢れていたが、一気に嬉し涙に変わった。
そして、これ以上ないってくらいの、とびっきりの笑顔を俺にくれた。

──後日、早速児童相談所に行った俺らと俺の両親は、係員と警察に事情を話した。
警察も事態を重く見て、親子別居させてくれた。身元引受人は、俺の両親。
彼女の両親もこれに納得し、署名をした。
こうして、彼女との同居が始まった。

男32「本当によかったのかな… 結果的に、俺らがご両親と離れ離れにさせちゃったけど…」
女33「うん!よかったよ!ありがとう!大好き!!」

──こう言うと、ホッペに軽くキスをしてくれた。

──それから数年。相手の両親もすっかり改心し、彼女とも打ち解け、無事親子は元に戻った。
…いや、元に戻ったどころか、増えるかもしれない。

──俺の手には、封筒に入れられた一つの書類があった。
その封筒は、彼女と俺との間を繋いでくれた、クマの絆創膏で封をしてある。
このクマ、今度はもっと凄いものを繋いでくれるに違いない。