【CAST】男・女・村人 ・・・男女性別逆にしても良し


 ある日
 森の中
 殺人鬼に
 出会った


[足音]

男「お前も私を狩りに来たのか?」
女「……いや、お前など知らないが、お前は人間ではないのか?」
男「なぜそんなことを聞くのだ?」
女「獣なら食うために狩るだろう、だから、お前が狩られる対象なら、ひょっとすると獣なのではないかと思ったのだ」
男「なるほど……そうか、そうだな。私を狩ろうとした奴らも、獣め、と言って襲いかかってきた。きっと私を獣だと勘違いしていたのだな。私は人間だ」
女「奇偶だな。私も人間なんだ。こんな山奥で他の人間に会えるとは思わなかった」
男「そうだな、こんな山奥に人はいないからな……ああ、あいつらそれで間違えたのだな、愚かなことだ」
女「たき火を貸してもらってもいいかな? 干し肉があるんだ、少し分けてやるよ、あぶって食おう」
男「いいのか、ありがたいな。私も、酒を持っているんだ、少しやるよ」
女「いいな、ちょっとした宴だ」


女「実はこの山に殺人鬼がいると聞いて来たんだ」
男「さつじん、き…き?………鬼の”き”か? 鬼は見ないな」
女「いや、鬼じゃない。殺人をする人間さ」
男「人間なのか。鬼じゃないのか?」
女「鬼というのは……人が理解できないものに付けられる名前だよ。殺人なんて、人に理解されるものじゃないだろう、そういう意味の名前さ」
男「そうなのか? 人くらい誰だって殺すだろう?」
女「そうか?」
男「襲われれば殺すだろう?」
女「ああ……それは、時と場合によれば、そうだな。お前、人を殺したことあるのか?」
男「あるぞ。肉は食って、骨は削いでナイフに仕立ててある」
女「へえ……ひょっとすると、殺人鬼とはお前のことなのかもしれないな」
男「そうか? じゃあ、お前、よかったな。殺人鬼に会いに来たんだろう」
女「私も殺すのか?」
男「どうして殺すんだ? お前も私を襲うのか?」
女「いや……あまりそういった気力はないな」
男「ああ……言ったあとに気づいたが、別にえっちな意味じゃないぞ」
女「そっちの気力もないかな……歩いて、疲れた」
男「しばらく休んでいっていいぞ、この辺は熊が出るが、私の家の付近には寄ってこないから安心して寝ていればいい」
女「熊も人間を怖がるんだな」
男「いや、うるさいから嫌がるんだ」
女「繊細なんだな、熊は」




女「ぐーぐー」

 洞窟の外、ふもとの村民がたいまつや槍を持ち、集まっているようだ

村人「出て来い!! 悪魔め!!」

男「出てくる。お前はどうする?」
女「……ぐー」
男「よく寝ている。殺人鬼より肝が太いな。」


村人「出て来い!! 村のものたちの仇、今日こそとってやる!!」
男「出て来たぞ」
村人「おおおっ!! 出たか、けだものめ!!」
男「銃はやめてくれよ」
村人「ふふふ、お前も怖いか! だが許してはやらん! 一発でラクに逝かせもしない! 苦痛と苦渋を一生ぶん味あわせて殺してやる!」
男「いや……音を嫌がるんだ、熊が」
村人「……」

村人「(おい、これが本当に噂の獣人なのか? ただの男ではないか。言葉も通じるし、敵意も感じない。)」

男「ひそひそ話するなよ、のけものはさびしい」
村人「おい、お前! お前は私たちを攻撃するか? 私たちを食らうか?」
男「お前は私を食べるのか?」
村人「質問しているのはこっちだ。あえて答えるならば、私達は人食いなどはしない」
男「ならば私も食う理由はない。あいつらは、襲ってきたから、殺したが」
村人「あいつら…?」
男「襲ってきたら、倒すしかないだろう。何もしないのに倒す必要もあるまい」

村人「(どういうことだ? 話が違うのではないか?)」

村人「おい……お前の話が本当なら、私たちは勘違いをしていたことになる。ともすれば、こちらが謝らねばならぬのかもしれない」
男「そうなのか?」
村人「お前はその…殺した者らをどうした? どこかに埋めたのか? 彼らにも家族がいた、遺品だけでも持ち帰りたい」
男「埋めてはいないぞ。食った」
村人「食った……食った!!??」
男「旨かったぞ。あいにく服はそのとき焼いてしまったからないが、骨なら残しているぞ。頭蓋骨なら、まだ割らずにとっているはずだ。持ってこようか」
村人「お前は、お前は……恐ろしい! なぜそんな……鬼のようなことができるのだ!! どうしてそれを何の罪の呵責もなく、話せるのだ!」
男「どうして怒る? 死んだ肉に何をしようと関係ないだろう」
村人「やはり、お前は、お前は生かしておけん! お前は、人の道を離れすぎている!」



女「ぐー……う?」

女「(なんだ、外が騒がしいな)」



女「おい、どうした。何を騒いでいる」
男「……来ないでくれ! お願いだ、来ないでくれ、見ないでくれ」

女「(そう言われると気になるのが人情というものだ)」

村人「あああああああああ!!! がああああああああ!!!」
男「見ないでくれ…はずかしいじゃないか」
女「あ……ああ。すまない、戻っている」
村人「た、たすけ、たすけて……」
男「ああ大丈夫だ、もう楽にしてやるから……」



男「恥ずかしい場面を見せたな」
女「私が見たんだ。覗いてすまない」
男「……今度からは覗かないでくれ、はずかしいから」
女「わかった。私もこたえた。男の肉がそうなる場面は……食欲を大幅に減退させることがわかった」
男「そうか? いいぞ男は、かみごたえがあって旨いぞ」
女「食べ物の意味で言ったわけではないのだが」
男「ああ……えっちな意味では……個体差がな……」
女「興味深いな。興味はないが。」
男「そういえば、お前はどうして殺人鬼に会いに来たのか聞いていないな。」
女「ああ……殺人鬼に会いたい理由なんてひとつじゃないか」
男「復讐か?」
女「いや……訂正しよう、理由はふたつ、あったな」
男「……殺されたいのか?」
女「落ち着いたら、そうとも思えなくなった」
男「そうか。それならよかった。友を失うのはさみしいからな」
女「恋人と呼んでもいいぞ」
男「私は異性には興味がないんだ」
女「奇偶だな、実は私もないんだ」
男「それはよかった」


お題:いわゆるガチホモ メデゥーサ いわゆるガチホモ
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最終更新:2011年02月04日 13:55