『たのしい声劇の作り方・脚本編』

A:男性。兄。Bより登場が後だがシリーズ物なので便宜上A。
B:女性。妹。ホモが嫌いな女子はいないそうだ。


(※SE:カリカリと鉛筆で書き進める音)
B01「……『だ、ダメだよマロール。だって、俺たち友達だろ?』
  『お前が悪いんだ、ティルトウェイト。お前があまりにも無防備すぎるから!』
   瞳を血走らせてマロールが叫んだ。ティルトウェイトの肩を押さえつけていたはずの彼の
  両手は、いつしか息苦しそうに震え、力なくしな垂れ掛かっていた。
  『マロー……ぅむう!?』
   不意に唇が押しつけられる。重なり合う熱と熱。混じり合う汗と汗。どこまでも甘く、何
  よりも官能的な15秒間。呼吸の音さえ聞こえぬ夕暮れの教室で、ただ互いの鼓動だけがひど
  く騒がしかった。
  『好きだ、ティルトウェイト。今だけでいい、黙って僕を受け入れてくれ』
   言われずともティルトウェイトの全身は既に弛緩し、熱っぽく……」

A01「声劇をつくろう!妹よ」
B02「うわああぁあぁぁ!?」
A02「うん?……ふむ。確かに小説を書いている姿を見られるのはあまり気持ちのいいことでは
  ないな。わかるぞ、我が妹よ」
B03「うっさい、バカ兄貴!いいから出てけ!」
A03「なあに、気にすることはない。むしろかえって好都合というものだ。さあ妹よ、声劇をつ
  くろう!声劇をつくろうではないか!」

B04『たのしい声劇の作り方・脚本編~台本、書いちゃおうぜ!~』

A04「というわけで今回は台本の書き方だ。声劇は基本的に人物の台詞、効果音、BGMの3つで物
  語を表現しなければならない。会話の掛け合いが中心になる分、小説とは少し勝手が違うか
  もしれないな。まあ、とりあえず書け。書いてみろ。書くんだ。書けばわかる。以上」
B05「待て。そんな説明で何がわかるか」
A05「えー、これ以上何を説明しろというんだ」
B06「むしろ何を説明したっていうんだ。もっと、こう、色々あるでしょ。書き方のルールと
  か」
A06「ルールというのは、あれか?“?(はてなマーク)”のあとには“ (スペース)”を入
  れろ、とか“『』(かぎかっこ)”の最後に“。(まる)”を入れるな、とか“・・・(て
  んてんてん)”じゃなくて“…(さんてんリーダー)”を2つだけ使え、とか。いいよそん
  なの。読む人にとって読みやすければそれでいいさ」
B07「また各方面にケンカを売るようなことを……。何か嫌なことでもあった?」
A07「大丈夫、大丈夫。みんな小学校で作文の授業を受けているんだから、普通に書けばまず読
  めない文章にはならないはずだ」
B08「まあそうかもしれないけど。じゃああれは?台本を読むと色んな記号とか番号とかが目に
  つくんだけど、あれは何?」
A08「例えば台詞の前に振ってある“A01(エーのゼロイチ)”のような番号のことか?」
B09「そういうの。リスナーの皆さんのためにも一通り説明した方がいいと思うよ。これ、一応
  初心者向けに解説するって趣旨の声劇なんでしょ?」
A09「つくづくドラマとメタの境界が曖昧な声劇だな……。まあいい。では、台本の書き方につ
  いていくつか説明しようか。予め言っておくが、ここで説明する書き方はあくまで声劇スレ
  でよく使われるものであって、その他の場でも通じる書き方とは限らないから、そこは理解
  しておいてくれ」
B10「前置きが長い」
A10「まずは台本の一番初めのところ。本文の前に簡単な人物紹介を書いておくといいな。どん
  なキャラクターが、何人出てくるのか。これがあると声優さんにとっても編集さんにとって
  もありがたい」
B11「同じ台詞でも、自分の役が女子高生かOLかで演技が全然違ってくるもんね」
A11「会話の相手によっても間の取り方なんかが違ってくるしな。他にあらすじを書くこともあ
  るが、声劇スレであらすじを書く人は少ないかな。声劇スレの台本は短いものがほとんどだ
  からな」
B12「5分くらいの台本なら全部読んでもらった方が早いしね」
A12「そういうことだ。次。さっき言った、台詞の前につく番号の話」
B13「“『』”の前の“A01”みたいなやつだね」
A13「正確には、この場合Aというのは役の名前だ。“A01”とあれば、その台詞はAさんの台詞と
  いう意味になる。もし役名が“A”ではなく“妹”なら“妹01(いもうとのゼロイチ)”に
  なるな」
B14「じゃあ“01”の方は?」
A14「台詞の番号だ。各登場人物ごとに全ての台詞に通し番号を振ってあるんだ。これを使って
  『何番の台詞を録り直してください』『何番の台詞にはエコーを掛けてください』などと指
  示するんだ」
B15「『何番の声が迫力があってカッコイイ!』みたいな感想を書くときにも使えるかもね」
A15「いい演技だと思ったら感想を書くと喜ばれるぞ。さて、台本には台詞以外にも色々書かれ
  ている。いわゆるト書きというものだな。実質、ほとんどはBGMや効果音など、編集さんへ
  の指示だ」
B16「舞台やテレビドラマなんかだと、俳優さんにも、体を動かしたり舞台から出入りしたりっ
  ていう、台詞以外の演技があるけど」
A16「声劇にはそれがあまりないからな。ちなみにト書きは括弧書きにしたり、前後に一行空け
  たりして、台詞との区別をはっきりさせておくといいぞ」
B17「他には?」
A17「あとはあれだ、横に長い台本はメチャクチャ読みにくいぞ」
B18「というと?」
A18「メモ帳みたいなテキストエディタと違って、ブラウザでテキストファイルを開くと自動改
  行がされないんだ。人によってそれぞれモニターの大きさも違うことだし、台本を書くとき
  は適度に改行を入れた方がいいな。ちなみに、俺としては1行あたり43文字以下にすること
  をお勧めする」
B19「何、その中途半端な数」
A19「wikiの1行がだいたいそのくらいなんだよ。初めからwikiの仕様に合わせておくと、転載す
  るとき楽だろ」
B20「ああ、そういうこと」
A20「台本の書き方については、こんなところかな」
B21「……」
A21「どうした、妹よ」
B22「いや、兄貴、なんでそうマトモに解説してるの。いつもだったら2言3言喋ったらすぐ要ら
  ない台詞挟むくせに」
A22「不満か」
B23「不満だ!こんなフツーでマトモでタンパクな説明、10分も聞いてられるか」
A23「な、なんだかえらく理不尽なことを言っていないか」
B24「じゃあ質問。肝心の中身、ストーリーの作り方の方は何かないの?たぶんそっちの方を知
  りたいってリスナーさんはけっこういると思うんだけど」
A24「人生経験」
B25「はい、それ3回目。そういうどうでもいいこと言わなくていいから」
A25「なんという理不尽」
B26「せっかく話題をふったのに一言で片付けようとするからだ」
A26「そうは言っても、本当に説明するようなことはないぞ。毎回言っていることだが、こうい
  うのはリアルでの経験がものを言うからな。脚本に王道なし」
B27「じゃあ、もしかして今回はここで終わっちゃうつもり?」
A27「今回はいつにもまして説明できることが少なかったからな。とにかく一度書いてみること
  だ。たぶん、一度書いたら台本というものがどういうものかだいたいわかるはずだ。その上
  でもっと色々なことが知りたいと思ったなら、台本の書き方とか小説の書き方といった本を
  探すといい。スピーチの話し方の本も案外脚本には役に立つぞ」
B28「兄貴もそこら辺をちゃんと説明したらいいのに」
A28「こういうのは本によって言っていることがバラバラだからなあ。俺がここでひとつの意見
  をいうより、リスナーの皆さんにそれぞれ自分に合った本を探してもらった方がいいと思う
  んだ。というわけで中途半端だが、皆、脚本、やっちゃおうぜ!」
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最終更新:2011年03月09日 22:45