お殿様お戯れを


猫殿01『我輩は殿である。名前? 下賎の者になど教えられぬ。
    偉大なる猫族の血を身に受けた、この豪奢なる城を一手に抱える殿である』

猫侍01「殿、殿ー! 一大事でござりまする!」
猫殿02「なんじゃ騒々しい」
猫侍02「はっ! ちと、お耳をこちらに……」
猫殿03「ウム……これ! 息を吹き込むな! 余は毛抜けの時期であるぞ!」
猫侍03「ハックシュン!! エックシュ!! ……ははっ! ご忠言しかと! 存じ上げたてまつります!
    し、しかしそれではどうして密談をいたしましょうか」
猫殿04「ふん、耄碌したとでも思うたか。よしんば狼藉者がおろうたとしても、我が両の耳は聞き逃しはせぬわ」
猫侍04「ははっ!! ではなるたけ小声で……(ゴニョゴニョゴニョ)」
猫殿05「――なに? 猫又(ねこまた)の一派が?」
猫侍05「はっ! 我が配下、飛猫(とびねこ)からの情報によりますれば、明日、殿を狙い一騎打ちをしかけてくるとか……ウム?
    しかし我が殿、口に出し申されては、意味が……」
猫殿06「ふん、猫又の宿無し宿六(やどろく)めが。何度その尻尾を巻いて逃げ延びれば気がすむやら」
猫侍06「全くでござりまする。猫又の埃及(エジプト)被れめが。尾もない癖に、純然たる混合種の殿になんたる狼藉を」
猫殿07「なあに、奴には付いておるさ、奴に似合いの小さく丸まった物が」
猫侍07「しかし殿、こたびの一件、どう対処いたしましょうぞ」
猫殿08「あえて乗ってやる必要も感じられぬ。好きに致せ」
猫侍08「申し上げまするが殿、わたくしめはその、愚妹の出産が近しいものでして、あまり出歩けぬ身でございまして……」
猫殿09「なに? ああ、そうであったな。この色男めが」
猫侍09「くだんに関しては何卒他者には御内密に……」
猫殿10「ハン、猫族では珍しいことでもあるまいてからに。ならば、他の者に任せればよかろう。猫ノ信(ねこのしん)は」
猫侍10「猫ノ信は腹を痛んだらしく……」
猫殿11「あの卑し者め。また毛糸でも飲み込みおったか。なら猫之丈(ねこのじょう)は」
猫侍11「家人が邸の建て直し準備に追われているとかで……」
猫殿12「猫笛の黒(ねこぶえのくろ)は? 煮干のお七(にぼしのおしち)は?」
猫侍12「大変比例千万ながら、両人、いや両猫、メスでござります次第――」
猫殿13「なんと! 主らは我輩にどうせよと言うのだ!」
猫侍13「城から、決してお出にならぬようお勤め願います。で、ではわたくしもそろそろ……にゃ~ん、今行くからねハニィー!」
猫殿14「うぬがあ! 猫又のくそうじ虫が!! この借りいつか返してくれようぞ!!
    ……はあーぁ、人……いや、猫恋しい……にゃあ」
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最終更新:2010年10月21日 14:02