思い出には早く、悔やむには遅過ぎて
作者:wikiの人◆SlKc0xXkyI
特別なドラマがあったわけではない。
ただ、失恋したという事実がある。
高嶺の花を望んだわけでもなければ、叶わぬ恋をしたわけでもない。
勇気を出した告白は受け入れられて、蜜月の日々を過ごした事もある。
だが些細な行き違いからケンカになり、そのまま別れてしまった。
どうしてだろう、と思う。
今だって、こんなにも好きなのに。
どうして別れてしまったのだろう。
あの時、素直に謝る事ができていれば。
あの時、もっと相手の話をよく聞いていれば。
あの時、――恋に落ちなければ。
こんなにも辛い思いを、しなくてよかったのだろうか?
後悔はいつだって遅過ぎる。
もう取り返しがつかなくなって、何一つ元に戻せなくなってから。
自分には何も残っていないと気付いてから、初めて後悔が襲ってくる。
あるのは虚しさと、神経が引き千切れるような胸の痛みだけ。
こうして後悔をするたび、こうして思い出すたびに、胸が軋んで血を流す。
女々しいな、と思う。
もう終わってしまったものに、いつまでもこだわっているなんて。
しかし、この痛みがある限り。
全てを思い出にするには、まだ早いのだろう。
眠れぬ夜を、あと何度越えればいいのか。
どれほどの月日があれば、全てが思い出になってくれるのだろう。
全ての、痛みが。
この、痛みが……。
最終更新:2010年10月17日 13:10