作者:Elika
虹
雨の空、冷えた空気。
嫌いじゃないけど、すっきりしないね。
だいたい日光を浴びなきゃ人間は判断力が鈍るんだ。
ビタミンDがなんとかかんとか、ってさ。カルシウムの吸収とかにも影響するんだっけ?
毎日晴れてたら、それはそれでうんざりすんだけどさ。
雨降っててもうんざりだよな。
空、うぜぇ。
ほら、あいつらだってそうだ。
湿気が多いと髪がうねるよぉー、とかいってわいのわいの騒いでやがる。
お前の髪の毛がうねろうが抜けようが、俺は知ったこっちゃないっての。
うんざりだ。
女子ってのはおめでたい連中だよな。
お天気の話題から髪の毛の話題、そして最後は────。
ホレタハレタ、のお決まりコース。
お前らはそれしか知らないのか、マンネリどもが。
彼氏がどうとか、恋人がどうとか、片思いだとか両思いだとか。
あーーーーあ、うざってぇ!
せめて雷でも豪華にビカビカ光りゃあ、この憂鬱な昼休みも少しはマシになるんだろうけどさ。
……あれ、雨上がってる?
いや、違う。まだ少し降ってる。
でも、雲の切れ間からほんの少し、4時間ぶりの太陽が顔出してやがる。
影は、あっちに伸びている────。
俺は校舎の反対側に走った、反射的に走った。
窓から身を乗り出して、薄く光る空を見上げた。
「っへ……やるじゃん、空。」
地球は丸いと知らしめるように、完全な円弧を描く極彩色。
太陽の光が雨粒に磨かれてはっきりと見せる、確かな色。
雨は好きじゃないが、虹は好きだ。
昼休みの終了を告げるチャイムを遠くに聞きながら。
俺は、四角く切り取られた風景に淡く輝くそれをただ、ぼんやりと見上げ続けた。
最終更新:2010年10月21日 21:20