作者:Elika


ひび割れた魂を挑発的な言葉で埋めて。
曖昧な自分の輪郭を煌びやかな装飾品でなぞって。
かわいそうなお姫様は今日も、塔のてっぺんより、切り取られた風景をご覧になるのでした。

退屈しのぎにちょうどいいのは、ありふれた民の生活を観察することでした。

角のパン屋の娘さんが、そばかすだらけの笑顔をふりまいてパンを売ります。
そして、路地裏のぼろ屑のような老人に焼きたてのパンをひとつ手渡します。
老人は何も言わずにパンをむさぼり、娘さんは黙ってそれを見ているのです。

かわいそうなお姫様は今日も思うのです。

 「どうせなら、娘さんも喰らってしまえば満たされるのでしょうにねぇ」

細い三日月のように口をゆがませて、今日も無事に路地裏から出てくる娘さんを
お姫様は小さく握りつぶされるのでした。
小さく、握りつぶされるのでした。

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最終更新:2010年10月21日 17:29