硝子の籠で、蝶は嘆く


作者:Rimm


【硝子の籠で、蝶は嘆く】


 そこのおまえ、聞こえるか。こんな夜更けにこの植物園へ来るとは酔狂(すいきょう)なやつだ。
……まあよい。こちらへ来てくれないか。
頼みがある。私を外へ連れていってほしい。硝子(ガラス)の天井と壁に囲まれて、息苦しくてかなわん。
……なに? 私の姿が見えない? 何を言う、私はここにいるではないか。おまえの目の前に咲いている、
紅(くれない)の花の上に。さあ、この美しい翅(はね)を散らさないように——って、待て! どこへ
行くんだ!? 頼む、待ってくれ——

 ああ、ここから出たい。硝子の向こうの、三日月の懸(かか)る、あの夜空へ。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 朗読
  • 朗読祭
  • 短編朗読

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年10月17日 13:13