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作者:Elika


悪魔:
 おお、哀れなる母親よ。罪深き母親よ。
 その腹の子に生きることを強要するのか?
 この世は、ありとあらゆる悲しみに溢れている。
 略奪、戦争、裏切り、絶望、混沌で満たされている。
 それでもその悲しみを次の世代へ繋ぐのか?


母親:
 去りなさい、悪魔よ。
 私はお前に耳を貸さない。お前の言葉に惑わされない。


悪魔:
 ああ、己の欲に従うだけの肉の塊よ。
 考えればわかること、子をなしてなんとする?
 苦痛の中で生き長らえる事になんの意味がある?
 暗闇の中で切り離される日を待ち続けている今にどんな幸福がある?


母親:
 黙りなさい、悪魔よ。
 私はあなたを哀れみましょう。
 次の世代につながることこそが、喜びであると知りなさい。
 次の世代を愛し慈しみ守ることこそが、幸福であると知りなさい。


悪魔:
 生まれ来る子が世を憂いて、己の手で光をかき消さぬとも限らんぞ。
 生まれ来る子がおまえを恨んで、絶望のまなざして見据えぬとも限らんぞ。


母親:
 この子は私が守ります。
 悪魔のささやきなどに耳を貸さぬよう、強くしなやかな心を育てます。
 私の言葉を素直に聞き入れられるよう、優しく素直な心を育てます。
 この子は私が育てます。


悪魔:
 ならば見せてみよ、人の子よ。
 その腹の子の力を、お前の意思を。
 十月十日(とつきとおか)の後、再びお前を訪ねよう。
 我も楽しみにしていようぞ。


母親:
 私はあなたを再び哀れみましょう。
 私は何者にも負けない、私は何者も恐れはしない。
 真に強き者とは、守るべきものがある者であると知ったのですから。
 去りなさい、悪魔よ。
 母親は常に強き者、喜びにあふれた強き者なのですから。