『幸せビーム』

A:ニュースキャスター。あくまで情報発信者なので常に第三者視点。
B:『幸せビーム』開発会社の代表取締役。演説好きなのかもしれない。
C:男性。一般市民その1。実は同じビームばかり浴び続けると身体が慣れちゃうのですよ……。
D:男性。一般市民その2。メカ好きで新しいもの好き。
E:男性。一般市民その3。陰謀論好き。


A01「不思議な光を浴びるだけで幸せな気分になれる。そんな全く新しい家電が今日発売されま
  した。この商品は発売前からインターネットを中心に大変な話題を呼んでおり、今朝も都内
  のほとんどの家電量販店で開店直後に品切れを起こす異常事態を起こしています。この商
  品、その名も『幸せビーム』」
B01「アミューズメント・レヴォリュショナリー社・代表取締役の高田真澄(たかだますみ)で
  す。我々が開発した『幸せビーム』は人類の娯楽文化における革命です。この『幸せビー
  ム』は特殊な波長の光を特殊な配列で放射することによって、手軽に、効率的にユーザーに
  幸福感を与えることができるのです。さらに『幸せビーム』の光の配列は各ユーザーがカス
  タマイズでき、より自分の好みに合った『幸せビーム』を開発したり、インターネットを通
  じて広く公開することが可能です。我々はこの『幸せビーム』が映画や音楽に並ぶ、第3の
  娯楽文化として大きく発展することを確信しております」

C01「なあ、お前例の『幸せビーム』ってやつ買ったんだろ。結局のところ使い心地はどうなん
  だよ」
D01「いや、朝イチで買いに行ったんだけど、すげー行列ができてて買えなかった。なんだよ、
  あれ。転売業者どんだけ集まったんだ」
C02「その割にはどこのオークションにも流れてないんだけどな」
E01「まったく、どいつもこいつも『幸せビーム』『幸せビーム』って気色悪いな。3流ベン
  チャー企業がテキトーにでっちあげたオモチャがどうしてこんなに流行ってるんだよ。はっ
  きり言ってすげー胡散臭い」
C03「まあ、そう、かなあ……」
E02「だいたいだ、ビームを浴びるだけで幸せになるだ?まるで麻薬じゃねえか。それかカルト
  宗教。1回使ったら中毒起こしてやめられなくなるぞ」
D02「そう考えると買えなくてむしろ正解、だったのかなあ……」
C04「でも、使ってみたいよなあ」

A02「発売から3ヶ月経過した『幸せビーム』ですが、以前人気は衰えるところを知らず、増産に
  次ぐ増産を繰り返した今もなお品薄状態が続いています。ところで、この『幸せビーム』、
  最近とある黒い噂が流れているようです」

C04「うは、すげえバイト見つけた。これ見てみろよ」
D03「ええと、『コミュニティサイトの管理業務。経歴不問。各種社会保障完備。時給……2500
  円』!?これってあの『幸せビーム』の会社だよな」
C05「そうそう。ユーザーがカスタマイズしたビームのデータを公開してるサイトがあるんだけ
  ど、そこにアップロードされるデータの中身を確認する仕事らしい」
D04「要するに検閲か。それにしても変に給料いいな。これで経歴不問って……。何か特別な技
  術とか要らないのかね」
E03「意味分かんねーよな。あそこの社長は『能力よりも倫理観、モラルを重視して採用してい
  る』とか言ってるらしいけど、どうせテキトーなこと言って『コネがなきゃ採用しません』
  てことなんだろ。全く、甘い汁が吸えて羨ましいことで。ま、いつまでも夢見てないで、
  さっさと家に帰って『幸せビーム』を浴びるとしようぜ」
D05「あ、結局買ったんだ……」

B02「日頃のご愛顧、誠にありがとうございます。おかげさまで『幸せビーム』の販売台数は
  1千万台を突破しました。カスタマイズデータのアップロードも活発に行われており、まさ
  に弊社と『幸せビーム』は皆様の手によって日々成長していると言っても過言ではない状況
  です。さて、ここで皆様に一つお願いがあります。近頃『幸せビーム』のセーフティを解除
  する危険な改造が流行しています。これは我々が保証する『幸せビーム』の正しい動作を保
  証しかねる行為です。危険ですので絶対にやめてください」

D06「お前『幸せビーム』のカスタムデータ何使ってる?」
C06「初期設定のまんま。ちょっと試してみたけどさ、結局初期設定のが一番効く気がするんだ
  よな」
D07「そっか。でも色々試してみるのも結構面白いぜ」
C07「そういや、最近『幸せビーム』の効きが悪くなってる気がするんだよな。壊れたのかな」
E04「もう壊れたとか、お前どのくらい使ってるの」
C08「1日8時間くらい」
E05「そりゃ壊れるわ……」
D08「いっそ改造してみたら?効きが良くなるって話だぞ」
E06「それに改造したら公式サイト以外のカスタムデータも使えるようになるしな」
C09「何それ。ヤバいんじゃね?」
E07「大丈夫だって。俺もやってるけど全然問題ない。大体さ、いちいち公式サイトでカスタム
  データを検閲する意味が分からないんだよ。連中の利権を守るためのルールなんか無視して
  もいいって」
C10「それもそうだな」

(※SE:カチャカチャとネジを回す音など)
C11「うっし、こんなものか。カスタムデータは……テキトーに検索をかけてっと。……さて」
(※SE:ウィーンと幸せビームが照射される音)
C12「……あ、あれ?なんか目眩が……う、ああ、が、あああああ!うぎゃああああああ!!」
(※SE:何か悲劇的な末路を想起させる音)

A03「ニュースです。『幸せビーム』の使用中に死亡する事故が相次いでいます。被害者はいず
  れも『幸せビーム』本体を改造し、非公式なカスタムデータをインストールして使用してい
  た模様です。検察は製造元であるアミューズメント・レヴォリュショナリー社を提訴。改造
  や非公式データの扱いなどについて、同社の責任をどこまで問うことができるかが注目され
  ます」
B03「弊社の製品がこのような事態を招いてしまったこと、非常に無念に思っております。被害
  者の遺族の方々にはどれだけ謝罪しても謝罪しきれるものではありません。皆様の声を真摯
  に受け止め、可能な限りの賠償責任を果たしたいと考えております。また、改めて全ての
  『幸せビーム』ユーザーに警告します。絶対に『幸せビーム』を改造しないでください。す
  でに改造済みの製品をお持ちの方は決してそれを使用しないでください。『幸せビーム』は
  眼や耳を通さず直接皆様の身体に情報を伝える機器です。正しく使用した場合は大きな効果
  を発揮しますが、もし我々の想定外の使用をした場合、大きな被害を発生する可能性があり
  ます。絶対に行わないでください。アミューズメント・レヴォリュショナリー社・代表取締
  役の最後のお願いです。そして高田真澄というひとりの人間として、重ねてお願い致しま
  す。」