金来成「霧魔」(1939) 김내성 <무마>

短編探偵小説翻訳紹介   

霧魔(むま) (1939年、原語:韓国語、原題漢字表記:霧魔、原題ハングル表記:무마)

金来成 (きん らいせい、キム・ネソン、1909-1957)

著者紹介

 1909年、平壌(ピョンヤン)近郊に生まれる。平壌の学校で英語教師(後に翻訳家)の龍口直太郎(たつのくち なおたろう)の授業を受け、探偵小説の魅力を知る。21歳から26歳まで日本に留学。早稲田大学法学部独法科在学中の1935年、探偵雑誌『ぷろふいる』(1933-1937)に 「楕円形の鏡」 が掲載されデビュー。同年には、同誌の創刊二周年特別懸賞募集に投じた 「探偵小説家の殺人」 も入選し掲載された(ほかの同時入選作は、光石介太郎「空間心中の顚末」など)。日本語で発表した創作はほかに、雑誌『モダン日本』(1930-1951)の懸賞ショートストーリー募集に入選したユーモア掌編 「綺譚・恋文往来」 こちらで全文公開している)がある。
 『ぷろふいる』でのデビュー後は、探偵作家の光石介太郎が同誌デビューの作家に声をかけて結成したYDN(ヤンガー・ディテクティブ・ノーベリスト)ペンサークルの会合に出入りした。また、江戸川乱歩を師と仰いでおり、乱歩邸を訪れたことも二、三度あった。乱歩によれば、金来成は「非常な感激屋で、情熱家で、文学青年であった」(「内外近事一束」『宝石』1952年9・10月号)という。

 金来成が日本で発表した2編の探偵小説は本格謎解きもので、中島河太郎も『ぷろふいる』から出た新人の中で金来成には特に目を惹かれていたようである(『日本推理小説史』第九章「ぷろふいる」五年史)。しかし、金来成はデビュー1年後の1936年春、早稲田大学を卒業すると朝鮮に戻る。以降は金来成は朝鮮語(韓国語)で作品を発表し続けたが、その作品は一作も邦訳されておらず、彼がどのような作品を書いていたのかは日本ではほとんど知られていない。

 朝鮮に戻った金来成は、日本で発表した「探偵小説家の殺人」を翻訳改題した「仮想犯人」(1937)を皮切りに、「狂想詩人」(1937)、「復讐鬼」(1938)、「異端者の愛」(1939)、「屍琉璃(しかばねるり)」(1939)、「白蛇図(はくじゃず)」(1939)、 「霧魔」 (1939)、「第一夕刊」(1940)、「秘密の扉」(1941)などの短編探偵小説(多くは変格物)や、ベストセラーとなった長編通俗探偵小説『魔人』(1939)、『台風』(1943)、さらには少年向けの探偵小説『白仮面』(1937-1938)、『黄金窟』(1937)などを発表。また同時期に、『赤毛のレドメイン家』の翻訳や、ホームズ物、ルパン物の翻案を行った。朝鮮半島に探偵小説を広めるため、まさに韓国の乱歩と言っていいほどの八面六臂の活躍をしたのである。

 金来成の作家生活は約20年だったが、後半の10年は主に大衆文学を執筆しており、探偵小説の創作は少ない。戦後の探偵小説作品としては、日本語で執筆したまま未発表だった長編探偵小説『血柘榴』を原型とする『思想の薔薇』(1955)や「罰妻記(ばっさいき)」(1949)などのほか、『巌窟王』、『鉄仮面』、『ルルージュ事件』の翻案などがある。

 金来成は朝鮮に戻ってからも乱歩に手紙を送っていた。それは戦争で一度途切れるが、1952年からは再び乱歩と文通を開始している。金来成は旧友と会うことや探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)の見学を望んでいたが当時の情勢では渡航は難しく、探偵作家クラブが韓国政府に金来成の来日を認めるよう手紙を送ったが、結局来日は実現しなかった。また、金来成は自作を翻訳して日本の探偵雑誌に掲載することを望んでいたが、これもどうやら叶わなかったようである。

 金来成は1957年、脳溢血のため死去。人気作家として大衆文学のベストセラーを連発しているさなかのことだった。生誕100年となる2009年を迎えて以降、韓国では長編『魔人』の復刊や新編集の短編探偵小説集の刊行などがあり、金来成の探偵作家としての再評価が進んだが、日本ではほとんど知名度がないというのが現状である。

 ここで翻訳紹介する短編「霧魔」は、金来成が韓国語で発表した一ダースほどある短編探偵小説のうちの一編である。乱歩が随筆でタイトルだけ挙げたことはあったが、邦訳されるのは(少なくともそれが公開されるのは)これが初めてだと思う。拙い訳ではあるが、金来成の作品の魅力の一部分でも伝えることができれば幸いである。


二人の探偵小説家

 ()君からあんなにも興奮した声で社に電話がかかってきたのは、ちょうど正午の、目が回るほど忙しく仕事をしている時だった。
 卓上電話のベルが突然部屋に騒々しく響き渡った。私は機械的に手を伸ばし、受話器を取った。
「あ、(キム)君! 僕だ、僕。()・イルだ。今、時間あるかい? 忙しい? 忙しくても、ちょっとだけ会わないか。いや、必ず会おう。話したいことがあるんだ……。なんの話かって? 電話ではちょっと言いづらい、恐ろしい話さ。君の金稼ぎの足しにもなる話だ。エログロ百パーセント! その上、スリル満点だ、満点! 探偵小説家の君の猟奇心を充分に満足させる奇怪な事件が起きたんだ。『愛する妻の筆先のようになよやかな指を、涙を流しながら喰らう男の話』。どうだ? 探偵小説の題材としては、それこそ百二十パーセントの効果をあげそうな話だ。どうだ? これぐらいだったら、君の飢えた胃袋がかなり刺激されるだろう……? 僕は今、明治町(現・明洞(ミョンドン))の「ペチカ」にいる。待っているから、三十分以内に必ずこっちに来てくれ。僕が昨晩体験した奇怪な話を必ず聞いてやる義務が君にはあるということだ。いいだろ? それじゃあ、詳しい話はあとで会ってするとしよう……」
 ()君は興奮した声でそれだけ言うと、私の返答を待つ余裕もないかのようにがちゃりと電話を切った。
 それはあまりにも独断的で命令のようにも聞こえたが、()君と私の親しい間柄を考えれば、別段不愉快なことでもなかった。とはいえ、どんな小説家でも一度は出くわす類の災厄を、私も幾度となく経験してきている。
 災厄と言うとちょっと意味が強すぎて適切な表現にならないかもしれないが、「なあ、小説の材料になる話を一つ提供するから、おごれよ」と言ってくる人々の話を聞いてみれば、大抵は巷の恋愛事件か、そうでなければなんらかの殺人事件であるのに違いない。そのような話がそのまま小説の材料になると彼らは思っているようだ。事件さえあれば小説の材料になるだろうと考える彼らの文学的常識を気の毒に思うのと同時に、ああ、またひどい災厄に見舞われてしまった!と、私は彼らの低俗な趣味によって自分の貴重な時間が無残にも奪われたことを悔やむのだった。
 ()君は幼いころからの重度の探偵小説ファンだ。いや、ファンという域は通り越した、一人のマニアだった。裕福な家の長男として生まれた彼は、東京のある私立大学の法科を終えることは終えたのだが、もともと人生に対してなんの積極的な情熱も持つことができない彼は、朝から晩まで映画を見たり探偵小説を読んだりしてその日その日を過ごす、極めて恵まれた青年だということができた。
 私は今まで探偵小説に関する()君の豊富な知識を買いながらも、彼の探偵小説に対する態度にはいつも不満を感じてきた。
 それは()君がいわゆる正統的探偵小説――なんらかの犯罪事件を科学的思考で注意深く解き明かす本格的探偵小説よりも、エロティシズムとグロテスクに満ちたいわゆる犯罪小説に対してより一層の興味と情熱を持っているためだ。
 彼は常日頃から私の作品に対して不平を持っていた。もっとエロティシズムを溶け込ませて、残忍で陰鬱でグロテスクな事件を扱えというのだ。
 だから彼が私の正統的な作品より、たとえば例を挙げると、白雄(ペク・ウン)のような作家の小説をより好んでいるのも無理はなかった。
 まだ探偵小説文壇というものを持つことができていない朝鮮で、それでも私と白雄(ペク・ウン)だけはたゆまず作品を発表してきたし、その上私と白雄(ペク・ウン)の作風がまったく異なることが、より一層読者の興味を引き立てていた。
 今も言ったように、私はエログロを排除した正統的作品によって読者を得ているが、白雄(ペク・ウン)はそうではない。
 白雄(ペク・ウン)の作品は、どの作品であれ、到底直視できないような残忍な描写と、変態性欲者の陰鬱で破廉恥な生活など、いずれにせよ性格破綻者の虚無的ダダイズムが横溢している。
 そういう点から見て、同じ探偵小説だと言っても彼の作品にはずっと芸術的な雰囲気が濃厚だったし、単なる一つのクロスワードパズルのような私の作品よりも確実に文学に近い作品だということができた。
 その上、彼の私生活をよく知らない私にはここでなんとも確言することはできないが、漏れ聞くところによれば、ほとんど作品に表現されている以上の陰気な生活を送っているとのことで、彼がどんな経歴を持った人物なのか、それを知る人は一人もいないのだという。西小門町のある中国人の家の二階の一間を借りて、三十を過ぎた現在まで孤独な独身生活を送っているという以外には、私にはなんの知識もなかった。
 いずれにせよ、そんな白雄(ペク・ウン)の作品をひどく好んでいる()君からそういう電話が来たところで、それが果たして私の書くような小説の材料になるかどうかは甚だ怪しかったが、相手が()君であるからには、私には行かないという選択肢はなかった。
 私は新聞社を飛び出した。


筆を捨てて(やいば)を手にした怪奇派作家

 四月はもうすぐそこまで迫っていたが、街にはまだ、冬が置き土産として残していった肌寒い風が首すじを掠めるように吹いていた。
 正午を少し回った喫茶店の風景はさながら、情熱を失った金魚たちがまどろむ金魚鉢にも思える。その中でも、ただ一人()君だけが、あらゆる情熱を瞳に宿して私を迎えた。
「座って、座って」
 彼は私の洋服の袖を引っ張ると
「今じっくり考えると、あれはどうしたってあの人だよな……?」
と、私が座るのも待たず、彼はもう自分の思索にふけっていた。
「そんなに興奮して、一体何があったんだ?」
「待って、待って! もしそうだとしたら、これは本当にそのまま放っておいていい事件じゃないんじゃないか……? (キム)君、もしもの話だが……」
 ()君は自分にしか分からないような言葉をそうやってブツブツとつぶやいて、しまいには
(キム)君!」
と言って私の顔をじっと見つめた。
「なあ、話してくれなきゃ分からないじゃないか。いつも礼儀正しい君が、急に気が変になったようだぜ?」
(キム)君、僕はまだ彼と親しく付き合ったことはないんだが、君はあの白雄(ペク・ウン)という作家をよく知っているだろう?」
白雄(ペク・ウン)? ああ、よくは知らないが、二度ほど会ったことがあったと思う。誰かの出版記念会で……。しかし、どうしてまた急に白雄(ペク・ウン)なんて持ち出してきたんだい?」
 白雄(ペク・ウン)という人物に対する私のどこか不気味な印象と、今目の前で私をじっと見つめている()君の燃えるような瞳が、ふと私に異様な予感を抱かせた。
「僕は彼の写真をなにかの新聞か雑誌できっと一度見ているんだが、今じっくり考えると、あれはやっぱり白雄(ペク・ウン)だったようだ。昨晩は君も知っている通り、霧が深くて顔がなかなかよく見えなかったんだよ」
 ()君はなにかをぼんやりと考えていたが、急に顔をこちらに向けて
(キム)君! 彼のひたいの左の方に、硬貨ほどの大きさのしみが一つなかったか?」
と、ぐっと飛びかかるように私の腕を握りしめた。
「あった! うっすらと赤いしみがあった!」
「あったんだな? 確かにあったんだな?」
「だからあったと言ってるじゃないか」
白雄(ペク・ウン)だ! 白雄(ペク・ウン)だ! 濃い霧にさえぎられてよく見えなかったが、確かにあの男のひたいにしみがあったのを僕は見たんだ! 確かにどこかで見た人だと思ったんだ……、白雄(ペク・ウン)だ! うん……」
 ()君の顔に浮かんでいた濃い疑惑の色は、今度はだんだんと恐怖に変わっていくようだった。
()君、話してくれ! 白雄(ペク・ウン)が一体どうしたというんだ?」
 ()君は私の言葉も耳に入らないかのように、しばらくぼんやりと窓の外を眺めていたが、声を落として
白雄(ペク・ウン)はついに犯罪に手を染めてしまったということさ。僕はかねてから、彼の作品を読むたびに、この作家はいつか一度は自分の空想を実行に移してしまうだろうと強く感じていた。彼の作品はあまりにもビビッドで、ただの一人の優秀なストーリーテラーだというには、あまりにも悪に対する賛辞が多く、あまりにも悪に対する情熱が強かったということだ。それだけは君も認めるだろうな?」
「ああ、その辺りは私の口には合わなかったが、いずれにせよ、作品世界に対する彼の激烈な情熱、さらに言えば、悪に対する侮りがたい変態的情熱を持っていることだけは事実だろうね」
「うん、それが彼の作家としての長所であると同時に、人間としての短所だったんだろう。そして彼はついにペンを捨てて(やいば)を手にしたんだよ! (キム)君、じゃあ、僕の話をちょっと聞いてくれ。それは昨日の夜のことだったんだが……」
 コーヒーを飲みながら()君が私に語った話は次のようなものだ。


奇妙な男

 ()君は霧が好きだ。霧の中でも夜霧がとりわけ好きで、夜霧の中でも、人っ子ひとりいない夜更けに摩天楼の間を縫うように漂う深い霧が好きなのだという。
 ()君が鍾路(しょうろ)の裏路地でおでんをたんまり味わって店を出たのは、もう夜中の十二時に近い時分だった。
 彼はレインコートの襟を立てて、抵抗のない真っ白なとばりをほろ酔いの体でかき分けながら、光化門通りを過ぎ、社稷洞(しゃしょくどう)の自分の家に向かって足取りを進めていた。
 しかし、彼がもし夜霧の漂う公園を味わってみようなどと思っていなかったら、彼は今話そうとする白雄(ペク・ウン)の犯罪を永遠に知らずに過ごしていただろう。
 うらさびしい社稷(しゃしょく)公園にぽつぽつと立っている電灯の乳白色の光が、さながら妖婦の酒に酔った瞳のように彼の足取りを誘惑する。
 彼は頭上で電灯が夢幻のようにきらめくあるベンチに腰掛けてみた。光化門の四つ辻を駆ける終電車の音がゴーーと聞こえてくる。
 公園はもの静かだ。夜鳥の声すら聞こえない。夜霧の漂う夜は、全世界の人が誰しも声をひそめて内緒話をしているように彼には思えた。
 しばしの間、たいへん穏やかな心持ちで安っぽいロマンティシズムを楽しんでから、そろそろ家まで帰ろうとベンチから体を起こしたちょうどその時だった。
 どこからか人の足音が聞こえるようだった。それはだんだんと近づいてくるようだった。深い霧のとばりが身の回りでかすかに揺れ動いているようだった。
 ()君はふたたびベンチに体を座り込ませて、四方をきょろきょろと見まわした。何も見えない。
 しかし次の瞬間、霧に包まれた薄黒くどんよりとした人影が目の前にぬっと現れた。
 やはりレインコートを着た男だ。乱れ髪の頭には帽子もかぶらず、よくは見えなかったが、片手になにか白みがかったものを握ってそれをつらつらと眺めながら歩いてくる。
 なにかをぺちゃくちゃと食べているようだ。
 彼はほとんど()君の足先まで来てからやっと顔を上げ、初めて自分の目の前に座る()君を発見した。
 彼はすっと足をとめた。こんなに近くに人が座っているとは思わなかったのだろう。驚いた様子で、手に持っていたその白みがかったものをあわててコートのポケットにしまい込み、片手ではしきりに唇をぬぐっているようだ。
 ぬぐう前の唇がなにかやや赤くて薄黒いようなものでぬれていたのを()君は見逃さなかった。チョコレートのような色だと()君はその時思った。しかし、手に持っていたその白みがかったものがなんだったのかはどんなに思い返してみても分からなかった。
「散歩ですか?」
 その霧の中の男はそそくさとした足取りでそのままベンチの横を通り過ぎかけたが、しかしこのような場合にそのまま黙ってさっさと通り過ぎてしまうのはどこか決まりが悪く不自然だと感じたものか、踵を返し、太く低い声でそう尋ねた。
「はい。散歩というよりも、このロマンティックな雰囲気がとても良かったので」
 ()君はそう答えながら、体を少しずらして彼に席を勧めた。
「ああ、そうなんですか。実際、都会の夜霧ほどわれわれの空想を刺激するものはそうありませんよね。私もまた、こんな雰囲気を好む人間の一人です。ああ、こんなところで偶然にも同好の士に出会えるとは、たいそう嬉しいことです」
 男はそう言いながら()君の左隣りにどかりとその重々しい体を落ちつけた。
 霧があまりに濃いので、すぐ横に座る彼の顔さえもなかなかはっきりとは見えなかった。真っ白なベールを通して見える彼の顔にはどこか深刻な憂いとペーソスが漂っているようだった。
「ふう」と男は一息つく。「お宅はこの近くなんですか?」
「はい。このすぐ裏です」
 男はまたしばらくの間黙って座っていたが、口を開いて
「あなたは今、ロマンティックなこの雰囲気が良いとおっしゃいましたが、まことにこんな夜には、心の底まで惚れ込んだ女性と、ただ二人で、遠く遠く、この厚い霧のとばりをかきわけて、なんと言いましょうか――最近の言葉で言えば、愛の逃避行、愛のアヴァンチュール……」
「かなりのロマンティストでいらっしゃいますね!」
「しかし……相手がいないのが(うら)みですよ。ロマンティシズムをどんなに空想の中で楽しんだところで、それがなんになります? 何百回何千回の空想よりも、ただ一度の実行こそが、価値があるのではないでしょうか」
「しかし、ロマンティシズムがロマンティシズムたるのは、それが実行にまでは至らないからでは?」
「あなたは今まで、本当に心の底まで女性を愛したことがありますか?」
 彼は突然そんなことを尋ねた。
「さあ、どうでしたかねえ……」
「世の中にはこんな話があるそうです。ある男が、ある女性を、それこそ……なんというか……なんと言えばいいでしょうか、私は近年流行している「愛」という言葉が大嫌いなんです。実感がわきません。それこそ、目に入れても痛くないという言葉があるじゃないですか……?」


妖婦ミミの手

 ()君はまじまじと男の顔を見た。ひたいの左の方に、硬貨一枚ほどの大きさのしみが見える。ぼんやりと見える顔に二つの眼だけがひときわ目立っているのがどこか薄気味悪い。年齢は四十近くに見えた。
「……四十近くになってから初めてその男は女というものを知ったそうです。女はやっと十八歳になったばかり。うなじとひたいにまだ産毛が生えているような娘でしたが、柔らかくてすべっこい、弾力のある体と、面長の顔にいつも浮かべているコケティッシュな微笑みは、早くも世の多くの男性たちに対して一人の成熟した女性としての魅力を存分に主張していたといいます」
 女の名前はミミ(美美)と言った。ミミを咸鏡道(かんきょうどう)朱乙(しゅおつ)温泉のあるみすぼらしいバーで見初めた彼は、毎日ミミを一目見なければ堪えられないというぐらい、彼の情熱のすべてをただミミ一人に注いだという。
 ミミも彼にたいそう懐き、彼のことを愛するようになった。貧しい会社員である彼はミミがまるでミューズででもあるかのように、彼女にかしずき、彼女を可愛がった。
「一緒に都会に出ないか?」
「ええ、そうしましょう!」
 こうして、ある月が輝く夜、彼らは満身に希望をたっぷりと抱いて、朱乙温泉を離れ都会に出た。
 都会に出てくるまではたやすかったが、迫ってくる貧しさを打ち払うことはできなかった。彼らは西小門町のある中国人の家の二階の一間を借りて、そこで残りいくらにもならない金を大事に使って、ひとつき、ふたつき、みつき……。
 ミミは年の割に豊かなその体以外には、女性としてなんの取り柄もない女だということを彼はようやく知った。彼はミミのために飯を炊いた。ミミの靴下を繕い、ミミの下着を洗った。ミミはだんだんと勝手気ままになっていった。四十近いこの男が顔をしかめもせず自分の下着を嬉々として洗っているさまを眺めるたびに、あれでも男だろうかと冷笑がもれるようだった。
 しかし男はひたすら幸せだった。四十近くになって初めて、彼は世の幸福というものを知ったようだった。
 いや、ミミのために飯を炊き靴下を洗ってやるのは次のような理由があるのだと、彼は自身に言い聞かせているようだ。それは彼がミミの体でなによりもミミの手をいとおしく思っているからだ。ミミの手は実に美しかった。白く澄んでいて、筆の先のようになよやかなその指! ミミの手をこの世界のすべてと交換しようという人間がいたとしても、彼は首を横に振るだろう。
 ミミの手はただ一つのことにしか使ってはいけないのだ。ミミの手は私を愛撫する時にだけ必要なのだ。
 ミミの手はだんだんと怠惰になっていき、そしてその分より美しくなっていった。ほんのりと赤い薔薇の花がミミの手の甲で舞っているようだった。
「ミミ、どうしてこんなに可愛い手をしているんだい?」
と尋ねればミミはこう答える。
「あなたをなでてあげるためよ。お母さんのお腹の中から、ずっと磨いてきたの!」
「よしよし、この手だけはほかのどんなことにも使ってはいけないよ。ミミの服も私の手で着せてやるし、脱ぐ時も私がやってやる……」
「ええ、それじゃあご飯も食べさせてね!」
 しかし女という生き物は甘やかせば甘やかすほど、どこまでもつけあがっていく生き物だ。ミミはだんだんと男を見下すようになっていった。こうなってしまうと、ミミのような血の気が人並み外れて多い女はしばしば突拍子もない考えをするものだ。
 いや、ミミが男を見下し始めたことだけが理由ではない。まさに今十八歳の若々しい体で、四十近い夫のそのうんざりするような愛撫を軽く受け流せるほど、心が従順にはなれなかったという理由も確かにあるようだ。いや、それこそが最初に来る理由のようだ。
 いずれにせよ、ミミはついに突拍子もない考えを実行に移してしまった。


探偵小説家の犯罪

 そのころミミは、仕事を探してまわるのだと言って、朝早く出かけては夜遅くに帰ってきたりするようになった。仕事と言っても、喫茶店やカフェ、そうでなければバーの女給だった。
「ああ、疲れた! ご飯を食べていくことがこんなに大変だったなんて……」
 ミミは実際、疲れ切った体で夜遅くに帰ってくると、服を着替える気力もないように男の横に倒れ込み、明くる日の正午近くまで死んだようにぐったりしている。
 そんな時、男は非常に申し訳なく思った。倒れ込んだミミの体から一枚、二枚と服を脱がす。
「ミミ、明日からは私が出掛けて荷車でも引くから、ミミは家でゆっくりしていなさい」
 そんな言葉を男はミミのほんのりと赤い耳に囁く。そうすると、寝入っているとばかり思っていたミミが
「いやよ、いや。あたしのことをこんなに愛して下さる男の人だもの、あたしが稼いで食べさせなくっちゃ」
とにっこり笑うので、つい涙がぼろぼろとあふれる。
 そんなことがあった明くる日から、男はミミを家に残し、仕事を探すつもりで街をさまよった。
 男が夜遅く帰ると今度はミミがたいそうすまながった。
 そんなある日、男は鍾路(しょうろ)の四つ辻で、家に残してきたとばかり思っていたミミを発見した。スマートなダブルの背広を着た青年と肩を並べて、仲の良い恋人同士のように歩道を歩いているではないか!
「へえっ?」
 男の口が阿呆のようにぐにゃりとゆがんだ。
 ミミが、ミミがほかの男と歩いている……?
 しかし次の瞬間、ミミと一緒に歩いている男が誰であるか分かり、胸を突かれるようだった。嫉妬という感情を持つより先に、彼はもう自分自身のうかつさにぞっとした。
「理髪店の主人だ!」
 そうだ。青年は彼らが借りている中国人の家の二階からすぐ見下ろしたところにある理髪店の主人だった。
 ミミと青年は鍾路の裏路地へと入っていく。彼は後ろを追った。しかし二人の影が「平日旅館」と書かれた看板の下の門の中へと消えていった時、彼はもう後ろを振り返りもせず大通りに飛び出してしまっていた。
 仕事を探すのだと言っていたミミ! もっともらしい言い訳だった。死体のようにぐったりした体を引いて夜遅く帰ってきたミミ! 「いやよ、いや。あたしが稼いであなたを食べさせなくっちゃ」とにっこり笑ったミミではなかったか! しかし彼はその日も夜遅く帰宅した。ミミより先に家に帰っているのが非常に怖かったのだ。
「ねえ、お仕事は見つかった?」
 ミミの手が彼の真っ青になった手首をつかむ。
「そんなに簡単に見つかる仕事がどこにあるだろう?」
 その日の夜、布団の中で男は涙を流して、ミミの、世界のすべてとも替えたくないと思っていたミミの手をそっとなでてみた。ぐったりと寝入っているミミだった。
「その日の夜も、今夜のように窓の外には深い霧が雨のように漂っていました。男はミミの手をしばしの間、布団の中でなでさすってから、そっと起き上がり、明かりをともしました。掛け布団をのけて、ミミの手首をじっと見つめました……」
 そこまで話してきた霧の中の男はその時、レインコートのポケットに差し入れた手で、なにかをごそごそとなでまわしているようだった。
 夜はもうずいぶん更けていた。
 ()君は男の顔をもう一度まじまじと見た。泣いているようだった。笑っているようでもあった。泣いているのか笑っているのかうかがい知ることのできない、ゆがんだ顔だった。
「男はそうしてミミの手を一時間ほど黙って見つめていましたが、突然、ああ、この手! この手がほかの男を……!と叫びながら、気がふれたようにがばっと立ち上がるやいなや、部屋の隅に食器と一緒に置いてあった包丁をさっと手に取り、床に突き出たミミの右の手首を切り落としました」
「えっ? 手首を……?」
「しっぽを切られた生魚のようにぴちぴちと跳ね回るミミの体! 男が気狂いのようにばたばたとした足取りで往来に飛び出し、霧の中を太平通りの四つ辻の方へと無我夢中で駆けに駆けていたころには、中国人の家の陰気な二階では、ミミの体がさながら人魚のように部屋の中をたゆたっていたことでしょう」
「それで、それで一体全体どうなったんですか? ミミはどうなって、その男はまたどうなって……?」
 なにか形容することのできない恐ろしい予感が、ぞくぞくと()君の全身を襲った。
「……もちろん、男は飛び出してしまったんですから、そのあとにミミがどうなったか、それは分かりませんよ。けれども、府庁の前まで駆けてきたその男は、その時、レインコートのポケットの中になにか妙なものが入っていることに気が付きました。あまり軽くはなく、かといってそれほど重たくもないものが、足を踏み出すたびに自分のわき腹をこつこつと打つじゃないですか! 彼はふと足を止め、ポケットにそっと手を入れてみました。手首! ミミの切り落とされた手首でした!」
「手首!」
 ()君は思わずそう叫んだ。
「そうです。ミミの筆先のような手だったんです。それだけ見ても、男がどれだけミミの手をいとおしく思っていたか……。彼は切り落とした手首を無意識のうちにポケットの中にすべり込ませていたんです。彼は血がぽたぽたと流れ落ちるミミの手を異様な目付きで見つめながら、こちらの通りからあちらの通り、あちらの通りからまた別の通りと、あてもなく霧の中をさまよい始めました。彼は……」
 その瞬間、()君ははっと息を飲み、ベンチからあわてて体を起こした。――この男が、まさにそのミミの手を切り落とした男だ!
 さっきこの男はなにか白みがかったものをじろじろ見ながら歩いて来たじゃないか! そうだ! 今考えればそれはまさに人の手だった! それも男の手ではなく、白魚のような女性の手!
 あわてて立ち上がった()君の服の袖をぐっとつかむと、男はその奥行きのある声で言った。
「もう少しだけ、私の話を聞いてやってください! その男は、まるで夢遊病者のように霧の中をさまよいながら、ミミの手首から流れ出る血を、なによりも親しみを込めた心持ちで、少しずつ、少しずつ、舐めすすりました!」
「放してください! この袖を……」
 ()君はさっきこの男の唇が、なにか薄赤くて薄黒い液体にぬれていたのを思い出した。
「袖を早く放せ! 早く……!」
「……私はその、世界のすべてとも替えられないほど貴重なミミの手をどうすれば永遠に保存しておくことができるのか考えてみました。そのままにしておけば腐ってしまうだろうし、かといってアルコールに浸しておいたところで……。いや、ミミの手は私の命ではなかったか。私はその指を、一本ずつ、一本ずつ、噛みちぎって食べることで、永遠に私のものにするつもりで……」
「おい! この手を放せ!」
「これを、じゃあ、これをちょっと見てください!」
 そう言いながら、男がポケットから親指のなくなった女性の手首をつかみ出した時、()君はすでに公園の外へと一目散に走り出していた。


怪奇派作家の正体

 ()君の話を聞き終えるやいなや、私は「白雄(ペク・ウン)! 白雄(ペク・ウン)……!」と声を漏らしていた。()君はコーヒーを一息にぐっと飲み干すと、
「ところで、まだ聞いてなかったけど、白雄(ペク・ウン)のうちがどこか、君は知ってるか?」
「やはり、西小門町の中国人の家の二階だよ……。しかし、まだ独身だと聞いたが……」
「でも分からないだろ。いつどこでどんな女性と関係があったかなんて……」
「よし、それなら試しに白雄(ペク・ウン)のうちに突撃してみるか?」
「ああ、そうしよう!」
「でも、昨日の夜のことだというなら、とうに警察か、あるいは新聞社にまで連絡がいってるはずじゃないか? その点がなんだかおかしくないか?」
「それはそうだが、ミミが通報しなかったとすれば警察でも知りようがないじゃないか。ミミの心境がどう変わったかなんて誰にも分からないだろ?」
 こうして喫茶店ペチカを出て、()君と私が興奮と義憤と恐怖心を一抱えずつ心に抱いて明治町の停留所までたどりついた時だった。
(キム)君! あそこ、あそこ……」
 ()君は急に私の腕をぐっとつかむと、今まさに線路を横切っている一人の男の後ろ姿を指さした。
「あ、白雄(ペク・ウン)だ!」
と叫ぶ私に()君は
「あれは確かに白雄(ペク・ウン)か?」
「うん、白雄(ペク・ウン)に間違いない!」
「だとしたら、やっぱり昨日の男は白雄(ペク・ウン)だったんだ!」
 レインコートを着て、やはり帽子をかぶっていない白雄(ペク・ウン)は、何を考えているのか、両肩をだらりと下げて、うつむきかげんで朝鮮ホテルの前を歩いていく。
 私と()君はぴったりと後ろについていった。すると白雄(ペク・ウン)はレインコートのポケットからなにか白みがかったものを取り出し、しばらくじろじろ見て、ふたたびしまい込んだ。
「手だ!」
「そうだ! 確かに人の手だ!」
 私と()君はもう一度声を上げずにはいられなかった。白雄(ペク・ウン)はまだミミの手を食べきってはいないようだった。
 白雄(ペク・ウン)はその時、太平通りの四つ辻から、西小門町の中国人街へと入っていった。
 真っ暗な通りをしばらく入っていくと、白雄(ペク・ウン)の影は右手にある大きな建物の中へと消えてしまった。
「あそこがやつのうちか!」
「はて……」
 しかし彼が姿をくらませたその建物は、近くまで行ってみると、中国人の家ではなく「太平ビル」だった。
「あ、分かった! このビルには新世界社という雑誌社があるんじゃなかったか?」
「そうだ、あった!」
白雄(ペク・ウン)は『新世界』の常連作家だったよな? 彼はきっと新世界社を訪ねるつもりだろう」
 ほどなくして()君と私は三階の新世界社のドアを押し開き、中に入った。いた! 編集長の(ホン)君と向かい合って座っているのは確かに探偵作家白雄(ペク・ウン)だった。
「おや、これはなんとまあ珍しい二人が揃ったものだ。怪奇派の首領、白雄(ペク・ウン)先生と、正統派の寮長、(キム)××先生が時を同じくして我らが新世界社に集うなんて、誠に慶賀に堪えないことであります」
 楽天家の(ホン)君のユーモアもその時の私たちを笑わせることはできなかった。
 ところが、白雄(ペク・ウン)は笑って言った。
(キム)さん、お久しぶりです。まあ、座ってくださいよ」
 白雄(ペク・ウン)は私に椅子まで勧めてくれた。
「どうしてそんなふうに、犯罪者を捕まえに来た名探偵みたいに恐ろしい顔をしているんだい? (キム)君!」
 (ホン)君は私にそんな言葉を投げかけると、横に立っている()君に向かって
「さあ、座ってください」
 その時初めて白雄(ペク・ウン)()君に目を留めた。二人の視線が一瞬間、虚空でぶつかった。
「あ! あなたは昨晩、社稷(しゃしょく)公園で……」
 そう言って白雄(ペク・ウン)は阿呆のようににたにたと笑った。
「あなたは昨晩……、ミミ……ミミさんの手首を……」
 ()君の声は震えていた。
「はははは、あれは、あれはですね……。ご容赦ください。あれは言ってみれば、私の創作ですよ。公園の空気があまりにも神秘的だったので、それで……」
「なに? 創作……?」
「ご容赦ください。あなたをたいそう驚かせてしまったようで……」
 ()君は穴のあくほど白雄(ペク・ウン)の顔をじっと見つめた。
「ということは、あの長い長い話は全部絵空事だったというんですか?」
「そうです。雰囲気があんまりロマンティックで、それで……」
「それじゃあ、あの手首は……?」
「あ、それは……」
「今、あなたのポケットの中に入っている手首は……?」
 白雄(ペク・ウン)はその時()君に椅子を勧めて、
「まあ、お座りください! 実は、この手首だったんです……」
「一体全体、何を持ってそんな話をしてるんです? 手首とはまた、なんの手首です?」
 成り行きを知らない(ホン)君がそう問う。
「まったくこの手首のおかげで……。さあ、これがミミの手首です」
白雄(ペク・ウン)がポケットから女性の手首を取り出した。
「えっ……?」
「マネキン人形の手首ですよ!」
 それは親指が取れたマネキン人形の手首だった。
 緊張していた()君の顔がすっとほぐれた。私もおそらく同じだっただろう。
「そんな、ばかな……」
という()君の言葉をさえぎって、白雄(ペク・ウン)
(ホン)君、全部君のせいだぜ! 君のせい! 今日が最終的な原稿の締切日だといって、(ホン)君がうちの蝶つがいが擦り切れるまで何度も何度も原稿の催促に来るから……。そういう訳で、私は何が何でも昨晩のうちに百枚の原稿を完成させなければならなくなったんですよ」
「ほお、これはまた、なにか創作秘話があるみたいだねえ!」
 (ホン)編集長の目がきらきらし始めた。
「でもまだなんのアイディアもなくて昨日の夕方まではうんうん唸っていましたが、折りよく霧も出て来たので、よし、なにかいい考えが浮かぶかもしれないと思って、街に出たんです。そうするうちに、鍾路の和信(わしん)百貨店の裏路地のゴミ捨て場の横で、このマネキン人形の手首を拾ったんです。私も最初に見つけた時は、本物の人間の手首だと思ってぎょっとしましたよ。それで、ええと、この手首からなにかヒントをもらえないだろうか、と、それを手に持って通りをうろうろして、社稷(しゃしょく)公園に立ち寄ったんです。ご容赦ください。本当に……」
 ぽかんとした顔で立っていた()君は、苦りきった顔で舌打ちすると、
「それじゃあ、あの時あなたが食べていたのは一体なんだったというんです?」
「ああ、あれはチョコレートですよ。私は子供みたいにチョコレートが大好きなんです。はははは!」
「まったく、あきれてものも言えない!」
「それで、あなたとあんなふうにベンチに腰かけていたところ、あんな空想がふいに浮かんできたんです。あなたにああして一度話したおかげで、原稿はすらすらと書けましたが、たいそう驚かせてしまったようで……。これがその時家に帰ってから書いた原稿です」
 白雄(ペク・ウン)はポケットから原稿の束を引っぱり出した。「霧魔(むま)」というタイトルだ。
「霧魔! いやはや、いいタイトルだねえ。霧の中の悪魔!」
と、私がややとげのある言い方で褒めるのを聞いた白雄(ペク・ウン)はこう説明した。
「そういった意味よりも、作者としては、霧は魔術師だという意味で……。なにしろ、マネキン人形の手首をミミという女性の手首だと見たことで、初めてこの小説が生まれたんですからね……」


翻訳:Dokuta
韓国語から翻訳
使用テキスト:『金来成傑作シリーズ 怪奇・翻案編 白蛇図』(ペーパーハウス、2010年)

2011年9月28日公開