中国ミステリ史 第四章 - 中国推理小説120年の歴史


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

2011年2月8日

 『中国ミステリ史 第四章』では、 1970年代末から1990年代まで の中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリの歴史を紹介している。

目次

第四章 1970年代末~1990年代: 翻訳ブームと中国ミステリの多様化

第一節 日本の社会派推理小説が中国でもブームに

 この「中国ミステリ史」では触れていないが、井波律子(2003)『中国ミステリー探訪 ― 千年の事件簿から』で詳しく述べられているように、中国には欧米ミステリ受容以前から、1000年を越える長いミステリ(的なもの)の伝統がそもそもあった(またそれは、日本が欧米ミステリを受け入れる以前から、日本の物語様式に影響を与えていた)。そして19世紀末からの中国ミステリの歴史は、国外から新たに入ってきたミステリ様式と、もともと持っていたミステリ様式との止揚の歴史であった。
 中国に訪れた国外からの第一の波は、19世紀末にアジアで翻訳小説文化が花開くと同時に流入したホームズやルパンなどの欧米ミステリであり、それを受容した結果、 程小青(てい しょうせい) 孫了紅(そん りょうこう) 青紅コンビ を中心とする 上海探偵小説 の時代が幕を開けた。第二の波は、社会状況の変化によって突如大挙して押し寄せてきたソ連の反スパイ小説であり、それは中国では 反特小説 となり、文革下ではその変異形が"写本"の形で流通した。
 そして、文化大革命終結後、中国に第三の波が訪れる。その中心となったのは、日本の 社会派推理小説 である。前掲の李長声(2002)「中国のミステリー事情」によれば、この頃には、こんなフレーズが流行したという。 「若者の愛読書は、アメリカのラブ・ストーリーと日本の推理」

 1970年代末に文化大革命が終結すると、中国も次第に文化の鎖国状態を解き、翻訳小説も刊行されるようになる。1979年に刊行された雑誌『訳林』(译林)創刊号には アガサ・クリスティ『ナイルに死す』 (1937)が翻訳掲載されたが、これがこの種の作品に飢えていた民衆の需要に合致し、いくら刷っても売り切れ、最終的には100万部以上を売り上げたという。

 この時期に訪れた翻訳ブームでは、すでに中華人民共和国成立の1949年以前から多く訳されていた欧米の黄金時代の探偵小説やその後流入したソ連の反スパイ小説のほか、日本の推理小説や欧米のハードボイルドなどが大量に刊行された。翻訳された日本の作品には 江戸川乱歩 の作品なども含まれていたが、社会性のあるミステリが特に受け、 松本清張 森村誠一 水上勉 らの作品が人気を集めた。
 ソ連や東欧の作家では、ソ連のアナトーリィ・ベズーグロフ(阿纳托利·别祖格洛夫)、ユーリイ・クラロフ(尤利·克拉洛夫)、ロマン・キム(金罗曼)、ブルガリアのボゴミール・ライノフ(博戈米尔·拉伊诺夫)、アンドレイ・グリャシキ(安德烈·古利亚什基)、チェコのVáclav Folprecht(瓦茨拉夫·福尔普列特、Вацлав Фолпрехт)らの作品が翻訳刊行された。

1970年代末のアジアの動向
  • 日本では1975年から1979年にかけて、島崎博が編集長を務める探偵小説専門誌『幻影城』が刊行されていた。
  • 台湾では1977年4月、松本清張『ゼロの焦点』が翻訳刊行されている。日本ミステリの台湾での翻訳刊行はこれが最初だった。台湾ではこの7年後の1984年、傅博(ふはく/フーボー/=島崎博)の提案を受けて 林仏児 (りん ふつじ/リン フォー)が『推理雑誌』を創刊し、台湾ミステリの草創期が始まる。台湾についてはこのページではなく、後に別のページでまとめる。
  • 韓国では1977年、翻訳ミステリの叢書である《東西推理文庫》全126巻(欧米ミステリの日本語からの重訳)と《河西推理選書》全36巻(江戸川乱歩『孤島の鬼』『陰獣』、横溝正史『本陣殺人事件』、松本清張『点と線』『ゼロの焦点』『砂の器』、森村誠一『高層の死角』『人間の証明』『野性の証明』などのほか、韓国オリジナルの作品も含まれる→ラインナップ)の刊行が始まり、韓国ミステリ中興の祖である 金聖鍾 (キム・ソンジョン)の活躍と相まって推理小説ブームが訪れた。(金聖鍾(キム・ソンジョン):邦訳に『最後の証人』(論創社、2009年)などがある)
  • インドネシアは産油国であるため1970年代に「オイルブーム」(日本では「オイルショック」)が訪れ出版界が活況となり、ホームズ受容期以来の2度目の推理小説ブームが訪れた。1970年代末にはアガサ・クリスティなどの作品が刊行され、その翻訳をしていた S・マラ・Gd (エス・マラ・ゲーデー)が1985年に推理作家デビューする。(S・マラ・Gd(エス・マラ・ゲーデー):邦訳に『殺意の架け橋』(講談社、2010年)がある)

第二節 中国ミステリの多様化


 過去に中国語に翻訳された作品が再び読めるようになり、また新たに国外から大量のミステリが入ってきたことから、中国ミステリも社会派、サスペンス、SFミステリなど、多種多様な作品が生まれるようになる。

(以下、「推理之門」に掲載されている作品リストに作家名からリンクを貼っている(ただし、やや情報が古い))

  • 藍瑪(らん ば/ラン マー/Lan Ma/蓝玛)(1951 - )(ブログ
    • 北京偵探推理文芸協会(第五章参照)副会長。現代中国の代表的な推理作家。北京生まれ。1987年に創作開始。1992年以降、英米ミステリの趣を持ったユーモアミステリ・探偵 桑楚(サンチュー) シリーズを執筆している。老蔡(ラオツァイ)(2009)では、「(2009年)現在でも創作を続けている数少ない専業探偵小説作家の一人」と紹介されている。作品に、「天国は遠くない(天堂并不遥远)」、「地獄のドアを敲く音(地狱的敲门声)」、「アイドル失踪の夜(女明星失踪之夜)」など。2009年までに出版した長編ミステリは50作品、中短編は20作品で、現在までの中国のミステリ作家の中でも屈指の作品数である。中国国内では文学賞や推理小説賞を何度も受賞している。また、児童文学でも高い評価を受けている。
  • 李迪(り てき/リー ディー/Li Di)(1950 - )
    • 北京生まれ。1970年に創作開始。1978年には自費で日本に留学し、帰国後、専業作家に。1984年に雑誌『啄木鳥』(啄木鸟)に掲載された短編「夕暮れにドアをノックする女(傍晚敲门的女人)」は社会に衝撃を与えた。同作品で翌年、第1回金盾賞受賞(この賞は、のちに啄木鳥文学賞に改称)。またこの作品は、1998年に実施された第1回北京偵探推理文芸協会賞(第五章参照)の旧作部門で佳作賞を受賞している。
  • 王朔(おう さく/ワン シュオ/Wang Shuo)

  • 鍾源(しょう げん/ジョン ユアン/Zhong Yuan/钟源)(1941 - )(ブログ) 1979年より作品の発表開始。80年代の推理小説界の人気作家。映画化も多くされた。短編「夕峰古刹」で第1回北京偵探推理文芸協会賞・旧作部門の佳作賞受賞。
  • 湯保華(とう ほか/タン バオフア/Tang Baohua/汤保华)(1949 - ) 1977年より創作開始。文革の時期を背景とする作品を書いている。
  • 莫懐戚(ぼ かいせき/モー ファイチー/Mo Huaiqi/莫怀戚)(1951 - ) 「東方のホームズ」シリーズ(东方福尔摩斯探案集)を執筆している。
  • 師承燕(し しょうえん/シー チョンイエン/Shi Chengyan/师承燕) 1982年、青海師範学院中文系卒業。
  • 劉侗(りゅう とう/リウ トン/Liu Tong/刘侗) 1984年、蘭州大学中文系卒業。
  • 馮華(ふう か/フォン フア/Feng Hua/冯华)(1973 - ) フランス語訳に"Seul demeure son parfum"がある(原題未調査)。

 創作とともにミステリ史の研究や理論研究などを行う作家に以下の3人がいる。

  • 何家弘(か かこう/ホー ジアホン/He Jiahong)(1953 - )
    • 中国の現代推理作家で初めて、作品のフランス語訳、イタリア語訳が刊行された作家。北京生まれ。米国ノースウェスタン大学に留学し、法学博士号取得。「洪鈞(こうきん/ホンジュン)弁護士」シリーズを発表するほか、海外作品の翻訳も多く行う。『瘋女』(疯女)で第1回北京偵探推理文芸協会賞旧作部門ノミネート賞。この作品は2001年、"Crime de sang"(血の犯罪)というタイトルでフランスで、"La donna pazza"(英訳すると"The crazy woman")というタイトルでイタリアで刊行された。特にフランスでは好評をもって迎えられ、続いて"L'énigme de la pierre Oeil-de-Dragon"、"Le mystérieux tableau ancien"、"Crimes et délits à la Bourse de Pékin"などが訳されている(原題未調査)。また、"Crime de sang"(瘋女)は、前述のイギリスの推理作家キャサリン・サンプソンが選ぶアジアミステリーベスト10にも選ばれている。2010年には『瘋女』を『血之罪』と改題の上、改訂版を出している。ほかに、「人生狭路:黒蝙蝠·白蝙蝠」(人生狭路:黑蝙蝠·白蝙蝠)で第2回(2001年)北京偵探推理文芸協会賞ノミネート賞。北京偵探推理文芸協会理事。
  • 曹正文(そう せいぶん/ツァオ ジョンウェン/Cao Zhengwen)(1950 - )
    • 上海生まれ。心理探偵小説を執筆。「紫色的誘惑」(紫色的诱惑)で第1回北京偵探推理文芸協会賞・旧作部門の佳作賞受賞。研究書に『世界偵探小説史略』(世界侦探小说史略、1998)がある。
  • 陳翼浦(ちん よくほ/チェン イープー/Chen Yipu/陈翼浦)(1940 - )
    • 北京生まれ。1993年より探偵小説の創作を開始。「錯乱人生」(错乱人生)で第1回北京偵探推理文芸協会賞・新作部門の三等賞。「情死真相」で第2回同賞ノミネート賞。

 理論研究ではほかに、1996年の黄沢新(こう たくしん/ファン ゾーシン)ほかによる『偵探小説学』(侦探小说学)、2001年の任翔(にん しょう/レン シャン)『偵探小説史論』(侦探小说史论)などが出ている。また、SF小説との結節点には以下のような作家がいる。

  • 倪匡(げい きょう/ニー クアン/Ni Kuang)(1935 - )
    • 上海生まれ。香港で著作活動。邦訳に『猫 - NINE LIVES』(徳間文庫、1991年、「衛斯理」名義)がある。武田雅哉、林久之『中国科学幻想文学館』(大修館書店、2001年)に詳細あり。
  • 葉永烈(よう えいれつ/イエ ヨンリエ/Ye Yonglie/叶永烈)(1940 - )(ブログ
    • 1980年代に科学を取り入れた少年向けの探偵もので人気を博した。『中国科学幻想文学館』に詳細あり。

警察機構とのつながり
  • 警察官 兼 小説家(中国では「公安作家」と呼ばれる)
    • 尹曙生(いん しょせい/イン シューション/Yin Shusheng)(1937 - )
    • 王建武(おう けんぶ/ワン ジエンウー/Wang Jianwu)(1953 - ) 1980年代初頭から創作を開始。「小橋疑案」(小桥疑案)で第2回北京偵探推理文芸協会賞優秀賞。
    • 海岩(かい がん/ハイ イェン/Hai Yan)(1954 - )(ブログ) 短編「私服刑事」(便衣警察、1985)などがある。
    • 彭祖貽(ぼう そい/ポン ズーイー/Peng Zuyi/彭祖贻)(1956 - ) 北京偵探推理文芸協会特別会員。1970年代に創作を開始し、80年代半ばから、警察を題材にした推理小説を書いている。「天国への夢旅行(天堂梦旅)」で第1回北京偵探推理文芸協会賞・新作部門の三等賞。
    • 孫麗萌(そん れいもう/スン リーモン/Sun Limeng/孙丽萌)(1957 - ) 1984年より創作開始。「血象」で金盾文学賞および第1回北京偵探推理文芸協会賞・新作部門の二等賞受賞。
    • 胡玥(こ げつ/フー ユエ/Hu Yue)(1964 - )(ブログ
    • 胡祖富(こ そふ/フー ズーフー/Hu Zufu) 「地火」など。

 李長声(2002)によると、2002年当時、推理小説を掲載している雑誌としては『啄木鳥』(1985年創刊)、『警壇風雲』、『警方』、『警苑』、『藍盾』、『東方剣』、『金盾』、『警探』などがあった。ただし、これらはほとんどが警察機構のもとにある雑誌であり、必ずしも自由ではなかったという。老蔡(2009)によれば、文革終結後の20年間、推理小説専門雑誌はなく、単行本やアンソロジー以外では発表の場はこれらの警察機構のもとにある雑誌しかなかった。そのため、中国ミステリは確かに多様化はしつつあったが、 公安法制小説 がその大部分を占め、発展の方向も一方向的であったという。(公安法制小説=中国に私立探偵が存在できなくなった1949年以降の中国ミステリを称してこのように言う場合がある。警察官などの公的機関に属する主人公が、法律や制度に基づいて犯罪を捜査するタイプの小説のことである)

  • 20世紀の中国ミステリの短編を集めた前述のアンソロジー『20世紀中国偵探小説精選』(2002年、全4巻)で、この時期を対象とする第3巻および第4巻の収録作は以下のとおりである。
    • 『20世纪中国侦探小说精选(1980-2000) 夕峰古刹』
      • 李迪「傍晚敲門的女人」(傍晚敲门的女人)
      • 湯保華「紅色荘園」(红色庄园)
      • 鍾源「夕峰古刹」
      • 藍瑪「仏羅倫薩来客」(佛罗伦萨来客)(フィレンツェ来客)
      • 彭祖貽「氷層下的火焔」(冰层下的火焰)
    • 『20世纪中国侦探小说精选(1980-2000) 饮鸩情人节』(飲鴆情人節)
      • 余華(よ か/ユイ ホア/Yu Hua/余华)「河辺的錯誤」(河边的错误) ※ 余華 … 邦訳に『兄弟』(文春文庫、2010年)などがある。
      • 葉兆言(よう ちょうげん/イエ ジャオイエン/Ye Zhaoyan/叶兆言)「危険女人」(危险女人)
      • 刁斗(ちょう とう/ディアオ ドウ/Diao Dou)「六面骰子」
      • (香港)鄭炳南(てい へいなん/ジョン ビンナン/Zheng Bingnan/郑炳南)「不招人忌是庸才」
      • 莫懐戚「飲鴆情人節」(饮鸩情人节)
      • 張和平(ちょう わへい/ジャン ホーピン/Zhang Heping/张和平)「黒色憤怒」(黑色愤怒)
      • 尹曙生「教授之死」
      • 翼浦(=陳翼浦)「禍満五福楼」(祸满五福楼)
      • 陳鉄軍(ちん てつぐん/チェン ティエジュン/Chen Tiejun/陈铁军)「激情殺人」(激情杀人)
      • 張策(ちょう さく/ジャン ツォー/Zhang Ce/张策)「無悔最終」(无悔最终)
      • 孫麗萌「月隕」(月陨)
      • 王炳輝(おう へいき/ワン ビンフイ/Wang Binghui/王炳辉)「血色柔情」
      • 王建武「最後的佳作」(最后的佳作)

第三節 1990年代末の中国翻訳ミステリ事情

 上で述べたように、文革が終了すると、中国では過去に翻訳した作品の復刊も含め、翻訳ミステリの刊行ブームが起こった。しかし、1990年代初頭に中国が国際的な著作権条約に加盟すると、以降は翻訳は下火になる。古典的名作は刊行が続いたが、国外の新しいミステリはあまり翻訳されなくなってしまった。
 李長声(2002)では、90年代末ごろの中国における日本ミステリの刊行状況が記されている。それによると、以前は翻訳ミステリといえば、警察機構に属する出版社・群衆出版社の独壇場だった。1996年には「日本推理小説文庫」の刊行を開始しており、2002年当時までに70冊程度が刊行されている。その後、日本ミステリの翻訳に新規参入したのが珠海出版社で、20世紀末から21世紀初頭にかけて、「日本優秀偵探小説叢書」、「乱歩偵探作品集」、「金田一探案集」、日本推理作家協会編のアンソロジーなどを翻訳刊行している(そのほとんどが無許可だったと推定されている)。ほかには、時事出版社が2001年に「小五郎探偵サスペンスシリーズ」を刊行している。
 また、日本ミステリの紹介に熱心な翻訳者・編者として 朱書民 (しゅ しょみん/チュー シューミン)(朱书民)という人が挙げれられている。長編を何作品も訳したほか、アンソロジー『日本推理小説精選』を編んでいる。
 このころには、日本の新本格ミステリはほとんど(まったく?)訳されていなかった。

第四節 邦訳された1980年代~1990年代の中国推理小説

【2011年7月31日、加筆】

  • 艾国文(がい こくぶん)、黄偉英(こう いえい) 「人民公社殺人事件」 (『サンデー毎日』1981年6月14日号~7月19日号、全6回)

 中国のSF小説の歴史を詳細に記述している『中国科学幻想文学館』(大修館書店、2001年)を読んでいて初めて知ったのだが、1981年6月から7月にかけて、毎日新聞社の雑誌『サンデー毎日』に、中国の推理小説「 人民公社殺人事件 」が連載されていたという。著者は艾国文(がい こくぶん/アイ グオウェン)と黄偉英(こう いえい/ファン ウェイイン/黄伟英)。翻訳者は伊藤克。『中国科学幻想文学館』では、連載の第1回が手元にないため原題及び翻訳者の経歴については不明とされている。
 作者名で検索すると、1981年1月に刊行された短編集『中国民族風格的偵査小説:駆散渾濁的迷霧』(中国民族风格的侦查小说:驱散浑浊的迷雾)に収録された5編のうち、表題作の「駆散渾濁的迷霧」がこの2人の共著による短編だということが分かる。ほかにこの2人が共同執筆した作品は、少なくともネット上では見つからないので、とりあえず「人民公社殺人事件」は「駆散渾濁的迷霧」の翻訳だと推定していいかもしれない。また、翻訳者の伊藤克という人は、「中日の懸け橋となった日本女性 伊藤克の生涯」で取り上げられている方とおそらく同一人物だろう。
 「人民公社殺人事件」が訳された時期にはほかにも中国ミステリが翻訳されたことがあったかもしれないが、どのように調べたらいいのか分からない。



 近年では、張平(ジャンピン、1954 - )の『 十面埋伏 』(じゅうめんまいふく)が新風舎より2005年に刊行されており、自費出版系の出版社からの刊行ではあったが、ロシア文学者の米原万里が雑誌で書評を書いたこともあり話題になった(書評は現在は米原万里『打ちのめされるようなすごい本』に収録されている)。原著は同タイトルで、1999年の刊行。また2004年には、張平『 凶犯 』も同じ出版社から同じ翻訳者で邦訳が出ている。こちらは現実の事件に題材をとった小説である。原著は1992年。

参考文献