エビデンスに基づく動物医療―診療方針の決定のために―(サンダース ベテリナリー クリニクスシリーズ 3-3)

  • 編者:Peggy L Schmidt, 監訳:浅野隆司
  • 出版社:インターズー
  • 値段:¥13,650
  • ISBN:9784899954606
  • 発売日:2008年2月
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臨床系の論文集として定評のあるVeterinary Clinics of North Americaシリーズの訳書です。原著が出てからそれほど時間も経っていないので、文献的価値も高いでしょう。

EBM(Evidence-Based Medicine / エビデンスに基づく医療)は ①問題の定式化 に始まり、②情報の検索、③批判的吟味、④治療(診断)法の適用、およびそれらによる ⑤結果のフィードバック という5段階で構成されますが、本書ではそれらの子細に渡る解説から始まり、特に中心的存在である批判的吟味を行うための情報が丁寧に述べられています。また最後の3章では「猫の下部尿路疾患」「創傷管理」「血栓塞栓症」について、エビデンスに基づいたレビューを展開しており、EBM実践の実例が理解できるようになっています。
本書で特筆すべきは、情報検索の項目の新しさ(RSSフィードの使用まで紹介されている!)、統計手法の説明(親切なことに、研究デザインの立て方からカイ二乗検定やt検定の使い方まで)、決定分析という診療に密着した判断方法の紹介(要は正しいエビデンスの使い方)などで、それらについては人医療におけるEBMの参考書にも引けを取りません。統計の教科書などとは異なり、非常にわかりやすく説明してあるので、途中で脱落せず読破できるでしょう。その反面、断言口調になってしまい、厳密には「そこまで言ってしまっていいのかな?」と思うような箇所もあったりしますが、臨床疫学の専門家でもなければ気にするほどのものではありません。

2006年に同じく浅野先生が監訳された『エビデンスに基づく獣医療―最新かつ最良の診療方針を決定するために』(下で紹介)では、少々難解な表現や古い情報もあり、誰もが読むというには敷居の高いものでしたが、本書は誰でも気軽に読み始めることができるので、卒論の研究デザインに悩んでいる学生から、日和見の診療から脱したい臨床家まで、獣医師として1歩先に進むには最適の1冊です(kimu)。



Evidence-Based MEDICINE-EBMの実践と教育-

  • 著者:David L Sackett, Sharon E Straus, W Scott Richardson, William Rosenberg, R Brian Haynes
  • 出版社:エルゼビア・ジャパン
  • 発売日:2003年
  • 値段:¥4935
  • ISBN:4860342747
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EBMのゴールデンスタンダードで、ここから現代EBMが始まったと言っても良いかもしれません。臨床疫学を専門とする医学者の誰もが読んでいるでしょう。それだけあって、課題設定の立て方から文献の吟味、経済分析まで関連事項を網羅したような内容になっています。教育という観点を忘れておらず、実際に手を動かしてみる為の例題に沿って進んでいる部分もあります。

しかし一方で、原点なればこそ、まだ少々ほかの書籍よりわかりにくい部分も存在します。EBMのルーツを探るという目的がないのであれば、その他の入門書のほうがわかりやすい点も多いでしょう。

この分野は医療情報学との関連が深いことからも、著者らは即時的に更新されていくインターネットの可能性に当初(初版は1997年)から注目しています。そして「古い教科書は燃やしてしまいなさい」と彼ら自身が言うように、時代遅れになってしまう書籍のデメリットを補う為に、関連ウェブサイトが随時更新されています(http://www.cebm.utoronto.ca/)。こうした一連の活動から、これが単なる出版活動ではなく、EBM普及のための一大プロジェクトであるということが伝わってきます(kimu)。



エビデンスに基づく獣医療—最新かつ最良の診療方針を決定するために(HANDBOOK of Evidence-Based Veterinary Medicine)

  • 著者 Peter D. Cockroft et.al 監訳 浅野 隆司
  • 出版社 インターズー
  • 価格 ¥5654
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医学領域においてEBMの概念が提唱されたのは1990年代ですが、獣医療にはまだまだ浸透しているとは言えません。この本は2006年(原著は2003年)発行ですが、獣医療におけるEBMを扱った(少なくとも日本では)最初のものです。

産業動物と伴侶動物の両方の事例を踏まえながら、エビデンスの階級分けや研究デザインの種類、(最低限の)統計学など、エビデンスを判断するために必要な知識が身につけられます。付録の用語集もコンパクトにまとめてあるので、知識を振り返って確認するのに適しています。ただし、最初の本であるが故か、全体としては少々情報が煩雑な印象を受けます。また、文献の探し方についても記述がありますが、英国に関する情報でありまた検索技術としては少々古い情報ですので、現在の日本の状況と照らし合わせると相違点も多いのが問題です。

獣医療に特化した本であるというメリットも考えられますが、より新しい情報・詳しい情報を望む方は人間のほうのテキストに当たるのが良いかもしれません。(kimu)



すぐわかる統計処理

  • 著者 石村 貞夫
  • 出版社 東京図書
  • 価格 ¥2200
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分かりやす統計の本。統計的手法を解説するのではなく、どの手法を選べば良いのかを中心に解説されています。データの型を15パターンに分類して、そのデータの型であれば、どんな統計処理をすれば良いのかが、すぐにわかるようになっています。

そういった本の性質上、統計学的な細かな記述は、ほとんどありません。統計を原理から理解して使いたい、と考える人には、物足りない内容だと思います。しかし、統計を手段として割り切って覚えるのであれば、大変有用な本だと思います。内容は、医学関係がほとんどですので、獣医学領域でも十分使えます。(管理人)



はじめての統計学

  • 著者 鳥居 泰彦
  • 出版社 日本経済新聞社
  • 価格 ¥2233
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統計の入門書かつ演習書。著者は、統計学において演習の重要性を説いており、本書でも数多くの演習問題がついています。最初から順番に丁寧に、かつしっかりと問題を解いていけば、統計の基礎の基礎を身につけることが出来るように書かれています。

欠点としては、内容が経済中心であることでしょうか。この本で基礎を覚えたら、生命科学系、医学系の統計学の教科書を読むと、さらに理解が進むと思われます。(管理人)
最終更新:2008年05月24日 19:06