羽子シナリオ

っつーワケで肝試しin学校なワケなんだけどさ…

うお!ヤベェ!ヤベェ!マジ焦る。
みんな順調にペアを作っていっているじゃないか。

自慢じゃないが、オレはペアを作るのが苦手だ。
幼稚園から先、これでどれだけツライ思いをしてきたか…

特に6年の時の担任!山岡!テメェよくも!
っと、今はそれどころじゃない。

焦ったオレは、片っ端から女子に声をかけるが、
みんな既に相手を決めているようで、色よい返事は無かった。

チクショウ…これはもしかして、久々の男男ペア屈辱コースか?
オレは半べそをかきながら周囲を見渡した。

「としあき君。もしかして、まだ相手、決まってない?」
不意に後ろから声がした。女の子の声だ。マジか。落ち着け。

とりあえず落ち着いて周囲を見渡す。
しかし周りは、にわかカップルばかりだチクショウ。

「ここだよ、としあき君」
声はすれども姿は見えず。目の前にはダンボール箱があるだけだ。

「アタシだよ」
ガサゴソと音を立てて、ダンボール箱は人型にトランスフォームしていく。

「ちょっと待って。今、顔の部分を外すから」
するとその中から、見覚えのある人物が顔を出した。

イマドキ珍しいくらい真っ黒な髪をオダンゴにした小柄な娘。
間違いない。同じクラスの山崎羽子(ヤマザキハコ)だ。

「もし良かったら、だけどさ…アタシと一緒に行かない?」
なんと。

いいのか!?大丈夫なのか!?アタマの中では警告アラームが鳴ったが、
女の子の方から声をかけてくれるという幸運を逃したくなかった。

「やっぱ…嫌…だよね」
もの凄く寂しそうな表情になる羽子。これはイカン。

「行くよ。うん。よ…喜んで」ぎこちなく答えるオレ。
「ホント?…良かった。…よくわからないけど、みんなアタシに声かけてくれなくてさ」

発見できなかったからじゃないかな。
そのセリフをオレは、ギリギリのところでノドの奥へ飲み込んだ。

それにしても…なんて格好をしているんだこの娘は。
全身がダンボール箱のロボで、ロボの頭だけ押し上げて顔を出している。

「あのさ…」オレは耐えられなくなって聞いた。
「その格好、何?」

「これ?これは特捜文房ステショナンっていう番組の
 クーゲルシュライバーロボのコスプレだよ。弟が大好きなんだー」

特捜?クーゲルシュライバー?何故今そのコスプレを?
疑問符が脳の中を飛び回る。が、せっかくだし、話をあわせてみよう。

「そういう番組があるんだ。ほかにもロボがあるの?」
まあこのあたりが妥当な線かな。

「あるよー。ダーマトグラファー、スーパーイレイザー、
 トライスケーラー、そして画鋲ロボが合体する設定なんだ」

画鋲?もうどんな番組なのか、オレには想像もつかない。
が、彼女は嬉しそうに話を続ける。

「最初は弟を喜ばそうと思って、こんな格好してみたんだけど、
 なんだかだんだん自分も楽しくなってきちゃって。今ではずっとこの格好だよ」

何だ。優しい子なんじゃないか。変だけど。あれ、まてよ。
「え、でも、教室じゃ普通の制服だったよね。それは…」

「あの制服もコスプレだから」
マジか。落ち着け。こんな超ド級コスプレイヤーが身近にいたとは。

その後しばらくオレたちは、番組のこと、コスプレのこと、クラスのこと
働きたくないでござるのこと、色んなことを話した。

「次の組~ いいぞ~ 暗闇でドッキリ~」
あ、オレ達の順番がまわってきたみたいだ。

「ドキドキするね、としあき君」
ダンボール人間と一緒に歩くシチュエーションも、ある意味ドキドキだぞ。

薄暗い玄関を通り、もっと暗い廊下を二人で歩いていく。
コツン…ガサゴソ…コツン…ガサゴソ…

夜の学校ってのは、結構コワイ。度胸のあるヤツでも、多少は恐怖を感じるだろう。
異界、とでも表現すればいいのか。独特の雰囲気がある。

「あのさ、としあき君。もし嫌じゃなかったら、だけどさ」
うお!ダンボール箱がしゃべった!?…いや、羽子だってば。

羽子もやっぱり怖くなってきているのか、少し歩くのが遅くなっている。
オレはその速度にあわせて、自分の歩くスピードをおとした。

「嫌じゃなかったら、何?」
怪訝な顔をするオレの方に、羽子はカサコソと手を伸ばしてきた。

「手、つなご」

異論無しでーーーっす!オレの脳内会議は、0.1秒で賛成多数により会議終了した。
「うん。いいよ」

ガサッ…そりゃそうだよな。羽子はご丁寧にも、ダンボール手袋を自作していた。
生で握りたかった…生で握りたかったよ…

それでもちょっと(かなり)嬉しくなったオレは、恐怖が吹っ飛んでしまい
肝試しなのに妙なハイテンションで廊下を突き進んでいった。

「さてと。そろそろ何かしかけてくる頃合だよなぁ」
「しかけてくるって…何を?」

「いやほら、肝試しなんだから、怖がらせるために色々あるだろ。
 オバケに化けたヤツが急に出てきたり、コンニャクをクビスジにヒタヒタしたり」

「コンニャクかどうかわかんないけど…なんかロボの頭部がしけってきてる…」
は?そう言われて確認すると、脅かし係のヤツが必死にコンニャクをくっつけていた。

「オイ、バレバレだぞ。もう諦めろ」
コンニャクを一瞬で奪い、言葉でバッサリ斬りつけるオレ。

「ダンボール箱人間が恋人のお前と!コンニャクが恋人のオレと!
 一体どれだけ違うってんだチクショウ!」

泣きながらコンニャクマスターは逃げ去っていった。メイワクなヤツ。
オレはその辺にテキトーにコンニャクを捨てた。何をしてたかわからんからな。

「恋人って言われちゃったね…」
ツッコミどころはそれであってるんだろうか。

「あの人、コンニャクが恋人なんだって。面白いね」
ツッコミどころはあってるが、それはそれで嫌だな。

「ねえ、としあき君。…どういう意味なのかな」
「いやもうここはいいよ。先に進もうぜ」

暗闇の中を手探りで進むオレ達。非常灯だけでは足元がおぼつかない。
自然と緊張度が高まっていく。そろそろ次の罠かな。

「としあき君。手、ちょっと痛い」
緊張からか、オレは無意識に手を強く握りすぎていたようだ。

「ゴメン!オレ気づかなくて」ス…とちからを緩めると、羽子が何故か握りかえしてきた。
「うん…大丈夫だよ。でも、ちょっと嬉しかった」

その後、渡り廊下ゾーンを抜け、理科室のどうしょうもないトラップを抜け、
美術室のもっとどうしょうもないトラップも抜け、オレ達は体育館に来た。

「あ~…これは…落とし穴だなぁ」
見るからにアヤシさ抜群の落とし穴が目の前にある。

「羽子、ここに落とし穴があるぞ。足元気をつけろ」
オレは羽子に注意をうながした。

「落とし穴があるんだ。何かもうよく見えないよぅ」
コンニャクでしけりきった頭をどうにか抱え、羽子はフラフラ歩いている。

これ、危ないよな。確かにコスプレは大切な趣味かもしれないけどさ。
身の危険をおかしてまでチャレンジするような事じゃないだろう。

「もうそんなグニャアタマ、とっちまえよ」
オレはフヤケきった頭部を無理やり奪うと、ポーイと体育館の真ん中へ投げ捨てた。

「あー!酷いよ!としあき君、アタシの頭どこやったのーっ?」
おろおろしながら暗闇をフラつく羽子。ヤベ、やりすぎたかも。

「どこ…頭はどこ…?」フラフラしながら羽子が歩いている。ヤバい!転ぶ!
オレはとっさの判断で羽子を支えにダッシュする。しかし…

ドスン!
フラつく羽子を支えきれず、オレと羽子は落とし穴に落ちてしまった。

落とし穴は思った以上に深く、オレはバランスを崩すのを自覚していた。
ヤバい。超ヤバい。これ、頭から落ちる…

でも…羽子だけはかばわないと。
羽子をグイと引き寄せるオレ。バランスは完全に崩れた。

案の定オレは頭部を痛打した。意識が遠のいていく…
今日は…いつだ…?…ここは?

これは夢だろうか…
いや…数日前の…あの日だ。

ポカポカ陽気となり、ようやくすごしやすくなってきた3連休。
初日のうちに部屋の掃除と洗濯をすませ、食材を買い終えたらやる事が無くなってしまった。

う~む…これはイカン。
ニートは仕方ないにしても、ひきこもりはダメかもわからんね。

いやしかし、今日は買い物に出かけたぞ、オレ。
スーパーで50%オフと50円引きを間違って買ってきたがなぁー!

とは言え、本当にやる事の無いオレは、そのままベッドに倒れこんだ。
BGMが無いと寂しいじゃないか。スイッチオン。

BGMはネットで適当に落としたハウスだのテクノだのだ。
クラブにも行った事ねぇのに、曲だけは聴きまくりだ。

ふとオレは、バッグの中に押し込んであった封筒の存在を思い出した。
こないだ同じ学校の、通称「紳士」からかっぱらってやったモノだ。

何か「盗んだヤツは絶対に許さないよ」とか言ってたけど、どうでもいいや。
どれ中身は…と。

こ…これは!
ヤツはとんでもないモノを持ってました。

こ…ここが…
世界中の夢とスリルとファンタジーをかき集めた遊園地の王者!

難攻不落のデートスポット!超人気テーマパーク!オレ達の最後の楽園!
フタバーランドか!

しかし…そんな所に俺は何故、一人で来ているのか。
その理由は3つある。

一つは、遊園地遊び放題のペアチケットを無料で入手できたから。
ありがとう。紳士。

一つは、にも関わらず女の子を誰も誘えなかったから。
いつも通りだな、オレ。

一つは、それにも関わらず意地を張って、一人で遊びに来たからだ。
まったくもって、としあきだな、オレ。

まあしかし、遊園地なんてガキの頃に1回来たっきりだ。
せめて楽しんで帰らないと、損するばっかりだな。

思えば小学校3年の時に、遊園地で嫌な思いをして以来の事じゃないか。
栗田テメェよくも!…っと。楽しめ楽しめ、オレ。

「うおおお!これがナントカマウンテンか!」
「ぐあああ!これが500m自由落下体験!」

気付いた時には、オレは我を忘れて熱中していた。
はしゃぎすぎなのは自覚しているが、止める気も無い。

うう…周りのカップルの視線が突き刺さる…
すまないバカップル諸君。

むしろ、妙に沢山いる係員も気になるところだが。
変な格好だな。係員というよりも、警備員って感じだ。

何だ?オレ、もしかしてマークされてんの?
イラッとするなぁ

ちょうど12時だし、メシでも食いに行くか。
イライラする時は場面をかえるのがイチバン。

いい加減腹も空いた俺は、園内のショップで昼食を買う事にした。

さすがに時間が時間なので、もの凄い人数の客が並んでいる。
おお、まるで人がゴミのようじゃないか。

あまり人がいっぱい居るところは苦手だが、昼食時にゼイタクは言ってられない。
並ぶこと15分。ようやくオレの番になった。

「いらっしゃいませ!何になさいますか!」
うわ。元気いいなぁ。

満面の笑みで店員のお姉ちゃんがオレに話しかけてくる。
イマドキ珍しいくらいの黒髪を、お団子にまとめていて、凄く可愛い。

メニューをゆっくり吟味する時間は無い。
ここは男らしく、一発で注文するのがいいだろう。

「えっと。サンドイッチでいいや」
本当に適当に決めて注文するオレ。

「はい?申し訳ありませんが、もう一度ご注文お願いいたしまーす」
うわぁ…またやっちまったよ、オレ。

聞こえてなかったのか、どもって聞き取りずらかったのか…
鬱になるなぁ…

「サンドイッチひとつ」
ちょっと(自分に)キレぎみの発音で注文するオレ。

店のお姉ちゃんもちょっと困り顔になった。
ゴメン。

「ご一緒に、ピザはいかがですか?」
あ?サンドイッチにピザだ?

ちょっとそれはどうかと思うぞ。
ていうかピザって。まさかオレの腹を見て言ったかキサマァ!

しかし、キレぎみ発音で一瞬後悔してしまったオレは、
お姉ちゃんの勢いに押されて、他にも色々と買ってしまった。

可愛かったな。同じくらいの歳だろうか。
木陰に移動して、買ったばかりのサンドイッチをほうばる。

もふもふもふもふ。。。んー、いまいち。
ちょっとパサパサしてる。これが好きって人もいるんだろうけど。

味はともかくとして満腹になり、少し遊び疲れていたのもあって
オレは芝生の上でちょっとだけ昼寝をする事にした。

何分くらい寝ていたのだろうか。
子供たちの歓声で眼を覚ました。

ああ、しもんきん。しもんきんじゃないか。
しもんきんは、このフタバーランドのマスコットキャラだ。

一時より人気が無くなって、隠れ里に売り払われたって聞いたけど。
まだまだ大人気じゃないか。

♪パパとママはベッドでもっちもっち
 ママが転がりこう言った

 「お願い 欲しいの」「しごいて」
 お前にもっち 俺にもっち うん もっち♪

って歌は、まあ、今更言うまでもなく有名だよな。
俺もガキの頃は熱唱したもんだ。

そのしもんきんが、子供たちに囲まれてモコモコ動いている。
もちろん昔ながらの着ぐるみ式だ。

子供だけじゃなく老若男女を問わずに、しもんきんは大人気だ。
愛らしいまるっこさが、人気の秘密だと俺は睨んでいる。

再び歓声があがり、急に子供たちがいなくなってしまった。
どうやら次は、実装石にまとわりついているようだ。

子供ってのは、まったく現金だな。
…あれ?

しもんきんの様子がおかしい。
何故かピクリとも動かない。

トラブルでもあったのだろうか。
どうする、オレ?って迷ってるヒマなんて無い!

「おい!大丈夫か?おい!」
しもんきんの中の人に話しかけるオレ。

小声でキョドって注文してたさっきのオレとは別人のようだ。
きっと顔もイケメン風になっているに違いない。

「ああぅ…かっ…はぁ」
しもんきんの中から、いかにも苦しげなあえぎ声が聞こえてくる。

普段ならハァハァしちゃうところだけど、さすがに空気嫁。
どう考えても大丈夫じゃなさそうだな。

軽い酸欠状態なのかもしれない。
とりあえず、頭部を外さないとな。どうやるんだろう?

後ろにチャックでもあるのかな。
「な!?何をなさるんですか!や…やめてください!」

気付いたのだろうか、急に暴れ始める。
中身は…女の子か?

暴れられた拍子に、しもんきんはスポンと半分に割れてしまった。
中には汗だくになった女の子が入っていた。

イマドキ珍しいほどの黒髪に、お団子ヘアーが可愛い。
はて…どこかで。

「な!なななななな何て事をするんですか!
 子供の夢が壊れちゃうじゃないですか!

 駄目ですよ!駄目なんです!
 しもんきんの中に人がいるなんて知られたら駄目なんですよぅ!」

酸素を得て元気になったのか、本格的に暴れ出した。
思わず半分こされたしもんきんを手渡してしまう。

「ぜはー!ぜはー!…ああぅ…」
しもんきんの中の娘は、苦しそうにもがいている。ぬいぐるみの中ってのも大変なんだなぁ

「なぁ…それをかぶったら、アンタホントに酸欠になっちまうぞ。
 とりあえず息が整うまで、上半分は取った方がいい。

 見られたくないなら、どっかその辺の木陰でこっそり取ればいいじゃないか。
 ほら、そっちの木陰に一緒に行こう」

我ながら、何と適当なアイデアだろうとは思ったが、オレの提案に同意したのか、
しもんきんの中の娘はフラフラと木陰に歩いていく。

なんか危なっかしいなぁ。
一応つきそっておくか。

木陰でしもんきんは、汗だくの正体を現した。
あれ?この娘はやっぱり、さっき売店にいた女の子じゃないか。

よくもピザって言いやがったなチクショウ。
いや…それだけじゃないな…えぇと…

「ぷはぁ!やっぱり着ぐるみってハード!
 まさか呼吸困難になるとは思ってなかったよ。

 でもこれじゃ、せっかく憧れのしもんきんになったのに、
 全然子供たちに夢を与えられないね…」

心なしか、寂しそうにつぶやくしもんきん。
いやいやいや。しもんきんでなくて。

「でも、さっき子供達は、みんなアンタに笑顔でまとわりついてたぜ。
 十分に夢を与えているんじゃないのか?」

「そう…かな。そうだといいな」
しもんきんはニッコリと笑顔になった。凄くステキな笑顔だ。

「あのさ…君、何て名前?」
しもんきんに聞くオレ。何だか知り合いのような気がしたってのもある。

「他人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るものだと思うよ」
汗を拭きながら聞き返すしもんきん。いや、まったくだ。

「オレは…としあきだよ」
ちょっと照れながら答えるオレ。

ところが、しもんきんの答えは信じられないものだった。
「うん。知ってるよ」

「え…それってどういう…」
ホントに驚いたオレは、当然の質問をする。

「あ!もうこんな時間!ショップの方に戻らなきゃ…
 縁があったらまた会おうね。としあき君!」

言うが早いかしもんきんは、走って行ってしまった。
いやいやいや。しもんきんでなくて。

結局名前は聞けずじまいか。縁があったら…ねぇ。
縁が…縁…

薄暗い部屋の中で、オレは目を覚ました。頭がズキズキする。
オレは一体…そう思い目線をずらすと、ダンボール箱の塊が見えた。

「羽子…オレ…」
「としあき君、アタシの事かばってくれたんだよ…ゴメンね」

その時気づいたが、オレは羽子に(ダンボール)ヒザマクラされていた。
慌てて起き上がるオレ。ちょっとフラッとする。

「まだ寝てなきゃダメだよ」
「いや、もう大丈夫だよ。それより…聞いていいかな」

「何?」
「ここ、どこだ?」

「体育準備室。としあき君、頭を打って具合悪そうだったから…」
そっか…オレ、気絶でもしてたってワケか。

「あともう一つ、大事な事」
「何?何でも聞いて」

「ウチの学校ってさ、バイト禁止だよね。
 羽子さ、何で遊園地でバイトしてたの?」

自分でもイジワルな質問だと思う。
だけど、二人の間に疑問なんて作りたくなかった。

「エヘヘ…やっぱりバレちゃったね。
 バイト中は化粧バッチリだったから、絶対バレないと思ってたのに」

「自分でネタばらししてたじゃないか。
 スグに気づかないオレもどうかと思うけどな。

「あんまり自慢にならない話なんだけど。ウチ…貧乏なんだ。
 お父さんの運送会社の経営がうまくいってないんだって。

 せめて自分の学費くらいは、自分で稼ごうって思って。
 それでバイトしてたんだ…」

そっか。そんな事があったのか。それじゃ仕方ないかもな。
オレが鬼畜ならここで

「事情なんて知った事かー!これはルール違反ですよ?
 ルールを侵したらどうなるか、わかるだろ?どうよ?どうよ?」

みたいな、こないだクソみたいな教師に言われたセリフを
そっくりそのまま流用して恫喝しちゃったりするんだろうけど。

っていうか海原ぁ!テメェぶっ殺すぞフォルァ!
…っと、待て待て。少し冷静になろう。

羽子は涙目になっている。可哀想な質問をしちゃったかな。
「でもね…これで肩の荷が下りたかも。秘密って気分が重くて」

そう言うと羽子はニッコリと笑顔になった。
ああ、この笑顔は、しもんきん。しもんきんじゃないか。

「あの…さ。さっきは悪かったよ。
 フザけてたワケじゃないんだけどさ。アタマ…その」

「ダーメでーっす!
 そんなんじゃゼッタイ許さないから!」

そ…そこまで許してもらえんモンなの?
表情に出さずに驚くオレを知ってか知らずか、羽子はオレに飛び掛ってきた。

ガポッ!一瞬なにが起きたかわからなかったが、オレはスグに理解した。
オレの目の前には、羽子の顔があった。

羽子はオレを自分のダンボール箱の中に取り込んだんだ。
「ちょ…羽子。どういうツモリだよ」

「バイトの時の化粧のアタシも、ダンボール箱の中のアタシも
 本当のアタシじゃないと思う…

 本当のアタシの顔を知ってるのは、としあきだけなんだよ。
 さっきの笑顔、あれが本当のアタシだから」

 …ここまできたらもうガマンできないよ、としあき」
羽子はギュッとオレにしがみついてきた。

ダンボール箱の中の羽子は、普通に制服姿だった。
制服姿も可愛いじゃないか。

このまま二人だけの時間が続くってのもいいな。オレはボンヤリと思っていた。
けれど、羽子はそこで止まらずに、おずおずと制服も脱ぎ始めた。

パンモロブラモロ当たり前。何この天国。さすがにちょっと気恥ずかしい。
「あのね…触っても…いいよ…って言うか…さ…触って…」

マジか。おちつけ。
無理でした。

ここまできたらオレだってもうガマンできない!
オレも電光石火の早業で服を脱ぎ捨てた。

「いい?」
「…うん」

「ふぅ…う…」
抱きしめただけで、気持ちよさそうな声を出す羽子。

「ふむぅ…んっ…んーっ!」
思いきって、ディープなキスをする。ドキドキだ。

「んあぁ!やだっ!もうちょっとゆっくりっ!」
舌で耳を攻めながら、オッパイを揉みしだく。

羽子は着やせするタイプなのか、意外にオッパイが大きい。
本当にドキドキしながら、ブラのホックを外していく。

そこに現れたのは、本当に真っ白でキレイなオッパイだった。
何というか、これは揉みがいがある。

ふにふにふに…軟らかい。オッパイってこんなに軟らかかったんだ…
一通り揉んだり吸ったりしゃぶったりした後、オレは言った。

「何かさ…羽子。ホントにオッパイ大きいな。
 ふにふにしてて…ミルクいっぱい入ってる」

ふにゅりふにゅりと手でオッパイを揉みながらささやく。
たちまち羽子の顔は真っ赤になってしまう。照れてる?

「ううぅ…恥ずかしいよぅ」
照れで顔を真っ赤にする羽子。ちょっと涙目になってる。

その表情が、オレのドキドキした気持ちを高めた。

「羽子、恥ずかしがるなよ。ちょっとパイズリはムリかもしんないけど。
 凄く可愛いオッパイだよ。美乳だね」

そういうとオレは、乳首をちょっと強く触った。
本当にジャストサイズだ。大好きだ。

「やはあぁ!気持ちいぃ!もうガマンできないよぅ!」
羽子はビクビクと痙攣するような仕草を見せている。

さて、いよいよメインイベントが近づいてまいりました。
勢いにまかせて、手をパンツの中に滑り込ませる。

これだけジックリと色々やってたからか、
彼女の割れ目はしっかりと濡れていた。

「Hだね」
ボソリとつぶやくオレ。

「Hじゃ…ないもんっ」
反論は許さないよ。ちょっとだけ強く、ソコをいじる。

「ふうぅ…ヤダ…気持ちいいよぅ…」
グチュグチュとHな音を出しながら、よがりだす羽子。

よし、今だ。
そう直感したオレは、彼女のパンツを脱がせた。

いよいよオレも、魔法使いになる道から外れるのか。
感慨に浸る余裕も無く、オレは羽子にチンコをブッ込もうとした。

が、そこでオレは肝心な事を思い出した。
ゴムが無い…オレのバカ。

「あ…あのね…これ、使って」
脱いだ制服のポケットから、コンドームを出す羽子。…え?

「バイト先でね…」
え…バイト先?こんなものを扱うバイトって…え?

「あの…薬局」
あ。オレは何てバカなんだ。自分の愚かさに心底あきれ返る。

「…ちょっと待ってな」
内心は動揺でいっぱいいっぱいだったが、何とか装着できた。

「優しく…ね」
正直、どうすれば優しいのかすらオレにはわからない。

が、乱暴にだけはしないように気を使った。そして…
「…っゃあああぅ…」

超本格的に痛がる羽子。オレはもう十分なんじゃないかと思った。
「…今日はもうやめよっか?」

でも、羽子はユックリと首を横に振った。
「…大丈…夫だから…」

「…うん」
痛くだけは、しないようにしよう。

イマイチうまくいかないけど、頑張って腰を振る。
「っあ…っあ…っあ…っく…っふぅ…」

ちょっと慣れてきたのだろうか。羽子は、リズムにあわせて喘いでいる。
本当はもっとこのままでいたかったけどオレは、そろそろ終わりが近いと感じた。

「そろそろ…イッていい?」
その瞬間の羽子の表情は、凄く優しい笑顔をしていた。

「いいよ…アタシでイッて」
びゅるっ…びゅくっ…言うまでも無くイッてしまうオレ。

つくづくオレって早漏だよなぁって思ったその時だった。
「ねぇ…としあき。アタシ嫌だよ…このままバイバイだなんて嫌だよぅ」

ギュウっと羽子はオレにしがみつきながら言った。
その表情は酷く必死だった。涙も眼に浮かべている。

はぁ?何でバイバイなんて話になるんだよ。
…いや。違う。

そうだ。オレは一体、何をやってるんだ。
何だってオレは、彼女に気持ちを伝える前にHしてるんだ。

我に返った瞬間、オレはトンデモない事をしてしまったと気づいた。
それは、彼女の必死の叫び声を聞き遂げたからだろうか。

「バイバイだなんて、トンデもないよ。むしろこれからどうぞヨロシクだ。
 ちょっと…いや、もの凄く頼りない男だけどさ」

「そんな事ないよ。だってとしあきは、アタシの事を何度も助けてくれたもん。
 だからね…これからも、アタシの事を助けて…ね」

「もちろんだよ」
それだけ言うと、オレは羽子をぎゅっと抱きしめた。

制服を着なおして体育館を出たオレたちは、トンデモない事を思い出していた。
「あ…今って肝試しの最中だったんだっけ…」

いつまでも戻ってこないオレたちを心配して、みんなが探し回っていたらしい。
もしかして、体育準備室のアレ、聞かれてたんだろうか。

「聞かれても…いいよ」
オレの心中を察してか、羽子がフォローしてくれる。そうだよな。

それから数日が経ち、オレたちは正式につきあい始めた。
今日も校舎の屋上で一緒に昼ごはんを食べる約束だ。

ところが、屋上に現れたのは信じがたいものだった。
「ダンボール箱人間じゃないか」

呆気に取られたオレに、ダンボール箱はサンドイッチを差し出してきた。
「としあき!来たよ!凄く美味しく作れたよ!食べて食べて!」

あー…中の人は羽子かぁ…そりゃそうだよなぁ…
「それ、また作ったんだな」

「そりゃそうだよ。としあきとアタシの、思い出のロボじゃないか。
 壊れたって、何度でも作りなおすよっ!」

サンドイッチは凄く美味しかった。箱から顔を出した羽子の笑顔も最高だった。
たまにはフラグの立て方、間違えない時もあるんだな、オレ。

END

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最終更新:2007年07月18日 00:34
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