IRO世界大会 2011年6月29日~7月3日(ベルギー王国/シャストル)

(開会のセレモニー。参加国の国旗が並ぶ phot by IRO)


ベルギー王国・シャストルにて第17回IRO国際救助犬連盟のワールドチャンピオンシップ(世界大会)が開催されました。
日本からは災害救助犬神奈川の大谷&ブリス、若月&モナの2ペアほか合計5ペアが参加し、当会所属・大谷&ブリスと、いずれもOPDES所属の澤田&リアラ、辻&ジュニアの3ペアが合格しました。


                  報告者/大谷久子
 
6月29日よりベルギー王国・シャストルにてIRO国際救助犬連盟のワールドチャンピオンシップが開催された。
日本からはOPDES3頭、我が神奈川は4頭が出場資格を獲得したものの都合がつかず2頭の、全5頭の出場となった。
今大会では、合計270点以上を獲得して各国からエントリーした犬が180頭以上となり設定された日程で消化不可能となったため、6月10日の段階で、従来1チーム8頭まで出場可能だったものが5頭まで、同時に1カテゴリーにつき4頭までエントリーできたものが3頭までと変更された。
これによって270点以上の成績をとっていても世界大会に出場がかなわなかった救助犬とハンドラーが少なくなかった。
例年参加資格を獲得してくる各国のチームでは制限いっぱいまでエントリーするほど救助犬が充実してきていて、狭き門となってきている。
 
瓦礫 52頭 広域 47頭 追及 8頭 ウォーター 4頭 合計 111頭
例年とほぼ同じ頭数となり、世界大会は始まった。
 
私は例年通りドイツ・フランクフルトの友人宅に6月16日からホームステイし、友人家族と2週間を過ごした。
と言っても練習をするために早くから行くのではなく、犬とともにゆっくりとフランクフルトの森を楽しむためだ。友人は広域のみをしているので瓦礫の施設は持っていない、瓦礫練習をする環境にない事は承知であった。今更練習した所でどうなるものでもない。
フランクフルトのすばらしい環境の森を、朝30分、昼40分、夕1時間、毎日友人の犬とともに歩いた。森が深く、落葉樹の大木の中の小道を歩く気持ちの良さは格別なものがある。
また、ドイツ・SVチームのメンバーと広域の練習、夜は防衛をして2週間ゆったりとすごした。
 

6月28日

ベルギーに向け、友人夫妻、24日到着した神奈川のメンバー1人と私・大谷の4人と犬3頭、車2台で出発した。
休憩を含め4時間でホテルに到着。
現地到着後最初にすることはといえば、試験会場探しだ。
スタジアム、チームリーダー会議の場所、瓦礫、広域すべて会場が異なっているので、今日中にルートを確認する事が大きな仕事となる。各施設は、ホテルから10キロから27キロの範囲に分散していた。
 
(開会式パレードでの神奈川チーム phot by IRO)

6月29日

受付、獣医師による健康チェック、チームリーダー会議、公開練習見学、オープニングパレード、抽選会と、朝早くより夜まで予定が組まれている。

6月30日~7月3日

早朝より、昨晩の抽選会で決まった各自のスケジュールに従い試験は粛々と行われていく。
毎年世界大会で会う各国の仲間たちと歓談して余暇を過ごし、親交を深め、楽しい時間を送りながら、時間がきたら試験に向かう毎日が4日間続く。
 
さて私の日程と結果は
日程 6月30日/熟練13:30 7月1日/瓦礫捜索12:05 7月2日/服従14:00
評価 48点 144点 45点
合計237点 合格/19位
 
全出場頭数111頭中30頭合格。
例年にない少なさだった。
チーム戦でも1チームのみの合格と、頭数制限が厳しくなった影響が明らかになった。

(Voss von kyoto Masuda/ブリス)

今回私の犬ブリス(4歳/ジャーマンシェパード)は世界大会初出場だ。
服従試験、熟練試験はほぼいつもどおり。
(熟練試験の「遠隔」にて、意欲満々でハンドラーの指示を待つブリス。phot by IRO)

肝心の捜索試験は、2人まではかなり早く自主的に探し告知も連続し、練習してきた「離脱をしない精神的自信」をつけることもできた。
最後の1人は、瓦礫の山がうず高く犬が山に登ってしまうとまったく犬の様子が見えないことと、かなり奥に送り込まなければいけないのでコマンドで送り込んだのだが、なかなか仮想被災者にたどり着かない。
ブリスは体力、筋力、身体能力に不足はないが、脳のバッテリーが早く消耗する事がある。そんなときは一旦休憩を取りチャージしてやる事が私の仕事なのである。
時計を見るとまだ15分以上残っているので、休ませることにした。
 
炎天下での作業という事もあり、水分をとらせしっかりと充電させると瞳が生き返り作業できる状態になったので、一番奥まで走らせると自ら山に登り最後の仮想被災者を探し当てた。
(瓦礫捜索会場の最も奥のエリアで、第3仮想被災者を発見し告知するブリス。phot by IRO)

今回合格させる事ができ、結果を残せた事は、我がチームにとっても大きな成果といえよう。
 
昨年まで世界大会に出場していたブロウはすばらしい能力を持ちながらも私が合格に結びつける事ができず、私に大きな反省と課題をくれた犬であり、今回の結果に大きく貢献している事に感謝している。
2002年のソフィアとの世界大会参加から始まりブロウ、ブリスと3頭目の犬でやっと世界で結果を残せた、これまでの犬に関わってきてくださった皆様に御礼申し上げたい。
 
今大会で、日本のIRO 加盟団体3チーム全てにRDTAを筆頭としてそれぞれ2頭以上の合格犬が揃い、世界に追いついたように思う。
日本の犬達が表彰台に上るのもそう遠くはないはずだ。
 
(広域捜索試験の様子。植生や地形で匂いの出方が大きく変わる phot by IRO) 

検証捜索

今大会では、広域試験において1頭も合格犬が出なかった。
昨年のチャンピオンも2人のみの発見で、1頭も合格犬が出ない事は、世界大会始まって以来の出来事だったようだ。
そこで最終日、どうしてこのような結果になったのかIROが検証作業を行った。
世界のトップレベルの犬3頭で、試験終了後の閉会式が始まるまでの時間に、広域試験会場でのテスト形式での捜索を行ったのだ。
 
さすが昨年チャンピオン、捜索スタイルを修正し3人を発見。しかしこのすばらしい犬でも3人目の被災者の近くを6回走り、7回目にして臭いが取れるという、一見簡単そうに見えた森に難しさが潜んでいたというものだった。
この3頭の検証捜索に随行し世界のトップレベルの広域捜索が見られたことは何よりの収穫となった。
びっくりするほどの服従性と自主性、推進力、持続力、ハンドリングの卓越している事。これを見学できた事が神奈川の財産となるよう今後に生かしていきたいと強く思う。
 
(閉会式にて、今大会参加の5頭の日本の犬たち。左からブリス、リアラ、マリン、モナ、ジュニア)

表彰式の後日本の参加者勢ぞろいの記念写真をとり、和気藹々としたベルギー大会の幕が下りた。
毎年お世話になるフランクフルトの友人夫妻、日本で応援してくれていたチームメンバーに感謝、また夫にも。
(今年も大変お世話になったInderwies夫妻 phot by IRO) 
 
最後に。内容を記す事はしないが、多くの人が見ていて口をあんぐりと開けた驚くべき出来事があったことを記録しておく。
私も長年世界大会に出場してきたが、服従の試験中にこのような光景を見たのははじめてである。フェアに試験に臨めなくなったチームが崩れていく事は明らかだ。犬への影響が大きい事はいうまでもない。
見たくないものを見てしまい悲しい思いも残った大会であった。


第18回IRO世界大会は、2012年9月ウクライナにて開催の予定。
 

このページの「phot by IRO」と表記のある画像は全てIRO世界大会運営本部よりご提供いただきました。






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最終更新:2013年03月06日 16:58