A:カラタール婦人
B:エルダー氏
C:マリエッタ


A「長らく生きておりますと、本当に様々なちょっとしたことに驚かされることもあるものですが
  本日、私を驚かしましたのは、あぜ道をとんでもないスピードで走ってきた馬車と、
  転がるようにせかせかと降りてきた、二人の親類の姿でございました」



B「やあカラタール婦人、お久しぶりです」
A「こんにちはエルダーさん。こちらこそ、久しく何の音沙汰もしませんで…」
B「いやいや…さ、挨拶をするんだマリエッタ」
C「(無言)」
B「この強情者。あ、いや失礼、このトンチキは私の子でマリエッタと申します。
  本日御伺しましたのは、この娘の……」
A「どうぞ、お座りになって。
  娘さんの就職先のお話も、それから話されましても遅くありませんよ」
B「これは申し訳ございません、来て早々に……」
B「カラタール婦人!なんですかな……それでは貴方もあの醜聞をお聞きになったのですね。
  いやはや、こんな所にまで……まいったことだ」
A「いいえ、そのご噂は聞いておりませんよ。
  ですが、娘さんもそのようなご年齢になられたかと思いましたので、差し出がましく…」
B「は、成程。いや、申し訳ございません。
  私ども一家、その無遠慮な風聞に悩まされておりましてね、神経質になっているらしい」
A「お察しします。それで……娘さんのご就職先の紹介でもなければ、
  あなたの話したい相談とはどのような事なのでしょう」
B「いえいえ!まさしくその通り、娘をこちらに置いていただけないかとお願いしに来たのです。
  召使いとしてでも、店の方の手伝いとしてでもかまいません。
  どうか使ってやってくださいませんか」
B「いえ、就職先の話というのはですね、私が花嫁修業の代わりにと、
  知人の生花問屋で、これに書記のまねごとをさせていたのがいけなかったのです。
  このあばずれが、店の跡取りの年下の坊ちゃんをたぶらかしちまって、
  あろうことか出奔しでかす所だったのです。
  それで、あの街に置いておくには酷となりましてね」
A「ご用件はわかりましたが、私の店は、店ともいえないような飲み屋ですよ。問屋とは違います。
  夜は酒も出したりするし、男の客もいらっしゃいます。
  そんな店に、しっかりしたお家のお嬢さんを働かせるというのは、
  その…どうなのでしょうか」
B「いえいえ!いいんです、いいんです。
  こちらの事は気にしないで下さい。
  ほとんど満足にできることもないでしょうが、厳しくしつけてやってほしいのです。
  親類の頼みだと思って、お願いしますよ。
  もちろん、滞在費などはこちらの方からお出ししますし、
  いりようでしたら手間賃を考えても……」
A「いいえ、それはよろしいのです。
  いいでしょう、お預かりします。
  お嬢様の方は、どうでしょうか。ここは、若い人がお住みになられるには不便な所かと」
B「いいのですいいのです!言える立場なんかじゃないんだから。
  ほら、ぶすくれてないで、せいぜいよくしつけてもらうんだ。
  じゃあ、婦人、申し訳ございません、私、すぐに戻らないと、仕事がありますので……」


A「慌ただしい、ハーキィ坊ちゃん。
  いつもせかせか騒々しくって、こちらに口をはさませようとしないんだから。
  子供の頃と全く変わっていないのね。
  ……あらマリエッタ、あの子にこんな事言ったって告げ口しちゃだめよ。
  あの子活火山のように顔を赤くして怒るんだから。
  本当にどうしようもない甥でごめんなさいね。
  婦人には紳士の前で話せない話があるってことを、あの子は大人になっても分かっていないんだから」
C「……それは、娘が言うセリフだと思いますよ」
A「ああ、やっと喋ってくれた!
  私は今とても嬉しいですよ、マリエッタ。
  あなたのような若い方に来ていただいて、どんなにこの家の生活が素敵になることでしょう。
  ですが、あなたの方が退屈で死にそうにならなければいいのだけれど。
  ここは本当に、何もない街ですから」
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最終更新:2010年10月21日 03:10