『被災者は語る』


昔むかし、あー、3日くらい前だったかな、俺が朝起きると窓の外にすっげーでっかい仔猫が
立っていたの。いや、立っていたなんてもんじゃないな、こう、どーんと、ばばーんと、そびえ
立っていた?というか、うーんと、あー、まあいいや。とにかくすごかったの。何といってもと
にかくでかかった。あんまりでかかったもんだから、ほら、俺んち仔猫のちょうど影になってる
ところにあったじゃん?おかげで朝起きても外が真っ暗で、俺まだ夜だと思っちゃったもん。
うっかり2度寝しちゃったもん。嘘だけど。まぁそのくらいすっげーでかかったわけよ。身長150
万kmくらい?あっ、信じてないだろー、本当にすごかったんだって。んで、その仔猫が、あ、で
かいけどすっげー可愛かったからあれは仔猫だった。猫じゃなくて仔猫。俺の中では仔猫なの。
これ、宇宙の真理な。信じられないんだったら一度実物見れば納得するって。マジですっげー可
愛いから。でー、何だっけ、そう、その仔猫が鳴いたんだよ。もちろん猫だからニャーオだぜ?
ワンワンでもオギャーでもないぜ?ニャーーーーオ!って鳴いたんだよ。そうしたらどうよ、
ドーン!ドカーン!チュドーン!いや、さすがの俺もびっくりしたぜ。仔猫が一声ニャーオって
鳴いただけでウチの屋根が吹き飛んだんだからな。それどころかどこの家も全部吹き飛んでやん
の。信じられるか?まったく、信じらんねえよ!でもこれが現実なんだよな。あとで話聞いたら
あのニャーオって世界中に届いたらしいな。日本も中国も北朝鮮もアメリカもヨーロッパもあの
一瞬でみんな壊れちゃったんだもんな。仔猫すげえ。まあ人づてに聞いた話だから本当かどうか
は分からないけどな。何せテレビもラジオも入らないから。そういえばいつの間にかあの仔猫い
なくなってたな。あんなでかい体でどこに隠れちゃったんだろうな。全く迷惑な仔猫だよ。す
げー可愛かったけど。信じられないかも知れないけど、本当に可愛かったんだぜ、あの仔猫。

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最終更新:2011年03月09日 22:57