ヤンデレイド

♂:屋敷の旦那様。先代が亡くなったばかりのボンボン
♀:屋敷のメイド。同じく屋敷で働く妹がいる



 手紙を閲覧中の主人、部屋がノックされ、小柄なメイドが入ってくる

女01「失礼致します旦那様。お茶をお持ちしました」
男01「ああ……お前か。そこに置いておけ」

 主人、紙束に目を戻す

男02「フン……何が教会だ、胡散臭い偽善者が、祈祷師ふぜいが……そうだ、お前達も宗教被れだったな」
女02「……」
男03「馬鹿の妹にもよく言い聞かせておけ、『妙な事を言いふらさぬように』とな」
女03「畏まりました」
男04「余計なことを考えるなよ。お前だって日の元を歩けなくなるんだ」
女04「こちらの紙束は退かせて頂いて構いませんか」
男05「好きにしろ。……ああ、うんざりだ。数字ばかり、文字ばかり!」
女05「失礼します」(置いて)
男06「当主となれば、全て自由になると思えば……ふん、息(そく)に全ておおい被せて逝きおって。嫌な父だ、死してなお、私を苦しめる……」
女06「……っ」
男07「何だ、その目は。お前達が生きながらえているのは誰のお陰だ、言ってみろ」
女07「慈悲深い旦那様のお陰でございます」
男08「そうだ、慈悲深い私のお陰だ。慈悲深い私が、する事なす事、何も間違ってなどいない」
女08「……はい、間違ってなどございません」
男09「……ふん。年を取る毎に仏頂面になりおって。馬鹿な妹のほうがまだかわいい面をしている。せめて逆なら、まだ楽しみがいもあろうに……」

 主人、紅茶を飲む

男10「ぐ……!? う、うう……(咳き込む)」
女09「……美味しゅうございますか」
男11「お前、何を……入れた……?」
女10「……彼(か)は申されました。街で犯された女は石で打ち殺せ。拒めないのもまた罪であると。貴方様に生きて、喋られては困るのです」
男12「な……っ、ぐ、は……は、ははは!」
女11「……」
男13「偽善者め、偽善者め!……お前は……ただ……ただ自分が可愛いだけだ!そんなことで天国が……お前達のような汚い生まれに」
女12「……雄弁は銀」

 打撃音

女13「そして沈黙は金にございます」
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最終更新:2010年10月20日 07:10