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xyz


Aパート

ここ、空いてます?どうも。やあマスター、急に降られてね……ああ、上着、お願いできるかな。ありがとう。
ふうー……止まないね。雨は嫌だなあ。いや昔ね、こんな日に……子供が死んだんですよ。
いや僕の子供じゃありませんよ、弟の同級生でした。僕も子供だった。もうずっと昔の話です。
給食をね、喉に詰まらせたんです、その子。
小学校くらいの給食って、「残すと怒られる」みたいなところがありませんでした?
最近は違うのかなあ、僕の先生なんかはそういうタイプで、弟の担任もそうだったみたいで。
その子も、お昼休み返上で最後まで食べさせられてたらしいです
その子、どちらかというと痩せててね。
好き嫌いというよりは、体が受け付けなくて食べられなかったんじゃないですかね。
ともかく、その子はそんな風で。で、弟なんですけど、小学校2,3年だったかな、もうやんちゃな盛りで。
昼休みにボール遊びでもしようとしてたあてが外れて、ふてくされてたらしいんですよ。ほら、この雨だから。
他にもそんな男の子たちがギャアギャア騒ぎ立ててたそうですよ。
だから、先生の注意もひょっとそっちに向いていたそうです。
そんな時だから、弟はその子を見たときにね、まあ、そんな様子にいらいらしたんでしょうね。
どん、とね、背中を一度叩いたんですよ。
ほんの軽くだったそうですけど、その子、必死で給食を食べていた最中だったでしょう
思い切りむせ返ったそうです。
弟はそりゃもう驚いて、余計に背を叩きました。その騒ぎに生徒たちや先生も気付いて
生徒はほんの小さい子ですからね、その様子にびっくりしちゃって、女の子は泣いちゃうわ
男の子たちは男の子たちで、ゲーゲー吐く様子に……失礼。
それにはやし立てるわで、若い先生は一人でてんてこ舞い。
そして、先生は弟に問い詰めたんです、どうしたの?と
弟はもうそんな周りの様子にいっぱいいっぱいになって、こう言いました
「その子が急にむせたから、助けようとさすってあげてた」って。
それは教室の共通認識として受け入れられました。
弟が事の何たるかが理解できたのは、中学生になってからだったと言っていました。
ほんの10歳程度の子供が処理できる許容範囲を越えていたんでしょうね。
でも、そのことは本当に怖かったらしく、こんな雨の日になるとね、憂鬱そうにしていました。
そんなんだから、こっちにまで憂鬱が広がりそうでね。
だって怖いじゃないですか。誰にも知られず死んで行くなんてことが実際に起こるなんて。
だから、弟も、昔より物事を知ってからのほうが怖かったんだって、そう言ってましたよ。
あはは……変な話をしてしまいましたね。マスター、お勘定。また、腰を据えられる時に来るよ。それじゃあ。


Bパート

ねえマスター。前に話したことがありましたよね、昔、子供を殺した事があるって。
こんな霧みたいな雨の日だった。ツトム……っていう子ですよ。亡くなった生徒。
だからこうしてこっちの道に入ったんだって。昔の話ですよ、もうずっと昔。
え? もちろん、生徒の名前は覚えてますよ。
先生はね、全員の名前を覚えているもんなんです。いや先輩教師に聞いた話ですけどね。
顔なんかはね、成長しちゃうとわかりませんけど、彼ら一人一人を覚えているんだって。
坂本ですよ、いえ、さっきの人の話に出てきた子。最初で、最後の生徒でしたから。覚えていますよ。
え?坂本ですか?いませんでしたよ、兄弟。一人っ子でした。
まあこういった場の「聞いた話」っていうのは自分のことですよね。大抵。
ねえマスター……言わないでいてくれたって思っていい?うん。ありがとう。
ごめんね、つけておいてもらえるかな。マスター。また今度ね。