神の代行者


作者:タウト ◆oXFOdNeHtA

(SE:足音)
(SE:椅子に座る音)

悪魔の存在を信じるか?
そうか、悪魔は恐怖か。いいだろう。
では神はどうだ。ん? 信じてるのか?
なるほど、救いを差し伸べてくれる……。救世主。分かった。
じゃあお前は祈りを捧げるか? 何にだって? 神にだよ。
(溜息)
それで救いはあったか?
救いはあったのか?
答えろ。
いいかよく聞け。
俺はいつも仕事をする前に同じ事を聞く。
理由はない。ただ、そうしなければならないと思っているだけだ。
神がどうだ悪魔がどうだ、そんなのどうでもいい。
考えても見ろ。お前らが救世主だと言って崇めている神は、どれだけの人を殺してきた。ん?
今気に障ったか? いい眼をしたな。神が貶められると腹が立つか?
聖書は知ってるな。
神は。200万人を殺してる。そうだろ?
悪魔は10人だ。
10人だぞ。俺は驚愕したね。
ガキの頃だ。まだ母親のいいなりで、何にもしらねえガキだった頃だよ。
ある時、隣に住んでた豚みたいな野郎に納屋に連れ込まれた。
そこの梁に固定された鎖で縛られ犯されたんだよ。何度も。
あの豚は俺の手首がうっ血するくらいにキツく縛り上げ、服を剥ぎとって殴った。
神に祈ったね。犯され続けている間。きっと母親が見つけてくれる。この忌まわしい時間を終わらせてくれる。
どうか神さま……ってな。
だが違った。真実は15ドルだ。たったの15ドル。
これでこの世に神なんぞいねえって気づいちまったんだな。神はただの言葉だ。
そう。だから俺が神に代わって、救世主になる。そういう訳でテメーは死ぬ。
理解したか?
おいおい。
今更命乞いなんて、勘弁してくれ。神に祈るんだろう? 悪党。
ああ、そうだ。俺が神だったな。救いをやるよ。今この瞬間な。
心配すんな。
俺の相棒は確実にあんたを救ってくれるさ。さながらベルギー生まれの天使。
P90(プロジェクトナインティ)に使われている5.7mm弾を発射できる。イカスだろ。こんな小さいナリでもちょっとしたライフルだよ。
銃口から秒速600Mで発射されてあんたの頭蓋骨を一瞬で破壊し脳を突き破る。そして後頭部から弾が抜ける頃にはあんたは救われてる。
床に脳みそぶちまけてな。
一瞬だ。痛みなんてないさ。
俺を恨んで死ぬか。それもいいだろ。
じゃあ仕事にかかろう。神も暇じゃないんでね。

(SE:椅子から立ち上がる音)

そこでイエスは言われた。
「わたしがこの世にきたのは、裁くためである。すなわち、見えない人たちが見えるようになり、見える人たちが見えないようになるためである。」
そこでイエスと一緒にいたあるパリサイ人たちが、それを聞いてイエスに言った。
「それでは、わたしたちも盲人なのでしょうか。」
イエスは彼らに言われた。
「もしあなたがたが盲人であったなら、罪はなかったであろう。しかし、今あなたがたが『見える』と言い張るところに、あなたがたの罪がある。」

(SE:銃声)

ふぅ~、この世にひでえ神もいたもんだぜ。悪魔の方が気楽ってもんだ。なあ相棒。



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最終更新:2010年10月17日 10:25