ひとりよがりの友愛

女101「ねえねえ、相談に乗ってよ。あたしたち、友達でしょ?」

女102『ひとりよがりの』
女201『友愛』

女103「それでね、やっぱりアイツ、あたしの前にあの子と付き合ってたんだって。
   それで、ちょっとだけあたしたちバイバイしちゃったんだけど、その時は別の子とより戻してたんだって!
   ね、信じられないよね?」
女202『そうだね、信じられない。
   夜中に電話をかけてきて、その内容だけでそれから30分喋り続ける、あんたの感性が信じられない。
   帰ってきた途端に携帯鳴って、こっちは風呂にも入ってないんだけど?』
女104「自分の都合いいようにコロコロ付き合ってさー。そういうのって、信じられる? 普通、ないよね?
女203『普通ってどういう普通? あんたのいう普通って、昔からかなり範囲が狭いよね。
   この前、人に害虫退治させといて、「あ~り~え~な~い!普通、虫なんて触れないしー」とか 本人の目の前でのたまったよね?』
105「小学校の時からずーっとラブラブなんだけどねー。
   なんかねー最近、正直うまくいかないんじゃないかなーって思うのね。結婚する気あんの? っていうか。
   あたしはしたいよー、でもさー、向こう長男だしー? ねー、どうしたらいいのかなー? どう思う?」
女204『その話題、たしか2年前にもしたよね? で、私すでに「ならこうしたら?」って何度も提案して
   そのたびに、あんたって「えー、でーもー」とか言ってるよね? いい加減うんざりしてんだけど』
女106「それでねー、この前ー、別の友達とも相談したんだけどー、やっぱりー……」
女205「あのさ」(ここで初喋り)
女107「……んっ? なに?」(話を止められ少し驚き)
女206「……もう12時過ぎたんだけど」
女107「えー? あー、もうこんな時間ー? やっだぁー、もう、ごめんねー? 遅くまで……」
女207「……おやすみ」
女108「うん、おやすみー。ごめんね、昔からいっつもあたしの話ばっかり聞いてもらってて。
   あんたって、真面目に黙って聞いてくれるから、とっても話しやすいんだぁー」
女208『そうだね、寡黙を貫き通せる所は、自分でもすごいと思ってる。
   あんたのマシンガントーク、そうしないと聞けるもんじゃないから。
   反論すると、黙り込んでもう話さなくなるしね。本当わがままだよね』
女109「あー、話したらすっきりしたー。眠れそうだよー、ありがとー
   ……あ、夢っていえばさ、この前変な夢見てねー?」
女209『夢の話好きだよね。なに? また「夢になになにクンが出たんだけど、どうしよー?」とかそういうの?
   勘弁してほしいんだけど。というか話長いよ、もう限界なんだけど、さっさと寝せてくれない?』
女110「あのねー、夢にねー、あんたが出てきたんだよねー」
女210「……え」
女111「(相手の反応待たずにマシンガン)
   なんでかさ、口裂け女みたいなマスクしててねー。で、「見ーたーなーーー!」って!超ウケたんですけど!!」
女211「思いつつ……」
女112「え?なに?」
女212「『思いつつ寝ればや人の、見えつらん、夢と知りせば、覚めざらましを……』
   寝てる時に考えてたことが夢に出たかも? っていう和歌。小野小町が作ったヤツ」
女113「ああ、あきたこまちの? あんたって、なんか時代モノ? 好きだよねー」
女213「そう、それは古今和歌集に出展されてるヤツで……あ、古今和歌集って言ってもね、古いほうは……」
女114「あ、あー! ごめん、あたしもうそろそろ眠いから。ごめんねー、長く電話しちゃって!」
女214『うん、あんた、本当に人の長くなりそうな話は嫌いだよね、よく知ってる。
   ありがとう、そのままのきみでいてくれて。やっと眠れそうだ』
女115「じゃ、あったかくして寝るんだよー。お風呂、ちゃんと入らないとダメだよー」
女215『うん、ごめんそろそろ本気で限界。寝かして?』
女116「おやすみ! ……あたし、あんたが友達でよかった!」
 (SE:電話切れる)
女216「私は、あんたを一度だって友達だって思ったことないんだけどね。
  ”アバタもエクボ”なんて……昔の人はよく言ったもんだ。
  『――玉の緒よ、絶えなば絶えね ながらえば 忍ぶることの弱りもぞする』…………おやすみ、私の筒井筒」
 (SE:携帯にチュッ)



【あとがき】

『思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを---小野小町』
(あの子と会えたと思ったのに夢かよ! 起きなきゃよかった!)

『玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする---式子内親王』
(好きだなんて、絶対に言えない……(気付かれたら)死んでしまうわ!)

『筒井筒---伊勢物語』
(小さい頃から一緒に遊んでいた、幼馴染の二人……大きくなるにつれ、お互いのことを意識しはじめて……!?)
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最終更新:2010年10月20日 17:08