和風物
作者:ろりロック◆5/zOrEKTKg
城から城下町を見下ろす、一人の侍がいた。
この侍、これから戦である。
「ここから見える八重桜も・・・これで見納めか」
侍は一人、誰にとも無く呟くと、城下町へと下る。
そこは、見慣れた風景が広がっていた。
しかし、あろうことか、戦まえに祭りである。なんたる事か。
侍は、町人を一人捕まえ、問う。
「戦まえというのに祭りとは、何事か」
「お侍様、知らないんですかい?今日はお侍様達のための祭りですよ!」
「侍のための祭り・・・何だそれは?」
「へい、何でも、殿様がお考えなすったようで・・・」
「父上が・・・?」
そう、この侍、父を殿に持った、言わば若である。
しかし、何で父上はこのような祭りを催しなさったのか・・・。
(父上ものんきなものだ・・・戦まえに祭り騒ぎとは・・・)
視線を戻すと、いつのまにか町人は消えている・・・。
まったく、騒々しい。
侍は溜息をつき、また歩く。最後に、見届けたいものがある故に。
八重桜
初めて私が恋なるものをして、この身で守護しようと決めた町娘と出会った場所。
「この戦・・・この戦で最後だ・・・弥生、すまなんだ・・・」
腰に巻いてあった酒を一口だけ飲み、残りを桜にかける。
「もう・・・弥生に会えないかもしれん・・・許せ」
侍は行く。城、城下町を守護しに・・・いや、一人の、町娘を守護しに。
あとがき
初めてシナリオ(?)的なものを書きましたが、難しいですねやっぱり。
台本を書いている方々の苦労がとってもよくわかりました。
この「和風物」は一人で朗読しても、2役出しても構いません。
最終更新:2010年10月18日 01:29