作者:Elika



あ、雪……。
そっか、もうそんな時期か。
そうだよな。最近寒いもんな。
別に悪いイメージはないけど、寒いのは苦手だな。


 「ふぅ……先輩……今日は会えなかったな……」


今日みたいな雪の日は、先輩に会いたかったな。
きっときれいなんだろうなー……あの黒髪、雪で飾りつけしたらさ。
立ち止まって空を仰いで、目をつぶって先輩の顔を思い浮かべる。
年上──っていっても、5つ上ってだけだけど、たまに年下に見えなくもないくらいに。
先輩はなにかと、愛らしい。


 「へへっ……」


うっわ俺、なに考えてんだろ!?
しっかりしろ俺ーーー!!


……先輩は、俺のことどう思ってるんだろう。


 「年下じゃ……やっぱ無理だよな……」


やっぱ俺って小心者だよな、と自嘲しながら帰り道を急ぐ。


 「あれ?」


降り始めた雪の中、俺が今一番会いたい人がぽつんと立っていた。
え、えっと────……


な、泣いてる?!
なんで?!なんで先輩が泣いてんの?!
しかも俺の部屋の前で!!?
いや……事情はどうだっていい、なんとかしなきゃってうわぁあ!


小さく震えた小さな先輩が、俺の腕の中に飛び込んできた。
冷たい髪、冷たい手……先輩、ずっと待っててくれたんだ。
俺を……頼って……?


 「ああ、よしよし……どうしたの?」


俺の口から、おおよそ普段の俺からは想像できない様な優しい音がこぼれた。


 「うん、うん」


子供みたいに泣きじゃくる先輩の頭を、自然となでていた。
この世で一番大事なものを、この世で一番大切にするみたいに。
俺、こんなに優しくなれるんだ。先輩が、俺を優しくしてくれるんだ。


 「いいよ。楽になるまでこうしてるから、好きなだけ泣いたら?」


寒空の下、戸惑いが一つ消えた。
もしかしたら、今なら言えるかもしれないな。
あなたが、大好きです、ってさ。

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最終更新:2010年10月21日 21:36