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ホワット・ア・ワンダフル・ワールド


作者:ちゃま ◆A3zAmH5eqc


 白いカーテンが開いて、僕の目を白く眩しい光が覆う。看護師さんはてきぱきと僕のシーツを直す。床ずれしないようにと。
 夢を見た。夢だと自覚している夢。だって僕が元気に歩いているんだから。
 夢の中では、争いもない、飢餓もない。貧富の差なんか無いし、病気なんかもない。空は今にも落ちてきそうなほど青くて、自然は広がっている。
 僕の右肩に青い鳥が止まった。そしてこういった。
「どうだい? 素晴らしい世界だろ?」
 そこで夢は終わる。周りの景色が消える。
 目を覚ました僕が見られるのは病院の無機質な白の天井だけで、僕の生命を証明するものは、神経質そうになっている心電図だけ。
 喋ることもできないし、体を動かすことも出来ない。こむら返りすら起こすことは無い。言いたいことやしたいことはたくさんあっても、それを伝える術も、実行する術も、ない。
 サイテーな世界だ。僕だけじゃない。僕の知らないところで、今こうして考えている間にも人は死んでいって、誰かが不幸に見舞われる。サイテーだ。本当にサイテーだ。どうしようもないほど、サイテーだ。
 僕のベッドの上にどこからか入ってきた鳥が止まった。窓は開いてないのに。しかも青い。夢に出てきた鳥とそっくりだ。
「なんだぁ。こっちも素晴らしい世界じゃないか」
 僕の頭の中で声が響いた。特に驚きはしない。寧ろこのサイテーな世界が夢だったら、と期待もしてしまう。
「こんな素晴らしい世界に居るって言うのに君は何が不満なんだい?」
 どこが素晴らしいって? 僕は動けないんだぜ? 打ち所が悪いだけで世間的には植物人間さ。
「でも君は生きてるじゃないか。これ以外に素晴らしいことってあるかい?」
 今の状態が素晴らしいなんて思えるわけないじゃないか。もし、僕の体が少しでも動くならそこにある鋏で喉でも掻き切ってしまいたいさ。
「そんな滅多なこと言うもんじゃないさ。君は生きている。それだけで素晴らしい。そう、素晴らしいんだよ」
 一気に捲くし立てて喋った青い鳥は僕の周りを一周してから何処かへ行ってしまった。
 この世界はそんなにサイテーだ。その考えは今も変わらないし、変えたくもない。だけど、鳥が言うように本当に生きていることが素晴らしいなら、この素晴らしくもサイテーな世界を少し認めたくもなった、なんてね。

【あとがき】
朗読祭りの為に。クオリティ低くて申し訳ない。