ホワイトクリスマス


あれは確かに現実に起こった事なのです、そのはずです。
そう、寒い空でした、その日も酷く冷え込んでいました。ここ数日はそうでした。
何人もの浮浪者が、身を寄せて、せめてもの暖を取ろうと集まっていました。
少し前に潰れた銀行でした、石畳の……え、レンガ造りですか? いや、そうじゃない、そんな事はどうでもいいんだ。
最初に気づいたのはハンス爺さんだった、『あの子は何をやっているんだろうねえ』と呟いたのです。
あの子、そう聞いて私たちは目をあげました。
寒空の下にいたのです、小さな女の子……いや、ぼうずだったかもしれない、それくらい幼くて分からなかったんです。
くるくるした巻き毛の可愛い子だった。それが薄着で立っていた、白い服と肌が浮かび上がってた。
雪は降っていなかったけど、指先が凍りそうに冷える空の下で、一人で。
それくらいじゃ、勿論驚きませんよ。何せここの裏通りじゃ、驚く物を見つけるほうが難しいのですから。
どこかから裕福な子供が迷い込んできた、そう思いました。
え? 声をかける者なんていませんでしたよ、変に巻き込まれて、厄介になるほうがごめんですからね。
そんな事はアンタらがよく分かってるじゃないですか、そうじゃない、そうじゃないんだ。
その子はね、ぶつぶつ歌っていました。
『HAPPY HAPPY DAY, I love you Duddy & Mammy.I love you very much』(ハッピーハッピーデー、アイラビュー ダディアンドマミー、アイラビューベリーマッチ)
そのままぶつぶつと歌って行っちまった。その子、可愛い子だったからね、私たちは天使が舞い下りてきたか、
または夢遊病患者が病院抜け出して来たんじゃないかと話して、それきりなんです。
そうですよ、私達が見たとき、あの子は天使みたいに真っ白だった。
血まみれになんてなっていなかったし、凶器ですって? そんなもの持ってはいなかったのです。
だいたい、あんな小さな子が大の大人を殺せるもんか、しかも、何人だって? そんな、馬鹿げてる!
きっとあの子は見てしまったに違いないんですよ、その……大変な所を。それで、あんな風におかしくなったんだ。
ねえ分かりませんか、あの子はそんな事するわけないじゃないか。あんなに美しくて小さい可愛い子が。
ねえ、そうでしょう、お巡りさん。そうでしょう?


お題:ニューヨーク どシリアス ヤンデレ
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最終更新:2011年02月28日 22:38