作者:Elika


Fの4:27

プロローグ(中の人01)

ネットラジオ、というものがある。
誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。

中の人02「Fの4:27、第一話 『聞いたことのない声で』」

マウス01「というわけで、来週のこの時間もお楽しみに!」
マコト01「んぁ……もう、こんな時間か……ふぁぁぁあぁぁぁぁ~~……ん?まだあんの?」
中の人03「相沢裕也、岡田美紀子、喜久井陽一、佐藤俊夫、島本由紀、館山浩介、時沢ヨネ、
     中野愛、野口泰三、原口健治、原田瑞樹」
マコト02「な、なんだ?!え、しっ、島本?!」
中の人04「日向マコト、来週はこの12人です」
マコト03「俺?!俺の名前?!12人、来週……?!」

いろり01「お、おい、マコ!」
マコト04「もしかして、もしかしていろりんも?!」
いろり02「あ……あぁ、聞いた……島本由紀、私の名前だ!」
マコト05「俺も、日向マコト、俺の名前です!」
いろり03「ほかに知っている名前は?」
マコト06「いろりんの本名と、俺以外には……」
いろり04「そうか……相沢裕也、知ってるんだ……」
マコト07「え……?」
いろり05「これは完全オフレコだが……グールさんの本名だ」
マコト08「グールさん……」
いろり06「なんのいたずらかわからないが、正規の放送ではないだろう、あれ」
マコト09「ゲスト呼びます~ってノリではなかったですよね」
いろり07「ああ、聞いたこともない声だったし、音質も悪かった。
     第一、12人もゲスト呼べるわけがないだろう」
マコト10「Skypeの限界超えてますよね」
いろり08「どのみち、このラジオの関係者の名前、それも本名が、知る限りで3つも出てきたのは
     気持ちが悪いな……」
マコト11「マウスさんに聞いてみましょうか?」
いろり09「あぁ……そうだな、放送側に聞くのが一番手っ取り早いだろう」
マコト12「じゃあ呼びますね」
いろり10「待て、こっちでグールさんも一緒に呼ぶ。私がHostをやろう」
マコト13「あ、はい、お願いします!」
いろり11「……グール、マウス、聞こえるか?」
グール01「あああああああああああああああああ!!俺はもうダメだああああ!
     死ぬっ、死んでしまうんだぁあああああああああ!!」
マコト14「ぐ、グールさん落ち着いてくださいよ!」
グール02「おいマウス!てめぇこらなんのいたずらだどういうことだ!あぁ?!」
マウス02「あの、あの!ええと、ごめんなさい!」
いろり12「噛み付くなよグール。で、どうしたのマウス?あの最後のはいったいなに?」
マウス03「リスナーさんから聞いて、録音したのをいただいて、私もさっき聞いたんですけど……」
いろり13「あんたも知らなかった、ってことね」
マウス04「は、はい……それで、あの」
いろり14「思い当たる節でもあるの?」
マウス05「いえ、そうじゃないんですけど」
いろり15「じゃ何?」
マコト15「いろりんも落ち着いてください!」
いろり16「私は冷静だ!」
マコト16「ぜんぜん落ち着いてませんって!ほら、マウスさん言いたいこと言えななってるし!」
いろり17「っ……すまない。マウス、話してくれるか?」
マウス05「あ、はい、ごめんなさい、あの……ナイショにしていただきたいんですけど」
グール03「殺すのか!お前が俺を殺すのか!!警察には言うなってことか!!」
マコト17「グールさん!」
マウス06「私、2番目に、名前呼ばれて……っ!」
いろり18「そう……なの?」
マウス07「はいっ……も、申し遅れました、岡田美紀子です……」
マコト18「もしかして……」
マウス08「あの、安直でごめんなさい、あだ名がミッキーなんです……」
グール04「ミッキーーーーー!!マウスかよ!!」
いろり19「これで関係者全員の名前があがったのか……ますます不気味ね」
マコト19「でも、みなさん住んでる場所とか離れてますよね?」
いろり20「札幌だ」
グール05「静岡こいやぁああああああああああああ!!」
マウス09「私、沖縄です……」
マコト20「そして俺は東京──見事に離れてる」
いろり21「お互い顔も知らないからどうこうしようがないよな。今本名知ったってやつもいるだろうし」
グール06「いやだ、いやだいやだいやだ、俺は殺されるんだーーー!!」
いろり22「落ち着けってぇの!名前呼ばれただけで殺されるわけがないだろう」
グール07「姉御は知らないからそんな悠長にかまえてられるんだ!!」
マコト21「な、なんか知ってるんですか、グールさん?」
グール08「いいいいい今まで都市伝説かなんかだと思ってたんだがよ!」
いろり23「勿体つけずにちゃんと話しなさい」
グール09「今話すよぁあああ!あの、あのな、ネットラジオじゃなくて、普通のラジオとかなんだがよぉ……
     名前をいっぱいずらずらーって流して、『来週はこの○○人です』っていう気持ち悪りぃ放送があってよぉ……
     1週間以内に、名前呼ばれたやつは全員死ぬんだよおおおおおおおおおおおお!!!」
マコト22「それこそ都市伝説じゃないですか。現実に人がそんなんで死ぬわけがない」
グール10「現実にこんな放送があるわけないだろーーーー?!それがあったんだから、もうこれは現実だーーー!!!」
いろり24「とにかく!こんなんで人が死ぬわけないんだから落ち着きなさいって」
マウス10「あの、ほんとにごめんなさい、私のラジオのせいで……」
マコト23「マウスさんは知らなかったんでしょ?だったら、別にマウスさんは……」
いろり25「そうだよ、マウスは何も知らなかったし、こんなので人が死ぬわけがないんだから」
グール11「自分の名前が一番最初にあったんだぞ?!落ち着いてられるか!もういい、俺は寝る!
     明日は家から一歩も出ないからな!!!」
マウス11「あの、それ、死亡フラグ……」
マコト24「冗談きついよ、マウスさん……」
マウス12「あぅっ、ご、ごめんなさい……」

中の人05「名前を呼ばれたら、1週間以内に死ぬ──そんな都市伝説で人は死ぬのだろうか?
     次回、Fの4:27第2話、『次はお前だ』
     その声に、聞き覚えはありますか?」


第二話

中の人01「ネットラジオ、というものがある。
     誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
     今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。」
(※使いまわしなので収録の必要はありません)

中の人06「Fの4:27、第二話 『次はお前だ』」

いろり26「マコ、いるか?」
マコト25「いろりん、おかえりー!今日は仕事早かったんですね、確か今日のラジオはいろりんの」
いろり27「緊急事態だ、通話できるか?」
マコト26「え?できますけど……」
(Skypeコール音)
いろり28「単刀直入に言う、グールが死んだ」
マコト27「は?!」
いろり29「連絡が取れなくなってな、もしやと思って家の電話にかけてみたら、お母さんが出て」
マコト28「いやいやいやいや、まさかでしょう?!」
いろり30「冗談みたいな人生を送ってはいるが、こういう冗談は言わないぞ私は」
マコト29「……じゃ、じゃあ……」
いろり31「信じられないがな、マジだ」
マコト30「マウスさんには……」
いろり32「言える訳ないだろう、まぁ、偶然という可能性もあるが……万が一のことを考えてな」
マコト31「そ、そうですよねー……ていうか、いろりんグールさん家の電話番号知ってたんですか?」
いろり33「ああ。前に突然送りつけてきた」
マコト32「もしかして、こうなることを予測して……?」
いろり34「んなわけあるか。ただの出会い厨だ、あいつは」
マコト33「じゃあ、誰かに殺された可能性も」
いろり35「ないな。外傷なし、死因は心不全だ」
マコト34「心、不全?」
いろり36「知ってるか?健康そのものの人間が心不全で死んだってことは、原因不明ってのと変わらない」
マコト35「原因、不明……」
いろり37「まぁ、警察が動いてくれるだろうけど、期待はできな────」
マコト36「……?いろりん?」
いろり38「おいマコ、お前、マウスにグールが死んだこと知らせたのか?」
マコト37「え?いえ、知らせてませんけど」
いろり39「じゃあなんで今マウスから『どうしましょう、次は私でしょうか』ってチャットが飛んできてるんだ?!」
マコト38「え?!今日はラジオ休むって話はしましたけど、グールさんの話は……」
いろり40「……呼ぶ」
マウス13「島本さぁん……」
いろり41「本名で呼ぶな」
マウス14「あ、ご、ごめんなさい……」
マコト39「マウスさん……」
いろり42「誰から聞いたんだ、その話」
マウス15「さっき、グールさんの携帯から、『次はおまえだ』ってメールが来て……」
いろり43「さっき?!さっきって何時だ!?」
マウス16「ご、ごめんなさい!え、えっと……16:27、です」
マコト40「4時27分か……ほんとに、30分くらい前ですね」
いろり44「しにな……」
マウス17「っ!?」
マコト41「ちょ、ちょっと、いろりん!」
いろり45「悪趣味だな……4時27分、し、に、な、か……」
マコト42「っていうか、グールさんマウスさんの携帯のメアド知ってたんですね」
マウス18「は、はい、ごめんなさい、以前突然送りつけられて……」
マコト43「同じパターンかよ……ほんとに出会い厨だったんだな、グールさん」
いろり46「マウス、グールが死んだ。原因は不明だ」
マウス19「い……いやぁ……っ!」
いろり47「問題は死んだことよりも、その時刻だ」
マコト44「時刻?時刻って」
いろり48「死亡推定時刻だ。──今日の明け方、4時半前後だそうだ」
マウス20「いやぁああああああ!!」
マコト45「ま、待ってくださいよ4時半前後って!!」
いろり49「4時27分であった可能性も否定できない。
     それ以前に、今日の16時27分にグールがマウスにメールを送るなんてできないんだよ。
     ──その時間、すでにグールは死んでるんだから」
マウス21「し、島本さん、助けて!!」
いろり50「偶然にしたってたちが悪い。ついでにいうと、どうしようもない」
マウス22「いや、いや、いや!!私まだ死にたくない!!」
マコト46「いろりん、どうにかしてあげてよ!」
いろり51「忘れたか?もし、順番どおりだとしたら──次は、私だ……」
マウス23「もう、もうやだ、もういやです、助けてください!!」
マコト47「じゃ、じゃあせめて、朝の4時半くらいまでこうして、みんなで通話してましょうよ!」
マウス24「あ、そ、そうです、それで!それでいきましょうよぉ……」
いろり52「……そうだな。そうするか」
マコト48「いろりん、寝オチしないでくださいね」
いろり53「すまん、自信はない」
マコト49「冗談きついよ……」

中の人07「名前を呼ばれたら、1週間以内に死ぬ──そんな都市伝説で、グールは本当に死んでしまったのだろうか?
     不可解な死、ありえないメール、恐怖……。
     次回、Fの4:27第3話、『私がいる』
     その声に、聞き覚えはありますか?」

第二話終了


第三話

中の人01「ネットラジオ、というものがある。
     誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
     今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。」
(※使いまわしなので収録の必要はありません)
中の人08「Fの4:27、第3話 『私がいる』」

いろり54「さすがに眠いが……」
マコト50「もう、4時過ぎなんですね。マウスさん、大丈夫ですか?」
マウス25「は、はい……」
いろり55「なにか部屋に変化はないか?物音がしたり」
マウス26「はい、な、ない、です」
いろり56「今通話以外にはなにもしてないんだな?」
マウス27「はい……ラジオはお休みしましたし……あ」
マコト51「ど、どうしました?」
マウス28「あの、ちょっと、お花摘みに……」
マコト52「お花摘み?」
いろり57「気をつけていってこいよ」
マウス29「はい、失礼します……」
いろり58「ミュートにしないで、そのままいってこい」
マコト53「お花摘み、ってなんですか?」
マウス30「すぐ、すぐ戻りますので」
いろり59「──馬鹿者。女の子にそんなことを聞くもんじゃない」
マコト54「え……?」
いろり60「──トイレだよ。お花摘み」
マコト55「あ、す、すいません……ん?」
いろり61「ん?」
マコト56「今、いろりん咳した?」
いろり62「いや?」
マコト57「マウスさんはもう、トイ……お花摘みですよね?」
いろり63「さっきドアが閉まる音が聞こえたからな」
マコト58「気のせいかな、なんか咳払いみたいな音が聞こえ──あ、ほら、また」
いろり64「おまえ耳いいな。今私も聞こえた」
マコト59「じゃあ、これって……」
いろり65「Skype見る限りだと発生源はマウスの部屋だ」
マコト60「誰かいるのかな、か、家族とか」
いろり66「マウスは一人暮らしだ」
マコト61「怖いから彼氏に来てもらってたり……」
いろり67「いい加減認めろ、これは異常現象だ。マウスは彼氏なんていない」
マコト62「あ、4時23分」
いろり68「……そろそろか」
マウス31「えっ────」
マコト63「マウスさん!!?」
いろり69「イヤホンのはずだ、私たちの声はマウスには聞こえない」
マウス32「え、や、ちょっと、どうして、いや、いやぁこないで!!」
マコト64「マウスさん、逃げて!!」
いろり70「マコ、音量下げろ、(ここから大きく、割れるくらいで絶叫)マウス!!聞こえるか!!」
マウス33「し、島本さん?!島本さん助けていやあああああああああああ!!」
いろり71「どうした、なにがおきてる!!ちゃんと報告しろ!!」
マウス34「わた、私がいる!!!こないでええええええええ!!」
いろり72「落ち着けマウス!!状況を報告しろ!!」
マウス35「じば…ぼ…ど…ざん…」
いろり73「お……おい、マウス!!マウス!!!」
マコト65「いろりん……時間……」
いろり74「くそっ!!なにもわからなかったじゃないか!!」
マコト66「死んじゃった……?」
いろり75「無駄死にだ」
マコト67「いろりん?!」
いろり76「状況さえわかればどうにでもなったのに!!」
マコト68「ちょ、いろりん、それは酷いよ!」
いろり77「酷い?!酷いならそれでいい、所詮ネットの知り合いが何人死んだって私は痛くも痒くもない」
マコト69「ま、まさか……いろりん、最初からそのために……」
いろり78「さぁどうする、次は私だ!ふ、ふふふ……」
マコト70「いろりん……」

中の人09「名前を呼ばれたら、1週間以内に死ぬ──そんな都市伝説で本当に人が死んでしまった。
     抗うことのできない法則、得られない手がかり、絶望……。
     次回、Fの4:27第4話、『糸口』
     その声に、聞き覚えはありますか?」

第三話終了


第四話

中の人01「ネットラジオ、というものがある。
     誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
     今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。」
(※使いまわしなので収録の必要はありません)
中の人10「Fの4:27、第4話 『糸口』」

いろり79「昨日は無事だったな。ラジオのほうはもうダメだろう……リスナーには申し訳ないが」
マコト71「……」
いろり80「今日のニュースで、タレントのKIKU、本名喜久井陽一が突然死した、と報道があったな」
マコト72「どうして、そんな無感情でいられるんですか」
いろり81「冷静じゃなければ、物事が判断できん」
マコト73「俺、いろりんはもっと優しい人だと思ってた」
いろり82「それは勝手な思い込みだ。私はわがままだ」
マコト74「……。酷すぎるよ、いろりん」
いろり83「はぁ……誰のために必死こいて会社休んでまで情報集めに奔走したと思ってるんだ」
マコト75「え?どういう……」
いろり84「私の名前だけじゃなく、お前の名前も含まれてるんだぞ?」
マコト76「じょ、状況がよくわかりません」
いろり85「……だからいつまでたっても彼女ができないんだお前は」
マコト77「すいませんねぇ年齢=彼女いない暦で!!」
いろり86「私は、おまえが好きだ」
マコト78「はぁっ?!こ、この状況でなにいってるんですか!」
いろり87「この状況だから、だ。伝えなければ、きっと後悔するだろう」
マコト79「いろりん……?」
いろり88「私はおまえと生き残りたかったが、それはこの状況じゃ無理だ。だからせめて、おまえだけでも生き残ってほしくて……
     いろいろと、情報を集めた。マウスの命すら犠牲にしてな」
マコト80「そんな……なんで、どうして!」
いろり89「名前が挙げられたのは12人、そして『来週は』っていってることから1週間で死ぬ人間の数が12人ってことだろう。
     一日目はグール一人が死に、二日目はマウス一人が死んだ」
マコト81「一週間は7日だから……え、計算合わない?」
いろり90「おまえのそういう賢いところが好きなんだよ、私は。そう、一日に一人死んでたんじゃ、1週間以上かかる。
     なにか法則がないと1週間でぴったり12人は死ねない」
マコト82「じゃ、じゃあ、なにか法則が?」
いろり91「好きだ発言は無視か……まあいい。フィボナッチ数列、って知ってるか?」
マコト83「フィボナッチ数列っていうと……あ!」
いろり92「やっぱり賢いな。そうだ、数列の隣り合う二つの数を足すと、次の数に等しくなる数列だ」
マコト84「じゃあ、今日は2人……あれ、でもそうすると」
いろり93「一日目、1人。二日目、1人で合計2人。三日目、2人で合計4人……」
マコト85「四日目に3人で合計7人だから、五日目に5人死んで合計12人、5日間で終わりじゃないですか!」
いろり94「神か悪魔かはたまた鬼か、なんでもいいけど土日は律儀に休むらしいな。公務員が黒幕かと思ほどに」
マコト86「鬼の公務員……いやな想像しましたよ、俺」
いろり95「どんな想像よりもいやな現実があることを忘れるな。今日私が死ねば、明日にはお前が死ぬ計算だ」
マコト87「そういえば……」
いろり96「残されたヒントはあまりにも少ない。グールもマウスもほとんど何も残さずに無駄死にした」
マコト88「……」
いろり97「しかし、まったく何もないわけではないんだ。グールは都市伝説について、マウスは『私がいる』という発言を残していった」
マコト89「でも、それだけじゃどうしようも」
いろり98「私にとっては十分糸口だ。まずは都市伝説からあたってみた」
マコト90「はは、やっぱいろりんはすごいや」
いろり99「惚れていいんだぞ?」
マコト91「遠慮します」
いろり100「……永遠に一方通行だな。まあいい、時間がない。とにかくグールの言っていた都市伝説についてだが、
     ひとつそれらしきものにぶち当たった」
マコト92「ほ、ほんとですか?!」
いろり101「Fの4:27という都市伝説だ。おそらくFはフィボナッチのFだろうな」
マコト93「Fの4:27……」
いろり102「あぁ。その都市伝説はまさにグールが言っていたとおりでな。もっと詳しいことも調べてみたよ」
マコト94「詳しいことっていうと?」
いろり103「そこでマウスの『私がいる』とつながった。どうやら死ぬ間際、自分そっくりのやつが部屋に現れるらしい」
マコト95「ドッペルゲンガーですか……」
いろり104「一説では死期の近い者が遭遇するらしいな。脳の機能障害という説もある」
マコト96「ドッペルゲンガーに殺されるんですか?都市伝説では」
いろり105「そうらしい。回避する方法はわからなかったが、これからまだ時間は少しある。
      自分の命と引き換えにしても、おまえは守るよ」
マコト97「いろりん……冗談、きついよ」


中の人11「名前を呼ばれたら、1週間以内に死ぬ──そんな都市伝説の真相が少しずつ判明してきた。
     フィボナッチ数列、ドッペルゲンガー、タイムリミットはあとわずか……。
     次回、Fの4:27第5話、『私は戦う』
     その声に、聞き覚えはありますか?」

第四話終了

第五話


中の人01「ネットラジオ、というものがある。
     誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
     今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。」
(※使いまわしなので収録の必要はありません)
中の人12「Fの4:27、第5話 『私は戦う』」


いろり106「……マコ、おきてるか?」
マコト98「寝られるわけ……ないじゃないですか」
いろり107「あと20分もすれば私のドッペルゲンガーが現れる時間だ」
マコト99「いろりん……」
いろり108「最初で最後のワガママになるかもしれないが、私のお願いをきいてくれるか?」
マコト100「なんですかその死亡フラグ」
いろり109「どの道死ぬならセオリーどおりにだな」
マコト101「いやですよ!」
いろり110「いい加減あきらめろ、これが現実だ」
マコト102「いろりん!!」
いろり111「20分だけ、恋人でいてくれ」
マコト103「そ、そんな……いやですよ」
いろり112「ふふふ、ふられてしまっちゃあ、どうしようもないな」
マコト104「違いますって!ちゃんと、20分なんて言わずにちゃんと、恋人になりますから!」
いろり113「マコ……?」
マコト105「俺、いろりんに憧れてたんですよずっと」
いろり114「恋愛対象にならないフラグだな」
マコト106「いえ、俺が臆病なだけです。憧れの域を超えるのが怖かっただけです」
いろり115「ほぅ……」
マコト107「だから、なんとかして生き延びてくださいよ!お願いです!俺もあなたが好きですから!!」
いろり116「考えが変わった。恋人でいてくれ発言は撤回しよう」
マコト108「じゃ、じゃあ4:27過ぎたらそのとき改めて──」
いろり117「そんな気持ちでいられたんじゃ、私が死んだ後責任が取れない」
マコト109「そんな!!死ぬの前提ですか?!」
いろり118「これが現実だって何度言わせるつもりだ!!情報が、足りなさ過ぎる。……私のことはきれいさっぱり忘れてくれ」
マコト110「ま、待ってよいろりん、待ってください!!」
いろり119「しかしただでは死なない。おまえが生き延びる道は私が切り開く。限界まで通話を聞いていろ」
マコト111「いろりん……っ!!」
いろり120「賢いお前のことだ、必ず私の断末魔からヒントを見つけるだろう。私もぎりぎりまであがいてやるさ」
マコト112「いやだ、いやだよいろりん、せっかく好きっていえたんだから、ちゃんと生きてよ!」
いろり121「残り時間あとわずか、全神経を耳に集中させろ。考えろ、考え抜いて生き延びろよ、マコト」
マコト113「そんなの……そんなのいやだよ、いろりんお願いだ、死なないで!」
いろり122「っ!……来たぞ、マコト。一言も聞き漏らすな」
マコト114「いろりん……いやだよぉ……しんじゃいやだ……」
いろり123「情けないことを言うな、男の子だろう!……しかし、見れば見るほど私だな。反吐が出る」
マコト115「逃げて、逃げてよいろりん!」
いろり124「私が逃げたところでなにも変わりはしない、それどころかおまえに道を切り開いてやることもできない。私は戦う」
マコト116「逃げたらなんとかなるかもしれないじゃないか!!」
いろり125「逃げるつもりなら端からそうしている……。っ!近づいてきた」
マコト117「いろりん逃げろ!!逃げてくれ、逃げて!!」

中の人13「名前を呼ばれたら、1週間以内に死ぬ──そんな都市伝説の真相とついにあいまみえた。
     いろりの想い、マコトの願い、逃げられない現実……。
     次回、Fの4:27第6話、『隠しだま』
     その声に、聞き覚えはありますか?」


第五話終了


第六話

中の人01「ネットラジオ、というものがある。
     誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
     今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。」
(※使いまわしなので収録の必要はありません)
中の人14「Fの4:27、第6話 『隠しだま』」


いろり126「武器のようなものは持っていないな。まぁ、心不全で死ぬんだから当然といえば当然か。
      苦手なものはないかと思って塩やら米やらお札やら用意したが、どれもスルーだな。隠しだまでも出してみるか?」
マコト118「そんなところでネタ用意しなくていいから逃げてよ、逃げろよいろりん!」
いろり127「島本由紀だ」
マコト119「な?!」
いろり128「最期くらい、名前で呼べ……っっっぐ!」
マコト120「いろりん!?ちょ、いろりん!!」
いろり129「みょ……妙な事に気まわしたら……隠しだま……出しそび……れ」
マコト121「……っ、由紀さん!!」
いろり130「……もし……これが……やっ……きくか……きょぞ……」
マコト122「由紀さん由紀、由紀っっ!!」
いろり131「ぐ……マコ……か……が……ぃ…………して……め……っぐあああっ!」
マコト123「由紀ぃぃぃぃいいいいいいいいいい!!!」

マコト124「由紀が残してくれたヒントは、きょぞ、かがい……絶対に、生き延びてやる……」

マコト125「そうか、あの音!」

中の人15「名前を呼ばれたら、1週間以内に死ぬ──そんな都市伝説によって次々と死んでいくラジオ仲間。
     命がけの手がかり、遺された恋心、あと24時間……
     次回、Fの4:27最終話、『未来永劫』
     その声に、聞き覚えはありますか?」

第六話終了


最終話

中の人01「ネットラジオ、というものがある。
     誰でも気軽に情報発信ができることから、最近ではさまざまな人間が配信している。
     今日も、どこかの誰かが、気軽な気持ちでラジオを配信している────。」
(※使いまわしなので収録の必要はありません)
中の人16「Fの4:27、最終話 『未来永劫』」

マコト126「もうすぐ……もうすぐ、4:27……あれは用意した……由紀、これで合ってるのか……?」
マコト127「来た──っ!これが、由紀の遺したヒントから導き出したアイテムだ!!」
マコト128「……っ!消え、た……?消えた、消えた!!勝ったぁ!!」
マコト129「これで勝ったつもり?」
マコト130「え?!」
マコト131「バカだねぇ、鏡でなんとかなると思った?──逆だよ」
マコト132「ぎゃ、逆?!」
マコト133「鏡で俺は入れ替わるんだよ。今日から俺はおまえになって、おまえが俺だよ」
マコト134「そんな──ゆ、由紀?!」
いろり132「ふふ、ごめんなマコ。私一人ではやはり、さびしすぎる」
マコト135「想いが通じあったんだ、こっちの世界でよろしくやってくれよ」
マコト136「由紀、どういう──」
いろり133「最初から調べはついていたんだ。都市伝説のオチも知っていた。あいつらは私たちの影……」
マコト137「か……影?」
いろり134「そう、影。しいて言うならここは影の世界だな。鏡は行き来するドアのようなもので」
マコト138「じゃ、じゃあ鏡を用意していたら逆に──」
いろり135「……現実の世界で生きてきたお前はある意味死んだが、ここならずっと、生きていられる。
      ラジオやSkypeだけじゃない、もっと強固なつながりで、運命を共にすることができる。
      お前のそばで、未来永劫……ずっと、一緒にいられる」
マコト139「っ……!」
いろり136「私はお前が好きだ──お前も、だろう?」
マコト140「あ……あ……」
いろり137「ひっかかってくれて嬉しいよ、マコト」
マコト141「うわああああああああああああああああああああああああッッッッッッッ!!!」

エピローグ

中の人17「ラジオから始まり、連鎖していった関係────。
     本当に不気味で恐ろしいのは、聞き覚えのない声でも不可解な死でもない。
     ましてや影と入れ替わることでもない。
     ──そう、本当の恐怖の入り口は、日常にあるのだから。」

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最終更新:2009年08月08日 20:37