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作者:Elika


篠田01「清海先生は、まるで絵画のような人でした」

望月01「あら、篠田さん?早いわね」
篠田02「あ……お、おはようございます清海先生」
望月02「ふぅん……今日は模写?」
篠田03「は、はい……レヴィの、オフィーリアを」
望月03「悲劇のヒロインね。いい題材だわ」
篠田04「でも、なかなかうまくいかなくて……」
望月04「そうね……ここ」

篠田05「そういって清海先生は、木炭を持った私の手をとってカンバスに走らせた」

篠田06「あっ……」
望月05「ここのラインを、こうして……ほら、わかるかしら?」
篠田07「は…………はい……」
望月06「ふふ、どうしたの?顔が赤いわよ?熱でもあるの?」
篠田08「いえっ!その……な、なんでも……ない、です……」
望月07「そう……それは、恋する乙女の瞳ね」
篠田09「ん……っふ…………っ?!」

篠田10「清海先生の、まっすぐで、サラサラで、長い髪のにおいがした」

望月08「……もうすぐ、予鈴がなるわね。続きは──放課後に、ね」

篠田11「続き……続きって、なんだろう。なんの続きなんだろう」
篠田12「頭の中で、ぐるぐると考えがまわる」
篠田13「気がついたら──約束の、放課後になっていた」

望月09「篠田さん……いい子ね」
篠田14「あっ……あの……清海、先生……」
望月10「篠田さんは、レヴィが好きなの?」
篠田15「いえ、その……つい最近まで、知りませんでした」
望月11「じゃあ、どうしてこのオフィーリアを?」
篠田16「先月、美術部の活動で、市営美術館に行ったときに見かけて……」
望月12「そういえばあの時、オフィーリアの前にずっといたわね……」
篠田17「その……あの……せっ……先生に、似てるな、って……思って……」
望月13「オフィーリアが?私に?」
篠田18「は……はい……」
望月14「そう……ふふ、こんなに美人じゃないわよ、私」
篠田19「そんなことないです!!清海先生は……清海先生は、私の、憧れです」
望月15「ふぅん……ねぇ、篠田さん。ちょっと、そこに腰掛けてみてくれない?」
篠田20「え……?今、ですか?」
望月16「ええ。横を向いて……そう、顔だけこちらに……もうちょっと、ええ、そのくらいでいいわ」

篠田21「清海先生は、カンバスをイーゼルに立てかけて、木炭を走らせた」

望月17「あなたはね……ルノアールの、イレーヌ嬢に似ているわ」

篠田22「木炭がこすれる軽い音の中、清海先生はゆっくりと語りだした」

望月18「ルノアールはね……少女を描かせたら天才なの」
望月19「熟しきらない、無垢な輝きを──カンバスに、映し出す天才よ」
望月20「ルノアールが好んで少女を描いた気持ちが、私にはよく分かるわ……」
望月21「だって──こんなに美しいんだもの」

篠田23「清海先生が、イーゼルごとカンバスを私に向けた」

望月22「あなたよ、篠田さん……ふふ、きれいでしょう?」
篠田24「ぁ…………これが、私……」
望月23「そうよ。イレーヌ嬢なんかよりももっと、ずっと……魅力的よ、篠田さん」
篠田25「清海……先生ぇ……」
望月24「この髪も……頬も。首筋も、腰も。あなたのすべてをカンバスに映したわ」
篠田26「あぁっ…………先生、先生っ……」
望月25「ねぇ、篠田さん……この絵のあなたは私のものだけれど……今、私の腕に抱かれているあなたは、誰のものかしらね?」
篠田27「わ……私は……」
望月26「私のものになりなさい。身も心も、すべて。どんな美術品よりも、あなたをかわいがってあげるから」
篠田28「はい……清海、先生……」

篠田29「清海先生は、まるで絵画のように微笑みました」
篠田30「私は……その微笑の甘い鎖に、喜んでつながれるのでした」