作者:Elika


旅人の宿



やあ、旅のお方。この街は初めてかい?
そうかい、まあ、一杯やってくんな。
なぁに、金はいらんよ。こいつはサービスだ。
うちの特製ドリンクさ、長旅の疲れによく効くって評判なんだ。

ところで、今夜の宿は決まったかい?
よかったらうちなんかどうだい、二階は宿になって──ああ、そりゃいかんよ!
なんでって、知らないのかい?
ああ、遠くからおいでなすったんだから知らなくて当然か。
いやな、最近この辺一帯じゃ夜な夜な幽霊が出るってもっぱらのうわさなんだよ。
──バカいっちゃいけねぇ、たかが幽霊ごときでここまで人が警戒なんかするもんかい。
その幽霊ってのが、これまた恐ろしくて恐ろしくて……ああ、待って待って!

いいかい、野宿なんて絶対にするんじゃないよ?
いやいや、悪いことは言わない、うちにしときなって!
ここんとこの幽霊騒動で閑古鳥が鳴いてるんだ、あんたなら安くしとくからさ。
いつもの半額で泊めてやるから!なあ、助けると思って──っち、なんだい!お高く留まりやがって。
いいか!忠告はしたからな!!

……ふう。
近くに大手の旅人宿ができちまってから、こちとら商売あがったりだ。
さぁて……今夜もまた、化けて出るか……。

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最終更新:2010年10月21日 18:07