作者:Elika
シャツ
「春は何色でしょーか?」
そんな言葉と共に、君は僕の中にまっすぐ飛び込んできた。
天邪鬼で破天荒で突拍子なくて、エネルギーの塊みたいな人だと思った。
そのくせちゃっかり気遣いができて、柔和であったかい人だと後から気づいた。
気づいたときには時すでに遅し。
僕は君から目が離せなくなっていた。
やることなすこと危なっかしくて、でも急に見せる優しい横顔に──音が聞こえた気すらした。
これは、恋に落ちる音。
甘くゆるやかな、心地よい音。
「そのシャツ、もうスカスカじゃん!これ着なよ!」
無難に黒ばかり選ぶ僕に、彩りをくれたこのシャツは、すでに色あせてしまったけど。
どうしてだろうね。
シャツの色があせていくほど、君との思い出は鮮やかになっていく。
最終更新:2011年02月28日 23:27